Graduate of 16
16年度の卒業生
-Act Out-
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夢を見る。
今でもたまに、夢を見る。
「████くん?」
それは遠い日の記憶。
「█████かね? こ██と███」
「██。██ね、███……『約束』████!」
「約█?」
色褪せた写真のような記録。
「うん! ███って、ずーっと█████████。だから、████も███████████、約束█████!
私、
絶対、
███████████████、
って!」
「██は██ねぇ」
それは過ぎ去った思い出。
「……うん。██! 私、絶対に█████! ██しててね!」
「うむ。███████。それじゃ、███████、いっぱい███しな███!」
「……それと█████話が██す!」
「██████! さ、教室███!」
今はもう、届かない夢。
「――なんだか出るらしいわよこの辺」
バイト先でいつものように品出しに勤しんでいると、傍まで歩み寄って来たパートのおばさんが、唐突に話し掛けてきていた。
「……」
一応断っておくと、今は真昼間。
太陽が煌々と照りつけているだろうこの時間帯に。
「……幽霊ですか?」
そんなもんは出るわけがないだろう。それでも、私がそう言ったのは。
「違うわよー! もう、小説の読み過ぎよ、アリオンちゃんったら!」
「……いや。そんなどこぞのホラー作家みたいな顔されたら、誰だってそう思いますって」
そういうわけである。むしろ、そんな素振りでなぜそう思わないと思ったのか。甚だ疑問だった。
「万引きよ、万引き!」
気を取り直して、と彼女はそう言い直す。ここはスーパー、それもそこそこに大きめの。繁忙な時間帯になると、老若男女様々なお客さんで犇めくことになる。
決して他人事ではない。なるほど。ぞっとしない話だった。
「不審なお客さんがいたら、すぐ連絡してほしいそうよ」
「その話がバイトまで下りてないのはなんでなんですかね」
「期待してないんじゃない? バイトにそんなとこまで」
……実態はバイトにそこまで仕事を任せられない、ってところだろう。期待してない、ってことはないと思う。『足の速さ』ならこの店の誰にも負けない自信がある。
『向こう』だって重々承知のはずだ。私が――『一般人』じゃないってことくらいは。
「じゃあ、まぁ、それなりに気を付けておけばいいですか?」
「そうね! 現行犯だったら、そのまま捕まえてくれちゃってもかまわないけど……」
「どーでしょうねー。護身術とか知りませんし」
普通じゃないことと単純な強さは相関しない。
文字通りに『ぶちのめす』ことは簡単だろうけれど、そんなことをしたら犯罪者になるのはこっちの方だ。
「期待してるわよ、『我が店のエース』ちゃん!」
「ははは……」
エースか。
そんな名前、ずいぶん昔に聞いたような気がする。
田舎の出、不屈の精神、不撓の闘志。
似通ったところがある、と思ったことはあるけれど。
今となっては、そんな考えも恐れ多い。
「お先失礼しまーす」
時間は過ぎ。陽は暮れて。
バイト先を後にする。
冬至はとうに過ぎたけれど、日が長くなっている感覚はしない。
色濃く漂う冬の空気に、白い息が溶け込んでいった。
春は、まだ遠い。