16年度の卒業生(新版)   作:Ray May

1 / 51



ソコカラナニガミエル?




Uma-musume
Graduate of 16
16年度の卒業生

-Act Out-






Act.0
_____


 夢を見る。

 

 今でもたまに、夢を見る。

 

「████くん?」

 

 それは遠い日の記憶。

 

「█████かね? こ██と███」

「██。██ね、███……『約束』████!」

「約█?」

 

 色褪せた写真のような記録。

 

「うん! ███って、ずーっと█████████。だから、████も███████████、約束█████!

 

 私、

 絶対、

 ███████████████、

 

って!」

「██は██ねぇ」

 

 それは過ぎ去った思い出。

 

「……うん。██! 私、絶対に█████! ██しててね!」

「うむ。███████。それじゃ、███████、いっぱい███しな███!」

「……それと█████話が██す!」

「██████! さ、教室███!」

 

 今はもう、届かない夢。

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

「――なんだか出るらしいわよこの辺」

 

 バイト先でいつものように品出しに勤しんでいると、傍まで歩み寄って来たパートのおばさんが、唐突に話し掛けてきていた。

 

「……」

 

一応断っておくと、今は真昼間。

太陽が煌々と照りつけているだろうこの時間帯に。

 

「……幽霊ですか?」

 

 そんなもんは出るわけがないだろう。それでも、私がそう言ったのは。

 

「違うわよー! もう、小説の読み過ぎよ、アリオンちゃんったら!」

「……いや。そんなどこぞのホラー作家みたいな顔されたら、誰だってそう思いますって」

 

 そういうわけである。むしろ、そんな素振りでなぜそう思わないと思ったのか。甚だ疑問だった。

 

「万引きよ、万引き!」

 

 気を取り直して、と彼女はそう言い直す。ここはスーパー、それもそこそこに大きめの。繁忙な時間帯になると、老若男女様々なお客さんで犇めくことになる。

 決して他人事ではない。なるほど。ぞっとしない話だった。

 

「不審なお客さんがいたら、すぐ連絡してほしいそうよ」

「その話がバイトまで下りてないのはなんでなんですかね」

「期待してないんじゃない? バイトにそんなとこまで」

 

 ……実態はバイトにそこまで仕事を任せられない、ってところだろう。期待してない、ってことはないと思う。『足の速さ』ならこの店の誰にも負けない自信がある。

『向こう』だって重々承知のはずだ。私が――『一般人』じゃないってことくらいは。

 

「じゃあ、まぁ、それなりに気を付けておけばいいですか?」

「そうね! 現行犯だったら、そのまま捕まえてくれちゃってもかまわないけど……」

「どーでしょうねー。護身術とか知りませんし」

 

 普通じゃないことと単純な強さは相関しない。

 文字通りに『ぶちのめす』ことは簡単だろうけれど、そんなことをしたら犯罪者になるのはこっちの方だ。

 

「期待してるわよ、『我が店のエース』ちゃん!」

「ははは……」

 

 エースか。

 そんな名前、ずいぶん昔に聞いたような気がする。

 田舎の出、不屈の精神、不撓の闘志。

 似通ったところがある、と思ったことはあるけれど。

 今となっては、そんな考えも恐れ多い。

 

「お先失礼しまーす」

 

 時間は過ぎ。陽は暮れて。

 バイト先を後にする。

 冬至はとうに過ぎたけれど、日が長くなっている感覚はしない。

 色濃く漂う冬の空気に、白い息が溶け込んでいった。

 

 

 

 春は、まだ遠い。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。