魔法少女リリカルあんな   作:Red_stone

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番外編です。本編が終わってから少し後の話になります。
ミッドチルダ組は登場しません。


番外編 吸血鬼襲来

「おはよう。アリサちゃん、すずかちゃん」

朝。わたしはいつもどおりに学校に通う。あの事件の時は原因不明の大地震が起こったけど、子供たちには何の実感もわかない。だから、いつもどおりだ。

まあ、大人にとっては損害額総計何億とかあったようだけど、人死にが出てないから実感と言えば厨房が皿の欠片で針の山になったことくらいしかない。もちろん、そんなところに立ち入らせてもらえるわけもなく、後でお姉ちゃんに写真を見せてもらったのだけど。

「おはよう、なのはちゃん。それにフェイトちゃんと、ユーノ君も」

そう、わたしにとってはこれが重要。地震などどうでもいいくらいに大切なことなのだ。

あの事件の後、ユーノ君とフェイトちゃんは高町家で面倒を見ることになった。そして、相棒のレイジングハートも傍にいる。壊された外装を修復したバルディッシュはフェイトちゃんの隣に。

大人の事情で色々と厄介なことがあったらしいし、それにかかわることもあったのだがそこら辺はどうでもいいことでしょう。裏取引や密約が面白いとは思えないから、わたしは語る口を持ってない。

そんなややこしい中、デバイスの所持はあっさりと認められてしまった。いわく、私たちは魔法を使えないから、それはただのお友達にしかなりえない――らしい。登録者書き換え機能を凍結させてしまえば、狂気にはならないから問題ない。だそうだ。

そんなことを知る由もなく、アリサちゃんとすずかちゃんは元気に登校する。

「おはよ。ホントにびっくりしたわ。地震があって、てんやわんやになったと思ったらあんたの家が二人も子どもを引き取ることになってたなんて聞かされた日には、ね」

「うん。私も口をぱっくりと開けて驚いちゃった。フェイトちゃんは綺麗だし、ユーノ君はかっこいいよね」

「うん。わたしの自慢の彼氏だもの」

えっへん、と胸を張る。

「なあ、お前ら。こいつの友達でいるのって大変なんじゃないか?」

やれやれ、とユーノ君が肩をすくめる。やん、照れちゃって。

「ううん。そんなことないよ。なのはちゃんは素敵な女の子だよ」

「そうそう。少し妄想癖があるのが玉に瑕だけど」

「ちょっと、それ酷くないかしら?」

ジト目で抗議する。何が妄想だってのよ、もう――。

「あはは。まあ、気を付けてよ。あんたみたいなボケボケした子はねらい目なんだから」

「は? ねらい目ってなんのことよ」

からかうような雰囲気の中に、細められた目が本気の心配を抱いている。――なにか、あったかしら。地震は、ここにこうして無事でいるのだから関係ない。

「……知らないの?」

「なにかあったかしら」

事件、かしら。

「なのはちゃん、おうちの人に何も言われてないの?」

「ああ。言うのを忘れてた」

ぽん、と手を打った。小さいけど、そういうしぐさも似合うわね。って、違う。事件か何か起きてるんなら、知っとかなきゃね。

「ユーノ君?」

「桃子さんに早く帰れって言われてたんだった。なんだっけか――危険人物が辺りをうろついているかもしれないとかなんとか」

「――吸血鬼」

すずかちゃんがぼそりとつぶやいた。その、不吉な言葉を……許しを請うような顔で。

「吸血鬼って? 通り魔かしら」

「俺はそこんところ詳しく知らん。フェイトも知らんだろ? アリサ。知ってたら教えてくれ」

「え? あ、ええ。いいわよ。と言っても、テレビでやってたことくらいしか知らないんだけど。吸血鬼っていうのは、ユーノ君の言ったように通り魔よ。殺された人の遺体から血が抜かれていたからそう呼ばれ始めたのよ。犯行時間は主に深夜。人気のないところで衝動的に人を襲ってるって話だったわ。私が知ってるのはこれくらいね」

「……むぅ。吸血鬼ね――物騒としかいいようがないわ」

吸血鬼って言ったら、まず思い浮かぶのはあいつよね。二人目の狂犬。前世では相棒であったこともあるあいつ。

「その、吸血鬼さんは何を考えてこんなことをしてるのかな?」

「……すずかちゃん」

彼女は深刻そうな顔をしている。そりゃそうよ――彼女もまた吸血鬼なのだから。もっとも、すずかちゃんやその家の人は人間を襲ったりしない。もしそうなら怖くて近づけやしないわ。食料は病院からでももらっているのでしょう。

それだけに、吸血鬼の事件は心穏やかならざる事件のはず。そもそも、わたしが知っているのだってちょっとしたことで気づいちゃっただけで、すずかちゃんは知られているのに気付いてないはずだしね。

「さあな。だが、現代に現れた吸血鬼なんてのは鉄火により駆除されるだけだろう。ここまで目立ってしまえば、手遅れだろうな」

「ユーノ君。でも、その人にだって理由があったのかも知れないでしょ」

かばうような言葉は同族だから? でも、すずかちゃんが人を考えなしに襲う狂犬に仲間意識を持つ必要はないと思うのだけれど。

「しょせん、犯人の動機なんてお茶の間を楽しませるだけのものさ。そいつが何を思って殺人に臨んだとしても、人の世には何らの影響も与えることはないさ」

と、ユーノ君。

「そもそも、なんかの考えがあってのことでもないかもね。変な宗教的儀式とかかもしれないわよ。わたしたち善良な一般市民は、おうちに閉じこもって警察が事件を解決してくれるのを待ちましょ」

「……なのはちゃん」

「ま、間違ったことは言ってないわね。で、フェイトはどう思うわけ? 私としてはふざけた犯人なんて、一発ぶん殴ってやりたいと思うけど」

「危険だよ。友達をそんな目に合わせるくらいだったら、私がやる。もし、吸血鬼が襲ってきたら、やっつける」

うわお。アリサちゃんが本気なら、フェイトちゃんはマジだ。真剣と書いてマジと呼ぶ――なら、殺意がそこにあったとしてもおかしなことはない。のかしら?

「フェイトちゃんは頼もしいね」

「すずかに襲い掛かってきたら、私が守ってあげる」

「ふふ。心臓が弱いフェイトちゃんに守ってもらうまでもないよ。一緒にいるときに出会ったら、私こそフェイトちゃんを負ぶって地の果てまで逃げてあげる」

――逃げる。敵と会った時の主な反応は二つ……戦うか、それとも諦めるか。第3の選択肢をこともなげに言ってのけるなんて、やっぱりわたしの友達は最高ね。

「……あは。優しいすずかちゃんらしい。でも、危ない人にあったら逃げるのが一番って言うのは正しいと思うわ」

「ありがと」

「そろそろ学園につくわね」

「クラスは同じだけどね?」

「今日って、テストあったっけ?」

「国語のテストがあったはずだよ、なのはちゃん」

「……げ。忘れてたわ」

「お前、昨日ノート借りたろ。その時思い出せよ。てっきり俺は覚えてたものだと思ってたが」

「……言ってくれてもいいじゃない。わたし、国語苦手なのよ?」

「じゃ、得意な科目は?」

「算数。それと体育も」

「そういや、お前にも得意科目くらいあったか」

「……なにその残念そうな顔は!?」

「さて、そろそろ授業の時間だな。くっちゃべってないで集中しろよー」

「投げっぱなしで横向かないでよ。ユーノ君ったら!」

 

 

 

ユーノ君とフェイトちゃんの3人で道を歩いている。授業は終わった。二人は習い事があるらしい。

「で、吸血鬼事件はどうする?」

「それって、魔法関係の事件じゃないのよね?」

「今のところ、魔力の補足はできてない。だが、それで無関係だとは言い切れない」

「ユーノには、デバイスがないもんね」

「ああ。さすがに俺のは管理局に取り上げられちまった。まあ、インテリジェントデバイスじゃないから人格を持ってないってのもあるが――さすがに魔法を管理外世界でおおっぴらに使わせることは認められないんだろうさ」

「デバイスがないと、魔法の構築がしづらくなってくるんだっけ?」

「ほとんどレアスキルレベルまで難しくなる。俺はまあ一通り習ったが、使えるのか使えんのかよくわからん状態だ。そもそも目的は遭難してデバイスを紛失した際にシグナル出せるようにってことだからな。あまり期待してもらっても困る」

「じゃ、私がやろうか?」

「「それは駄目」」

「フェイトちゃん。あなたのリンカーコアは半壊していて、魔力を通すと激痛が走るんだよ。それだけじゃない。痛覚は体の危険信号――無視してめちゃくちゃやればどんな後遺症を併発するかわからない。あなたはただでさえ、長時間の運動ができない体なんだよ」

魔法を使えない。その後遺症こそわたしとフェイトちゃんは同一であるが、深刻さはフェイトちゃんがはるかに上。死体同然にまで破壊された体が癒え切っていない。それはもしかしたら永遠に残る傷跡かもしれない。そしてその傷口が開いたら、なんて想像はしたくない。

「それでも……皆を守るためなら!」

吠える。けどね、ここにはあなたの心配をする人がたくさんいるんだよ?

「なら、その皆に自分も加えなさい。自分さえ守れない人間には、何も守れないわよ」

思えば、前世でわたしは魔女裁判にかけられた。それは自分を守れなかったということで――そのあとの人生で何一つ守れなかったのは必然だったかもしれない。

「……なのは」

顔に出てたかしら?

「なんでもないわ。自分を大切になさい。それと、なんでも自分で背負い込む必要はないの。警察に任せておきましょ」

その時のわたしは忘れていた。自分の家がどういう家なのか。御神流を継ぐということがどういう意味を持つのかを。

そして甘く見ていた。――因縁を。

 

 

 

すずかちゃんの顔色は日に日に悪くなっていった。吸血鬼事件の被害者は数を増すばかり――しかし、解決の糸口はつかめていない。

そして、お兄ちゃんとお姉ちゃんの帰りが遅くなってきた。

少し前に――

「なのは。あまり遅くまで学校に残ったり、道草したりするんじゃないぞ」

「なんで? 今日もいつも通り暗くなる前に帰ってきたじゃない。お兄ちゃん?」

「いや、近頃は物騒だから」

「うーん。でも、フェイトちゃんとやりたいこともあるし。暗くなる前に帰ってきたらいいでしょ?」

「駄目だ。できるだけ早く、学校が終わったらすぐに帰って来なさい」

「お兄ちゃんにそんなこと言われる筋合いはないもーん」

「もーん、て。お前な。とにかく、絶対に早めに帰ってこい。いいな?」

「むぅ。それって絶対? 誰でも?」

「絶対。誰でも、だ」

「じゃ、お兄ちゃんもだよね」

「……っな?」

「お兄ちゃんも早く帰ってこなきゃ、ずるい」

「……むぐぐ」

という風に、逆襲して釘を刺したんだけど。お兄ちゃんも、そして驚くべきことにお姉ちゃんも逆に帰りが遅くなる始末。

すずかちゃんとも合わせて、悪い予感が止まらなくなってきた。けれど、打つ手はない。

いや――あるのだ。しかし、それは激痛を伴う。それだけならまだいい。半壊したリンカーコアで無理やり魔法を使えば、神経に負担が来る。苦痛とは、結局神経を伝達する信号に過ぎない。けれど、莫大な信号により神経を破壊されたらどうなるか。

手が動かなくなるかもしれない。目が見えなくなるかもしれない。舌が……効かなくなるかもしれない。

結局、わたしは怖いのだ。魔法を使うことが。だから、静観することしかできない。

そして、予想もつかない――しかし予感だけはあった結末がやって来る。

 

 

 

 

「よう」

塾の帰り道。月村すずかは声をかけられた。

「……え?」

「いい夜だと思わねえか? まさに――俺たちの時間だ」

ニタリと笑った男は黒いSS(武装親衛隊)服を着ている。彼女たちに知る由はないが、この服は悪名高きナチスの一員であるとの証。

「……っ!」

その、ねっとりとした声に悪寒を覚え――内容を理解するとともに戦慄がかけめぐる。

「あなた――吸血鬼?」

「お逃げください、お嬢様!」

侍女服姿の女が叫ぶ。彼女はすずかの外出には同伴してきた――最近物騒になってきたから。そして、そんな彼女が戦闘能力を持たないはずはない。

「……ノエル?」

「ここは私に任せてお逃げを。できれば恭也様を呼んできてくれると助かります」

「でも……!」

「早く。私も何時まで持つかわかりません」

緊迫した声で言った。戦いなんてそれこそゲームでしか経験したことのないすずかには、強さなんてものはよくわからない。けれど、それを知っているノエルは額に汗を流している。

「そんな……」

「心配することはありません。大丈夫ですよ、必ず生きて帰ります」

「うん。絶対、死んじゃ嫌だよ……?」

「私もお嬢様や忍様を残して死ぬ気はありません」

「すぐに恭弥さんを呼んでくるからね」

すずかは走り出す。それが自分を逃がす口実だと分かってはいても、自分にできることは何もない。それよりは――足手まといの自分でもできることをやろう。

 

 

 

「――」

彼はじっとノエルを見ている。何か腑に落ちないような、あるいは珍獣でも観察しているかのような。

「待たせたようで申し訳ありません」

「なに、気にするな。戦の礼儀だ。死に行く奴の遺言くらいは残させてやる」

「……思ったよりも冷静な方なようで」

「狂犬は別にいるんでな。しかし、一つ聞きてぇんだが――お前人間じゃないな? 吸血鬼でもねぇ。そもそも生きてる気配を感じない。機械か」

「ご慧眼です。いかにも私は自動人形――ノエル・K・エーアリヒカイトと申します。埃をかぶった古の遺産ではありますが、どうぞお見知りおきを」

「くっくっく……あーはっはっは。いいねえ。いいねいいねいいねェ。お前みたいなのを吸い殺したことはねえ。初体験って奴だ。お前を殺せば、何かが見つかるかもしれねえな。――簡単に死んでくれるなよ」

「もちろん。犯罪者を叩きのめすのがボディガードの務めですから」

「くく。本当に面白い奴だぜ。俺の力にどこまで耐えられるのか、見せてもらおうかァ」

吸血鬼が地をける。

そして、侍女は銃を抜く。




……チンピラ中尉は書くのが難しいですね。
とらハはプレイしてないので、キャラが間違っていたら申し訳ないです。あくまでリリなのの延長としてお楽しみいただけると幸いです。
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