魔法少女リリカルあんな   作:Red_stone

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第3話 それはこわーい宝石なの

「あいつら、強いな。いったい何者なんだよ? 忍者か」

ユーノが愚痴る。ロートスは黒円副首領の代替である藤井連の親みたいな存在であるため、前世ではとんでも能力を持っていたりはしなかった。

それでも、英雄と呼ばれた男と歩んだ軍属の人間である。そのために危険にはとても鼻が利く。無茶な英雄に付き合うためにはそれくらいの能力は必要だ。彼らがどれだけ強いかわからないが、自分が相対したときは逃げる以外に選択肢がないほどの戦力差があることを嗅ぎ取った。

「さぁ。よくわからないけど、永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術とか言う流派を修めているんだってさ。まあ、わたしはけっこうああいう手合いを見る機会があったからわかったけど、実力は裏でも相当上位よ?」

ちなみにわたしはそんなの修めていない。いや、なんでだろう? 単純に年齢の問題で教わっていないだけかもしれないが、我が家にはわたしに御神流を習わせようという空気が存在していない。

わたしはそんなに運動音痴か。くそぅ。

わたしだって、前世はそりゃ化け物に囲まれていたから見劣りするかもしれないけどさ。体術のみでも裏の人間と張り合うことくらいはできたわよ。

転生後? ――聞かないで。

「なんだ、その長ったらしい名前は。まあいいや――巻き込もうとしてる俺に言えた義理はないしな」

「で、何を手伝ってほしいって?」

ま、御神流についてはあんまり知らないし……そっちよりも黒いのとかの方が深刻よね。ってか、わたしはそっち関係に関わるつもりなかったんだけど。

「ん? 意外だな――お前なら初めに交換条件を提示してくるものと思ってビクビクしてたんだが」

失礼ね。と言いたいけれど、前世で彼と同僚だった遺産管理局時代には知識を貸してあげる代わりにおごってもらったり、書類押しつけたりしてたのよね。

「どう踏み倒してやろうかと値踏みしてたんじゃないの? 別にいいわよ、お礼なんて。ちゃんと手伝ってあげるから安心しなさい」

ま、あっちはあっちで強かだからけっこう踏み倒されたけど。

「お前、そんな性格だったっけか」

「あんたはさっさと死んじゃったけど、わたしはあの後もずっと生きてたのよ」

「へぇ。まあそれを聞くは次の機会として。手伝ってくれるんなら、遠慮なく頼らせてもらうぜ」

「ええ。大船に乗ったつもりでどんどん来なさい」

胸を叩いて見せる。前世からわたしは頼りがいのある女だったでしょ。

「泥船じゃなきゃいいんだけどな」

だと言うのに疑わしいものを見る目で見られる。酒飲ませて襲うぞ、コラ。

「お願いしといてその態度は何よ――いっしょにお風呂にでも入る?」

「あいにくと、ガキには興味ないんだ」

「じゃあ、お風呂の中で足を引っ張られる感覚を味わってみない?」

「お前、俺を溺れさせるつもりか」

青くなった。さすがの彼も怖くなるくらいの凄惨な笑みを浮かべていたらしい。

「きゃー、大変。溺れちゃったら人工呼吸しなくちゃね?」

「俺はジュエルシードっつーロストロギア、まあ危険物だな。そいつを運ぶ次元航行船に同乗させてもらってたんだ」

話を変えやがった。

「また凄い誤魔化し方するわね。まあ、乗ってあげるけど。で、なんで危険物運搬なんかやってるのよ?」

ものすごく似合わない職業ね。前世では、処刑人の家系で遺産管理局に務める放蕩貴族。それが転生したら運び屋って。ずいぶんとエキセントリックな転職ね。

「いや、それは話すと長くなるんがだな」

「手短にお願い。わたし9時までしか起きてられないの」

いや。ホントこの体は不便なのよ。体力ないし、運動神経ないから体術もまともに使えないし、夜更かしもできない。

我ながら、なんで魔女が規則正しい生活してるんだろうと思うわ。

「俺、遺跡発掘の責任者。ジュエルシード、発掘した危険物。危険物はお偉いさんに投げるに限る。でも事故で落としちまった。んで、暴発しないように回収したい。以上」

「まあ、大体わかったわ。で、その危険物の性質は?」

「願いに反応するっつーよくわかんない代物だ」

そりゃまた曖昧な。

「いや、遺産管理局時代にそういうのよく見なかった?」

「それは眉唾物しかなかったろ。こいつは本気で反応するもんだからタチが悪い」

「ま、願いをかなえてもらったところで、それが望んだこととは違うわよねぇ。それに、そこまで純粋に一つのことを想える人間もそういないでしょ」

“水銀”を知ってる身としては、願いを叶えるとか聞くと不安しかないわね。

「その通り。だから、こいつは人間の手には渡せない。最悪、次元震を起こして周りの世界諸共自爆する」

「次元震? 周りの世界? それってつまり、平行世界ってことかしら」

「ん? この説明でわかったか。ま、簡単に言えば暴走すれば世界がヤバいってことだ。ま、だから回収したいわけだけどな」

自分が死ぬにしても、被害の規模はけっこう重要だと思うけど。まあ、どっちみち暴走させるわけにはいかないわよね。

「回収か。あんた以外に回収している人間は?」

「それについては、管理局が1ヶ月後くらいには来てくれるから、そいつらに丸投げしちまえばいい。ところで、ジュエルシードを有効に利用するなら、お前どうする?」

「そうね。ま、政府側なら餌にでもするわね。話に聞く限り、とんでもなく扱いづらそうだし。それで超人を作るにしたって、適役はいないでしょうし――水銀お得意の居ないなら作るにしてもね。手をかまれるのがオチよ」

うん。わたしならそんなことはしない――とは言い切れないけどジュエルシードを人間に使わせるのはそれこそ趣味の領域でしょうね。だって、制御しきれるはずはないもの。

心の底からの欲望に気付く人間はほとんどいない。そして、それが自分にも他人にも都合の良い形であることは例外を除いて皆無と言っていい。

「じゃあ、負けているならどうする? 敵は強大で、打つ手がなかったとしたら」

ま、それは正直口にしたくなかったからぼかしたんだけど、それを言わなきゃ始まらないかな。

「そのときは――人間爆弾にでもするしかないかもね」

苦い顔で言う。実際、それが一番効率が良いだろう。

下手に制御しようとすれば自軍の被害が大きくなるだけ。暴走? そんなことになるなら敵の陣地でそうなるようにすればいい。人間の願いってことだからろくなことにはならないわね。

そして……一人の人間の侵入を防げる国はない。まあ、平行世界のことはわからないけど――そこまで違いもないんじゃないかしら。技術の違いがあっても、どうせ人間が作るものである以上、そこまでの違いはないはず。

ま、いやな話は転換するに限る。

「へぇ。じゃ、事故ってのは? そう起きるものとは思えないけど。そんな危険物をほいほいばらまくなんて、戦争末期でもありえないわよ」

「まあな。ただ次元航行船が事故ることは、まあ稀によくあるって奴だ。はっきり言やあ珍しいけど、インパクトが強いからけっこうよくあるって思ったりする。まあ、一般人とは比べものにならないほどスクライア一族は利用するが、一度出会った以上は二回目はないかな」

「一生に一度、ねぇ。まあ確かに微妙な頻度ね。でも、それがバラまかれるなんて……それはないでしょう」

「そうだ。次元航行船は様々な災害に出会って故障することがある。それは避けられない。なにせ、エースを殺すのは戦いよりも事故だとか言われてるくらいだからな。まあ、次元震に巻き込まれて生存が絶望視されてたにも関わらず、自力で戻ってきた化け物じみたやつもいるけどな。うちの長老なんか5回も遭難したとか自慢しやがるし」

「ふーん。まあ、別世界の話ならどうでもいいわ。あんたが言いたいのは次元航行船は壊れることがあっても、むしろ壊れるからこそ回収不能なんて事態にはならないようにしてるってことでしょ」

そうだ。危険物には特別な配慮がなされる。言うまでもないことだけど、敵に殺されるのと味方の不手際で死ぬのとは違う。

人は恐怖でしたがわせられるものではない。それで従う人間は同志ではないし、もちろん部下でもない。ただの奴隷だ。

だからこそ。

「いくら馬鹿でも、実際に起こった事故には対策をするさ。けれど、対策がしてあるとはいっても、そこはそれ。人為的なものなら――な」

「ふぅん。で、どうしたいの? そいつらと戦う?」

自然現象ならともかく、同じ人間を相手にするならイタチごっこにしかならない。対策されても、さらにその対策をすればいい。

そして、この場合はその対策をした連中がいる。

「いやいや。それは管理局の仕事だ。こっちは文句言われない程度に働いときゃいい。それこそ、あちらさんが強敵なら集めたジュエルシードを全部やっちまったって構わない」

「じゃ、なんで集めるのよ?」

「集めるってより、予防が目的だ。暴走したら、そいつを封印するのが厄災を持ち込んだ俺の責任ってやつだろう」

そりゃそうよね。あの黒いのが2体も3体も現れたらなんて考えると、寒気がする。結構な数の死傷者が出るだろう。

「ふぅん。じゃあ、私がやるのは暴走体の感知、封印とできたら落ちているジュエルシードの確保ね」

……一人も犠牲を出さないために。つまるところ、それだけが問題なのだ。

「悪いな」

「いいわよ。そのくらい」

ここにはわたしの友達もいる。それに――悲劇はもう見たくない。そんなふうに思えるのは女神のおかげかな? ま、本来はにっくき恋敵のはずだったんだけど。

「お前、変わったか?」

「前とは違うわたしはきらい?」

「――いいや。人間の成長は見ていて気持ちがいい」

「そ。よかった」

「……お前、そんな顔で笑うなよ」

どきっとしちまったじゃねえか。

「それじゃ、あなたが属しているっていうスクライア一族について話してくれないかしら? ……ふわ」

あくびが出てしまった。……恥ずかしい。

「そいつは次の機会にしとけ。ガキはおねむの時間だ」

「ガキじゃないって言いたいけど、ま――そうね。もう限界だわ」

わたしは向かい合っていたユーノ君を抱いて寝床に潜り込む。

「おい、離せ。なんのつもりだ」

胸の中でばたばたと暴れる。――面白い顔。

「へ? だから――寝るつもりよ」

「なら手を離せよ。俺には座布団1枚くれるだけでいいから」

どんなに暴れたって逃がさないわよ。

「わたしの部屋にはそんなものありませーん」

ナニイッテルノカワカラナイナー?

「なら、そこに落ちてる妙に少女趣味な座布団はなんなんだよ」

あれはクッションです。というわけで、ユーノ君はわたしと一緒にベッドで寝るの。

「お休み~ユーノ君。夢でも会えたらいいわね?」

「さすがにそれはゴメンだ。っていい加減離せ。おい――寝るなよ? 寝るなら手を放してからに……おい、寝るな」

声が聞こえるけど、ごめんなさい。もう限界みたい。

「…………すー」

 

 

 

「なのはー。起きなさーい」

ママの声が聞こえる。

「――ふにゃ。おはようございますー」

目をしばしば。ああ、朝起きるの辛い。昼過ぎまでごろごろしてたい。

「ユーノ君」

胸に温かさを感じて下に目をやると映るのはフェレットの姿。

ああ、本当にロートスは動物に転生したのね。でも、大丈夫。たとえ、姿がこんなんになってもわたしはあなたを愛して見せるわ。ロートス。

「……うぐぅ」

起きちゃった。腕に力を入れすぎたみたいね。

なんかきょろきょろしてるのが可愛いから頬ずりしちゃおーっと。

「おい馬鹿。やめろ――俺を窒息させる気か。つか、最悪の眼ざめだぞマジで。なんで寝起きにまな板にすりおろされなきゃなんないんだよ」

ぼやくユーノ君を落ちるまで絞めておいてあげた。




KKKで夜刀は蓮とロートスの高次元融合体なのですが、ここではその設定は取り上げません。なかったことにします。
そうしないと話の進め方をどうしてよいのか想像もつかない……
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