TSウイルスが流行った世界で俺はオペレーターをやる   作:蓮太郎

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第六話 お金の計算は終わらない③

 

『おーほっほっほっ!散りなさい虫ケラ!』

 

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!もうちょっと考えて撃て!?」

 

 俺ことミーシャことミハエルがドローンで探知したのは無視ではなくモンスターだった。

 

 どこぞの世紀末のようなゴキブリが巨大化し、人間を頭から丸かじり出来るサイズになっていたのは少々予想外だった。

 

 だが、『ローリング・ローン』は止まらない。

 

 女の子らしく気持ち悪い虫に叫ぶかと思ったが、明らかに狂喜しながらガトリング砲をぶっぱしている。

 

 もちろんだが弾薬費はタダではなく自費だ。特にガトリング砲なんて無限に弾薬費がかかる。

 

 逆に弾薬がこの世界から尽きないのかと言われると、本当に尽きないのが恐ろしいところ。

 

 弾薬には魔力が込められた特殊な鉱石を使用しており、それを火薬の代わりにしている。

 

 しかも、その特殊な鉱石は勝手に鉱山に湧き続けるので供給が減ることはあまり無い。

 

 記録上では一時期不作になった事もあるらしいが、それも数年で回復しているので生産力は異常といえる。

 

 だから画面越しに弾幕を張る馬鹿の弾丸で毎日困窮するのだ。

 

 ああ、あああ、溶ける溶けるお金が溶ける。

 

 大量生産できるとは言えど1発1000円分の価値がある。10発打てば1万、100発で10万、さらに倍倍に弾薬が消費させられていく。

 

 いくら特殊依頼で金が入るとしてもこんなんじゃ金は飛んでいくに決まってるだろ!

 

 俺でもこんな事しないぞ!弾薬費と修繕費が他人持ちならやるけど自腹を切るなら絶対にしない!

 

「遺跡が破壊される!まだ今は耐えられてるけどこれ以上弾幕を張るのはまずい!」

 

『だったらもう少し耐えられますわ!なにせ、私はスペシャリストですの!』

 

「古代遺跡破壊のスペシャリストってか!?馬鹿!この馬鹿!」

 

 低俗な罵倒しか思いつかない俺を許してくれ、マジで他に言うことがない。

 

 ここ最近はAIに軽く口で反逆するくらいしかできていないから慣れていないのが一番の原因だ。

 

 どうやって止めようか頭を悩ませている最中でも彼女は撃つことを止めない。

 

 よりによってクソデカゴキブリの大群が相手なのも相まって、大量に湧いた奴らを無限に駆除するためには火力が必要だったということで相性自体はそこまで悪くないのが余計に止めづらい。

 

 これが単発のライフル持ちの『ユグドル』だったら逃げに徹していただろう。

 

 『ローリング・ローン』が駆除できる相手だからこそ強く言えない。しかし、このままでは古代遺跡が壊れるのもまた事実。

 

「ちっ、数は減っていってる!お前の懐と一緒にな!」

 

『もっともってきなさい!私はまだ収まりませんわよ!』

 

「余計に借金負うことになるんだろうが!!!」

 

 オペレーターが担当の報酬を赤字にすると評価に響く。何故なら赤字と言うのは弾薬費や修繕費、また弁償代が報酬を超えるほどの金額になってしまうことを指しているからだ。

 

 確かに赤字をする戦い方をした『リーファーズ』の責任であることは間違いない。そして赤字になるのを止められなかった止められなかったという想定の甘さが評価される。

 

 AIの野郎、まさかこれを見越して彼女のオペレーターにつかせたな!?

 

 そもそも外界と接触を快く思っていなかったAIが『ドロップ・アップル』との交流を見て、やっていけそうだから問題児を押し付け評価を下げようって訳か!

 

 評価に傷が付けば仕事がやりづらくなる、そして孤立させて仕事を辞めさせるつもりだ。

 

 AIは単に支配したいだけではあるが、適材適所を極めている…………らしい。

 

 AIから直接聞いただけで実態は分からないのだが裏で暗躍して素質に応じて道を選ばれているらしい。

 

 かなり強引に本人の意思関係なく暗躍しているので悪であることは間違いない。

 

 人権や感情を気軽に無視するのは機械らしい。

 

『おーほっほっほ!もっとよこしなさいなー!』

 

 現実逃避はこれくらいにして、流石に止めなければいけないな。

 

「『ローリング・ローン』、さっきから言っていたが殲滅は先ほど終わった。もうトリガーから指を離してくれ」

 

『まだ終わってませんわよ!』

 

「終わったつってんだろうが!前も後ろも右も左も生体反応無し!帰って叱られに行くぞ!」

 

『何でですの!?やるべきことをやったまでですわ!』

 

「やり過ぎだって言ってんだよ!!!」

 

 納得のダメダメさ。こりゃ、どんなオペレーターもこいつ組みたくなくなるわけだ。

 

 古代遺跡も一部破損の損害賠償確定。俺はともかく『ローリング・ローン』が今回の報奨金でどれだけ賄えるか。

 

 被害額と弾薬費を計算しないと、報告書をまとめるのが大変だぞこれは…………

 

 何とか首にならないように頑張らないと、AIに負けるな俺、指摘があっても怖くない!修正すればいい話!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはあ、仕事終わりのビールは最高ですわ!」

 

「ローン、それ飲むなら借金返して?」

 

「まだ期限は先ですわ」

 

 とあるバーにて、『ローリング・ローン』はビールを頼んでいた。

 

 普段なら借家で、水で薄めたワインをちびちび飲むくらいに酒を嗜むのだが、普段の倍の報酬金が入ったため久しぶりにビールを飲んでいると言う訳である。

 

 古代遺跡の一部を破壊したとはいえ、何故プラスになったのかと言うと大量の虫型モンスターを駆除したことで追加の報酬と相殺する形となった。

 

 そのため最初の報酬には一切減額はなく、奇跡的にそのまま受け取ることに成功したのだ。

 

 利子を払い、さらに借金返済も少し返済で来た上に自由に使える小遣いも得たのでこうして飲んでいるという訳である。

 

「それ飲むのなら前に食事代が足りなくて貸した分返してよ」

 

「5000までなら出せますわ」

 

「1000よ。驚いた、本当にちょっとだけ巻き返したのね」

 

「これで1億の借金も残り9900万ですわ!」

 

「めっちゃ遠いじゃん」

 

 そういいつつ彼女の隣に金を貸した女が座った。

 

「一体どんな方法でそんなに金稼げたの?ついに体を売った?」

 

「きれいな体ですわよ!一週間ぶりにお風呂にも入りましたのに」

 

「うわ汚」

 

 少しでも貸した金を返してもらおうと近寄った女性はローンの入浴事情を聴いて引いた。

 

 他人もせめて二日から三日くらいのペースで入浴はしているが、ローンはもっと入浴していないどころか本当に清潔なのかと言う疑問も残っている。

 

 本当に元令嬢なのかという疑問は今は置いておき、ぐびぐびと令嬢らしからぬ飲み方でビールを煽っていたローンが口を開く。

 

「まあ、私がやった事はいつも通り。ただ、オペレーターの育成目的で私を合わせたのでしょうね」

 

「新人オペレーターが付いたの?」

 

「ええ、初めて聞く声でしたわ。アイコンも無しで、しかも男声で一切の違和感がなかったですの」

 

「完全匿名って訳ね。どこかの企業が開発にいそしんでるのかしら」

 

「ミハエルと名乗ってましたわよ?」

 

「偽名ね、覚えておくわ」

 

 いらない訂正を貰った女性だが、ここ最近のオペレーター事情を考えてみる。

 

 最近は人員不足で『リーファーズ』の募集は目立つがオペレーターの募集はあまり見ない。

 

 特に企業専属のオペレーターの募集が最近あったと聞いていない。

 

 そこで突如現れた新人オペレーター。声も伝説上でしか存在しなくなった男性ときたら企業の極秘開発に参加したものだと考えられた。

 

「ただ…………あまり大きな声で言えませんけれど、素性を国家機密と言ってましたわ」

 

「大ぼらねぇ」

 

「いえ、何か口走ろうとした際に後ろでサイレンが鳴っていたのが聞こえたのですの」

 

「…………ガチガチに管理されてる感じ?」

 

「ガチガチでしたわ」

 

 ローンは良くも悪くも素直な人間性をしている。嘘をつく際はかなり動揺するので見破りやすいのだが、重大な嘘をつくことは絶対にない。

 

 むしろ詐欺にあいやすい方であり、勘当されたとはいえ血筋は貴族であるため密かに監視は付いている。

 

 彼女が騙され、詐欺にあい弱みに付け込もうとするならば裏から消され、ローンは知らぬ間に騙されたことに気づかずいつもの日常を過ごすという暗黙の了解に近いものが出来上がっている。

 

 つまり、本当に国家機密を名乗る人物がわざわざオペレーターを名乗り出たという状況が生成される。

 

 そんな話は聞いたことがない、彼女は、情報屋は初めて聞いた話を聞き出そうとする。

 

「どんな奴だった?自然な男声の感想とか」

 

「そうですわねぇ、話のノリも結構聞いてくれる方でしたわ」

 

 酒も入ったローンは口が軽くなり見たり聞いたりしたことをべらべらと喋っていく。

 

 その情報はメモされて、巡り巡って金になる。

 

 いずれ出回るにしても新鮮なうちに売りさばいたら金にはなる。

 

 前回の飯代は今回の情報で少し負けておいてやろうと情報屋は考えた。

 

 ただ一つ、彼女は失念していたことがある。

 

 『ローリング・ローン』は戦闘力はあっても野心や情報戦はからっきしである。

 

 故に見逃されていただけに過ぎないことを。

 

 ミハエルと名乗った者の背後に大きな機械の影が存在していることを。

 

 それを知るのはもう少し先のことである。

 





~この世界の生活感~

 ここでは割と現代的であるが、それは街に限った話である。
 辺境になるとモンスターが跋扈しているため原始的な生活をする集落が存在しており、そこの機械は兵器のみでそれ以外は自然と魔法で補っている。
 やはり『外』と『中』の落差が激しく、つける職も相当厳選されている。
 類稀なる素質を持った人間も存在し、大抵はAIが見つけた後に恩に付け込んで直属と言う奴隷に近い存在にされる。
 ただし、辛かった日常から駆け上がった直属の人間は忙しくも幸せそうに見える。
 いつ、どのタイミングで切り捨てられるかも知らずに。


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