怪文書置き場 作:ジャーム先輩
「……………………つまり、一連の事件は全て嘘で、ただの壮大な茶番だったと?」
「茶番だなんて失礼ね。あなたたちを成長させるための立派な研修じゃない」
「じゃ、じゃあ、ボクたちを襲って来たあのオーヴァードたちは……」
「ウチのエージェント。大変だったのよ? あなた達と顔を合わせないようにこの七日間は支部に入らないように命令してたんだから。ああ、ちなみにあの人質たちはウチの職員ね」
「「………………………………」」
対峙していたオーヴァード達が「いやあビビったっす」「将来有望だな」「遥さあ、手を出すの遅くない!?」「私なんて彼と撃ち合いさせられてたのよ」などと和気あいあいと話し出し、混乱の極地にいた二人は神凪とアネモネによって名取支部の支部長室まで連れてこられ、そこで一連の説明を受けていた。
曰く、今回の事件は全て狂言であり、名取市の大規模破壊を目論むギルドなどいないとのこと。仮面を着けた謎のオーヴァードは名取支部のエージェント・チルドレンであり、神凪とアネモネもグルだったという。
首謀者であるメビウスは「罪悪感なんて一ミリも感じてませんが?」という顔。
アネモネにいたっては欠伸までしており、申し訳なさそうにしているのは神凪だけだった。
「………………………………ぼ、」
「?」
「ボクの気持ちを返してくださいーーーーー!!!!!」
「受取済よ。返せないわね」と、メビウスは意地悪に微笑んだ。
▼▼▼
「じゃあ、僕たちはここまでですね」
名取市の駅。改札口の前で神凪がそう告げた。彼の横にはアネモネが立っている。
研修は終わり、あさひと天本は琵琶野市へと帰る。その見送りだった。
改札を通ろうとして、天本が足を止める。そしてアネモネの方へ歩いてきた。
「あァ? ンだよ、今更文句か」
「いいえ? もちろんこちらも言いたいことは山程ありますが。─────お世話になりました」
そう言って彼女は頭を下げた。
アネモネがほんの少し目を開く。
「……ハッ。多少マシな面になったンじゃねェか?」
「それはどうも。次に会うときはあなたの言葉使いも多少マシになっていることを願います」
「神凪さんも、本当にありがとうございました!」
「いえいえ。もう支部で十分聞きましたよ。ほら、もうすぐ列車の時間でしょう」
「あっ、本当だ! 玲泉さん、行きましょう!」
今度こそ二人が改札口へ歩いていく。
その背中に神凪が悪戯っぽく声をかけた。
「よかったらまた来てください。歓迎しますよ」
振り返った二人は、とびきりの笑顔でこう答えた。
「「二度とごめんです!」」