怪文書置き場 作:ジャーム先輩
『
彼らが政治的な暗闘や情報収集の任務に回されることはない。
強化兵に唯一求められるのは、ただ純粋な戦闘能力である。
つまりはFHの中で戦闘を領分とする精鋭。
それが12人。
そして、その先頭に立つ“マスターレイス”。
悪魔が率いる強化兵の集団。見る者が見れば、出くわした末路が死以外に無いことを理解するだろう。
一つの支部すら容易に陥とせる部隊が─────ぴたりとその足を止めていた。
「おーおーおーおー、雁首揃えてゾロゾロと。どうしたんだよ観光かァ?」
「任務帰りの散歩で『偶然』出くわすなんて。今日は運が無いですね、僕たち」
彼らの行く先を阻むように立っていたのは、たった二人のオーヴァードだった。
たった二人のオーヴァードを前に、彼らは静止を余儀なくされていた。
「…………《冴える
「あ? どっかで会ッたか? まァ手間が省けて助かるわ」
「名取の二枚看板がこんなところで何の用だ」
「んー、用というか……」
マスターレイスが口火を切った。
それに隠れて一人の強化兵が腰の獲物へ指を伸ば
「─────ひゅ」
止まる。
視線すら向けられてはいなかった。
ただ、ほんの僅か。立ちはだかるオーヴァードの意識がほんの微かに向けられて、その強化兵は幻視してしまったのだ。
奴らの“敵”となった瞬間、己を待ち受ける末路を。
「………………………………」
背後の部下が硬直したのを感じ取って、マスターレイスは舌を打った。
彼の胸中も知らず相手は穏やかに話してくる。
「気になっただけですよ。そんなに急いでどこに行くのかなって」
「あーコイツの言う通りだ。随分な頭数をマスターレイス様が率いてるとこなンざ、たまたま見ちまッたら気になンだろ」
「………………………………」
指摘する気さえ起きなかった。
名取とは地方すら異なるこの場所で「たまたま」出くわしただと? 悪い冗談と言われた方がまだマシだった。
だがこの化物どもはその言い分を通そうとしているのだ。
和やかに話しながら、その身の内に悍ましい程のレネゲイドを溜め込んで。
「目的なんてこれっぽっちも知りませんけど、見過ごすわけにもいかないでしょう?」
「つーわけだ。そこから一歩も動くなよ─────死にたくねェならな」
たぶんこの話で一番貧乏くじを引いた人たち