怪文書置き場   作:ジャーム先輩

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劇場版ダブルクロス⑧ Side Extra

 

 

強化兵(バーサーカー)』とは、FHにおける一種の役職だ。

彼らが政治的な暗闘や情報収集の任務に回されることはない。

強化兵に唯一求められるのは、ただ純粋な戦闘能力である。

 

つまりはFHの中で戦闘を領分とする精鋭。

異名持ち(ネームド)への対応と同じく、UGNは強化兵が出た場合には3人以上のエージェントによる対処を推奨している。

 

それが12人。

そして、その先頭に立つ“マスターレイス”。

 

悪魔が率いる強化兵の集団。見る者が見れば、出くわした末路が死以外に無いことを理解するだろう。

一つの支部すら容易に陥とせる部隊が─────ぴたりとその足を止めていた。

 

 

「おーおーおーおー、雁首揃えてゾロゾロと。どうしたんだよ観光かァ?」

「任務帰りの散歩で『偶然』出くわすなんて。今日は運が無いですね、僕たち」

 

 

彼らの行く先を阻むように立っていたのは、たった二人のオーヴァードだった。

たった二人のオーヴァードを前に、彼らは静止を余儀なくされていた。

 

「…………《冴える黒蛇(くろへび)》、《皇帝(エンペラー)》」

「あ? どっかで会ッたか? まァ手間が省けて助かるわ」

「名取の二枚看板がこんなところで何の用だ」

「んー、用というか……」

 

マスターレイスが口火を切った。

それに隠れて一人の強化兵が腰の獲物へ指を伸ば

「─────ひゅ」

止まる。

 

視線すら向けられてはいなかった。

ただ、ほんの僅か。立ちはだかるオーヴァードの意識がほんの微かに向けられて、その強化兵は幻視してしまったのだ。

 

奴らの“敵”となった瞬間、己を待ち受ける末路を。

 

「………………………………」

背後の部下が硬直したのを感じ取って、マスターレイスは舌を打った。

彼の胸中も知らず相手は穏やかに話してくる。

 

「気になっただけですよ。そんなに急いでどこに行くのかなって」

「あーコイツの言う通りだ。随分な頭数をマスターレイス様が率いてるとこなンざ、たまたま見ちまッたら気になンだろ」

「………………………………」

 

指摘する気さえ起きなかった。

名取とは地方すら異なるこの場所で「たまたま」出くわしただと? 悪い冗談と言われた方がまだマシだった。

 

だがこの化物どもはその言い分を通そうとしているのだ。

和やかに話しながら、その身の内に悍ましい程のレネゲイドを溜め込んで。

 

 

「目的なんてこれっぽっちも知りませんけど、見過ごすわけにもいかないでしょう?」

「つーわけだ。そこから一歩も動くなよ─────死にたくねェならな」

 

 

 





たぶんこの話で一番貧乏くじを引いた人たち
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