怪文書置き場   作:ジャーム先輩

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劇場版ダブルクロス⑩ Ending

 

それから───────────────

 

 

 

迷宮の最奥に辿り着いた四人は、接続が切れ過負荷で倒れた九十九と慌てふためくなのを連れて、崩れる建物からなんとか脱出した。

 

『夢の卵』奪還の報告を受け『天の火』はギリギリで停止し、幸いなことに住民の避難へ移っていた協力者たちの働きは杞憂となった。

 

事態が解決し最大の焦点となったのは、命令違反を問われかねない名取支部だったが─────。

 

「お咎めなし、か。随分と上手くいったモンだな」

「そこは日本支部長様のおかげね。結果を見ればUGN・民間問わず被害は無し、最低限の言い訳もあるとなれば、《リヴァイアサン》にとって無罪を勝ち取るのは難しくないということでしょう。中枢評議会の穏健派も今回の働きを支持してくれたようだしね」

「まーアイツには色々貸しがあったからな。ここらで一個くらい返してもらッても損は無ェだろ」

 

立ち入り禁止を言い渡した支部の構成員が該当地区に侵入したということでアッシュ・レドリックを始めとする急進派は処分を主張したようだが、穏健派と日本支部長である霧谷雄吾によってそれは退けられた。

世はなべてこともなし、である。

 

「正直、一番心配してたのは『夢の卵』の情報がFHに漏れてることだったんですけど」

「まさか『夢の卵』の存在を身内にも伝えていなかったとはね。よほど支配欲の強いジャームだったのかしら」

「それは知らねェが、少なくともあのマスターレイスが『夢の卵』のことを知らなかったことは確実だ。俺もコイツも確かめた」

「レネゲイドを強化する方法があるって呼びつけられたらしいですね。あのポジションの人が知らなかったなら、広まってないと見ていいと思います」

 

UGN名取支部の支部長室。

部屋の主と二人の少年がそんな話を交わしていた。

 

そこに混じる幼い声。

 

「博士。本部への報告書についてですが、当人達から聞かなければならないことがまた出てきまして…………」

「ああ、後にしなさい。今は誰もいないから」

「任務が入っていましたか?」

 

首を傾げる助手にクスクスと笑って、メビウスは窓の外を見た。

 

「立役者さんたちは別れの挨拶をしている頃よ」

 

 

▼▼▼

 

 

UGN日本支部。

広々とした玄関口で、一人の少女と五人の少年少女が向かい合っていた。

 

「皆様、護送の協力感謝いたします。以降はこちらで引き継ぎいたしますので」

「ああ、いえ。こちらが勝手に申し出たことですので」

 

少女の後ろに立つスタッフの一人が頭を下げ、それに豊国が応じた。

その間も彼女たちの間にはどこか悲し気な空気が漂っている。

 

「…………本当に、行っちゃうんだね」

「……こばと」

「ごめんなさい、わかってます。わかってるんですけど…………寂しくて」

「…………うん」

 

こばとと凛は共に頷いた。

 

「『湿っぽいなあ。今生の別れってわけでもないだろうに』」

「……そういう君だってテンションが低いじゃないか」

「『……これは空気を読んでるんだよ』」

「……じゃあ、私も空気を読んでおこうかな」

 

球磨川も豊国も、声のトーンが落ちていた。

 

そして九十九は。

 

「あ……………………えっと……………………」

正面に立ち、何を言えばいいか狼狽していた。

 

別段、もう二度と会えないというわけではない。

だが『夢の卵』という特別性、機密保持の観点から見れば、今までのように頻繁には会えないだろうということもわかっていた。

 

人によっては寂しさだろう。本当に大丈夫なのかという心配。なのは平気なのかという不安。様々な感情がないまぜになって沈黙が形成されていた。

 

「─────の!」

そして、俯いていた少女が顔を上げた。

 

「え」

小さな体がこばとに抱き着く。

自分から抱き着いてきたということに気付いて、こばとは目を丸くした。

 

「おっ」

続いて凛に。

 

「……はは」

豊国。

 

「『やれやれ』」

球磨川。

 

「…………そっか」

最後に九十九。

 

全員たっぷり10秒抱きしめて、なのは五人に向き直った。

 

「ありがとうなの、みんな」

 

─────『いつか絶対、お姉ちゃんたちの手を握って、ありがとうって言わせてもらうの!』

 

あの日、遊園地で少女が語った夢。

 

触れられることを恐れていた少女は、今こんなにも晴れやかな笑顔を浮かべている。

 

「あの日、助けてくれてありがとうなの。あの時、なのに触ってくれてありがとうなの。あの場所に、助けに来てくれてありがとうなの」

 

雨の降る路地裏を逃げていた少女は、五人のオーヴァードに手を取られ、青天の下に立っている。

 

「九十九お姉ちゃんも、こばとお姉ちゃんも、氷華お姉ちゃんも、凛お兄ちゃんも、禊お兄ちゃんも…………っ゛」

 

例えその眼から大粒の涙が流れ落ちていても。

 

 

「みんな……っ、みんなみんなっ゛、大好きなの…………!」

 

 

その笑顔は、何よりも価値のある報酬だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダブルクロスThe 3rd Edition『虹の夢の果て』

                  ~fin

 





おしまい

ジャンプのアニオリ映画感が出せていたら幸いです
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