怪文書置き場 作:ジャーム先輩
「さて。それじゃあ今日の研修……の前に、今後の予定をお伝えしますね」
研修二日目。午前9時。
第一訓練室にやってきたあさひと天本に神凪が一枚ずつ紙を手渡した。
「今回の研修では、お二人に名取支部エージェントの業務を一通り体験してもらうことになっています。ということで、今日……2日目と3日目は能力訓練、4日目と5日目は調査任務の同行、6日目と7日目は戦闘任務に同行してもらいます」
渡された紙面には、神凪が言ったとおりの予定と軽い説明が書かれている。
「任務って書いてありますけど、ボク達のために用意してくれたんですか? ありがとうございます!」
「? いえ、たぶん何かしら任務が発生するのでそれに同行してもらう予定ですよ」
「え?」
「え?」
首を傾げ合う二人をよそに、天本が部屋の中を見回して尋ねた。
「能力の制御・発達訓練ということですが、これはもしかして神凪さんが担当を?」
「はい。一時期は玉野さんって方がこの支部で教官を務めていたんですけど、別の施設に移ってしまったので今は教官がいないんです。なので今回は僕がお二人の訓練を担当します。……とは言っても、昨日の測定結果を見た感じ鳩原さんも天本さんも十分能力を使いこなせてますし、あんまり訓練するようなことも無いんですけどね」
そう言って神凪が苦笑した。
「今日と明日の訓練に限らず、調査任務と戦闘任務でもあまり教えることは無いと思います。どちらかというと『この支部ではこんなやり方をしてますよ』っていうのをわかってもらうのが今回の研修の目的ですね」
「というわけで」と神凪が指を鳴らす。
次の瞬間、彼の背後にズラリと大量の機械人形が現れた。
「ええ!? 何ですかこれ!?」
「ボ……とある人が作った訓練用の機械人形です。エージェントやチルドレン同士で訓練することも多いんですけど、今は人がいないので代わりにこれを使います。鳩原さん、試しに近づいてもらえますか?」
「は、はい」
おそるおそる、端にあった機械人形へあさひが近づく。
「あ、こうして見るとけっこう可愛いかも…………?」
近寄って見ると少し印象が変わった。
表面は金属質ながらも滑らかでよく磨かれている。目と口があるだけの顔もどこか穏やかな表情を浮かべているように見え、腹部には丸やハートの模様が描かれていた。
遠目から見ると無機質な機械だが、こうして近づけば愛嬌のある人形に見える。
『虹彩認証完了。コンニチハ、《魔笛》様』
「わっ。こ、こんにちは」
人形が動きあさひの顔を見るとそんな音声を発し、ペコリと頭を下げてきた。つられてあさひも頭を下げる。
爆発音が響き、人形の頭部が撃ち出された。
「わああ!?!?」
反射的に重力場を展開する。
当たる直前で止められた頭部がそのまま爆発した。
「なんで!?!?」
心からの叫びを聞き届ける者はいなく、ガションガションと周りの機械人形があさひへ近づいてくる。
「そういう感じで襲ってきます。近接戦モードに設定してあるので、まずは10分耐えてみましょう」
「これ作った人悪趣味すぎますよ!!!」
▼▼▼
あさひが機械の攻撃を防ぎ、時間が来れば交代して今度は天本が機械を撃ち抜く。
慣れてくれば数を増やし、負荷を上げていく。
そんな光景を、2階からじっと見ている者がいた。
「…………チッ」
二人の訓練を見終え、気付かれることなく部屋を後にする。
その顔は不機嫌そうに歪んでいた。