「何っ、例の新型戦艦がザフトの追撃艦を正面から突破しただとっ!?」
アルテミスのガルシア司令は予定が崩れてしまったとしていた。大西洋連邦の外務次官を遠回しに人質にしたが、実験動物扱いなコーディネーターすら帰って来ない、実を言うとミラージューフレームの性能を知らず。カナードがあくまでも『失敗作』と見下していたからこその誤算である。
追撃を掛けようにもアルテミス内の戦力では外にいるザフトの部隊を突破は出来ない、まんまと内情を知られている存在を野へ放ったようなものだ。加えて、力関係では上の外務次官を軟禁してしまったような状況、対処に窮した。
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「正面から数分もたなかっただと?」
イザーク達を乗せた艦と合流しようとしたクルーゼはヴェサリウスで報告を聞いた。正直、勝算は低いと踏んでいたが予想外な早さだとして二つの危機感を持った。
一つは、イザーク達の乗った艦の背後にあるのはゼルマン艦長を始めとしたローラシア級戦艦ガモフの生き残りであるクルーが乗り込んだ艦だが、違う部隊の艦が中破したものを回収して修理が済んでいる程度であり後方支援が精々な艦である事。
もう一つは、航路から予想する足つきの行き先はまさか?とするものだが、その結果に起き得る事。
「いかん!アデス、ゼルマン艦長の救援に向かうぞ!彼の性格では、刺し違えてでも足つきを止めようとするぞ!始めた私が言う資格は無いが中立とはいえコロニーを崩壊させてしまったのに取り逃がした事を気にしているハズだ!」
「ですが、幾らヴェサリウスでも間に合うかはギリギリです・・・・それに、隊長のシグーもまだ調整が」
「通信が繋がれば呼び止められる可能性くらいはあるだろう!友軍を見捨てる気かっ!」
「りょ、了解です。ヴェサリウス前進!」
クルーゼの指示に従うクルー達であるが、場違いな声色で意見を述べる者もいた。
「隊長、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンの救助は?機体が行動不能のようですが?」
「それは近くの艦艇にやらせろ!時間的には似たようなものだ!」
「しかし、あの二人は・・・・」
「『現評議会委員の身内』だからとでも言う気か?貴様、同胞の命より上役の息子達に構う方が大事だと言う気かっ!」
懸念の内容を先に言い当てられるのは珍しくないクルーゼからの叱責内容は尤もだが、ある懸念があるのだ。クルーゼもそれを理解しているが、元々そんなのを気にするような男ではない。
「隊長、恐れながら・・・・特にジュール議員は身内に甘いらしく、このような構図は隊長の身の安全が・・・・」
「好きにすれば良い!そんな事より私には部下達の命を救う義務がある!既に撃破されて数人脱出してるかどうかかもしれん!だが、私には其方が大事なのだ!イザーク達もそんな事で不平不満を言うようなら、私自らが生身で宇宙に叩き出してくれよう!」
部下達は目を丸くしていた。理知的なクルーゼが感情丸出しになる理由はあるのだが、本人にすら説明しようがないのでそのまま本人にすら意図せぬ流れとなる。
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クルーゼの懸念は当たった。
後詰めが精々なローラシア級は側面からアークエンジェルと衝突をするルートで三機のジンを初手で出してはいたが?
「は、速過ぎる!」
予備知識が無いとは言え、ミラージュー・フレームの動きに追いていけずに二機が撃破されて、接近出来た一機はエールストライカーを装備したストライクに撃破されてしまう。その光景を見たゼルマンは?
「総員退艦!このまま逃がす訳にはいかん!刺し違えてでも足つきを止める!私は艦のコントロールの為に残る!」
「艦長!クルーゼ隊長からの緊急通信です!深入りせずに此方に合流をせよと!」
「そう甘くは無いさ、すれ違い様か出撃してるMSが攻撃してくるハズだ」
「追伸です!『生き延びたクルー達を連れて私の元へ帰って来い、命令違反は許さん』だそうです」
「・・・・意外と、クルーゼ隊長も甘いようで」
距離を詰めなかったのが幸いして、ゼルマン達はアークエンジェルに見逃されてクルーゼに合流した。
暫くして合流して来たヴェサリウスに出頭したゼルマンをクルーゼは労った。
「・・・・救いに来て頂いてありがとうございます。むざむざジン3機を失いました」
「気にするな・・・・貴重な仕官達に無駄死にをされてはプラントが救われんからな。私とて足つきが短時間で先行した艦を突破する等は想定外だった。パイロット達を死なせた事を気にするなら雪辱を挑む事を考えろ」
「はっ・・・・」
実を言うと、打算が多いがクルーゼには戸惑いがあった。
(なんだ?・・・・この私が?ゼルマン艦長達が無事なのを安心したのか?・・・・何故だ?・・・・あの時に『レイ』を助けたりしたから、らしくない事を考え始めたか?・・・・いや、そんなハズは無い・・・・メンデルの件はかえって都合が良い理由はある。それに、駒が多いに越した事は無いからのハズ)
クルーゼに不幸なのはヘリオポリスでのムウとの件で良く言えば猛将のように映る熱を見せた時の周囲の目に気付かない事。彼はあくまで私情の為に動いているが故に目に見えない部分の結果論は見落としていたのだ・・・・自分を慕う人間が皆無なワケではない事に。
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(・・・・やっぱり、しくじったら死ぬな)
「嬢ちゃん、お疲れ!先に休憩に入れって艦長からお達しだぜ!」
「どうも」
帰還してマードックさんから言われた通りにする俺は正直冷や汗をかいてた。ストライクのエールを軽く凌ぐ推力を瞬時に出せるのは良いが、機体の呼吸を把握し損なうと簡単にコントロールを誤って自滅するだろう・・・・そう感じた瞬間に例の感覚が走って、上手く行った流れ。
シャワー浴びて、部屋に戻るとラ・・・・いや、ミーアさんが何か注意深くしていた。それに気付かずにマユが抱き着いて来てるな。
「マユさんは、本当にリンさんが大好きなのですね?出撃している間も『まるで何が起きてるかわかっている』ようでしたわ」
「勘が良いですからね」
何が起きてるか、自分の知っている事で良ければ後で説明しますって目だな・・・・やっぱりアヤが付きまくった流れ・・・・あのカナードってのも何を考えて・・・・『あのメンデル』を逃げ場所に選んだのかやらだ。
意図も何も聞く余裕は無く、この艦はメンデルに行く前に『予定』ポイントを通過する事になった。
都合上でクルーゼさんが、富野小説版ガンダムのシャア程じゃないけど、誰だこいつ?みたいになった。