【時間を下さい】
バルトフェルドの呼び掛けに対するマリューの返答はこれだった。
弱気に過ぎるだろうが流石にアフリカ方面での最大の難敵と言える存在が白旗掲げて会談を申し込む等は予想外に過ぎるのだ。
『了解だ。我々もユニウス7の落下の影響でこうしているようなものだ。地球側の状況がまだわからないであろう貴官等の事情は察して余りあるからな、明晩また来る』
返されたのは此方に都合が良過ぎる対応、今は有り難い。反対すると思ったナタルはこのような展開には口を挟めなかったようだとした。流石にカナードですら決めかねていた時、ナタルが口を開いた。
「艦長、提案します。ミーア・キャンベルに相談してみては・・・・仲介役を頼むのも手かと」
コーディネーター側の人となりを知っているとしたら彼女が最適であろう、ニコルはやはり敵兵士であるので話すのは危険としてミーアの元にマリューとムウが出向いた。
「信用出来ます・・・・と思います。バルトフェルド隊長は掴み所が無いとされていますが、会談と見せかけての騙し討ち等をやるには実は不向きな御方と・・・・ラクス様の影武者をやる為の教育で聞いた事があります。しかし、私が仲介役をするのは危険かもしれません、バルトフェルド隊長がユニウスの追悼慰霊の裏に関わりが無い保証は無いので、姿を見せる訳にはいきません。それに申し訳ありませんが、私はやはり声が似ているだけで・・・・」
嘘だ。事前に知らされた事だが。
【バルトフェルド隊はプラント内の大半の市民がイメージするクライン派が多いのは知っている。彼の副官であるマーチン・ダコスタが密かにバルトフェルドをクライン派に誘っているのも調べている】
自分が仲介すれば上手く行く可能性は高いとしている。
【ラクス・クラインはそういう存在なのだ】
マリュー達はユニウスの追悼慰霊の件が判明していないのでとする部分に納得した。この場では直ぐに戦闘にならないだけ良しとして引き返した。
「マユさん・・・・」
「何で、あんな奴等と・・・・」
ラクスは部屋の隅で塞ぎ込んでるマユの暗い感情に向き合っていた。大好きな姉がどうなったかわからないのは耐え難く、ザフトがユニウス7の落下に関わっているとしたら。今すぐに復讐の刃を向けたいのだとしているのを見て取り、踏み込む事にした。
「貴女は先ずは何を感じてますか?」
「感じて?」
「はい、例えばリンさんについて」
「直ぐに帰って来て欲しい・・・・けど、直ぐには帰って・・・・っ、えっ!?」
「直ぐには帰って来れない、ですか・・・・ではマユさんはお姉さんが帰って来るまでどうするのです?」
「心配させたお仕置きを考える」
「あらあら、それでは私から見てもマユさんに弱いリンさんがお仕置きを怖がって。帰って来てもマユさんの部屋の前でおろおろしてる姿をクルーの皆さんに見られて笑われてしまいますわね」
「わかります。肝心な時にちぐはぐする事がある姉ですから」
成功したと思った。咄嗟に死んでないと思えてしまって戸惑う辺りで確信した。実は二人のような関係は自分と違って真っ当な繋がりを持つと知っている。マユが生きていると感じるならリンは生きているのだ。
(尤も【わたくしの母は認めない事】でしょうね)
マユの姿に自分の求めたものを見たラクスは泣き出したマユを抱き締めてあげながら嫉妬の混じった涙を流していた。
そして、細かい事を整えての会談は明日の夜に外でやる事にした。安全の為にキラがストライクのコックピットにマリュー達を乗せて指定した場で赴くとした。
「二つ返事で了解してくれたわね、流石に剛胆な事・・・・」
「いえ、何かある可能性があります。例えば相手はこの艦にミラージュ・フレームが帰って来てない事を調べているとか・・・・」
「けどカナード君が明日には修理が完了するブリッツで控えてるから、留守を狙ってるかもな関連は何とかならんでもないぜ」
上官達のやり取りを聞いてるノイマンは内心で安堵していた。実はナタルの堅物振りからして良く言えば大らか故に周囲とは不仲が噂されるハルバートンの教え子であるマリューや其方寄りと知られていたムウとはギクシャクすると考えていたが、最初にマリューが一喝して以来は連携が取れている。平時であれば更に良かったのだがとしながら、今回の件が無事に済めば良いとして、マリューから一旦仮眠を取りに行くのを見送った。
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キラが操るストライクにマリューとムウが乗り込み、指定されたポイントに到着したが、見るとバルトフェルドと部下達がバクゥやその発展型から降りて身一つで出迎えの準備をしていた。
相手の度胸に呆れながらストライクのコックピットにキラを残して砂漠にマリューとムウが降り立った。
「ようこそ、私がアンドリュー・バルトフェルドだ」
お互いに敬礼と自己紹介をして後方にある簡単なテントに促された時、砂塵が舞った。
「っ・・・・」
「おや、女性だからにせよ砂漠は初めてでしたかな?」
「いえ、お構い無く」
「テント内に水があるから、先ずはうがいと手洗いをお奨めしましょう、今は戦闘中ではないのでエチケットとやらが重要です」
心理戦かもしれないと疑ったが、マリューは経験が無いだけだ。現にバルトフェルド隊の大半が砂漠の環境には最初顔をしかめていた。
そしてテントの中で、簡素なテーブルを挟んでの会談が始まる。
「では、早速に本題を。プラント本国が許可をしている事なのを前提に貴官等に停戦を申し込みたい」
いきなりだが、何故と戸惑ったところにパイロットスーツを着た女性が水出しのアイスコーヒーを普通のグラスに注いだものを運んで来てくれたが、警戒心が強まる。
「いきなりで戸惑ってるか。趣味で研究していたものだが、これを飲んで落ち着いて欲しい。よければ味の批評をしてもらえないかな?」
毒を入れてはいないかで飲むか否かとていたマリューだが、安全と判断したムウが一口飲んだ。
「うーん、ブレンドの釣り合いは良いようで酸味が強いようですな」
「そうかい?」
「ええ、薄めなアメリカンに馴染んでたからかもしれないが。水出しはホットよか酸味を抑える方が良いと聞いた事があります」
「成る程、それは参考になる」
マリューも飲んだが、自分にはそれ程の拘りが無かったので具体的な事は言えないが、例えば子供向きとは違う気がする。バルトフェルド同様に邪気が感じない味と感じた。
「では、本題についての理由説明だ。この画像を見てくれ」
「これはっ!」
「見ての通りで送り主は不明だが先日にクルーゼのシグーと君達の艦に搭載されてる白紫の機体が連携してユニウス破砕の邪魔する連中を爽快に倒した映像が幾つかの国やその所属部隊に流された。遠目だから即席のでイメージ画像交じりとまで正直に説明が添えているが、君達は間違いではないのを良く知っているだろう」
事実だ。ローエングリンを撃つために接近しながら映像を見ていたが、性能のお陰にしてもレベルが違いすぎた。規格外の機動性の前衛に当たり前に合わせてのオールレンジ攻撃を掛ける後衛、エネルギーの問題さえなければ十どころか百でもどうにもならなそうな殲滅能力、敵対していた者同士がいきなりにしては鮮やか過ぎる手腕だ。戦史上でこれを越える連携が今後出るか懐疑的になった。
「二人が殲滅したのはジンを魔改造してる機体だからプラントが危ういんだが、ジンだからプラントとは限らないだろう。この白紫を操るパイロットみたいなのがいるんじゃねえ、ブルーコスモスに加わるコーディネーターとかいる話もあるからな」
耳が痛い話だ。メンデルに逃げ込んでいた時に暫く頭を冷やして考えたからだが、例えばヘリオポリスにいたキラやリンのように地球で暮らしていたコーディネーターからしたらエイプリルフールの悲劇を機に何をしてもおかしくなく、撃破された部隊の人員はその類いなのではないかと考えてもいた。
【そもそも、プラントに移り住んだのは地球圏に住むコーディネーターの一割程なのだ】
次にアークエンジェルが大気圏に突入をしながらローエングリンを撃ち始める画像も映り始め出たが、途中からは安全上で撮影出来なかったようだ。
正直、キラが何故かリンを攻撃してしまった画像まで無いのは安心したが油断は出来ない。
「次にコレだ」
今度はユニウスに向かう前にブリッツと対戦中にデュエルにバスターにブリッツが乱入した時だ。目撃者がアークエンジェルでは確認されてない戦闘なので、先程のよりも驚きがあったが、内容が問題だ。
「いや、ザフト側の問題除いても白紫は凄いもんだ。この機体が地上でも宇宙と変わらない強さとして、問答無用に来たら誰も勝てないなと思ったよ」
ブリッツと対戦中に、恐らくユニウスの件を伝えているのかとされるミラージュ・フレームからの流れについては合っている。デュエルとバスターが参戦したが、後に真実とされた事で待つよう伝えたところを構わずに攻撃を始めてしまった二機、そしてブリッツに散弾が命中した後に自分達も見た光景だ。
それに対する怒りを現すように頭部と関節辺りが紫色のオーラに覆われたようになって、瞬く間にデュエルとバスターを撃破してしまう。機能不全を起こしたブリッツを回収して帰艦する姿を美麗字句で称える文で終わっている。
「まあ、そんなワケで波風立ちまくりなんだろう、内容が内容だからいきなり信じられなかったのは無理は無いが。デュエルとバスターにブリッツに乗ってたのはそれなりな立場だしね。だから私達は君達に会談を申し込んだ。遅れたが感謝を述べる!有り難う、お陰で地上の同胞が救われた」
立ち上がったバルトフェルドとテント内のザフト兵が自分達に感謝の意で頭を下げる。居心地が悪いと思った・・・・救われたと言っても多少被害を減らせただけだ。敵とは言え誠意と敬意を備える者達がいるのは稀なのだ。
「か、感謝は恐縮です・・・・では、停戦申し込みの理由は情勢と映像の流出からの混乱が理由で宜しいですか?」
「はい、改めて真っ先にあのような映像が来るのはおかしいし、国も政府も混乱状態ですからな、こんな状況では我々が率先して戦うのは意味が無い。クルーゼと白紫のパイロットの努力を無にするのも士気に関わります」
「クルーゼ・・・・そのクルーゼは?」
「拘束されました」
「えっ?」
「今回の件はクルーゼの独断でした。元々成り上がりで上からのウケが悪かったが、今回の件でユニウスを細かく砕く手助けをして地上の同胞を守る為とは言え、地球側と組んで邪魔する奴等を粉砕した英雄様って事にもなって更に波風立つワケですが、取り敢えずけじめはけじめですからな。今頃は査問の準備中とやらでしょう」
複雑だった。ヘリオポリスの件は中立のコロニーと組んだ地球側にも非があるし、コロニー内で艦の主砲を使って崩壊を決定的にしたのは自分達だから仇敵と見なすには筋が通らない、ましてムウとは奇縁だと明かされてしまった。
それ無しにしても、キラはリンを攻撃してしまった関連。カナードは修理を終えたとしてもブリッツにいきなり乗る事からの関連を含め。
【今は砂漠の虎にいきなり奇襲や直接対決を仕掛けられないだけ良い】
「わかりました。では貴方の判断に感謝をします」
そして、握手をして会談は良い形で終わると一安心した時だ。
「隊長!」
「何事だい?」
「はっ、離れた場で待機しているバクゥが例のゲリラに襲撃を掛けられました!其方の方々の戦艦にも向かっている模様です!」
流石に唐突だ。きな臭い予感が過ったが、バルトフェルドの一言で空気は変わる。
「いつものジープからの白兵や自装砲とかでかい?」
アフリカのゲリラはともかく、戦い方についてはマリューからしても信じられない、メビウスタイプでジンと戦った経験なら随一のムウからしても自殺行為に等しい、決定打を与えられないので踏み潰されるのがヲチだ。しかし、これはそう思う側に対する陽動であった。
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その頃、アークエンジェル付近では。
「何のつもりだっ!?」
入手した情報からしてアークエンジェルが本命だと【騙された】明けの砂漠は着陸している艦のデッキに繋がる底部ゲートが自分達が確認出来る距離に来たのを見計らったように開いたのを怒りと戸惑いの籠る叫びをあげた。
あの艦が砂漠の虎と手を組んで自分達に襲い掛かってくる前に内部に入って制圧との流れだが、流石に理性を働かせざるを得ないのだ。
艦長代理のナタルはブリッジでそれを見て取り、作戦の成功を悟った。
【この辺りのゲリラについては、事前の情報とニコルから多少聞き出せた事をまとめたカナードが思うには、砂漠の虎と会談する場合は留守中の自分達か会談中の方に襲い掛かる可能性があり、説明しても聞き入れる保証はない】
旧時代から僻地とされる場の民の怨恨は根深いからだとして考えた策は、暴挙に出るのを警戒しつつ近付いて来た場合。
【わざと底部デッキへのゲートを開ける】
旧時代からの事を考えた時に、一説ではあるが古来の戦で全てにおいて自分達を上回る軍に包囲された城に立て籠った武将が取った策の応用である。結果は罠と見なして撤退してもらえたに繋がった。
今の自分達のように有利な点が多い側からしたら誘導にもなるとするカナード発案の作戦。この場合はブリッツで出たり普通に艦の武装で迎撃にはやり過ぎるだけで散開されて偶然にでも重要な部分に何かの攻撃が当たっては一手間だ。
(釈然としないが兵法の応用とやらか?)
離陸しないアークエンジェルを古来の戦における城とした場合は基準を満たしていないのでは城とは言えないのだ。立て籠る側が戸惑っていては?
【城を攻めるは下策、心を攻めるは上策】
結果的にこれになりかねない。攻める側より心を攻められるワケにはいかない。
『艦長代理、次の段階はどうする?』
「うむ、気が進まんが状況が状況だ。やり過ぎなければ良い」
『了解だ。ではカナード・パルス、ブリッツ出るぞ』
淡々としながらMS発進用ゲートからブリッツを歩ませて出る。砂漠の悪条件に関しては。別にいきなり出るワケではないので調整は済ませておこうとした時にキラが調整を済ませてある。第一にXナンバーとはザフトに対する兵器であり、地上で戦うのを想定してないワケは無い。
アークエンジェルの付近に展開したメンバーは大慌てであった。わざとゲートを開けたのは動きを鈍らせてから艦載機を出す作戦だったのかとした時。
「まだ空いてるぞ、突っ込め!」
「待て、まだ何かあるハズだ!」
ゲートに入り込めば良いとしたが、足並みが悪い。アークエンジェル側はブリッツに持たせた鹵獲品の機銃と艦の機銃が狙いを定め。
【わざと外れるように斉射された】
バランスを崩しさえすれば相手は転がったら起きれない虫のようなものだとしながら尚も向かって来る。ケンカにすらならない図にアークエンジェル側は辟易しながらも何車かが転倒してリーダーらしき男が両手を上げて漸く降参の意を示したのでカナードが呼び掛けた。
『全員、武装を捨てた後に両手を上げたまま空いてるゲートから艦内に歩いて入れ。従わない場合と武器を隠し持つ等の不審な行動をした場合は【艦内の者】が即座に撃つ』
どこか情報が漏れたり吹き込まれたりする場合のような状況を考えて、場合によっては艦内にはリンのMSがいると判断するかもしれないカナードの言い分。従ってくれたのは安心したが、その中にいる者に注意が向いた。
【キラと少し似た金髪】
見た目だけなら、アッチの方が完成品としてはマシと未だに思ってしまったのには今や嫌悪感すら抱いてしまう自分に気付いてしまった。そもそも、今回のように他を考える方が遥かに有益だ。
情報次第の展開、各キャラが程度はあれど大人しくしてろと言われたらどうなるかな回。