「では、全て君の独断であったと?」
「はい」
淡々と答えるのみのクルーゼにヘリオポリスの時と同じように査問が行われていたが、困惑が混じっていた。厳命と迄は行かない指令を権限において無視したが、地球に落ち行くユニウス7を少しでも破砕するべく向かって、結果的には破砕の妨害をする部隊を迅速に壊滅させた事は人道的には称賛されるべきだろう、名前が判明していない機体と連携しての画像も広まっているが、それだけで査問する側の全員が認識するクルーゼ像から掛け離れているのだ。
「では、この部分に関しては?」
「存じません」
またも即答だ。自分の部下である赤服三名についての画像、推測される事を文にして添えられているようにユニウスの件を伝えられて踏み留まったニコルならともかく、そのニコルに攻撃を・・・・しかも装甲の僅かな隙間に散弾が入る形に当ててまで地球側の艦載機に襲い掛かり、返り討ちにされたイザークとディアッカについては正に恥部であろう、ニコルは足付きとされる艦に捕らえられたのではなく話のわかる相手として救われたとされている。
程度は違えど、議員達も対応に窮していた。特に息子を溺愛するエザリア・ジュールは怒りを抑えられないでいるが発言は控えさせられている。
「クルーゼ隊長、君の行為で地上の同胞達の多くが命を救われたが、結果論だとは理解しているな?ナスカ級一隻ではたかが知れている」
「はい、今回の件は私の自己満足です。居合わせた地球軍の艦隊、それからあの白紫の機体と足付きと呼ぶ艦の特装砲のお陰でもあります」
「ナチュラルのお陰とでも言う気かっ!」
「はい」
口を挟んでしまったエザリアの発言は内容も態度も問題だが、やはり気にもしていない。それ以前に自己満足と自分から言われてはどうにもならない。この場をまとめるべく議長であるシーゲルが口を開いた。
「ラウ・ル・クルーゼ・・・・今回の件で時勢がどう動くかまだわからんが、君には謹慎と隊長職を辞す事を告げさせてもらおう・・・・何か、私に望む事はあるか?」
「部下達への便宜だけを望みます。繰り返しますが、彼等は私の命令に従っただけです」
実際に何度も言った事だ。潔いとしか言えずにエザリアすら黙らざるを得ない。
「わかった。君の望みは約束する。ヴェサリウスのクルー達は全て不問だ。クルーゼ、私は君を実力はあるが得体が知れん男だとしていた。だが、私達がやれなかった事をしてくれた君の本質は誠意に溢れているとしか感じない、ユニウスで眠る者達は自分達の住んでいた場を使った同胞殺しを少しでも軽減してくれたと感謝しているだろう!代わって礼を言うぞ、ありがとう・・・・!」
「私からもだっ!平和になって、機会があったらまたこき使ってやる!それまで身体を大事にしろよ!」
「はっ!」
シーゲルとパトリックのまとめに敬礼をして去って行くクルーゼは堂々としていた。居合わせたアスランは評議員の含むところがある顔を見たくはないとしていたが、自分の事を棚に上げていると気付いてはいなかった。
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「道化だよ」
クルーゼは友人の元に身を寄せてチェスをしながら自重していた。今回の件は決して善意からのものでは無いのだが?
「しかし、君にしては【熱】が籠っていたなラウよ・・・・正義にでも目覚めたのか?と言いたいくらいだぞ」
「よせよ【ギル】・・・・今の私は、ただの悪いおじさんとやらだ。しかし、それなりにやって来たから得たものには未練があるようだ」
振り返ってみればそうだとクルーゼは思っていた。地球からプラントに上がり、ザフトの白服となる迄の苦難は想像を絶した。個人的な目的の為に耐えられたが、良くも耐えられたとしていた。
「その火傷は皮肉なものだったな・・・・」
「ふん・・・・名誉の負傷と勘違いしてる方がまだマシだ」
実は、フラガ家の【あの一件】で一部を火傷したのは事実だが、決定的なのはプラントに渡り、アカデミーを出る少し前だ。
実は全てが順風満帆だったワケではない、私怨の為にがむしゃらにカリキュラムをこなしていたが、地球からの流れ者に向けられる目は有りがちな分きついものだった。例えばイザークみたいな者を見ていると、クルーゼは当時の事を思い出す程だ。
火傷の大部分の原因は学生の卒業間際に有りがちな打ち上げ回とやらで当初自分を見下していたが、その自分より下の成績で卒業した者達に襲撃された時のものだ。今思うと感覚が麻痺や硬化していたとすべきか、メイク等では誤魔化せないので得体が知れない仮面男としてのザフト仕官ラウ・ル・クルーゼが誕生したのだ。
だが、それを逆用して深謀遠慮を学んだりもした。
「ギルよ、そろそろ帰って来るはずのレイには悪いが、暫く寝かせてくれんかな・・・・」
「うむ、空いてる部屋を使ってくれ。そのまま燃え尽きるなよ?」
「有り得るから怖いかもな、無論体調面で」
ザフトの猛将であるラウ・ル・クルーゼはつかの間の休息に入った。嵐の前の静けさか否かはわからないが、ギルバード・デュランダルは彼に芽生えたものが良い方向に向かって欲しいと、友人として切に願った。
だが?
「む、来客?」
こういう時の為に自分で改造をした呼び鈴が鳴る。レイの為にしても少々過保護だったかもと思いながら玄関のドアを開いたが?
「ど、どうもね・・・・」
「や、やあ。突然だねタ・・・・グラディスさん」
訪ねて来た金髪のやや特徴的な金髪の女性はデュランダルにとって一番の弱点と言える存在であった。
【タリア・グラディス】
苦い過去の象徴である女性だが、彼の気を引くのは隣にいる少女であった。
【ラクス・クライン】
タリアは本人だと思っているが違うのだ。何故ならばデュランダル自身が彼女を候補として選出していたのだから。
「これは随分と驚かされる。とにかく、中へどうぞ・・・・お茶でも淹れましょう」
自分の元に、更に言えばクルーゼが滞在していると調べられて不思議では無い場にこの二人が訪ねて来るのは、有りがちな手段と仮定してデュランダルは気持ちを切り替えた。
その一方。
「【解析不能】だとっ!」
「はい、デュエルとバスターのデータをどう調べても例の状態になった白紫の機体はそういう処置をされているようで画像がハッキリと出ません」
プラントの評議員とMS開発の重役を兼ねるユーリ・アマルフィはユニウス落下の影響も心配だが、息子を連れ去った・・・・否、救助してくれた白紫の機体の解析をしたかったが、言われたように姿が何かのジャミングが掛かって映像が不鮮明であった。広められた画像には頭部と間接から何かの光が出ていたが、間近の映像ではユーリの部下が述べた通り。
これはアークエンジェルの中でも疑問視されているが、映像で記録される度合いが間近でもモニターの角度の違いだけでまるで違っているのだ。
次にパイロットに話を聞きたくても、何やら狂乱状態に近いらしいのも聞いた。
『な、何だっ!何だよあれはあああっ!?』
『く、来るな!来るんじゃねえよっ!』
未だにそう叫んでいるらしい。恐ろしいものを見たようになっている程度ではない。
元々実力はあっても悪童振りで知られてもいる二人であるから、風評等の問題でああなったのは極力広めないようにしているが、目撃者が多いので時間の問題だろう。
それでもユーリが思うのはニコルがあの後に二人の傍にいないで良かったとしてしまう事、実は救助をしたアスランは他の事を考えてたのか真っ先に二人に会わなかったのだが、ニコルなら違うだろう。何名かが弾みで負傷させられたらしく、ニコルがそんな風に・・・・と思った辺りで。
【息子でなければ良いとしてはいけないとしたが、少なくとも見せては最悪の事態になる】
一旦は振り切ったが、ユーリの生真面目さが手伝って、暫くユーリの私室からは明かりが絶える事は無かった。
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『連れ帰った娘はどうなのだ?』
「良くは無いな、気紛れに料理をさせているが本調子で無いのでどうなるかだ」
『ふん、らしくない。面倒は御免だぞ』
自分の【半身】からの通信が切れたが、さほど心配はしていない。味覚が駄目になり始め、明かされた事実を知って落ち込んでたが手探りでやろうとする気概事態は評価すべきだ。
慰めは不要、最低限な事は示したのだから後は進むか否か。そうでなければ意味は無い。
と、思っていたミナだが?
「・・・・」
(家事に逃避するタイプだったか)
但し味覚が半分は駄目になっている者が作っているとは思えない味だ。塩加減からして身体に染み付いているのかとミナは評した。
辛口麻婆豆腐、鶏肉のつくねを焼いたり卵閉じにした物、きんぴらごぼう、牛肉のすき焼き風煮物、海苔入り出汁巻き卵、ワタリガニのワンタンスープ。
どれもパイロットとして永続成らないで五体満足であった際には専属のコックにしたい程の味だ。限られている素材を効率的かつ素直に味を引き出す料理ばかり、ミナからすれば庶民の味だが、だからこそ染み渡る。試しにハモを料理させたら一発目から骨切りと言う超高難易度の技術を簡単にやらかす事には驚かされ、益々欲しくなった。
この家事逃避癖の原因はマユと喧嘩したりマユが唐突に不機嫌になった時に八つ当たりされたりした時とマユ絡みばかりだ。それなりに落ち込んでその度にミナが見ているように料理をしていた。
(この娘、マトンの件を元に余を太らせる作戦ではあるまいな?)
休日にしては異端な流れだが、半ば戦慄させられしまうミナであった。現に白いご飯が欲しくなると言う概念を思い知らされてリンに敗北感を味合わされていた。気紛れだとして呼んだ部下達も成す術無く思った。
【白いご飯が欲しい】
(・・・・む、そうか!【食事】で思い至ったが見落とすところだったな、次のアークエンジェルの行動が何となく推測は出来た)
根底的なところを見直したは良いが、その時は部下達に殆ど食べ尽くされていた事にショックする自分にショックを感じたミナであった。
リン・アスカ、味覚半分でも例のプランで適職に料理人と出てデュランダルを困惑させるキャラです。
次回、地球側。