「『北側』から接近する部隊あり!機種はディンとバクゥです!」
「来たわね!」
マリュー達は予想していたお陰で迅速に対応した。バルトフェルドはともかく混乱状態と見るべきザフトが静観している保証は無い、ザフトでなくてもユニウスで墓荒らしをした時以来の正体不明敵にしても今は好機だ。
「では、打ち合わせ通りだ。ブリッツ出るぞ」
「ランチャーストライカー、装着しました!所定の位置へ行きます!」
打ち合わせは済んでいる。
ブリッツはストライクの予備シールドにライフルを装備して先行。ストライクはケーブルを繋げてアグニを連発可能にして甲盤に着けた。メンデルに逃げ込んだあいだに密かに用意していた策だ。ディンに対してはそれと艦の装備で何とか対処をとして集中した。
一方で砂漠に降りたカナードのブリッツに対してバクゥ三機が連携して襲い掛かるが?
(規則的だ!)
並列になって迫って来たバクゥ三機にカナードはブリッツに持たせたビームライフルを撃つが、相手はそれを散開して回避した。だが、それに惑わされずにほぼ正面にいたバクゥを冷静に撃ち抜いた。
集団戦の心得があるカナードにはかえって読めるのだ。
左右に散るバクゥはいきなり味方機が撃破されて同様したのか動きが鈍った。そこをすかさず撃って二機目。
三機目は思い切って後退するが、ビームを二発撃ち、側面を抉る程度に命中したようだが追撃はせずに地上からディンに向けてビームを撃ち始めた。
上空でも決定打に掛けるディンは重要部分を狙わなければならないので動きを読まれていたのだ。機銃で散開させられて艦の主砲とアグニを撃たれる。装甲が不安なので回避しなければならない事でペースを握られて二機が撃破された。そして?
「【後方】から熱源来ました!ヤマト!」
「はいっ」
後方からの砲撃をストライクがアグニで迎撃して撃ち落とした。一旦は切り抜けた時にチャンドラが解析を終えた。
「砲撃元は【南西】からですが射程とレーダーの範囲外!ザフトの地上艦クラスか同等なのは間違いありませんね」
簡単な図にすると、南東の方面にバルトフェルドがいるであろう地域がある。しかし、地域を南半分にした際は東側に砂漠の虎の駐在位置だが、今回は逆側の方向からだ。
「やはり、出所からしておかしいですね」
「えぇ、このまま砂漠の虎の滞在場とも攻撃があった方向からも逆方向に、チュニジア方面に離脱!目的は途中にある可能性があるザフトの臨時基地!次に【メルリール湖】と【ジェリド湖】を目指します。MSに帰還命令を!」
これがアークエンジェルの方針だった。流石に先日の件で自分達をバルトフェルドと戦うよう誘導している者がいる可能性程度は推測している。それに対するアークエンジェルの策はバルトフェルドと対戦する事だけは避ける以外にそれなりの案がある。チュニジアにも危険だがやむを得ずも含めた案。
一つ目、チュニジア方面を目指す理由。
ザフトの小規模な基地捜査についてはユニウス落下以前から臨時基地がある程度は推測されていたが、落下の影響で都合良く破棄されている可能性がある。状況からして基地内の物資は全て回収して逃げ出してはいない可能性があるので役立つ物があったら頂く事を考えてる。ユニウスの墓荒らしを思い出すので気が引けるがやむ無しであろう。
あこぎだが、何か言われたら最近の正体不明部隊の基地かもしれなかったと言い張る。
そうするにしてもバルトフェルドがいない地域の方がまだマシだ。いざと言う時は交戦するなり停戦を申し込まれた際に言われた事を交渉に上手く使う。
そして、アフリカをどう出るにしても。アラスカに向かう場合は海がある場に備えなければならない。今のアークエンジェルには水中戦用の装備は無い。ストライクとブリッツを海で戦わそうにも、せめてMS用のバズーカがあればと考えたが、それすら無いので海に行く等は論外だ。この辺り以外の地域がどうなってるか迄も知りたいが、恐ろしい予感迄している。
二つ目の湖について。
向かう先にあるメルリール湖とジェリド湖は塩湖であるので天然の【塩】がある。吹き飛んでたらそれまでだが。
【後者は何故か運良く生き残ってそうな予感がある】
詭弁と打算を含めているが塩が無くなれば死活問題だ。今は足りているがアフリカ内に長く留まり、砂漠で汗をかき続ける間に水を飲んでいるだけではどうにもならない、都合良く助けを求めるには論外な状況だから万全を期さねばならないとする方針。
そして?
「いざと言う時には砂漠を脱出して、地中海方面に行く・・・・それに、スエズからビクトリア方面に交渉」
「つまり、これをどうするかだな」
ムウが出したのは、バルトフェルドとの会談の最後にもらった一切れの密書である。その内容は。
【信じてくれなくて構わん、だが正式にザフトと名乗る者達が来たらこのサインが書かれた書類を見せろ。一回だけマス・ドライバーを使わせてくれるだろう】
「この状況を見抜いているのはまだ良いさ、何度も言うがユニウス近く以来に正体不明機が多いからな、しかしマス・ドライバー使わせてくれるのは【知られてる可能性】ある」
それはアークエンジェルの推進機関についての問題。それは艦がレーザー核融合からの核パルス推進。何とかシールドでとしている辺りで・・・・恐ろしい発想が出ていた。そもそも生き残りのメンバーは推進機関の責任者も専門家も不在で知識が充分で無い分取り扱いに困る類いなのだ。
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「俺も怖いくらいなのだがな」
「まあ、ユニウス7放っておくなんて論外だから地球に降りちまった後悔は禁物でしょうさ、この艦って墓荒らしをしちまってからは妙な連帯感はあるって言えばあるんですよ」
「うむ、要は推進機関付近を死守すれば良いだけだ」
マードックの言っている墓荒らしには居合わせなかったカナードからは正しくとしか言えないが何か引っ掛かるのだ。それ故の落とし穴がとした辺りで休憩に入る際に食堂で見掛けたのは。
【ヘリオポリスの学生達】
特に、あの赤い髪の少女については、今もアルテミスにいるかもしれない父親が後に爆弾になりかねない要素はあるが、それすら比較にならない何かが・・・・と。
(考えろ、リンがいない状況では・・・・いや、何を考えると言うんだ俺は・・・・)
何かが芽生えているとは気付いているが、それはこれまでの自分とは真逆、それは?
「カナードさん、差し入れのドリンク貰って来ましたよ」
「ああ、すまんなキラ」
複雑に過ぎる。場合によってはとっくに殺していただろう相手が自分を頼りにしているのが見て取れた。自分はキラの『 』と言える立ち位置だが、それが私怨の元凶だったハズなのにと。
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「何っ、地球の各地でコーディネーターが次々と地球軍に加わっているだと!」
バルトフェルドは報告に驚愕していた。
ブルーコスモスがこの機に殲滅を図るならともかくと考えた。彼等はブルーコスモスに襲撃された事はあるし、占領下の街等で暴れられた事もある。
そして、バルトフェルドはある危惧を抱いていた。クルーゼ同様にブルーコスモスに加わるコーディネーターがいる事を知っているのだ。一例とする事を述べた。
「不味いね、そのコーディネーター達が例えば鹵獲したMSを動かしてるならまだ良いさ、けど問題は総力を以てクルーゼが奪取した機体から先日のストライクって機体のようなのの大量生産、更にはナチュラルでも動かせるようにしたOSやらシステム開発なんかに協力したら?」
「そ、それは・・・・」
「隊長、報告します!足つきにディンとバクゥを中心にした小隊が戦闘を仕掛けて、一機は逃走。他は全滅で敗退したようです!」
「何っ、何処の部隊だ!?」
「所属は不明ですが、直ぐに救援に向かうべきでは?」
「待て、先日のレジスタンス滞在地襲撃の件と合わせて、最近アフリカ付近の部隊も幾つかはユニウス落下で混乱したり被害を受けたりしていたな・・・・良し、周辺部隊に通達しろ!内容は【足つきを襲う部隊は鹵獲した我が軍の機体を使うブルーコスモスの可能性がある。彼等に処理させろ】」
「え、えぇっ・・・・!」
副官であるダコスタの間抜けな声が響く。どうもこの男は裏事情には通じているが想定外には多少弱いとして話を進めた。
「ダコスタ君、足つきとの停戦は上からの指令だ。騙し討ちにしろなんて迄は来てない。するとしても僕達には関与させないって意図かもしれんぞ、それから救援については敗退した機体の向かった先を特定したまえ、暫くすれば洗いざらい吐いてくれる状態になるかもしれん」
「あ、成る程・・・・砂漠を逃避行はきついですからね」
「意地悪だがね、敗走したバクゥのパイロットがコーディネーターだとしても砂漠で水不足にでもなればナチュラルと差は無い、寧ろ未経験の苦痛に対してはダメージが多い。ところで、先日の会談でフラガ大尉からの意見を参考にした物を飲んでみてくれないか?」
いきなりの切り替えにあんぐり来たダコスタはしてやられたと思いながら客用のソファーに座り、エキゾチックな服装で上官の妻も同然なアイシャが運んで来た水出しコーヒーを飲んだが、確かにホットよりはマシだ。バルトフェルドの部下は少なくともコーヒー党にはなれないようだ。
「そう言えば聞いたか?例の白紫の機体に乗ってるのは【少女】らしいよ」
「少女・・・・何処からの情報ですか?」
「知らん、何故か街で噂になって調査中。しかし、地球に降りてから白紫はまだ確認されてないよね。どんな娘なのか・・・・ストライクにしても乗ってるのはコーディネーターだとしたら、何で地球側に付いてんだ?」
「それは・・・・」
【何で地球側に】
ダコスタは宛にならないとバルトフェルドとアイシャは見て取った。この部下がクライン派だというのが肝なのだが、立ち位置を決めかねる理由にもなっていた。
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そして、アークエンジェルには待ち伏せに対しての戦いが行われていた。
ストライクは飛び上がり様にバクゥの頭部を蹴り飛ばし、そのまま下に位置するバクゥの本体にライフルを撃って撃破した。
前方ではザウートらしき機体が爆発したが、ミラージュ・コロイドを展開したブリッツに側面から攻撃されたようだ。
「キラ、無事か?」
「は、はい・・・・」
相当に消耗しているのを見て取れた。幾ら遺伝子操作を施されても体力錬成訓練はしていないのでは連続出撃からの消耗は激しい。三度目があったらいけないとした。
そして、カナードは【戦利品】を持って帰艦した。
「あれ、ザウートのコックピットブロックですか・・・・な、何です?」
「良いから離れろ、忠告する。今後どうなるにせよパイロットの視界に入るなよ」
言われた通りにして別室のモニターから回収したブロックからパイロットが出てくるのを見たが、おかしいと気付いた。話に聞いたニコルのように複雑な経緯ではないハズなのに従順極まる態度でマードック達も戸惑っていた。メットを外したが、キラと変わらない歳で容姿は端麗とすべきだが、スキンヘッドで目が怖いくらいに澄んでいた。
「ほう、もしやと思っていたが噂通りだな。キラよ。お前はあのパイロットの機体、見たところでかなり強化したキャノンを装備したザウートが何故アークエンジェルの機関部等を狙わなかったと思う?」
キラは考えた。バクゥとザウートだけもおかしいが、何故艦を狙わなかったか?
【敵の立場で考えてみろ】
カナードにそう言われた事がある。もしもだが、アークエンジェルを狙う側になるとした場合は?
「バクゥを陽動にして、その隙に機関部を破壊は出来なくても損傷でも与えられたら、この辺りに味方の基地が無いから修理に一手間な艦を動けなく出来るのにそれをしなかった・・・・」
「上出来だ。俺ならあの戦力ではそれを狙うが何故そうしなかったか、これからわかるぞ」
カナードは危険な笑みを浮かべていたが、何故かそれに向き合わないといけないとして暫く経ち、ムウからブリッジに上がるよう通達が来た。
「カナード君、君は知ってたようだが。話してくれないか?」
「ああ、全員に話しておかねばならんな。あのパイロットは【ソキウス】と呼ばれている人種だよ。簡単に言えば、ナチュラルのために生きる事をすりこまれた【連合軍産のコーディネーター】だ」
キラは顔を青ざめさせた。カナードからしたらユーラシアに囚われてたままでいた理由である存在の狼狽振りに溜飲が下がったのかそうでない何かを感じていたのか曖昧になっていた。
独自展開な行動開始理由。
【種死がまだマシなくらいザフトにも連合にも都合悪くユニウス落ちたばかり展開でバルトフェルドが停戦を申し込みに来た】
【地球上ではアフリカは一番マシな形に外が大混乱なのは言うまで無し展開で、他に行きたくても暗黒大陸より怖い予感するクルー達】
【しかも、推進機関問題を含めると迂闊に海上なんて移動出来ないし、上層部と今は連絡取れなくなってる】
【ブリッツがあるけど、第8艦隊と合流してないからスカイグラスパーどころかストライク用のバズーカすら無いから海では戦えない】
【明けの砂漠と協力してないから、細かい補給品が無い】
【しかも、レジスタンスの街を襲って来たのがザフトなのかどうなのか不明】
そんなこんなで含むとこアリで塩の補給すら念入りにしときたいとして行動なアークエンジェル。
湖の候補の一つが何故運良く残ってそうかはご察し。