「シーゲル議長にザラ国防長・・・・もう一度お願い出来ませんか?」
「言った通りだよ、カナーバ。我等の名に置いて連合に【休戦】を申し込む!」
プラント評議会はざわめいていた。シーゲルだけならまだわかるが、パトリックまで同意しているとはと、そもそも対立の気配すら感じていたのにと。
「な、ナチュラルにそのような事は・・・・」
「エザリア、我等はナチュラルに戦いを仕掛けたのではない!理事国と連合内のコーディネーター排斥派に対してだ。現にオペレーション・ウロボロスの目的は地球と月の補給路を断って有利な状況で終戦をする為で殲滅が目的ではないぞ!いつから履き違えていた?」
信じられないものを見る目を向けられていたがパトリックは意に介さない、そもそも普段は理知的ともされる態度を貫きつつも経戦派とされていたが、それについては即座には深入りは出来ないでいた。
「多少割れたユニウス7が落ちた混乱で連合も右往左往しているようだ。ここは向こうにとっても悪いタイミングではない、案次第でプラントを我々の居住地にして独立しつつ復興の為な支援を適度に行いながら進めれば良い、そして我等はプラントを地球圏から遠ざける為に移動させるのだ」
「な、何ですと!?」
「近くにいればブルーコスモスは攻めて来たがる!ならば、関わりを断ち切る為の準備をするのだよ、そもそも何故我等は地球近くに住んでいるのかを考えろ、理事国が管理しやすい状況に持ち込まれたからではないか!」
一理ある。そもそも好きで理事国のコロニーに移住した者ばかりではないのでとする空気が広まった事を確認したパトリックは次の手札を切った。本意ではないとしながらではある。
「そもそも、ユニウス7が落ちた混乱に乗じてナチュラルを攻める気か、それが狙いと見なされては抵抗が激しいし、我等の中にも不満が生まれるだろう。異論はあるか?」
「待てパトリック、少々我等二人だけの意で進み始めているぞ!先ずは私が地球側に会談を申し込む意がありと伝える事から始めよう。我等だけでなく地球側の返事次第であるのだ」
「む、それはそうですな。では、唐突に過ぎる路線を議員達に思案して頂く意味で本日は此処で解散としましょう」
有無を言わせぬとはこの事だった。議員達はパトリックがユニウス7で妻を失って以来の変化を肌で感じていたからこその認識が崩れていた。そして、パトリックが心変わりしたのかもしれない理由について様々な憶測が流れ出したのだ。
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「これでは道化だよ」
何故か言わされるように感じる事を国防長用のオフィスで一人ぼやくパトリックだが、割り切らざるを得ない、彼の本質は【愛妻家】である。良くも悪くも愛妻家故に亡き妻が原動力になっていたが、今回の件は。
【妻の眠る地を冒涜した者達への怒り】
原動力がそれに変わった事が原因だった。
(レノアよ、許しは乞わん・・・・だが私は・・・・)
パトリックにとっての世界とはレノアであった。過去に捕らわれていると言われてもレノアが全ては譲る気は無い、そしてこれに踏み込む者達は踏み込み方に正解を出せるか否かで辿り着く結末が変わる事になるのが真相を知る者全ての認識であった。
『ザラ国防長、ユーリ・アマルフィが面会を求めていますが?』
「む、3分待って貰ってくれ。身支度とお茶の用意をしなければならぬ」
言う通りにして、ユーリを自室に招いたパトリックだが、彼にしては険しい顔をしてるとした。出回った映像で息子が足つきにいるのを気にしているかと思ったが、要件を聞く事から始めた。
「ザラよ、単刀直入に言いたい。先日に砂漠の虎に停戦を申し込ませた足つきと呼ばれる艦に例の白紫の機体が残っているかどうかを調べてくれ、もしも残っていたら・・・・私の独断と言う事にして良いから、工作員を送るなりして白紫を破壊して欲しい」
「待て、物騒に過ぎるぞ!第一、息子がいるかもしれないのだぞ、彼がそれに巻き込まれて死んでも良いのか?」
「構わぬ!」
憤怒の標準を浮かべてもユーリは引かない、身内に向ける情においては自分も認める存在とは思えない苛烈さだとして気圧されるパトリックは何があったのかと問う為に改めて向き合うしか無かった。
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「おい、キラ!出てこいよキラ!」
「キラ!ねえ、何があったの!?」
「キラ・・・・」
宛がわれた個室に閉じ籠ってしまったキラにトールは必死に呼び掛けるが反応が無い、ミリアリアにサイもまるで事情が飲み込めない、カナードから話し相手にでもなってくれと言われただけだ。
「何よ、キラが新米の兵隊が良く掛かる病気にでもなったの?」
「フレイっ!」
「いや、何か・・・・聞いたらしくて、もうすぐ目的地近くに着くらしいからトール達は声を掛けようとしたらしいよ、偵察とかに出てもらうかもしれないからで」
「パイロットスーツは着たままなら、ストライクのコックピットに乗せれば良いのよ、荒療治になるから」
フレイは、そう言って無造作にトール達が使わなかったキーロックの予備を使って無造作に入った部屋の隅ではキラがパイロットスーツ姿で体育座りで白目を向いていたが、意に介せずに引っ張り上げた。
「立ちなさいよ、コーディネーターの癖に・・・・ナチュラルに有りがちな事をやってんじゃないわよ!」
「・・・・僕は」
「?」
「僕・・・・は、好きでコーディネーターとして生まれたんじゃ、無い・・・・」
事態が何となくわかったフレイは自分の領分ではない事を行う事にした。自分にも名家の娘としての見識はあるのだと証明したくなったのだ。
「わかってるわよ、後天的になれるならこんな世界になってない!何があったか、何を言いたいか知らないけど、文句あるなら甘えてないで自分のパパとママに会って・・・・【何で僕をコーディネーターにしたの?】とか問い質せば良いじゃない!」
「そ、そんな・・・・父さんと母さんは悪い人じゃない・・・・」
「それが甘えだってのよ!私がメンデルで言った事を聞いてなかったの?目の色が違うだけで捨てられたのだっているのにのうのうと便利屋やりながら過ごせてただけマシでしょ!リンに助けられてなきゃ何も出来てなかったままでいられる身分じゃないでしょ!」
リンの名前を出されて僅かに生気が戻ったキラはトールとサイに両脇を抱えられてデッキに着くまでは何とか自力で歩けるようになってストライクのコックピットに入った。
「坊主に何があったんだ?」
「ママのおっぱいが恋しくなったとかでしょ」
困惑するマードックだが、どうも噂に聞くワガママお嬢様のようでどこか違うとしていた。そして、目的地に近付いたのでキラに探索に行くよう発進命令が下った。
念の為にエールストライカーを装備したストライクが出撃したが、キラは怖かった。
【ソキウス】
ナチュラルに逆らえないように処置されながら産み出されたコーディネーターとカナードから説明されたが、そんなものが連合側で研究されているとしたら他で何が起きているかわかったものではない、仮に地球軍と合流したらどうなるか怖い、他はどう考えているかとカナードに質問したが、自分で考えてみろと突き放された。
リンはどうなのかと考えたが、いたとしてもマユを守れれば良いで済まされるだろう。
不安を振り切りたいが為にストライクを操って放棄された臨時基地らしき場の付近に到着したが、人の気配が無い。
警戒しながら近付き、生き残りがいるかもと回線を開くが応答は無い。しかし?
「シェルター?」
MSの大きさから見ても地下への扉らしき場が瓦礫に埋もれて残っていた。深追いは止めようとして艦に連絡を取る事にしたが、極秘回線とする通信が来たが、冒頭の部分が問題であった。
【ようこそ『キラ・ヒビキ』・・・・扉の上に機体を乗せれば自然に崩れるようになっているから偶然を装える。安心して歩を進めるが良い】
(【ヒビキ】・・・・あ、あの時・・・・の)
忘れようが無い、リンを攻撃してしまった時に呼ばれた姓だった。あの地下に何かがあるし釘を刺されている自分の状況すら見透かされているとしたキラは決断を迫られていた時、周囲に次々とジンやバクゥがいつの間にか現れて突撃して来た。バクゥの体当たりをシールドで防ぐべく掲げたが、素通りした。
(え?)
続けて突っ込んで来たジンのサーベル攻撃もだ。その内に、何故かメビウス・ゼロがガンバレルと機首にあるレールガンを斉射しながら突っ込んで来て、思わず機体を遮二無二動かしてしまうがやはり素通りしている。
(も、もしかして【ホログラム】・・・・でも、何でこんなのをわざわざ)
異様な雰囲気に飲み込まれるキラは、徐々に指定された場へ追い込まれつつあった。既に地下への扉は後方に百メートの距離にまで縮まって来ていた。
後、九十・・・・八十・・・・七十メートル。
フレイもやはり誰だお前状態。
アニメにすると、冷静さを欠きながら機体が後ずさりさせてしまうキラの場面で最初のエンディングのイントロ掛かるようなイメージだから割と怖いかも。