【怖い】
それがキラのヘリオポリス以来にずっと抱いていた感情。
地球にユニウス7が落ちたらと思ってピークに達していたとした恐怖心は今のように自分に謎の呼び掛けをする声のままに頼りにしていたリンを攻撃してしまって更に突き抜けた。
明らかに自分は何かを仕組まれてしまっている・・・・それを解き明かしたい欲求を感じた時。
【それが甘えだってのよ!】
フレイの声が聞こえた。
今まで言われた事、世界規模で何かがあるのではないかとする疑惑。
けど、自分がちゃんと戦わないと・・・・その為にも・・・・。
【ケジメとして、お前はマユのいる艦を守れ!それがお前のすべき事だっ!】
そして、キラの中で何かが弾けた。全ての感覚が鮮明となってストライクを前に向けた。ホログラムの攻撃を全て本物と見ながら回避してアークエンジェルに推力を最大にしながら離脱したのだ。
(ま、負けちゃ駄目だ・・・・!僕は決めた事から逃げちゃ駄目・・・・なんだっ!)
キラにとっての負けと逃げとは、同じ過ちを繰り返す事、矛盾してはいるようで正しかったのだ。
キラは恐らく今の自分にとって最善の形で秘めたる力を覚醒させたのだ。
--------。
『何と無様なっ!アレが【あの男の残した物】だと言うのかっ!』
【物】
集まった者の大半がキラをそう呼びながら罵声を出しつつ、端にいる者は違う感想を抱いていた。仕組まれたものを振り切ってまで推測される事を選んだのは決して間違いではない。
(どうやら、アークエンジェルの内部はかなりまともな状況のようだ。ストライクの動きは夢中で逃げ出した者の動きではなかった)
実に正確だ。
それから間も無く、地下施設の運命が決するのも見て取って姿を消した。
---------。
帰艦したキラは例の声以外はありのままをブリッジで報告した。迂闊に口に出してはいけない予感があるのだ。
「つまり、ホログラムに誘導されて、地下シェルターの入り口みたいのに落とされそうになっていたのか・・・・」
「何かなあ、落とし穴に落とすとかにしても推力全開で離脱するとかすりゃ良いんだ。まるで坊主がそれすら出来ない腕か状態になってる前提みたいなやり口だぜ」
【状態】
ムウの台詞でキラはピンと来た。つまり例の【ヒビキ】と言う姓を聞かせて自分がそれすら出来ない状態になって落ちる。若しくは敢えて落とされるのを選択する作戦。
これは、いよいよ言うべきかもとした時だった。
「艦長、基地を砲撃してみたらどうだ?」
「え?」
「流れからすると基地の地下に・・・・大量の爆薬からサイクロプスのようなのを仕掛けていたではなく、落ちたストライクを鹵獲する為の罠を仕掛けていたのかもしれん」
【サイクロプス】
これはカナードの策だ。ムウが参加していた月のグリマルディ戦線で連合側が基地を自爆させた関連で緊張感を抱かせる事で自分の意図通りに動いてもらう。飽くまで私情だが、今はキラを揺らがせない方が良いとした。
それは成功だった。アークエンジェルから主砲であるゴッド・フリードが基地に向けて打ち込まれて地下施設は倒壊が始まる。
ーーーーーー。
「ば、バカな!情報によるとカナード・パルスがいるハズなのに!」
「お、おのれ!【失敗作】の分際で!」
阿鼻叫喚である。崩れ行く施設に生き埋めとなって行く有り様で用意したものは自爆させるまでもなく爆発していった。
一時間後、無事を確認したとしてカナードはほくそ笑みながら地上の施設に残してあったものをブリッツを往復させて回収して行った。
「お~、こりゃジンとかのかもしれないけど水中でも使えそうなバズーカがあるぜ!」
「こっちは手持ちのミサイルポッドだ。すげえな、残り物に福とやらか?」
戦利品が予想外に多かったのでメカマン達が喜んでいる。カナードからしたら、恐らく自分が出向いた際に足留めをする為の算段だとしていた。キラには安全の為として戦利品の解析を依頼したが、これも策だ。動いて汗をかいてる方が良いと、それにデュランダルの資料にあったように。
【自分がキラ・ヒビキと周りに打ち明けてられては不都合なのだ】
だが、そんな算段だけで上手く済むまいとしたカナードの危惧は当たる事になる。
「艦長、敵部隊接近!接近する方向からしてザフトのスエズ方面の部隊です!レセップス級らしき艦艇を確認しました!」
「【スエズ】から・・・・可笑しいわね、砂漠の虎が停戦を申し込んだのに、回線を開いて!」
「はい・・・・っ!艦長、連合で使われている暗号文が来ました。内容は・・・・【此方はザフトの鹵獲機を使った部隊である。クルーゼと共闘した機体を引き渡せ】だそうです!」
「何ですって!事情は・・・・っ!ゴッドフリードを用意、暗号が違っているわ!相手は連合ではないわ!ストライクとブリッツは発信準備!」
「りょ、了解!」
「偽装した事に対する説明を求めるよう警告!従わない場合は撃つと通達なさい!」
画面を見てわかった。暗号とは変えるだけではなく最後に確認すべき事項もある。
自己の評価が低くても、それくらい覚えられてない程にマリューは愚かではない、そもそもミラージュ・フレームを引き渡すよう言って来たからには相手は?
「艦長、まさか相手は【ブルーコスモス】なのでは?」
ナタルの言う通りの可能性はあるだろう、クルーゼと共闘した等とはとした時にレセップス級から砲撃が来たのでお互いに回避運動を取りつつ主砲を撃つが、何かおかしい。
「何だ?正面からじゃ実弾はビームで撃ち落とせるハズだぜ・・・・まるで目眩ま・・・・おい、周囲にMSとかの反応は!?」
ムウの台詞で事態を悟った。
【この辺りは砂漠ではあるが、平坦な地形ではない。小さな岩山も多少はある】
潜伏させていたとしたら厄介だとして索敵を開始したが、ディンらしき機体が確認されたが即座に右方向に離脱した。何事かとした時、違う反応があった。
「艦長、ノーマルスーツのバーニアを吹かした工作兵らしき者が多数、左舷に間も無く取り付きます!」
「何ですって・・・・つまり?」
「しまった!連中は内部に入り込んで白兵に持ち込む気だ!」
「艦内に通達しろ!白兵用意!」
最悪の展開だ。アークエンジェルのクルーは定員を満たしていないし経験は皆無に近い、武器はあっても内部に入り込みに来るのだから余程の手練れのハズとした時にデッキからの通信が来た。
『艦長、事情は聞いたぞ!経験はあるから俺に任せてくれ!』
「わ、わかったわ!カナード君に白兵指揮を任せます!私達は交戦中の敵から新手に備えています!」
MSが主になった戦闘ばかりだったからこそな盲点、そこを完全に突かれた。相手の正体は後にして自分達は最悪の形となる戦いに持ち込まれたと、クルー全員が悟っていた。
カナードがいるから地獄に仏だが、MSに目が行きがちな盲点突かれたアークエンジェルな回。