月軌道で哨戒任務に就く、連合第8艦隊旗艦では指揮官室で緊張が走っていた。
「何ですって・・・・【休戦協定】に前向きになっている?」
「そうだ。地上にいるラミアス大尉達にどう伝わっているかは知らんが、上層部は何故かそうなっているらしい」
「しかし、ユニウス7を落としたのはコーディネーターかどうかについては?」
「地上の同胞を犠牲にしつつ、その後にブルーコスモスを暴れさせ、このような輩まで出しているのにか?」
そう言いながらハルバートンが出したのは砂漠の虎から送られて来た資料。彼の推測した通りに、アークエンジェルに仕掛けたのはブルーコスモスに加わったコーディネーター。砂漠を飲まず喰わずで動かなくなった機体を放棄し、暫く放っておかれ死にかけたところをザフトに捕らえらた者は【白紫の機体】目当てでアークエンジェルを襲撃したと供述した事が周囲に広まった。どこの手の者かはまだ判明していないが、ハルバートン達すら今は不在と知らないMSが都合悪いのだろう。益々に意図がわからない。
「アラスカは何と?」
「軍部にイチイチ伝える連中ではなかろう」
ハルバートンもホフマンも苦虫を噛み潰したようになっている。月軌道に戻された自分達はザフトを警戒するくらいしかない。
(ブルーコスモスに軍部・・・・となると)
老獪なハルバートンが立場上で自分なりの推測を進める中、地球では?
「捕虜の尋問やるんは何度目かとやらだが、今回のはと・・・・」
「・・・・何だよ【おっさん】は」
「おっさんじゃない!・・・・【アウル・ニーダ】君だったね、何で我々に攻撃して来たんだ?」
「・・・・研究所・・・・に、は」
水色の癖のある髪の少年がカタカタ震え出した。ムウはキラの聞いた事からアウルが【母さん】と言うのを避けているのだとわかる。自分で口にするのも恐らく駄目なのだろうとして切り上げた。
そして、主要メンバーをブリッジに集めてカナードとイングリットが説明を開始した。
「・・・・【ブロック・ワード】です。エクステンデットと称される者達は、聞かせたりすると精神に異常を来す単語があるとディオキア研究所のデータで解析されています。アウルと言う者にとってはキラ君が聞いた【母さん】のようですね、状況をまとめると。彼は研究所にこの艦が向かっていると聞き、母さんが危ないとする思い込みで暴走し、襲撃に来たのでは?」
「成る程、正解かもしれん。しかし、ブロックワードに関して相手にバレたらどうする気なのだ。罵りや挑発作戦で母さんに近い単語としてわかりやすいのなら【家に帰ってママのなんとやら】とかで出かねん、何かのトラウマで血や炎をマトモに見れない者を戦場に出してるのに近いぞ」
呆れながらカナードは言うが、これは作為的なもの。少なくともは周りは同意しているしキラも自分に言えた事ではないが酷すぎるとしていた。
「まあまあ、不正を暴くのが間違いじゃない場合での話だが【頭の良いバカ】ってのがやらかした事として割り切るしかねえんじゃね?そうだな・・・・【マッドサイエンティスト】って、昔から良くいるじゃねえの、折角俺等が理論すら録に理解出来ないのがやれる頭脳あるのに、間違いだらけに仕上げて造ったりしちゃってるのとかさ」
ムウが調子を変える為に言った事は自国側のお偉いさんも絡む形かもしれないから複雑だが有り得る事とする空気の中、イングリットは堪えていた。
【頭の良いバカ】
【マッドサイエンティスト】
憤り掛けたが、ラクスがこの場にいた場合。それは自分達の【親】に当て嵌まるからでは?と罵られてしまうと理解だけはしていた。イングリットはアコード以前に家以外の場で上手く立ち回れない【勉強だけは出来る幼女】のような弱々しい女に成り下がっていた。
(ラクス・クライン・・・・こんなだから、私は欠陥品だと言うの・・・・ならば、貴女は・・・・だから貴女はリン・アスカに母となって欲しい等と)
イングリットを自分なりに人間に戻したがるラクスにとっては序の口であるが、成果が出ていた。そして、ラクスの作戦は次が動き出す手前が迫るが、その前に動き出す者達がいた。
ーーーーーー。
「【リティリア】じゃ!リティリアを占拠するのじゃ!」
ヒステリックに叫ぶ幼女と言える外見、但し背伸びしていると誤解するように化粧が目立っている。前時代的な貴族に近い服装で扇子を振るっているのは?
【アウラ・マハ・ハイバル】
それを苦々しく思いながらも宥める事すら出来ず近くにいる者は如何にも貴公子然とした金髪の少年だった。
【オルフェ・ラム・タオ】
取るに足らないと断じていた者に不用意に仕掛けた結果、全滅させられ虜囚の身になった子供達への苛立ちがあるのだが、オルフェも地球にいるイングリットに戒めを聞かなかったので他人事ではない。
先ずはアウラが叫ぶように、今自分達が乗る艦と唯一の搭載MSを駆る自分が【母】の言うように、コロニー【リティリア】を占拠して計画の立て直しを図らねばならないとした時。
「アウラ様、デブリ帯を挟んで並行する艦艇を確認!先日のミラージュ・フレーム搭載艦の模様です!」
「何じゃと!おのれ下賎な者共っ!何のつもりかは知らぬが、のうのうと我等の視界に入るとは・・・・オルフェよ、リン・アスカなる山猿の首を取って参れ!」
「は、はいっ!」
後に【カルラ】と名付ける予定の機体のプロトタイプの発進準備が進むデッキに不吉な予感を振り切りながら向かった。歪んだのは計画なのか否かとある程度予想出来るのが不幸と気付ける術は無い。
ーーーーーーー。
「お、おい。どうしたってんだイングリットさんよ!?」
アークエンジェルのデッキでは騒ぎになっていた。イングリットが乗って来た輸送機で飛んで行こうとしたのだが、明らかに様子がおかしいので取り押さえられていた。スパイでない証拠として燃料すら抜いてあるのを自分で忘れている程だ。カナードやムウにメカマン達に取り押さえられたイングリットは泣きながらこの後を見通していたのだ。
「駄目・・・・」
「駄目とは?」
「駄目、殺さないで・・・・オルフェを殺さないで下さい!」
「な、何だそいつはよ?」
「逃げて、お願い・・・・お願いよ。オルフェ、逃げてえええっ!」
ーーーーーー。
地球で自分を最も愛してくれていると知らない同胞の悲痛な叫びを聞く術は無いオルフェは並行する艦から出た機影を障害物越し確認したが、同胞達同様の戸惑いを抱いていた。
「あれが・・・・ミラージュ・フレーム」
何やら、両腕に見たことのない【赤い兵装らしきもの】を確認したが、急遽に仕上げられた機体だと知っている。アレに乗っているのはプラントでは【安物】とされる存在だとも。
「むぅ、何も感じられないだと?」
再度に読心を試みるが、やはり何も考えていない。これでは殺人マシーンではないかとしたが、何かが違う。そして、自分なりに関心があるので接近した機体に知る情報を根拠に呼び掛けた。
「パイロット、名はリン・アスカだな!」
『何だいきなり?』
「貴様、ロンド・ミナ・サハクに何をされたのだ!?」
『何を・・・・されたか?』
リンがつい思い浮かべてしまったのは、連れ込まれた場の浴場に乱入された時。悪戯っぽく笑うミナに片手を釣り上げられて最も隠すべき秘密を知られた時の屈辱の記憶、リンは即座に切り替えれたが?
「ぬっ、ぬう・・・・何と破廉恥な!連れ帰った少女をそのように辱しめるとは!まさか、そんなのがキッカケと秘密だと言うのかっ!?」
知らない事だが、この場にいない【シュラ】よりはマシと知る術は無い。シュラならリン視点のミナに過剰に反応するからだ。
リンからしたら落差がひどいが、絶対零度な怒りを抱いた。何故知るかは先日の捕虜達からの情報で理解したが、リンは確信した。やはりコイツらは。
【失敗作だと】
オルフェ、シュラ程じゃないにしてもリン視点だからミナ様の~~な光景見て誤解程度はしちゃったな巻。