「おかしい!おかしいぞ!!」
アフリカに戻って明けの砂漠と共に右往左往するカガリ・ユラの叫びはキサカも同意だ。アークエンジェル乗っ取りに失敗して監禁されたと思ったら、クルーは艦を捨てて何処かへ去って行った。それから一ヶ月後に地球とプラントの間で停戦が結ばれた。何故そうなったかとする疑問についての両国からの返答はこれだ。
【コペルニクスの悲劇を招いた者】
【ユニウス7に核を撃ち込んだ者】
【ユニウス7落下時に、内部からの破砕を邪魔した者】
他にも無数に存在する不鮮明な事項の真祖を明かさねばならない。
世界に公示された状況について。地球とプラントは各々に問題はあり開戦に及んだが、それ以前から双方の対立をより深刻化させようとする者達が存在するのが明らかだとする声明。
一理あるが、だからと言って双方の首脳部が停戦に踏み込めるのかとする問題がある。
【その疑問を解き明かせないのがカガリ本人の落ち度だと気付く術が無かった】
一方、スカンジナビア。
アークエンジェルを降りてスカンジナビアに奇妙な移住をした者達は今日も平静を取り装う為も兼ねて状況と情勢をまとめているが、今回は特大の内容だ。
「お金が無いのです・・・・」
ミーアが述べたのは、自分達の窮状のようであるが違う、食糧から資源を含め。
【地球とプラントは、経済面が互いに依存しあう関係】
「戦争は、やる以上は勝たなければ意味はありません。影武者としての教育で聞かされました」
「地球でブルーコスモスが好き勝手したりプラントがユニウス7の事ばかり主張するのは、案外それから目を背ける為でもあるのかもな」
「そもそも、プラントに食糧生産すら禁じたのは【持ち逃げ】を防ぐ為と言われたらそれまでなんだが」
【持ち逃げ】
ムウが述べた事はこうだ。確かに食糧生産すら禁じたのは非道な仕打ちであろうが?
【プラントのコロニー郡は理事国が金を出して建造したものだ。そこをユニウスのように自分達の為に農業用コロニーに改造するどころか推進装置でも取り付けて外宇宙にでも持ち逃げされては最悪だ。奇しくもリンが乗り込んだリティリアのように】
「プラントの人々からしたら、コロニーをローンとかで買おうとしようとしたりする発想無かったのかしらねえ?」
「ありません」
フレイのレベルを落とした形な問いに対してプライドの問題であるとしてミーアは返した。何度か言ったが、強化されたのはエゴだけなのかもしれないとすべき気風がある。
地球側はどう考えているかについてフレイは父の周りにいた者を参考にしてわかりやすくまとめた。
「要するに、乗っ取りや持ち逃げされるくらいなら住み込ませざるを得なかった連中を殲滅したり、建造したのをぶっ壊したりしてやるって考えかもね。繰り返すけど、プラントにいるのは地球にいたコーディネーター総数の約一割なんだし。後の処理は残りを使ってとかな考えかも」
「で、でもさ。キラやリンみたいのは稀なんだろうけど。上手く付き合う考えはないんか?」
「下に見たがる側と不正な行為を施した側とでは無理です。そもそも旧時代から独立や統一とは、不幸な結果しか生まない場合が多い。だからこそ、切り捨てたり口減らしをしたりの結果が正当化されてしまうのです」
トールの問いにはイングリットが答えた。ワケありコーディネーターにしてもリンのような畏怖は感じないので受け入れられてはいる。ミーアとして振る舞うラクスは微笑ましいようで計算通りとする機会が増えた。
そして、漸く街中に出向くのを許可された。雪の降る山林を進む学生組とミーアにイングリットは買い出しに赴いたが?
「何か、割と歓迎されてるわ」
フレイが言うように、何かが可笑しい。
【自分達の状況は潜入任務に近い】
しかし、地元の者からしたらユニウス落下の影響で逃げ込んだ他国の者のハズなのにと。イングリットがアコードとして不備を起こした今はフレイが鍵なのだとラクスに誘導されてるとも知らないまま心理戦に持ち込まれたのだ。
(先ずは、ハルバートンってのが何でアークエンジェルクルーをまとめてスカンジナビアに行かせたかを洗わないと。街に入ってわかったけど、何か既視感ってのがあるのよ・・・・)
オーロラが掛かる空の下でそれぞれの戦いは始まっていた。備品を一つ一つ購入したが、エリザリオの乳液や化粧水等が何故あるかが流石のラクスも苦笑いを堪えていた。
その頃。
「ようこそ、私がアメノハシラの責任者である【ロンド・ギナ・サハク】だ。歓迎するぞ」
オーブが所有する宇宙ステーションに漸くの事で辿り着けたクルーゼ、デュランダル、タリア、レイ、そしてルナマリアだった。黒髪の端整な外見の指導者は停戦前の混乱の結果でアメノハシラを任されたが、どこか神経質と感じられる理由があった。居住区で荷物を整理しながらルナマリアはストレートに述べた。
「なんか、前に会った女性に良く似てるけどリンみたいにピリピリしてるわね」
実は正しい。半身であり名前を明かさなかった【ミナ】がリンに構いっきりになって以来の事だ。実はサハク姉弟もリンと言うイレギュラーに対しての対応で意見がわかれている。
「それより良いのか、メイリンも連れて来ないで」
「心配って言えば心配だけどね。親離れも自立も早いんじゃない?」
「自立が早すぎては婚期を逃すと聞いた事があるぞ」
「何よ!あんただって、クルーゼさんがリンにプレゼントしたなんて聞いて先越されたとか思ってんじゃない・・・・って、何よ微妙な顔しちゃって」
「あれは、ラウじゃない・・・・」
何がラウじゃないのか聞きたいが、それを理解出来る域にはレイですら立ち入れてない。
当のクルーゼは、レイ達には打ち合わせと言って別の場に赴いたが?
「迷惑な事だ・・・・」
アメノミハシラに迫るMS隊をクルーゼはバッテリーを強化した自分用のフリーダムで迎え撃っていた。今回はドラグーンを使わずに通常戦闘を心掛けている。
ビームが交差した後に頭部バルカンで敵の隊長機の頭部カメラを破壊、近付いて来たものは二丁拳銃のようにライフルを扱って次々と撃破した。
わざわざ接近戦をやる必要も無い程だが、敵の動きが侮れない。命中率が半分に満たないのだ。
【ストライク・ダガー】
資料で見たが、実用化出来たOSによりナチュラルでも動かせる機体がかなり生産されて海賊にでも受け渡されたのかとしたが?
(安定度は劣るが、気概を感じるよ・・・・ザフトのがイザークやディアッカとしたら、このOSはリン・アスカ・・・・そうか!)
無茶な機動で迫る敵機の動きを捕らえてビームを回避しながらライフルを撃つ、スレ違い様に爆発し始めた機体は最後まで諦めまいとするように見えたのでコックピットを撃ち抜いた。
(誰だかは知らぬが、あの時に広められた映像を見て彼女の動きを出来るようなOSを死に物狂いで仕上げて乗りこなせるように訓練したパイロットを乗せたか・・・・)
『見事だ。流石は元ザフト最強の男、とても調べた通りな出自とは思えん』
ギナから通信が来るが、声色に喜色が浮かんでいた。これからプラント内に仕込まれた爆弾に火が着くのだ。それは地球側にも及ぶとしたが?
【平凡を目指すのが・・・・】
(一番か、だが・・・・私だけが幸せになっては駄目なのだよ。君に酔っ払い用の冷や水浴びせられ・・・・っ!?)
クルーゼは思考を一旦止めた。つまり、酔っ払った自分を・・・・と考えてしまった次に浮かんだのは。
【隊長、我々もいずれ新天地を探します!】
【ザフトは我々が何とかしてみせますよ!】
【精々、酒と女に惑わされぬようにな】
ハインラインは癪に触るが、プラントを表向きは失脚したまま新天地探しで出た際に見送りに来たアデスやゼルマン達の目をクルーゼは真っ直ぐ見れなかった。まるで今も自分が隊長ではないかと言いたい目ばかりだったのだ。
「・・・・私は、結果だよ。だからこそ、知ら『シャワー浴びて寝てろ』・・・・っな、何!?」
『失礼、おセンチになってると見たらこれを聞かせろと言われててね』
合成音だろうが、こんなのをやるのは二名しか心当たりは無い。リンに冷や水を浴びせられたのを知っている者と、何故か知っているであろう者。
(・・・・レイ、お前は私みたいにはなるなっ!)
何故かレイも肝心な時に一言掛けられた程度でガタ崩れになりそうな予感がしたが、今の自分よりヒドい流れになりかねない予感がすると同時に何故こう考えるかわからない、レイを助けたのは一時的な感傷のハズとするクルーゼの疑念は未だに晴れていなかった。
だが、クルーゼにはある意味で自分の岐路を見定めるべき機会が出撃中に訪れていた。
(・・・・何だ。この男)
「よお、アンタが噂のラウ・ル・クルーゼか!その機体、どうやって調達したんだ?」
「答える義務は無いな」
「じゃあ、見せてくれねえかな。正規軍のじゃねえんだろ!あのMS隊もスゲえ動きしてたけど『その前に君は誰だね?』・・・・あ、そうか。俺は【ジャンク屋のロウ・ギュール】ってもんだ」
髪を何やら箒みたいにアップにした騒々しい男だが、クルーゼは複数の警鐘が鳴った気分であった。
(・・・・いかん、この男が【ジャンク屋】と言うの問題だが、それにより。もしも地球にいるリン・アスカの家族に何かの影響・・・・っ!何故、私がそんな事を・・・・そもそも、この状況でジャンク屋ギルドの者がいるからには、私がやるべき事は・・・・)
モニターで見るギナとデュランダルがほくそ笑んだが、これがどう影響するかの規模を図りかねていた。レイの言葉は正しかった。
【今のクルーゼは、以前のクルーゼではなくなりつつある】
ご存知、ASTRAYジャンク屋名物男登場。
そして、どうしたクルーゼ?