機動戦士ガンダムSEED 赤い瞳の少女   作:くまたいよう

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 ムウさんから。

 ミスにより、前話でムウさんが刺された場は【右胸部のある場所】に修正してあります。理由は前半で。


使命 ~げんじつ~

(親父・・・・何、してるんだよ?)

 

 ムウ・ラ・フラガは、ハッキリしない意識の中で子供の事を思い出していた。

 

【傲慢で身勝手】

 

 一部からは、立場上の責任故と聞かされていた。態度だけではなく時折帰って来ないのも。一旦は冷たくなってからまた自分に構ってくれるようになった父アル・ダ・フラガの不自然さを含めてそんなものかとしてしまった。

 

 最近になって過去に向き合った結果、ある結論が出ている。

 

【自分は失敗した】

 

 良く言えば厳しさより【人の和】を重んじる母との確執を自分は深く考えなかったのだ。父の実像がどうだったか以前に、父が立場上で傲慢な態度を取るのが【必然】だったのかもと考えられなかった。

 

 例えば軍においては、立場に見合った態度は必然である。でなければナタルのような正統派が主張するように厳しく統制された故に正しく動ける図等は不可能、マリューが例えば肝心な時に胆力が無い女だったらどうなっていたか以前に、軍に入った事が失敗だったのかもしれないとまで考えた。

 

 母から聞いた事を子供だからと言っても深く考えてなかった。一番やってはいけない事をやる場に入ってしまったのだ。ある日、他の子供達と一緒に遊んでいた際に家の美術品を壊してしまったが、人の良い母は釘を刺しながら失敗は誰にでもあると優しく諭したが?やってはいけない事をやった訳では無いと言った。そのやってはいけない事とは何かを一緒に遊んでいた子供が聞いた。

 

 

 

『そうね、例えば・・・・【戦争】とか』

 

 

 

「~~っ」

 

 気付いたら、白い天井が見えて点滴や呼吸器が付けられていた。軍医が気付いたのを連絡しつつ状況を説明してくれた。二日は寝込んでいたらしい、潜伏している身なので病院には危険だから迂闊に運べなかったと。

 

「推測するに、我々がいる事を知った者が街中に暗殺者でも忍ばせたようですね。女の子を使うとは・・・・最初からフラガ大尉を狙っていたのかも」

 

「そりゃ、有り得るな・・・・アーマー乗りは女の子に弱いって、典型な発想・・・・か」

 

「マユ・アスカに感謝ですよ」

 

 近くにいたマユは、刺された箇所を見たが?

 

『刺された場が良かった!』

 

【胸骨と第2肋骨と第3肋骨のほぼ中間】

 

 実は、この部分は致命傷になる血管や骨の部位が無いので例えば犯罪者に後ろから押さえ付けられて人質にされた人間がいるとする。その際に犯人を撃つ非常手段を取る場合に狙うべき箇所だ。そうすれば人質は弾が貫通しても命の助かる可能性があると同時に犯罪者を無力化する事も可能。

 

 意識が無くなっているのはナイフに痺れ薬や麻酔の類いを塗ってあったのが原因と傷口の腫れ方とムウの反応でわかったのでノイマン達と共に殺菌した手で直接圧迫等の基本的な応急処置をマユがやったらしい。

 

 アーマー乗りなムウなら出血量のリスクには勝てるとして連れ帰って輸血や本格的な治療をする流れ。ムウの生命力任せだとする意見に対しては?

 

【焼いて塞ぐよりはマシ!】

 

 ナタルですら気圧されたり、自分では昔ながらの焼灼止血法には耐えられないと遠回しに言い放たれた事に苦笑いをした時、マリューと一緒に入って来たマユが頭を下げた。

 

「どうも・・・・勝手な事を」

 

「いや、命を助けて貰えて感謝してるよ。しかし、どこでこんな療法から刺し傷の位置から種類やら反応なんて覚えたんだ?」

 

「私は、自分なりに勉強しました。その中でシミュレーションしたパターンだったので」

 

「それにしては胆力があるね、流石は【リンさんの妹】『煩さい!』・・・・っう」

 

「ごめんなさい、お大事に」

 

 そう言ってマユは退室した。何とも言えない空気の中で状況を整理した軍医は漸く口を開いた。

 

「どうやら、相当にリンさんと比較されていたようですな。仲良し姉妹と思ってたら、裏では色々あったようで」

 

 ムウが直前迄見ていた夢からしたら皮肉過ぎる事だった。あの姉妹は大半が見たらお互いに必要ではあるが、有りがちな部分から来る闇が深かった。

 

「それでも、身内思いでいられるってのは眩しいよな・・・・あの姉妹が俺や周りにいた子供達だったらなあ・・・・」

 

「大尉、同じように育つとは限らないんですから・・・・」

 

 ムウの話を聞いたマリューは何となくわかっている。子供の頃とは言っても両親の事を深く考えなかった自分を悔いている。だが?

 

「それに、命が無かったかも・・・・」

 

 深入りしたら、何が起きたか知れない。ムウの子供の頃は【世界情勢の過渡期】の一つだ。それに、深入りと言うならば。

 

「自分達なりに自己流でやってた姉妹、コーディネーターだとしても・・・・いや、だからこそ異端の域ですな。プラントに住んでいたら【殺されていた】かもしれない」

 

 否定は出来ない、遺伝子操作をしている者達にとってはナチュラルとそう変わらないレベルの調整しかしてないハズが最上級な成果を叩き出すような例が身近にいてはどうなるとした考案だ。カナ―ドが言っていた【サーカス】の例を出す限り、フレイが何故か知っていた事からの結論も出ている。

 

【ジョージ・グレンの残したデータは不完全なものだったのではないか?】

 

 ジョージが公開された通りの技術で最初に生まれたと同時に異端であっただけ、そうでなければ念入りな遺伝子操作を受けた者は全員がジョージ・グレンになるハズなのだ。

 

 

 

 ――――――――。

 

 

 

 一方で、マユは頭を冷やすべく仮宿になっている病院だった施設の外に出ていた。思わず怒鳴ってしまったが、自分がリンの妹であるのはマユにとっては最大の光であり闇だ。両親ですら知らない内に自己流で文武を鍛えた姉と比較され始めて密かに荒れた。マユに冷たくされては落ち込んで家事に逃避するリンは能力以外は駄目人間なのは間違いなく。そんな姉を見下して心の均衡を保っていた程だが?

 

(自業自得だもん)

 

 途中で気付いたが、リンは決して才女では無い。遅れて努力し始めた自分の方が数値だけなら成果を叩き出している分野が多かった・・・・足踏みしてしまったのは自業自得と割り切り。いずれ、自分も姉のようになると誓った時に自分は知ってしまったのだ。

 

 

 

 

【両親の正体を】

 

 

 

 姉に知られるのだけは絶対に防がなければならない、それが自分の使命と格好着けてから自分は姉がやはり大好きなのだと再認識した。だからこそ必死に勉強をしてヘリオポリスに同行させてもらえるだけの成績を叩き出したと回想して漸く頭を冷やせた時、ふらふらと雪道を歩く金髪の少女が見えた。何やら夢遊病者のようで近付いたが?

 

【マユ!】

 

 以前にあった【事件】と似た状況のせいか、リンの声がマユの頭に響いた。ポヤ~っとした少女の目はマユを見ながら徐々に鋭いものに変貌して軍人が使うようなものとマユにもわかるナイフを抜いていた。

 

「赤・・・・【赤い瞳】・・・・ステラ、全部やっつける!」

 

【赤い瞳】

 

「ま、まさか貴女・・・・っ!」

 

 思わず身体を逸らした次の瞬間には、顔の近くをナイフが通過した。次々と繰り出される刺突と斬撃は速くて強いが規則的だった以上に。

 

(お姉ちゃん程じゃない)

 

 実際は試しに組み手をした時ではなくシャドーや素振りでやっている時。アレを対峙した時に向けられたらどうなるかと想定した時程な恐怖は無い、それにもう一つ。

 

(私の【眼】を狙っている。それな・・・・っ!)

 

 バランスを崩して仰向けに転倒したマユの目には右手のナイフを突き刺そうとするステラだった。狙いは自分の【赤い瞳】とした時に、ヘリオポリスでリンを止めた時以来の感覚が走った。咄嗟に左の掌を出して敢えて突き刺させた事により、ナイフを握った手を受け止められた。短い刃が眼前で止まってくれたので、そのまま必死に身体を捻って逆にマウントを取れたと理解した瞬間に躊躇無く右拳を鳩尾に二回、三回と打ち下ろして沈黙させた。

 

「い、痛い・・・・痛いよ。けど、勝った・・・・お姉ちゃんのお陰だよ」

 

 気を抜いた時にナイフが刺さったままな左手に激痛が走ったし、やはり何かが塗ってあるので感覚がおかしい。騒ぎを察して駆け付けた者達は唖然とする他は無かった。

 

 

 

 ――――――。

 

 

 

 

「あの姉あって、この妹ありってとこね。プロ軍人を暗殺未遂にする奴に襲われて、逆に叩き伏せてお縄なんて・・・・」

 

 フレイが青ざめながら呆れたように述べた。ムウによると間違いなく自分を刺殺未遂にした存在を言ったようにするとはとしたが、怪我に響くからあまり騒いでやるなと言われた。

 

「・・・・やっぱり、コーディネーターってのはその気になればあんななのかな・・・・イングリットさんが調べたようだけど、あのアウルってのと同じエクステンデットだったんだってさ・・・・俺達、此処で安全なのかな?」

 

 何気にカズイがボヤいたが、やはりヘリオポリスの学生組はカズイのこういう時が苦手なのだ。自分達の嫌な心情を代弁させているようだとしながら暗い時間ばかりが過ぎた。

 

 

 

 

 そして、騒ぎを知らないパイロット達の中で新型のシミュレーションが行われていた。

 

 

 

 

「くっ、この操作性じゃなくて。伝達の巡りの悪さは何なんだ!?」

 

 キラは完成間近なインパルスのシミュレーションを終えたが、疲労具合がストライクで実戦をした時以上でニコルも同じだった。次にカナードが始めてキラとニコルよりは良いのでカナードが乗るのは確実であろう。

 

(二人は気付いてないな、この操作は。最低でも自分を知り尽くさないと無理だ)

 

 複数のジンと陸戦で戦うが、どうにも自分の身体リズムからしてXナンバー以上に合わせないといけない。それはつまりミラージュ・フレームと同じだが、リンがいないのを知らないかもしれない相手からの送り物のせいなのかと思っていた。それにしても、生態リズムのレベルで合わせてるとした割には・・・・せめてリン本人か近い者。つまり、自分とキラ達以上な関係とした時に繋がり始めた。

 

(まさか、リンがいないのを知らないのではなく知っている。その上で、これの操作系に合うようにした者を乗せたがっている。それは俺ではなく・・・・マユ・アスカを完成させたデスティニー・インパルスに乗せろと遠回しに言っているのか、ギルバード・デュランダル!)

 

 怒りを堪えながら強引に最後の敵を撃破してシミュレーションを終えたカナードは鬼の形相であった。再読するべき資料の提供には感謝するが、デュランダルはやはり自分の憎むべき敵だったのかもしれない。




 二次でお約束だった原作シンより強いかもなマユ回。ステラのスイッチには【赤い瞳】も入ってました。
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