「どっ、どう言う事だ!戦争は終わったハズではないのか!?」
「後だ後、考えるのは後にするんだ!今は逃げるんだ!逃げなきゃ死ぬぞ!」
正体不明なMS部隊が突如現れての無差別攻撃、それに対して駆け付けたのも正体不明なMS。薄暗くなった町中を逃げ惑う人々は中立ならではな考えをしていたせいでパニックになる者と何とか逃げ出そうとするかな者達が混じっているが、宥める側は事情を知ってる者が混じっていると知る術は無い。どのみち今は逃げるしかないのだ。
――――――。
ビームライフルをシールドで防ぎながら突貫してくる敵機をスウェンは回避するが、追撃せずシールドを構えるだけなのを見てどうやら被害を最小限にしたいようだと看破したが甘いと断じた。今は迅速に鎮圧すべきなのだ。
だがカナードには理由がある。その一旦は指令部とすべき場で立証されていた。
マリューに対してキラとニコルが出撃を求めていたが、マリューは潜伏中な為にストライクとブリッツを出すのは非常手段であり留守中を狙われたらいけないとして却下した。それに更なる問題がある。
「貴方達、市街地で戦える?一般人を巻き込んで耐えられる?」
二名は押し黙った。何度か対話してヘリオポリスの件を気にしているとしたニコルもそうだが、キラはリンを攻撃してしまった時のような事が起きては最悪だとマリュー達は見ている。市街地戦をやらせては充分に戦えるか不安とで今後に響く危険もある。
今はカナードに任せるのが安全なのだ。
「キラ、気にしないで下さい。本陣を守るのも戦いの重要事項です。マユさんを危険に晒してはリンさんに顔向け出来ないでしょう?」
ニコルの言葉は古傷を疼かせる言い方だが、キラにとっては最優先事項だった。外宇宙に行ったと迄は知らないが、何かに巻き込まれているのが明らかなリンが帰る迄は、自分が以前のような状況にならずにマユを守らなければならないのだ。だが、ザフトの自分より。カナード達がキラの方を注視しているのをニコルは薄々気付いてはいた。
―――――。
(掛かってくれたか!)
カナードは、ストライクの発展型と見ている機体以外が退散しているのを見て予定通りとはしたが、相対している敵は只者ではないとわかっていた。建物を倒壊させてはならない側にとっては最悪な位置か手前に次々移動する上手さは見事としか言いようが無い。ライフルをシールドで防ぐか回避に専念せざるを得ない状況を繰り返すが、ストライクとそう変わらないのならばエネルギーがそろそろ不安になるハズとして、敢えて広間とすべき箇所に逃げた。
「追って来てくれた。見せしめに建物を壊すような事は無いようだな!」
人間にとっては格闘技の試合場程な広さがある空間に二体のガンダムタイプが向き合う形となった。これならとしてサーベルで斬りかかった。パワーはインパルスが上のようだが、調整の問題で動きの柔軟さが違っていた。シールドで防ぎつつ流して横なぎの反撃が来るが屈んで回避した後の突きをサイドステップで回避される。
現存するビームサーベルは干渉が出来ない為に打ち合ったり鍔是り合いが出来ないので、斬り掛かられた場合は回避かシールドで受け止めるかだ。十を越えるやり取りの後に内にスウェン機の方がエネルギーに余裕が無いので勝負に出ようとした時だった。あろうことか、カナードはビームサーベルもシールドも足元に投げつけた。
スウェンは二つ共回避したが、次の瞬間には取っ組み合いに持ち込んで来た。虚を突かれた為にサーベルを握る右腕を掴まれたがシールド打突で弾こうとした時。
【勝敗は決した】
―――――――――― ッ
【パルマフィオキーナ】
掌の槍とも言われる予定になる隠し兵装の試作品がカナードが操るインパルスには搭載してあったのだ。これは現段階では一発しか撃てないがスウェンも右腕を失った事で不利を悟り全力で離脱した形になる。何が起きたかの詳細より現状を優先した手並みはカナードからしても見事であった。それに、他の戦力も離脱はしたと確認をした。
「鮮やかな引き際だな、ラミアス艦長。深入りは危険なので、これより帰還をする」
告げた形にしたカナードは、襲撃して来た敵の正体を論議するが密かに話は通されていた。それは翌日に動き出す。
「なっ、何ですって!?」
マリューが一般の記事で見たのはスカンジナビアの山地にある不法な人体実験用カプセルらしき物体であった。カナードと戦っている間に他が周囲を調査して持ち帰った映像を一般ゴシップに流したらしい、中立地帯でありながらプラントやユーラシアからエクステンデットと変わらない非道を行っているスキャンダルとして扱う記事だが、カナードは内心でほくそ笑んでいた。何とか周りを宥める内に、直ぐにでも起きる事態を知っているからだ。
―――――――。
「旧時代の【異物】にまんまと食い付いてしまったようですな」
ナタルが嘆き混じりな声色で述べた。確かに先日の部隊が持ち帰った映像は非道な人体実験をするカプセルのようではあったが、実は全然違っていたのだ。
【鉄の肺】
「治療中なフラガ大尉が付けている酸素吸入器が不安定だった時代に産み出されたものの一つだ。今では当たり前だが口に付ける吸入器からのは当初は危険なやり方であり、その為に産み出されたものの一つだ。映像を拡大して漸くわかる撮り方だったが、見ての通りに一見は人体実験用カプセル紛いな外見だが全体を見ると人間の首だけ出る形だな。そうやって患者を入れて首から下が入った器具内の気圧を下げると肺は膨らんで空気が入りやすくなると言うコンセプトで産まれた。寝ながらやる為のものとして仕上げたが欠陥が多いから廃れたものの一つ。スカンジナビアは中立故なのかは知らんが博物館行きな代物が多く持ち込まれたが、それを骨董品として保管しといたものと声明を出した」
カナードが仕方ない事のようにパンパンと手を叩いてまとめた。MSで攻め込みながらスキャンダルの資料だけを戦利品にとは虚を突くには一理あるが、その場にいた学生から軍人迄、旧時代の骨董品に惑わされての戦火等は目も当てられないとしている一方で、少し前の自分には他人事ではないとしながら【仕組んだ者】の手の込んだ発想に舌を巻くしか無かった。そしてフレイが一言述べた。
「攻め込んだ連中の首魁の書いたシナリオはコメディなのかしらね?」
間違ってはいないが、相手に合わせた作戦を立てられるのも驚異だとカナードは認識していた。
――――――。
「ぐああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
とある屋敷では、自分自慢の美術品に当たり散らす紫の口紅を塗る短髪な男の怒声が響き渡っていた。
【ロード・ジブリール】
ブルーコスモスの強硬派の男であるが、今回の件は正にブービートラップの類いにしても間抜けに過ぎる。老人達の呆れた嘲笑に更に頭に血が昇る。流石に今の時代では知識すら廃れたものに飛び付いての失態なので謎の新型云々を騒いでも効果が薄い。これを目論んだ者に勉強しようがないものを使ったトラップを仕組まれたと考える事もなく荒れるばかりであった。
【更には命令を下した部隊にも逃げられた】
後日、私的な美術コレクションを自分で壊滅させた事も彼の血圧を上げるだけであったが、何故かしぶとい。ビームで焼き殺されでもしない限り何度でも立ち上がる男がジブリールであった。
『ガセ情報を掴まされたのか掴んでしまったのか関係無く、早速【次】をやるのかね?』
「当然ですよ、コーディネーター共を倒せ滅ぼせやっつけろと声を上げるべきなのに、ユニウスの破片の落下等で消してどうするのです!」
実際は体制を整えたいからだ。それでも動き出すべきとしている様子に過激派はこれだからと言いたい重鎮達は困り顔になり掛けていた時、ジブリールはハッとした顔になっていた。
「そうだ!【オーブ】ですよ、ザフトは地上から宇宙に上がる手段に乏しいのでユニウスの時には静観してたと抜かしてますが、オーブはマスドライバーがあるのに何もしてなかった!そこを突いて例の白紫の件だけでも問い質すのです!」
『悪くは無いが、戦艦の準備なんで無理だったとかでとぼけられるだけではないのかね。オーブのウズミ・ナラ・アスハは中々の曲者だからな。Xナンバーの後継機の一つでも隠し持ってれば難癖くらいは付けられるだろうがな』
それを聞いてジブリールには妙案が浮かぶ。そうだ【ウズミ】と【隠してれば】の二つのキーワードからの発想だと。
「申し訳ないが、大西洋連邦の重役辺りでも使って、こう通達するよう仕向けていただけませんか・・・・【白紫のパイロットと会談を申し込みたい】と」
『何っ、会談・・・・あの機体のパイロットがオーブの者かどうか不確かではないか?』
「そうですよ、それから白紫が一応は所属していたのは明らかなアークエンジェルの動向を探ってみたところ、何故か艦を空き家にして放棄したが、地球に降りてから白紫が搭載されてなかったのではないかと言われています・・・・そこで?」
そこから聞かされた案は一理あるとする顔色が重鎮達に浮かび始めた。ジブリールとて伊達にロゴスやブルーコスモスから重用されているワケではないのだ。
種死のジブリールさんのコメディ呼ばわり代案からオーブに対する閃きに当たる?な回でした。