弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
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『人生は神ゲー』なんていう奴もいるらしいが、
俺からすればそいつの言っていることはよくわからない。
そりゃ、俗にいうクソゲーみたいに当たり判定がバグってるわけでもないし、
グラフィックは最高峰でフレームレートも滑らか。
突然ゲームオーバーになることもなく、それなりにプレイできる。
でも、それだけだ。
生まれた瞬間にパラメータは決まり、やり直し不可。
セーブもロードもないし、むしろ強制オートセーブで毎秒上書き。
運要素が強すぎる上にリセット不可なんて、ハズレを引いたやつは一生ハンデを背負うしかない。
こんなものを『神ゲー』とは呼べない。
でもまぁ……、簡単にゲームオーバーにもならずにギリギリ?遊ぶことはできる。
だから『神ゲー』とは言わないが、『クソゲー』とも呼ばないだろう。
俺からすると、『クソゲーよりの凡ゲー』だ。
以上、普通の高校2年生 相原 みなと。
***
「あー……疲れた」
ベッドに倒れ込みながら呟く。
部活が終わって帰宅すると、もう20時を過ぎていた。
春が始まったばかりなのに練習はキツいし、時間も長い。
うちの高校では、2年の秋の大会を最後に部活を引退するやつが多い。
学校全体で部活に力を入れているわけじゃないから、基本的には2年で区切りをつける流れだ。
だから春からの練習は割と本気モードになる。
サッカー部の先輩たちも去年の秋にほとんど辞めた。
だから俺たちも、同じ流れになるんだろうなって空気がある。
そんなこんなで毎日部活に励んでいるわけだが、
練習を終え家に着くのが20時前。
ご飯を食べて風呂に入って、気づけば21時ごろ。
疲れているから遅くても23時には寝たい。
……ってことは、自由時間は2時間くらいしかない。
学生だって意外と大変なのだ。
とはいえ時間があれば遊びたいし、2時間しかないが2時間もあるともいえる。
だったら、やることは一つだろ。
そしてゲーム機の電源を入れる。
起動するのは「アタックファミリー」、通称「アタファミ」。
ライトからヘビーなゲーマーまで楽しめる『神ゲー』。
サッカー部で同じクラスの中村もハマってるって言ってたっけ。
クラスでカースト上位に立つイケメンリア充の中村だってハマる「アタファミ」。
つまり『神ゲー』間違いなしだな。
まぁ、アイツは結構ゲーム好きなだけかもしれんけど。
早速ネット対戦に潜って、レートマッチ開始。
キャラ選択画面に表示される文字。
harami レート: 2008
画面を見て思わずニヤける。
haramiは俺のプレイヤーネーム。
由来は、安直だが『あいはら みなと』の真ん中ではらみ、harami。
そして、その隣に表示されているレート:2008。
レートとはネット対戦での強さを表す。
アタファミのレートは、1500がスタート。
勝てば増え、負ければ減る。単純明快な強さの指標。
そして、2000超えは上澄みの中の上澄み。
VIP魔境帯の最上辺だ。
その強さ、例えるなら「地元最強」レベル!
……なんか微妙か?
まあいい。
とにかく、ここまでコツコツ積み上げてきた成果だ。
この強さなら、リア充イケメンで同じサッカー部の中村にもアタファミではボコれるはず。
いや、サッカーでも負けるつもりはないけどな?
アイツもアタファミが強いなんて聞くが、ここまでレートを上げてるわけじゃないだろ。
一度対戦してみたいもんだ。
でもアイツ相当プライドが高いんだよな。
俺が優勢になったら、横で舌打ちとかしそう。
まぁ、ぼちぼちレート対戦やるか。
俺はお気に入りのキャラ「グラスバイオ」を選択。
図体のでかい緑のマッチョのキャラ。
こいつはとにかく攻撃力が高い。
図体の割にそこそこの速さはあり、多種のメテオ技やアーマーのある必殺技でバーストを狙いやすいのが特徴だ。
耐えて高威力技をぶちかます、そんなロマンが魅力のキャラ。
弱みとしては当たり判定の大きさ故に敵のコンボからはなかなか抜けられない。
キャラによってはコイツ相手に実用的な投げ始動即死コンボまでもってるくらいだ。
それにアタファミは、前まで火力による差し込みが流行っていたが、いつの間にか研究が進み今はコンボが主流になったのも若干向かい風。
おのれ、コンボゲーを普及させたレート一位のnanashiとやらめが。
いつかそこまで上り詰めて叩きのめしてやるからな。
今のトップのレートは2500越えなあたり、到達できるとは思えんが。
とにかく、俺としては性に合っていて使いやすいので「グラスバイオ」を愛用している。
それから、1時間ほど対戦をしたところで眠気が来たので、ほどほどにして今日は眠ることにした。
今日の戦績?
まぁ、なんとか2000はキープしたよ……
やっぱ今度中村あたり誘って勝負してみようかな。
ちょっと誰かボコボコにしつつ、レート自慢してぇわ。
そんな事を思っていた俺だが、その1週間後には妙な縁ができることとなる。
それは俺の残りの学園生活で親友みたいな関係となる、友崎とのファーストコンタクトだ。
友崎くんの出番は次回からです。