弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「あ、相原ちょっといいか?」
「ん?」
水曜日の放課後、今日は珍しく友崎の方から声をかけられた。
今日はこれから部活もある。
チラッと周りを見わたすと中村と竹井はまだ教室にいるな。
「これから部活なんだ、手短にならいいぞ?」
「あぁ、わかった。いや大したことじゃないんだが、昨日って放課後何してたんだ?」
なんか、急な質問だな。
昨日といえば放課後は旧校長室でアタファミやってたな。
それも日南からの誘いも断って、な。
そういえばたしか日南はこういってたな……。
『みみみとか花火とか、あと友崎くんも一緒なんだけど』
ははぁーん、昨日俺にも声をかけたが断った的な話を帰宅中に聞いたわけだな?
俺はお前がみみみとかたまとか日南とかと仲良くしてる時に、野郎ばかりでお前を倒すためにアタファミやってたわけだ。
なんか大したことじゃないけど素直に答えるのは癪だよなぁ?
本人に、お前を倒す練習、って答えるのもアレだしな。
てか距離的に中村たちも近いし適当にごまかすか。
「あー、昨日の放課後?なんで?なんかのアリバイ的な?」
「え、いやそんなわけじゃないが」
「そういえば日南に声かけられたな、部活がないなら一緒に帰らないかって。みみみとかたまとか、友崎も一緒だったんだって?いいねぇ〜可愛い女子に囲まれて帰ったわけか」
「え?あ、あぁ、でも男子だって俺だけだったわけじゃ……」
お、そうなのか。
結局俺は誰がいたのかは知らなかったしなぁ。
なんか友崎が誰かといるのもあんまり見たことないし、誰がいたのかも想像ができないわ。
「へぇ〜、そうなのか。ついでに誰がいたんだ?」
「えっと、松本と橋口、だな」
あー、運動部だけど昨日は部活休みの日だったし日南とかとも仲いいもんな、一緒になるのは納得だ。
むしろ友崎がいることの方にクエスチョンマークが浮かんじゃうね、これ。
「はいはい、運動部の2人な。アイツラも今日はもう部活に行ったみたいだな。たまに黒板に絵を書いてたりしてるのに」
「そう、みたいだな」
ついでに黒板の上の丸時計で時間を確認する。
そろそろ部活に向かったほうがいい時間だな。
さっきまでいた中村や竹井も俺達が話している間にもう部室に向かったみたいだし。
じゃあ切り上げるか。
「ってか、ヤベ、こんな時間じゃん。俺もそろそろ向かわなきゃ遅れちまうわ。悪い、んじゃな!」
「え、あ。おぅ」
聞きたいことを聞けなかったからか、釈然としない顔をしている友崎をおいてカバンを持ち上げ、軽く手を振りながら教室を後にする。
よし、なんかいい感じにごまかせたろ!
ささ、部活に行きますかね。
今はまだ5月、されど5月。
俺達2年生に残された時間は実は短いってこと、ちゃんと知っているからな。
部活はしっかりやっておきたいんだ。
あと半年もしたら引退してるっていうんだから驚きだよ。
高校での部活が終わればたぶん11対11でマジなサッカーなんてすることは一生ないかもしれないからな。
それを考えれば今のうちにあと半年を本気で頑張ってみるっていうのもいいってもんだろう。
まぁ、フットサルとかくらいなら働いてからでも結構できるのかもしれんけど。
そんな事を考えている間に部室に到着。
入口の靴を見ると、もう半数くらいのメンバーはグラウンドに向かっているようだ。
俺も早く着替えて向かうとしよう。
部室の中に入り、空いているスペースで練習着に着替え始める。
「相原、おっせーぞ。先に行ってるからはやく来いよ」
「おー、すまんすまん。すぐ行くよ」
中村に声をかけられた。
着替えを終えたようでグラウンドに向かうようだ。
なんだかんだ結構いろいろ頑張ってるよな中村。
今の部活の中では運動神経のよさもあって攻撃の中心って感じだ。
中村とあともう一人、俺がエースですーみたいな感じの顔をするパーマかけてるっぽい高橋ってのと合わせて攻撃の要だな。
あのパーマやろうはいけすかんが。
念の為に言っておくと、俺はディフェンスだ。
下手だから攻撃に加わっていないとかそういうことではない。
なんつーかこっちのほうが性に合ってるからな。
相手の行きたそうな所とか、出したそうなコースを防ぎながらネチネチとひっつくのは楽しくてたまんねぇんだわ。
ディフェンスの仕事はボールを奪うことではなく、どれだけ敵のオフェンスを働かせなくするかだ。
ボールを奪うっていうのはその過程からついてくる結果なだけ。
だから相手が動きにくくなることから順番に塞いでいく。
もしも相手がボールを持ったのなら。
まずはシュートコースを防ぐ、これが大前提。
次にコート内側への道を遮る。
外側に行くならどうぞどうぞ、そりゃコースがなくなる罠だからな。
もしも抜きにきたら……。
絶対に足を出さないで全力でボールの前に立ち続ける。
結局のところボールとゴールの間に俺の体を挟めている限りどうあがいてもシュートは撃てんのだ。
これさえ守っておけばよほどの技術の差でもない限りそうそう自由なことはされない。
それに、経験上では我の強いやつこそ、こうやってマンマークされるとパスを出そうとはせずに決めたがってくるからな、どんどん嫌がらせしていく。
そうすればもう負のスパイラルよ。
それこそ俺がエースですみたいな顔したやつがウザそうにしたらもっと楽しくなっちゃうんだよね、いやほんとたまんねーゾ。
声やら顔やらに出させたものなら俺の勝ちよ。
今日のミニゲームの組分けどうなるかな、マッチアップしたほう粘着したろ。
なんか楽しみになってきたな、さっさと練習行くか!
そんな感じでさっさと着替えてグラウンドに向かい、部活へと精を出した。
……ミニゲームで俺と対面した高橋、今日はいいとこ無しだったな!
すまんね、俺の勝ちぃ!
***
翌日、木曜日の昼休み。
今日のお昼は食堂で済ます予定だが、誰かと食べる予定もなかったのでそのまま1人で向かおうとした所、友崎から声をかけられた。
「相原、もしかして今日は食堂か?」
「おう、今日は食堂だな。友崎もか?」
まぁ聞いてきたってことはそうなんだろうけども。
「あぁ、俺も今日は食堂だよ」
「なるほどなー、じゃ行くか」
「お、おぅ」
それがわかればもう無駄な問答も不要ってものだろう。
先週も一緒に飯食ってるわけだしまぁそういうものだ。
食堂につき、俺はコロッケそばを注文する。
友崎は無難にカレーを注文したようだ。
あ、一応言っておくがコロッケそばも無難なメニューだからな?
てか無難じゃないメニューってなんだろ。
なんて、しょうもないことを考えながら座席を求めてさまよい、無事2席分確保することができた。
椅子に腰を掛けて昼食を取り始める。
「なぁ友崎、無難じゃない食堂のメニューってなんだと思う?」
「お前の注文したやつ。なんで蕎麦にコロッケ入ってんの?」
は?
「舐めてんのかお前、蕎麦の中でもコロッケ蕎麦は無難も無難だろーが!」
「えぇ……」
えぇ……じゃねぇ!
蕎麦屋に行ったら基本あるんだぞ!(実はお高い蕎麦屋にはなかったりする。)
まぁ、いい。
俺は気が長い方だからな、許してやるよ。
運が良かったな友崎ぃ!
「そんなことより、結局一昨日って放課後なにしてたんだ?昨日は聞きそびれたし」
そんなことより、だと?
いや、いい。
分かるやつだけでも分かればいいのだ。
分かるやつは分かってる……。
「ぁー、一昨日ね。その話まだ続いてたのか」
「勝手に終わらせないでくれ」
周り見渡した感じ中村はいないみたいだし別に隠すほどのたいしたことでもないからいいけど。
けど、癪だよねぇ。
「友崎がみみみや日南達と楽しくしている間、俺は何をしていたのか、ということだな?」
「え、いや、そうは言っていないが」
でも事実だろう?
みんな仲良く下校して駅まで……ん?
方面が一緒なら駅までではなく電車も一緒だよな。
たしかみみみの最寄り駅が北与野で、この前友崎は俺の1個次の駅と言っていたから、つまり北与野なんだよな。
ふぅん?
一応確認しておくか。
「そういえば友崎って最寄り駅は俺の1個奥っつってたっけ?てことは北与野か?」
「よく覚えてるな。あってるよ、北与野だ」
ハイ確定。
コイツ、駅からみみみと帰りやがったな!
うらや、いや、ずる、あー、とにかくそういうことだな!
「ふぅ〜ん、北与野ってたしかみみみと同じ駅だよな。手を出さなかったか?」
「だ、出すかっての!」
出すかも知れないだろ!
「でも、同じ駅なのに電車降りたらはいさよならとはならんから駅からも一緒に帰ったんだろ?羨ましいねぇ」
「うらやましい、か?」
何だその反応。
余裕ってやつか?
「相原ってもしかしてみみみのこと好きなのか?」
えぇ、なんでそうなったの!?
別に好きとか嫌いとかじゃなくてね!
って、落ち着けまだ慌てるような時間じゃない。
こういうときは冷静に返せば問題ないのだ、冷静にな!
「逆に、みみみのことが好きじゃないやつなんているのかよ。容姿端麗で勉強スポーツも出来て話も面白い、クラスの人気者だろ」
「それは、たしかに……?」
なにか引っかかっているようだが納得はしたようだ。
俺顔赤くなってないよな?
大丈夫だよな?
ちょっと顔が熱い、やべぇなんか適当にごまかそう。
「あぁーっ、俺が一昨日の放課後何してたかだっけ?」
「そう。そんなにうらやましがるなら相原も一緒に帰ればよかったのに、断ったんだろ?」
結局話しを戻しちまったな。
まぁ普通に答えるか。
いや、じゃあもう適当に条件つけて諦めさせてみるか。
「まぁな。大したことじゃないけど先約があったからな。あ、そうだ、俺と友崎は最寄駅近いしお前の家にアタファミ対戦しに行っていいなら答えてやるよ」
「なんだその条件は……」
いや適当に言ったから特に理由はねぇんだけども。
とは言え、ローカルで対戦もしてぇなぁってのは若干思っていたり。
なんか通信対戦だと遅延とかあるじゃん?
そう、俺が負けたのに遅延が影響しているかもしれないじゃん!
ラグとか、遅延なけりゃそりゃあれよ、ぼっこぼこにしてやんよ!
あーでもこれは友崎に言ったらマジギレしそうだから黙っとこ。
キャラ相性のせい、みたいに言い訳するとブチギレるもんな。
中村にキレたわけだし。
「いやぁローカルでもアタファミで対戦してみたいなって。この前からいろいろアタファミの話はするし熱帯もするようにはなったけどさ、対面でアタファミやったことないだろ?ちょうどいいかなって」
そんな感じで適当なことを言ってけむに巻こうかと思っていたが、友崎は悩むようなかををしていたが決意するような顔をしてから口を開いた。
「あ、あぁ、わかった。じゃあそれでいいや。今日うちに寄ってくってことか?」
マジか、いいの?
まいっか、せっかくだしローカル対戦楽しみにいこうかね。
でも今日は部活に行くし、できるなら休日がいいな。
「いやぁー平日は部活あるからちょっと厳しいかなぁ。日曜の午前とかどう、遊び行くわ」
「日曜ね、わかった。それで、結局一昨日は何してたんだ?」
そういえばそういう話だったな。
「旧校舎の方に行ってテレビを使わせてもらって、中村達とアタファミやってた。中村ヤバいぞ、打倒友崎に燃えてんの」
「えっ、マジ……?」
「そりゃもうマジもマジよ。まぁそういうことでリベンジマッチは楽しみにしてろよ」
そんな感じで日曜日は友崎の家に遊びに行くことになった。
俺と友崎は昼食を食べ終え、周囲をみると周りの席も空きはじめていたため、少しだべってから教室へと戻ることにしたのだった。