弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
過去を見てみると、
9巻:2021年1月
10巻:2022年1月
11巻:2024年1月
と来てるから12巻は2027年1月ですねぇ!
ということは13巻は……?
最近忙しかったのですが、私もそろそろ更新していかないと……。
「悪い、おまたせ」
「おう友崎、来たか」
「その、し、失礼します……」
友崎の背に隠れるようにして教室に入ってくる美少女。
体の半分くらいは友崎に隠れてはいるが、控えめながらも挨拶をする。
「よ、文也。それに菊池さんも」
「は、はい。今日はよろしくお願いします」
「うん、よろしくね、菊池さん」
水沢やたまも入ってきた友崎とその後ろに半分隠れる菊池さんに挨拶をする。
そういえば俺ってまともに菊池さんと話したことってなかったような気がする。
なかなか接点がないんだもんなぁ。
「菊池さん、わざわざありがとう。友崎から今日の目的とか聞いてる?」
「はい。花火ちゃんと仲良くなる練習をしてほしいと聞いています」
たまが水沢と仲良くなる、ひいてはクラス中にたまと水沢が仲良くなっていることをわかりやすく伝えつつ周りを味方にするためには、クラスで水沢たちのグループと会話をする必要がある。
そんな中、友崎の提案で失敗しても良い状況での練習……つまり、輪の中に上手く馴染む練習をすることになった。
そしてその役目として白羽の矢が立ったのが友崎の彼女の菊池さんというわけだ。
内々だけでやっても意味なんてないもんな。
「オッケー。だいたいそんな感じ。まぁ練習とかあんまり深く考えないでさ、普通にたまと会話でもしてくれたらいいかなって。結果仲良くなれてたら大成功、みたいな?」
「はい、わかりました。……相原くんは、花火ちゃんのことがとても大切なんですね」
何を思ったのか、菊池さんに突然そんな返しをされる。
い、イジってるのか……?
それとも天然なのか。
「な、何だそりゃ。いやまぁ、友達だからね!当たり前だって!」
「声デッカ」
「はは、相原、照れてるな?」
「う、うるさいぞ!たまにはちょくちょく助けてもらっているんだ、俺は借りたものはすべて返す主義なんだよ!」
「お、いつも助けてもらってるってどんな?」
「水沢?俺のことはもーいーだろ!?」
えぇい、たまもなんか言え!
そう思ってたまの方を見るが、話題に上がって若干照れてるのか顔を少し赤くしており、視線に気づいて肩をすくめる振りをする。
その反応、遅いわ!
俺たちのそんな様子を見てクスクスと笑っている菊池さん。
おいおいおい、君の振った話題だぜ……?
「菊池さん、めっちゃ笑ってるやん」
「す、すみません……。相原くんが、その、友崎くんの言う通りの方だったので、なんだか面白くって」
「ははぁーん、頼りになる最高の親友、とか?」
「この状況でその言葉が出てくるのは肝が据わっているな」
うるさいぞ友崎!
「えっと、その。はい、そんな感じです」
「言わせたな」
「言わせたね」
「相原、菊池さんをいじめるのはやめてくれ」
「うぉおーい」
友崎?
菊池さんと話しててお前の評価ちょっと下がったからな!
「あ、あの。すみません、つい楽しくなって……。でも本当に、頼りになって、いつも前に進む方法を教えてくれるのは相原くんだと、友崎くんは言っていました」
「き、菊池さん!?」
「へぇー!友崎は俺のことそんなふうに言ってたのか!なんだよ、このこのー」
そう言って肩をパンパンと叩く。
いやぁ友崎、お前とは良き友人でいられそうだ!
「でもその前か後ろに、少し抜けてるとか締まらないことがあるとかって言ってたりしない?」
「おい、たーまー?」
「えっと、それは。……はい」
「……友崎?」
「そ、そろそろ本題に入ろう」
「ははは、そうだな。場も和んだところで進めてもいいかもな」
露骨に話題をそらした友崎に水沢も便乗し、ここで俺が言及しても話が進まないとは思ったので渋々それに従うことにした。
「ではではあとはお若いお二人さんでどうぞごゆっくりと」
「なに?その、一昔前のお見合いみたいなセリフ」
そんなたまのツッコミもスルーしながら見守ることにした俺達野郎ども3人。
……
「風香ちゃんって友崎と付き合っていたの?」
「えっと……はい。お付き合いさせていただいています」
おぉ、ぶっ込むねぇ。
この切り込み方、さすがたまだ。
聞かれた菊池さんは顔を赤くしている。
……横で友崎も顔を赤くしているし、水沢にいじられている。
「そっか。友崎、最近変わったもんね。明るくなった。もしかしてそれも風香ちゃんのおかげ?」
「いえ、私は関係ないんです。友崎くんが自分で変わろうとした結果なんだと思います」
「そうなんだ」
「はい。そうやって、なりたい自分に変えていくことはとても素敵なことだと思います」
「へぇー!そういうところに惹かれたってこと!?」
「あ、……は、はい。わ、私のことは、その、程々で……」
「あはは、うん。色々聞いてごめんね。やっぱり気になって」
菊池さんは顔を赤くしながらたまの言葉にタジタジで返す。
うーん、これが女子会って感じ。
むしろこれ、俺達聞いてていいの?
「でも、自分を変えることが素敵、かぁ」
「えっと、花火ちゃんは、最近大丈夫ですか?」
ポツリと呟いたたま。
今現在、自分を変えるためにアレコレしていることに思うところがあるのかもしれない。
そこに遠慮がちながらも菊池さんが、今回の本題と言える内容を切り込んだ。
「うん。やだなーって思うときもあるけど、私は大丈夫!葵とかみんみが助けてくれるし、そこの3人も協力してくれてるし。味方はいるって、私は正しいんだって思えているから、大丈夫」
「それならよかったです。頼りになる仲間がたくさんいて、羨ましいです」
「そうだね。う〜ん……相原以外は頼りになるよ!」
いや、流石に聞き捨てならないんだが、それは。
静観を決め込もうと思っていたが黙ってられるか。
「この俺が頼りにならないと!?友崎よりもかッ!?」
「おい、どうしてそこで俺の名前を出す」
お前が自己肯定感低いからだよ!
俺に任せろ、ドンッ!って感じに言える男になったら認めてやる!
俺は言える!ドン!
「だって相原、いつも失敗ばかりしてるじゃん。自分でもそう言ってるし」
「それは!……一理あるな?」
「ほらね?」
したり顔で返すたま。
たしかにいつも失敗してるやつが頼りになるかと言われると頼りないかもしれない。
割と正論だったわ。
「お二人はとても仲がいいですよね。すごく自然な感じがします」
「まぁ、俺とたまの仲だからね!」
「と、とてもってほどでも。いまは席が隣だからたまたま話すことが多いだけ!」
「隣だから?……席替えとかしたらどうなるの?」
「疎遠になるかもね」
「冷たくない!?」
近いから話してただけだったのかよ!
そんなこと言われたら、ぜってー席替えしても話しかけに行くからな!?
俺の反骨心舐めんなよ!
「やっぱり、とても息が合っていて素敵な関係だと思います。それに相原くんだけでなくても、こうして周りに人が集まるのはみんな花火ちゃんの事が好きだからなんでしょうね」
「す、好きって……。さ、流石にそれは照れる!」
「ふふ。私も、今日は花火ちゃんはとても素敵で可愛い人だと知ることができました」
「だ、だから、その。ちがうの、それは私の背が小さいから!」
「背が?」
不思議そうに首を傾げる菊池さん。
お、さっきまで練習してたやつがでてきたな?
友崎発案、″可愛げ″を出す練習と、そのネタ仕込み。
つか、ネタ仕込みっていうより練習したせいかなんか口癖みたいな感じでポロッと出てしまったようだ。
たまの顔がどんどんと赤くなっていく。
「じゃなくて!今のナシ!忘れて!」
それをみて外で見ていた俺達外野も含めて全員笑う。
「ははっ、練習しといてよかったな」
「おーいたまー。恥ずかしいからってそんなに遠くに逃げるなよ」
「それは背が小さいから!小さいから遠くに見えるだけ!錯覚!」
「あ、そうなの」
「ふふ、やっぱり可愛い人ですね」
「だからそれは!」
「ははは!」
この空気を感じて思った。
これなら、クラスでも問題なくやれるだろうな。
***
放課後の作戦会議をしてから数日後。
「あ、たま。ちょいこっち」
「ん、なに?」
教室にて、俺と中村と水沢、それにみみみとその友達の女子たち数人で話ているところで、水沢がたまのことを手招きして呼んでいた。
「いや昨日のドラマの話してたんだけどさ、たまも好きだって言ってたろ?で、今ピンときたんだけどあの妹役がたまに似てるよなーっと思って」
「その妹役って中学1年生なんだけど」
「背丈とかそっくりじゃん」
「私は高校生!」
そんなやり取りで周りに笑いを誘った。
この間の放課後の通り、たまは水沢と仲良くなる事を目標に教室内であれこれと始め、今会話しているのも水沢がそのあたり気を使ってくれてのものとなる。
更に、それだけでなく数日の間に友崎がもっとクラスのみんながたまちゃんに対してとっつきやすくするための案を考え……。
「もー、たまってばー。そんなに遠くにいないでもっとこっちに来なよー」
「割と近いよ!?私が小さいから遠くに見えるだけ!」
「あ、ホントだ、こんなに近かった!ギュ~!」
「ちょ、みんみ!はなして!」
みみみに抱きつかれ困ったその様子を見て、笑いが周りへと伝播していく。
たまの小さくてかわいい、という部分を強調しイジることで周りから見た時の『かわいげ』というところをわかりやすくしている。
その様子を見て、後は解決まで時間の問題だと確信した。
こうしてクラスに馴染んでいけば、たまちゃんの味方も増えていく。
そうすれば、水沢の言う″政治が上手い″紺野は周りの空気を感じ取り自分が不利になる前にたまちゃんへの嫌がらせをやめるのは間違いない、だろうな。
現にここ数日で日を追うごとにたまへの紺野の嫌がらせの頻度は減って行っている。
手を出しづらくなったのと、きっと飽きがきたのの両方とかなのかもな。
人間の行動理念として、一定以上に面倒くささを感じると急にその行動をやらなくなるってことがあるらしい。
つまり、紺野の怒りやらよりこの状況のしがらみを見て面倒くささが上回ったってことだ。
「ん?はらみー、なんかご機嫌だね?」
「んー、べっつにぃ?俺はいつでもご機嫌だぞ。ま、二人して楽しそうだなと思って」
「でしょう!ん?ふたりして!?やっぱりたまも私に抱きつかれて嬉しいんだ!もー、たまぁー!」
「もー、じゃない!は・な・し・て!」
「はは、楽しそうで何よりだな。な、修二」
「いや俺に振るなよ」
水沢もこうやって自然とこのグループに絡ませようとしているおかげもあってのことだな。
さり気なく空気を回す水沢は流石だなと実感する。
じゃ、乗っかりますか。
「竹井も中村に抱きついて仲良しアピールしてみれば?」
「おぉ!修二ぃー!」
「やめろバカ!俺たちがやってもキモいだけだろ!」
「ははは、そりゃそうだ」
そんな喧騒の中、チラッと紺野たちの方を見る。
向こうもいつものグループで話していてこちらの方は特に見ている様子もないが、まぁそれでも対立するには面倒くさい、ということを植え付けられただろう。
みみみの言う通り、たぶん俺はご機嫌だ。
これで自然と元通りになっていくだろう。