弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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金曜日の朝、いつもの日課となっている日南との作戦会議。

俺は昨日の戦果を日南に報告する。

 

「日南、聞いてくれ。サブクエストの方はクリアできたぞ!」

「あら、やるじゃない。それで、早速だけどなにか感じたことはあるかしら?」

 

珍しく素直に褒められた気がする。

えーと、感じたことか。

 

「そうだな、今回は話を聞き出すという目的を持っての会話だったけど、これが意外と難しいって事を実感した、かな」

「ふーん、まぁ今のあなたならそうでしょうね」

 

日南が相槌を打ったのを確認して続きの言葉を考える。

 

「なんていうのかな、聞き出すってことは相手に話題を振る必要があって、その上で相手を話に乗せる必要もあって、この2つを達成するのが大変だったな」

「なかなか分析ができているじゃない。流石は腐ってもnanashiね」

 

腐ってたのか、俺?

 

「でもクリアできたのよね?」

「あぁ。とはいえ今回は、ゴリ押しだったかな……。水曜日の放課後に直接聞いたんだがのらりくらりと誤魔化されて、そのまま部活の時間だからってタイムアップを食らったな。翌日、時間を取れる昼に捕まえてそのまま長期戦覚悟で聞き出したよ」

 

俺がそう言うと、日南は片手で自分の頭を抑えてからはぁー、とため息を付いた。

 

「な、なんだよ、しっかりとクリアしたぞ!」

「そうね、クリアはクリアだわ。スマートじゃなくても結果を出したのだからそこに間違いはない。それにこの課題自体はチャレンジした時点でクリアのようなものではあるしね」

 

チャレンジした時点でクリア?

どういう事だ?

成否は問わないってことか?

 

「つまりどういう意味だ?」

「そのままの意味よ。今回は成功や失敗に大した意味はないの。経験値を稼ぐのだけが目的だからどっちでもよかった。貴方はさっき自分で言ったでしょ。自分から話題を出すこと。それに相手を乗せること。その重要性を知ることが大事なの」

 

おぉ、そういうことか。

俺は今回の課題でそれらを学んだから、挑んで分析をした時点でクリア、と。

ん、でもこれ……。

 

「なぁ、わざわざチャレンジする必要ってあったか?お前から会話でそれが大事って話を聞けば済んだんじゃないか?」

「必要だったに決まってるじゃない。貴方はゲームの説明画面を見ただけでゲームの内容すべて理解できるのかしら?」

「う、それは、無理です……」

 

そう言われると納得してしまう。

どうもゲームにたとえられるとすんなり受け入れられてしまうな。

 

たしかに説明だけじゃ理解できない。

たとえ説明書だけ読んだとしても実際に動かしてみないとわからないことは多い。

だから体験して身を持って知っていく必要があった、か。

 

「そういうこと。でも無事に達成できたことは称賛に値することよ。また一歩前進、やったわね」

「あ、あぁ」

「それで、この課題については以上でいいかしら?」

 

他に報告することか。

あぁ、あるな。

 

「いや1個問題と言うか、話があるかな。課題を進める際の話の流れで、日曜日に相原が俺の家に来ることになった」

 

これには日南も予想外というような顔になった。

 

「驚いたわ、やるじゃない。至って普通の友好関係のようだわ。あなたは意外と相原とは相性がいいのかも知れないわね」

 

何だその言い草は。

そもそも至って普通の友好関係じゃなかったのか?

 

「それでどういう流れでそうなったのかしら?」

 

流れ……。

いやなんだろな、正直よくわからなかった。

ありのままに説明する。

 

「なんでだろ、正直よくわからないんだよな。火曜日の放課後に日南の誘いを断った理由についてしつこく聞いてたんだけど、じゃあ俺の家にアタファミやりに行っていいなら教えてやるって言われてな」

「うーん、面倒くさくなって難題をだして断ろうとしたとかかしら?」

 

まぁ、そう考えると納得、か?

 

「あぁ、あと相原は意外と日南やみみみと帰れなかったことが残念だったらしくて、嫉妬?してきてたかな。それで相原にのらりくらりと話をそらされたから、みみみのこと好きなのかって聞いたらちょっと様子おかしくなったかも」

「なるほど。相原をいじったってことね?」

 

あー、たしかにそうなる?かもしれない?

たしかに相原は図星をつかれたような照れがあったか?

 

「まぁそれで急に話題を戻してきて、さっきの条件をつけられた」

「うん、大体わかったわ」

 

わかったのかぁ。

俺にはさっぱりわからない。

 

「あなたは課題を無事クリアしてたうえで、いうならシークレットクエストまで見つけたわ。努力は確実に実を結んでいるということよ」

「そ、そうか。でもこれに関しては運がよかっただけかもしれないけど」

 

日南は俺の言葉を聞いて、ふぅーとため息を吐いた。

今日はため息多いですね……。

いやまぁ俺が原因なんだよな、なんかすんません。

心の中で謝罪をいれる。

 

「あなたは自分に対して少し卑屈が過ぎるわ。そういうところはなおすべきね。たとえ運がよかった結果だとしても、運を引き寄せたのはあなたの行動よ」

 

俺の行動が運を呼び寄せた?

運って自分の行動ではなく偶然の産物だから運っていうんじゃないのか?

 

「運って言うのはね、意外と平等に降ってくるものなの。ただ運が悪いなんていう人間は自分から運を拾う行動を起こしていないだけよ。例えば、あなたがもしやらなくてもいいサブクエストだからと相原に話しかけなかったら?水曜日の失敗で諦めていたら?時間を取れる昼に話しかけるという対策をしなかったら?」

「それは……」

 

たしかに、それら1つでも怠ったら今回の結果にはなっていなかったかもしれない。

 

「そう、つまり全てあなたが行動を起こして引き寄せた結果よ。人間、自分が出した結果については自信を持つべきよ」

 

日南の言ってることはたぶん正しいんだろう。

それに、日南の言葉は俺の行動や努力が認めてくれたような気がして、嬉しさもあった。

 

「あぁそうだな。ありがとう」

「わたしはただ思ったことを言っただけよ。あなたの言い分だと私の積み上げてきたものも運で済まされそうで腹がたっただけのことよ」

 

あぁ、なるほど。

これも日南の本心なんだろう。

それにしても卑屈をなおす、か。

気をつけないとかな。

 

「納得もしたようだからこの話はもういいわ。サブクエストの方の話は大体聞いたし、もういいかしら?」

「あぁ」

 

俺も報告することは報告したはずだ。

 

「それじゃあせっかくだし、放課後までに日曜日用の課題を考えておくわ。チャンスを手に入れたのなら、最大限に生かさないとね」

「そこでも課題が出るのか。お手柔らかに頼むよ……」

「できない課題は用意しないわよ。あとはあなたの頑張り次第」

 

朝の話の作戦会議はこれで終了した。

 

その後、今日は昼に今週最後の経験値稼ぎの会話に参加することになった。

 

「タカヒロなんか面白い話してよー!」

「うわっ、無茶振り!?」

「なんかあるっしょー!」

「えー……あっ、じゃあ昨日彼女がさぁ〜」

「うわ、惚気か!?」

「ってかこの前別れたとか言ってなかったかオイ。また別の子かよ」

 

……はなしの流れが早すぎる。

この会話は相原、水沢、竹井の男3人で話していたところ、みみみと日南が混ざりつつ日南のフォローで俺も混じった6人の会話だ。

 

課題的には聞いてるだけでいいので、ヘタを踏まないことだけを考えて静聴に徹する。

今はまだ俺のスキルが足りなすぎるんだ。

会話を聞くことに集中して、もしなんか振られたら無難な回答を行えるように心掛ける。

 

「友崎もそういう話、ってあるわけねえかー!」

「あはは!失礼ー!」

「は、はは……」

 

なんとなくだがこういう風に参加しているといじられることが多い。

これは俺が発言をしていないから、だろう。

あぁ、心が削られてゆく……。

 

気を使った優しさなのか、相手を下に見てわざと声を出すことによる上下関係の植え付けなのか。

後者だったら嫌だな、と思いつつも経験を積むためにも会話を聞きながら思ったことや自分の考えをまとめる。

 

「いや、モテてねーよ。モテてたら俺だってさっさと彼女作って楽しい学校生活エンジョイしてるわ!」

「ははっ!またまた、そんなこと言ってこの前だって部活中に女の子からタオル渡されてたじゃねーか」

 

会話の流れは相原が意外とモテているという話に変わる。

しかし、そうだったのか。

流石リア充組なだけはある。

 

「えっ!?えっ!?本当に!?はらみーは私のことを裏切るのですか!?」

「なにがどうして裏切ったことになった!?」

「そうなんだ〜、相原も隅に置けないわね」

 

この会話に日南も乗っかり、相原をいじる雰囲気だ。

というかみみみはこれボケているのか?素なのか?

なんとなく相原をいじったときのことを思い出して、みみみがどう思っているのか気になってしまう。

 

しかし、今の俺ではまだ本音なのか演技なのか、そういったことを見抜くには経験が足りないようだ。

 

「お、おい友崎、コイツラ何とかしてくれよ」

「!?え、ムチャいうなよ……」

「だよな……」

 

急に話を振るなよ、ビックリしちゃっただろ。

というか、だよな、じゃない。

相原は俺に何を期待しているんだか。

 

「そういえば日南こそいろんなやつから告白されてるんじゃないのか?誰かにOKしたりしないわけ?」

「え、私?」

 

えっ、そうなのか!?

って普通に考えればそれはそうか。

なんせこの学年、1番仲のいい女子は誰?と聞かれたら日南葵と答える生徒が大半を占めている。

中には本気で好きになってしまうものも結構いるんだろう。

 

その中身はというか、本人は仮面を被りまくっているっていうのにな……。

しかもどうやら何人もその犠牲者がでているようだ。

かわいそうに。

 

「流石は葵、このモテ女!かわいい!このこの〜!」

「ちょ、みみみ!」

 

みみみが日南に抱きつく。

みみみって女子にはこういうスキンシップでコミュニケーションを取るよな。

たまちゃんにも同じように抱きついたりつついたりしているのはよく見ている。

 

いやしかし、経験値稼ぎの一環として会話の上手い人の真似をするための材料集めもあるのだが、これらはちょっと俺には真似できそうに無いな。

ん?でも水沢とかは話しかける時に肩をたたいたり、とかしているときがあるな。

さっき相原に話しするときには軽く背中をパシッと叩いていた。

 

まぁどのみち今の俺では経験不足ではあるか、自分がやるイメージが沸かなかった。

 

会話の方は、日南は結局誰とも付き合っていないと答え、相原と竹井が俺も告白がされてみたいと答えている。

お、俺も、まあそういう願望もなくは……んんっ!

 

「それって、はらみーは告白されたら誰でもOKしちゃうってコト!?」

「いやどうだろな、でも断る理由がなければOKなんじゃないの?」

 

それについてみみみが食いつく。

いや本当に演技なのか?やっぱり素なのか?

もう素にしか見えないがそもそもリア充女子の生態がわからないから判断がつかない。

 

これがリア充たちの駆け引きなんだろうか、怖いぜ。

 

昼はこんな感じで会話に参加してなんとかやり切ることが出来た。

とりあえずこの1週間、なんとか課題もこなせたし今日の残りは今週最後の作戦会議だけだな。

 

日南をまたせると何を言われるかわかったものでほないし、第2被服室に向かおう。

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