弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
昨日は人生攻略の一環として日南と大宮に行った。
詳しいことは省略するが、リア充になるために必要なことをいくつか叩き込まれた。
まぁやったことは身だしなみ関連で、新しい服をマネキン買いしたことと、美容院で髪を切ったことの2点だ。
また、1つアクシデントとして昼食を取るために学校でも美味しいと評判になっていた店に入ったら、クラスメイトの菊池さんがアルバイトをしていて鉢合わせをしてしまった。
その時のことだが、日南が言うには理由こそわからないがどうやら菊池さんは俺に対して何かしらの興味を持っているらしく、俺の人生攻略の中くらいの目標の『彼女を作る』は菊池さんを対象の攻略ヒロインにするということだった。
色々と思うところはあるのだが、俺は人生を攻略すると決めたのだ。
日南の言うことを信じることにした。
昨日のことについて以上だ。
そして今日は相原が家までアタファミをやりに来るという約束をした日。
日南から課題を出されている件についてももちろん忘れていない。
相原を3回いじる、それが今日の課題だ。
午前に来るということで9時くらいにつくからと、先ほどLINEで乗る電車の到着時刻がわかるアプリのスクリーンショットが貼られ、駅まで迎えに来て案内してくれないかと頼まれた。
逆の立場なら俺もそうするか、と納得してそれに了承の返事だして駅へと向かう。
返信には電車到着の時間には間に合わなそうだったので向かっても少し遅れるということも付けて送信した。
ちなみに今日の俺の服装についてだが、昨日日南と大宮に行って買ったマネキンが着ていたセットを着ている。
早速活用させてもらっだというわけだ。
今日着るために、買った時にすぐに着替えるかと店員さんに聞かれたのも断って今日に回したのだ。
しかし、服買うときって「ここで着ていかれますか?」なんて聞かれるんだな……。
そのうち「防具は装備しないと意味がありませんよ」なんて言われるかもしれない。
そんな馬鹿なことを考えている間に、駅へと到着。
時間を確認すると相原が送った到着時間から少し過ぎてしまっていた。
まぁ、急に来てくれと言われたわけだし許容範囲だろう。
駅の出口付近で相原を発見した。
服装は白黒ボーダーのTシャツに明るめの襟付きのシャツを羽織い、ズボンはジーパンだ。
片手には紙袋を持ち、ショルダーバッグを背中側につけているようだ。
ちょうど自分が服装を意識し始めたからか他人の服装も気になってしまうのだが、相原の服装はなんて言うか……これがリア充の私服かと納得するものだった。
白黒ボーダーの服って俺の中では囚人服みたいなイメージだったんだが相原はなぜか似合っていて、そこには俺の持っていたイメージとは違って爽やかさがあった。
一体どういうからくりなんだ?
羽織っているシャツか?
ううむ、わからん……。
駅の外で待っていた相原も俺に気づいたようで、手を軽く振りながらこっちへとやってきて、笑顔で挨拶をしてくる。
「よぉー友崎、お出迎えご苦労!」
いや、とんだ挨拶だな。
ここで1つ反論をしておくか?
3回も必要だしな。
「呼び出しておいて酷い言い様だな!」
「はは、すまんすまん冗談だ」
よ、よしこれで1回だ。
しかし偉そうだなぁとは思ったものの、こちらも少し待たせてしまったわけだし……。
一応謝罪はしておくか。
「まぁ俺も悪いな、またせた」
「いやいや、わざわざでてきてもらって助かるわ。地図の位置とか住所だけ渡されるとかだと俺たどり着ける自信ないからさ」
そんな感じで挨拶も済んだので俺の家まで向かうことにする。
道中、髪を切って整えたことや服装について相原からさっぱりした、センスがいいなどと褒められた。
これは、もしかしてアレなんじゃないだろうか……!
小さい目標をクリアしたのではないだろうか!
いやでもこれだけだとちょっと弱いか?
クリアとしていいかは明日日南に確認してみよう。
そうして我が家へと到着する。
「到着だ、まぁ入ってくれ」
「おう、おじゃましまーす」
玄関を開け相原に入るように促す。
家の中に入るとちょうど妹が廊下をウロウロしているところだった。
「お兄ちゃん、外にでていったと思ったらもう帰ってきたんだ。って、お兄ちゃんが友達連れてきてる!?」
「あ、友崎の……いや文也の友達の相原です、おじゃましまーす」
相原は妹に気付いて挨拶をする。
こういうところしっかりしてるよな。
「もしかして文也と同じで関友高校の生徒?」
「は、はい!そちらはもしかして、サッカー部の方ですか!?」
えっ、相原は俺の妹のこと知ってたのか?
妹も妹で相原のこと認知してたことにビックリだ。
どこでそんな情報を仕入れているんだ。
相原は妹に軽く挨拶をすると、持っていた紙袋を妹に渡した。
中身が気にはなっていたのだが、わざわざお菓子を持ってきてくれていたのか。
他人の家に行くときに手土産……。
言われるとハッとするが、もしこれが逆に俺が相原の家に行くとなっていた場合、俺はそんなことまで気が回っただろうか?
なんだかまたレベルの差を感じてしまった。
紙袋を受け取った妹は奥へと引っ込んでいった。
妹が相原のことを知っていたのはサッカー部で中村と一緒にいたからか。
「お母さん!大変、お兄ちゃんが友達連れてきた!?丁寧に手土産まで持ってきてくれたよ!?」
「えっ!?文也にお、お友達!?どういうこと!?」
「わかんない!?しかも運動部の爽やか系なんだけど」
「おかあさんもあいさつしておいたほうがいいかな!?」
……。
「友崎、お前のうちっておもしろいな」
「あーもう……母さんは出てこなくていいから!」
俺は恥ずかしくて死にそうだよ!
相原が靴を脱いで上がるのを待ってから、妹と母の声を背に俺の部屋まで案内するため歩き出した。
相原は玄関を上がるとき、靴を脱いだ後にしゃがんで脱いだ靴の向きを直し隅に揃えていた。
コイツ、こういうところ結構几帳面だよな。
言動は突拍子もないことを言う割に、行動は失礼なことをあんまりしないっていうか意外と丁寧というか。
階段を登り、俺の部屋に入る。
俺は普段から部屋を汚くはしないようにしているが、相原が来るので少し片付けをしておいた。
「ここが友崎の部屋か、キレイにしてるんだな。よーし物色物色!」
俺の部屋に入ると、相原は待ってましたと言わんばかりに俺の部屋を物色しだした。
ここだな。
「あ、おい!あっちこっちさわんなよ!」
これでとりあえず課題は2回目を達成、でいいよな。
課題を進められたことに少し安堵していたが、相原の物色は続いている。
おい、部屋主に言われたら止めろよキックするぞ。
今相原が見ているのはおれがアタファミで使用してスティックをだめにしたコントローラを詰めた箱だな。
相原はしばらくそれを見てから箱を閉じる。
「よし、アタファミ対戦しようぜ。今日は勝つ。ボッコボコにする。耳の穴から手突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるわ……」
「こっわ……まぁいいや、対戦するか」
こうして俺と相原はアタファミを起動した。
対戦のルールやキャラを決めている中でなんとなく思っていた疑問を口にする。
「そういえばグラスバイオ使う人って結構珍しいよな、なんでそのキャラなんだ?」
クラスバイオは性能的には下位層の方に足を踏み入れている。
勝つためにやるのなら強キャラを使うのが近道になる。
それをしないケースとしては使用キャラに思い入れがあったり、そもそも勝つ事自体を重視していないエンジョイ勢だろう。
相原的には前者よりだったようだ。
パワー系が好き、か。
たしかにグラスバイオはもろにそういうキャラだ。
昔からアタファミのシリーズではスピード系のキャラのほうが強いとされているから、重量級のパワーファイター自体ネット対戦でもあまり使用者がいない。
そういった意味では使用者が少ないキャラてそこそこの強さを持っているやつが身近なところにいるのはラッキーなのかもな。
そんな会話をしているうちに相原はステージの選択を終え試合が開始された。
***
試合は俺が勝った。
ストックを2機残しての勝利なので結果を見れば結構余裕のある勝利ではあったといえるかもしれない。
でもコイツ……。
「ああぁぁぁあッ…!!クソメタ対策を練ってきたのに負けだぁ!!」
相原が叫ぶ。
そうだ、コイツの動きは間違いなく俺の動きを研究し、少しでも自分に優位に進めるように対策を取ってきた動きだった。
そして結果として俺の勝ちだったが、先にバーストをとって先制したのは相原だった。
コイツは本気で
「いや、かなりいい線いってたと思うぞ。下Bのあのリーチ、高台のないステージで振られるとかなり厄介なんだな、面白い……」
これは俺の本音である。
アタファミの実力でいえば相原はまだまだ俺よりも相当下ではあるだろう。
それでも俺から先制した動き、アーマーを利用してのカウンターなんて早々できるものではないし、俺もそんな事ができることは脳から抜け落ちていた。
コイツにはアタファミの奥深さを改めて見せられた気がした。
相原もアタファミをガチでやっている。
今まではリアルではそういう相手がいなかったから、なんだか俺の好きなアタファミが肯定されたような気がして嬉しかった。
まぁ、最近は
その後、試合の結果や動きについての話をする。
こうやって敗因だったりアドバイスだったりを素直に聞くところが相原の上達の早さに繋がっているんだろうな。
そのまま1時間ほど対戦を行った。
はっきり言ってめちゃくちゃ楽しかった。
前まで友人の1人もいなかった俺がこうして人を家に呼んで一緒に楽しんでいる。
人生攻略の一歩目を踏み出せたことに実感を持てた気がした。