弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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「クソ、これで勝ったと思うなよ!」

「相原、勝負事になると口悪くなるよなぁ……」

「熱くなると素が出るんだよ」

「そっちが素なのかよ」

 

相原とアタファミの対戦して1時間ほどたった。

俺は負けなしではあるが、相原は本当に上達している。

まだまだ負ける気はしないが、俺もうかうかしていられないな。

 

そこそこ対戦をしたところで、相原が疲れで動きが悪くなってきたからと対戦を切り上げた。

たしかに、動きにミスが多くなっていたし変に続けるよりは休憩を挟んだほうが上達するには近道だろう。

 

その後は相原が俺のレーティング対戦が観たいというので俺が対戦をして相原がそれを観戦することになった。

 

俺が対戦し、相原が所々で茶々を入れる。

そんな感じでレーティング対戦をしていたがそれは意外と楽しいものだった。

観客がいるとなんかこう、負けられないって気にもなるもんだな。

無論、負けてもいいと思って対戦をすることなんてないが。

 

そこそこ対戦をしたところで、いつの間にか時間は12時前になっていた。

 

「いつの間にか結構な時間になったな、今日はそろそろおいとましようかね」

「ああ、本当だ。もう12時になりそうだな」

 

相原はそろそろ帰るということだが……。

まずい、まだ課題を達成していないぞ。

アタファミに熱中しすぎていたかもしれない。

 

3回いじる、または反論するのが課題だがまだ2回しかこなせていない。

どうする、今帰るってところに反論するか?

いやでもなんていえば、そもそも引き止めるのもなんか変に思われないか?

 

そんな思考をぐるぐるとしている時にスマホをいじっていた相原がスマホを見せてきた。

 

「友崎ー、このラーメン屋知ってる?」

 

俺は相原からスマホを受け取り、映し出されている画面を確認する。

これは近所のラーメン屋だな。

評判もいい店だったと思う。

 

「ん?あぁ、このあたりに住んでたらたぶんみんな知ってると思うぞ。何度か行ったことあるな」

「お、マジか。ならラーメン食いに行こうぜ。前にみみみがここのラーメン美味いって言ってたから気になってたんだよね」

 

この提案は渡りに船だった。

課題の方は反論でもクリアなのでこれを断る形でも問題はないが、せっかくだし相原とラーメンを食べに行くのもいいかと思ったので了承する。

課題についてはラーメン屋でもチャンスがあるだろう。

 

「あぁ、わかった。ちょっと母さんに昼を食べてくると伝えるから待っててくれ」

「おう。あ、あのかわいい妹ちゃんなら一緒でもいいぞー、なんてな」

 

ん、これは……。

 

「おいおい、あの妹が一緒に来るわけ無いだろ」

「はは、そうかい」

 

よし、一応反論ということでいいだろう。

なんとか課題は3回クリアだ。

でも、うーん、全部反論という形になっているんだよな。

1回くらいは自分からいじる、ということもやっておくべきかもしれない。

 

そう思いながら、ひとまず昼を外でとってくることを母に伝えた。

母とその場にいた妹は驚いたり赤飯を炊くなどわけわからないことを言い出していたが……。

とは言え、昼食代も出してもらったしそこは素直に感謝だ。

お金を受け取り、相原を部屋でまたせているので部屋まで戻る。

 

「わるい待たせた。じゃあ行くか」

「おぅ。……なんか、やっぱり友崎の家って面白いな、いい母さんじゃん」

 

!?

 

「もしかして聞こえてた?」

「バッチリ」

 

バッチリ、じゃない!

そのサムズアップもやめろ!

くそ、油断した。

またこれでいじられてしまう。

俺は逃げるように外に出ることを促す。

 

そして部屋を出て相原もそこに続くが、玄関に行くと母さんがそこに立っていた。

嫌な予感しかしない。

冷や汗が背中を伝うのを感じた。

 

「あら、あなたが文也の友達ね、出来の悪い息子と遊んでくれてありがとうね、名前はなんていうのかしら?」

「母さん!?」

 

やめてくれ、恥ずかしいだろ!

 

「いえ、こちらこそ友…文也くんとは仲良くさせてもらってます。同じクラスの相原みなとです。」

「あら、文也と違って礼儀正しいのね。またいつでも遊びに来てね」

「母さん!」

 

いちいち俺を引き合いに出さなくてもいいから!

俺は羞恥心に居たたまれなってくる。

早く外に出たい……。

 

「はい、また今度遊びに来ます!お邪魔しました」

「ええ、気を付けてね」

「ったく!俺も、行ってきます!」

「文也も、気を付けていってくるのよ。」

 

そうして俺と相原はラーメン屋へと向かった。

 

目的の店は家からも近いため、歩いて数分で到着する。

お昼時ではあるが幸いにも席は確保できた。

俺と相原はともにメニューにおすすめと書いてあるとんこつラーメンを注文する。

 

ここでラーメンを食べるのも久しぶりだったので結構期待してしまう。

そうして待っていると、相原が声をかけてきた。

 

「そういえば友崎、髪はイメチェンかなんかか?いや、そう言うほど昔を知ってるわけじゃないだけど、最近はなんかクラスでも話すのみるようになった気がするしさ」

「!、あぁ、まぁそんなところかな」

 

これはたぶん、小さい目標クリアでいいはずだ。

朝のときは髪型についてだったり服装についてだったりでを褒められはしたが微妙なラインに思えた。

けどこっちのイメチェンをしたかと聞かれたという点は目標クリアに達したのではないだろうか。

それでも一応、判定は日南に委ねよう……。

 

そんな事を考えてる間に相原は更に質問をしてくる。

 

「なるほどね。あぁそうだ、髪は何も付けないのか?なんかいい感じの髪型にもなったし服装もビシッとしてるのにちょっと惜しい気がするな」

 

髪に何も付けないのか……?

あぁ、中村とかはなんかこう、髪の毛が重力に逆らってるよな。

ああいう髪の毛を固めるやつのことか?

 

そんな質問をすると、まぁ俺の言ったことはだいたいあっているようだ。

ワックス……ね。

相原もつけているんだろうか。

正直なところ付け方もよくわからないのでいまいちピンときていないのが本音だ。

 

「あぁ、俺サッカー部だから動きの邪魔にならないように短めにしててな、ほれ横の部分とかごっそりないだろ?ツーブロックにしてんの。んで、そうすると髪の上の方はふんわりさせたいからワックスつかってるんだよ」

 

たしかに相原の髪型は横の髪が短い、というか刈り上げられているようだった。

ツーブロック……ね。

で上の方を固めている、か。

 

ワックスを使ったとこがないことを言うと、相原はいろいろと説明をしてくれた。

髪質にあったものを選ぶ、髪質の判断ができなければ専門家に、か。

 

しかし昨日のうちにこの事を知っていれば美容院でワックスをつけてくださいとお願いできたかも知れないんだよなぁ。

まぁこの話を聞けたのも髪を切ったからではあるので美容院に行く前に知ることはむずかしかったわけで悔やむのもなんか違うんだけども。

 

あと関係ないけど、みみみの真似をして『ケーダブリューエスケー』って使ってみたけど全然通じないじゃないか。

リア充っていうのはやはりよくわからん。

 

ワックス……ヘアスプレー……スタイリング……。

よし、覚えたぞ。

 

昨日俺は美容院に行ってから自分の髪型を鏡で見たときに、たしかな進歩を感じていたんだ。

だけどそれは前より野暮ったさが取れたな、と思うくらいのものでもあった。

でも今日、まだまだ先が見えないほど成長の機会があることを知って楽しさを感じている自分がいた。

 

なんというか、RPGでいえば敵へ攻撃したダメージが1ケタだったのに2桁に増えたような嬉しさだ。

それでもまだまだこれはゲームの序盤で、更にレベルを上げてスキルを覚えて武器を鍛えてとすればもっと伸びるはず。

そう考えるともしかしたら今が一番楽しい時期なのかもしれないな。

 

「へぇ〜、いろいろわかったわ、サンキュ」

「なに、気にすんなよ。思いの外真面目に聞かれたから俺も真面目に答えちまった」

 

色々と相原と話をしているうちに注文をしていたラーメンが運ばれてきた。

早速食べるかと箸を取ったところで相原から写真をとってもいいかと聞かれる。

 

なんでかと聞いてみると、この店のラーメンが美味いと言っていたみみみに送るということらしい。

というか、まだ許可していないのにとられたんだが……。

ナイスショット!じゃないわ。

 

相原が取った写真を見せてくる。

たしかにいい感じに俺とラーメンに、この店がわかる背景が写っていてよくとれてはいた。

なんだかそれが逆に腹がたってくる。

 

相原はLINEでさっきの画像を送ってからラーメンを食べ始めた。

 

このまま振り回されるのも癪だと思った俺は課題について思い出す。

反論こそして目標の3回は達成したが自分からいじってはいないのだ。

ここで自分からいじるということをやってやろうじゃないか。

スマホで写真を取ってみみみに送った、ここをつく。

 

「なぁ相原」

「ん?」

 

相原に呼びかけるとこちらをみる。

食べる手は遅くなったが止まってはいない。

まぁたしかにここのラーメン美味いしそれもわからなくはないが……まぁいいかこのまま聞いてしまえ。

 

「や、やっぱり相原ってみみみのことが好きなんじゃないか?」

「!?、ん、んんッ! あぶねー、咳き込むところだった!」

 

相原は俺の質問に驚いたのか咳き込みそうになる。

……それについては俺は悪くないぞ。

 

「急に何を言い出すんだお前は、っつかその話2度目じゃねーか」

 

たしかに、先週の時も同じことを聞いたな。

でも思いついたのがコレしかなかったんだ。

 

「いや、なんかLINEで写真まで送るったりって、あんまりしなくないか?」

「しなくなくはねーよ。普通だっての」

「そう、なのか?」

 

しなくなくはない?つまり、どっちだ?

流れ的には、普通にするって意味でいいんだよな?

いやまて、俺は同年代の″普通″というものをよく知らなかった。

もしかしたら本当にこれが普通なのか?

それを否定するだけの材料を俺は持っていない。

俺がそんな事を考えながら悩んでいると相原はこちらを見てため息を付いてから口を開く。

 

「はぁー、わかった、負けたよ。俺の負け!そうだな、好きかどうかはわかんねぇけど、気にはなってるよ。まず俺が女子の中で一番仲がいいのはみみみだ。向こうはわかんねぇけどさ。ほれ、これでいいか?」

「お、おう」

 

まぉ、とりあえず課題についてはいじるという観点からでもクリアできた、だろう。

会話はここで区切りかな、と思った俺は再びラーメンを食べる作業へとはいる。

 

そんな時に今度は相原が俺に話しかけてきた。

 

「そういう友崎こそ、最近は日南と怪しい関係なんじゃないのぉ?」

「!?、ごほっ!……おま、ごほ……」

 

予想外の質問に盛大にむせてしまった。

 

「ほれ、先週なんて日南について一緒に下校したり、なんか色んなグループの会話に混ざったりしていなかったか?怪しいねぇ?」

「お、俺なんかと日南がなにかあるわけ無いだろ!」

「ほんとうかあ〜?なんてな、ははは!まぁそういうことにしといてやろう」

 

なんとか誤魔化そうとしたが、相原はそこまで深く聞いてくることもなかった。

しかし、くそ、さっきのお返しってことか。

いじったらいじり返されてしまった。

けどなんだろう、前よりも距離が縮まったような気がした。

 

俺と相原は共にラーメンを食べ終わり一息つく。

相原の方をみるとスマホをいじっていたが、不意に俺に話しかけてきた。

 

「友崎、俺達ってマブダチだよな?」

「え?いや、そう……なのか?てか話すようになったのも結構最近じゃないか?」

 

言っている意味というか意図がよくわからなかった。

ひとまず思ったことをそのまま返す。

と、友達……だとは思っているけど。

 

「いやいや、友情に時間なんて関係ない、そうだろ!気になっている女子まで聞きあった仲だ!ほれ」

 

友情に時間は関係ない……。

そういうものか?

相原がスマホを俺に見せてくるので画面を確認する。

どうやらみみみとのLINEのようだ。

 

ここのラーメン屋に来たことを画像付きでおくっていたようだが、最後の方に俺と相原がマブダチだと言って送信をしていた。

 

「ん?え、どうしてこんな返信を……?」

「さぁ、なんとなく?ノリと勢いで生きてるからなぁ。ま、気にするなよ親友!」

 

親友って……。

ノリと勢いか、なんか微妙にそういうところはみみみと似ているな。

あっちは元気だけで生きていく予定らしいし。

 

「んー、いややっぱそこまで仲良くなった気はしてないかも」

「つれなー!」

 

実際にそこまで仲良くなってはないだろ。

それに親友とか友達だとか口にするのはなんか、は、恥ずかしいしな……。

 

相原はスマホをしまい、そろそろ行くかというので会計を済ませて店を出た。

 

「いや美味かったな!そんじゃ俺は帰るわ。友崎、また今度アタファミやろうぜ。次は勝つから」

 

相原はそういいながら腕を組み、右手で人差し指と中指をたてる。

なんだそれ。

 

「おう。望むところだ。てかなんだそのサインは」

「ベジータの別れのポーズ」

 

あぁ……。

おれはそれに対して反論を持って返す。

 

「結構ダサいからやめたほうがいいと思うぞ」

「ひどい!」

 

これももう板についてきたかもしれない。

とは言えできるのはまだ相原に対してだけかもしれないが。

 

相原は挨拶を済ますと駅の方へ歩いていった。

今日は得るものが多かったように思う。

それに、結構楽しかった。

少しだけリア充の気分を味わえた気がして、相原には心の中で感謝をして俺も自宅へと足を向けた。

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