弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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土曜日の部活が終わり、視聴覚室へ向かう。

 

部活中に同じクラスで同じ部活の中村が、アタファミが強いという噂の友崎くんと対戦すると聞いたのでついてきたのだ。

 

その話をしていた時は、竹井もいたんだが……。

さっき「予定がある」と言って帰ったので、今は中村と二人。

 

「中村ってアタファミ結構やってるんだっけ?強いとか聞いたことはあるけど」

「まぁな。その辺の奴には負けねーよ」

「へぇー、マジか。なんか賭けで負けなしとか聞いたぞ。……賭けとかしてんの?」

「一応言っておくが、賭けっつっても飲み物とかそれくらいだからな?」

「ふぅーん」

 

そして視聴覚室へ到着。

中に入るとすでに友崎くんがいるじゃん。

 

って、おいおい。

めっちゃビビってるぞ、どうやって呼び出したんだよ中村。

どれ、ここは俺が緊張をほぐしてやるかね。

 

「おいおい、友崎くんガチガチじゃん。大丈夫かよ」

「え、いや、まぁ……」

「はは、中村ビビられてんぞ」

「うっせ。さっさとやんぞ」

 

そういうと中村はゲーム機を取り出し、テレビに接続。

起動とともに見慣れたオープニングが流れ、対戦の画面が開かれる。

 

中村は「フォクシー」で、友崎くんは「ファウンド」か。

キャラ相性は五分?くらい?

……俺はグラスバイオしか使わんから細かい相性は分からんが。

 

ルールはTIMEが無限のストック4。

基本のルールって感じでステージも選択され、さっそく中村と友崎くんの対戦がはじまる。

 

 

……は?

いや待て、中村はもう3ストック奪われてるじゃん。

動きがやばい、うますぎる!

もしかして、俺より強くね?

 

地上スレスレで空中緊急回避を斜め下にすることで地面を滑る高等テクの「瞬」。

それを連続で使い中村を揺さぶる。

 

最後の1ストも中村が打撃を瞬でスカされたらそのまま投げ始動のコンボからバーストされた。

これは、相当の実力差があるだろうな。

 

「よし」

 

友崎くんは勝って一安心みたいな顔してる。

……なんもよくねぇよ。

 

「……の…いだ」

「え?」

 

どうすっかなこれ、空気悪くなりそう。

 

「キャラのせいだ」

「はい?」

 

中村はプライド高いからな、こういうところがある。

……悪い奴では、ないんだけどな。

 

「キャラのせいだろこれ、普通に?」

「い、いや。性能的には同じくらいだけど……」

 

友崎くん的にもキャラ性能は五分くらいらしい。

 

「じゃなくて、相性。どう考えても相性悪いじゃん、これ」

 

これには、友崎くんもムッとしてた。

こんないちゃもんつけられたら腹も立つだろうさ。

 

それに、実は友崎くんも中村が強いって聞いてて意外と期待してたのかもしれない。

なのにふたを開けてみれば実力差が相当あって、終いには言い訳だもんな。

 

「た、たしかにフォクシーは落下が早いからコンボはつなげやすいっちゃやすいけど」

「だろ。キャラ相性じゃん、こんなゲーム」

「…そんなの、言い訳だろ」

 

お、いいねぇ友崎くん。

もっとやれ。

 

「実際そうじゃん。こんなので勝ってうれしいのお前? クソゲーじゃん。くだらな」

 

その後、言い合いはエスカレートしていきプッツンした友崎くんが、「じぁあキャラを替え、コントローラを替え、座席も入れ替え、ストックは倍8に。何なら服まで替えるか?」とまでヒートアップ。

 

やばいな、ちょっと笑いそうになった。

でも今俺がここで笑ったら俺まで中村ににらまれそうなので、必死に我慢する。

 

「さっきアタファミのことクソゲーって言ったよな?」

「は?」

「俺が勝ったら、アタファミが神ゲーだってこと、認めろ」

 

その後、コントローラとかをいろいろとっかえてストック8にして対戦開始。

そして、中村の完敗。

いや、もうボコボコってレベルじゃねーぞ。

 

その後友崎くんはやっちまったとやってやったの混ざった顔しながら、「じゃ…これで……」みたいな感じで出て行った。

残った俺も気まずくなったので「な、中村ドンマイ……あ、俺も帰るわー」みたいなことを言いながらそそくさと視聴覚室から出ていく。

仕方ないよね。

 

あ、そうだ。

今から玄関に行けばまだ友崎君いるかな。

俺もアタファミで対戦してぇな。

フレコとか聞けないかな?

そしたら、地元最強決定戦を開くぞ!

 

そう意気込みながら玄関まで早足で向かう。

玄関まで行くと、まだ友崎君は靴を履き替えている最中だった。

 

「お、セーフ!友崎くんちょっと待ってよ」

「あ、え、さっきの中村の取り巻きの……まだなにか用?」

 

取り巻きじゃねーわ!

つか思ってても本人に言うなよ、アホか!

 

「相原、な? 取り巻きじゃねーって。中村とは同じサッカー部だけど、アタファミやるって聞いたから見学しただけ」

「そ、そうなんだ。で、何?」

 

冷たい反応だが、あれの後じゃしょうがねぇか。

 

「いや友崎くんめっちゃアタファミ強かったじゃん、今度俺ともやろーって」

「え、またあそこに呼び出されるの?」

 

おい中村ぁ!

お前のせいで俺の心象まで最悪になってるぞ!

 

「いやいや、フレコ交換すればいいじゃん。俺も帰るし、LINEでも交換して帰ったらやろうぜ!」

「え、ら、LINE?」

 

めっちゃキョドってるやんけ。

押せばいけそうだな、よし、スマホ出せオラァ!

 

「なんならお前んちに向かってもいいぞ!ほら、LINE交換して熱帯か、ローカル対戦か選べ。アリー!アリー!」

「じゃ、じゃあ、LINEで」

 

だよね。

 

「ま、まって、Lineってどうやって交換するんだっけ?」

「ぁー、なるなる。えーと、ホーム開いてプラスみたいなボタンからQRを出してくれ。読み取るから」

 

表示されたQRを読み込んで、登録完了。

よっしゃさっさと帰って対戦すっぞ対戦!

お、どうせだし駅まで一緒に行くか。

ちらっと友崎くんを見る。

ちょっと嫌そうな顔したな、おい?

まぁいいけど。

 

 

「それにしても友崎くんのアタファミの動き、相当やり込んでたな。余りに中村がボコボコで笑いそうになったわ。本人の前ではいえないけど」

「一応、それなりにやってるから……」

「おぉ、アタファミは『神ゲー』だもんな!」

 

バツの悪そうな顔をする友崎くん。

そりゃあんな啖呵を切ったもんなぁ。

 

「レートどれくらいなん?俺はこの前ようやく2000の大台に乗ったぞ。VIP魔境勢だ」

「2000って、結構高いね」

 

若干驚いたような顔をしながら答える。

中村見てから俺のことも舐め腐ってやがったなぁ???

 

「で、友崎くんとどれくらいなん?」

「まぁ、レート2500くらい……かな」

 

……は???

 

「いや、もしかして……トップ10入るだろ、それ!」

「まぁ、うん。入るね」

「はー、中村が勝てるわけ無いじゃんそれ。ワロタ」

「相原もワロタとか言うんだ」

「言うよ、どちらかというと陰のものだぞ」

 

しかし対戦、楽しみになってきた。

強い奴との闘いとかワクワクすっぞ。

 

その後、俺がそこそこアタファミが好きなことも理解してくれたら若干態度も軟化し、駅まで一緒に帰ることになった。

そういえば友崎くん、最寄り駅どこ何?

北与野?うっそ隣じゃん。

マジでローカル対戦しに遊びに行けるじゃん、今度遊び行こうか?

あ、おい、今また嫌そうにしただろ!

 

「じゃ、俺ここだから。帰ったらフレコ送るからよろしくな。まぁ、俺は部活終わりだからシャワーとか浴びたいし夜になるけど」

「お、おう、じゃあ」

 

軽く手を挙げて別れの挨拶をする。

チャチャっとかえってやることやったらフレコ交換しよう。

 

 

***

 

 

そして、夜。

友崎くんにLineでフレンドコードを送りつけ、返信があるまでの間トレモで練習を行う。

 

俺もトレモで練習して十数分すると、Lineへの返信とともにアタファミのほうにフレンド申請が送られてきた。

 

申請を確認するとそこには

 プレイヤーネーム:nanashi

おいおいおい……何がトップ10だよ。

全国1位じゃねぇか!

どういうことだよ、日本最強がここにいるぞ(困惑)

余りにびっくりしてLineを送る。

 

『いや、全国1位じゃねーか!』

『正直レート2000くらいなら負ける気がしない』

 

……いいやがったな、ぶっ飛ばす!!

 

『部屋立てるわ、今日と同じでTime無限4ストでいいよな?』

『OK、部屋建てよろしく』

 

部屋を立てて数分もするとnanashiが入ってくる。

お互いにキャラ選択をし、俺はステージも選択する。

キャラはnanashiが「ファウンド」。

俺は「グラスバイオ」を選択した。

お互いに準備が完了し、いよいよ試合が始まる。

 

俺は開幕とともに相手に背を向け後ろに下がり、必殺技のチャージを行う。

グラスバイオは空中後ろ攻撃が発生・威力共に優秀であり、

必殺技のチャージはジャンプキャンセル可能な為俺の中ではこれが最も安定した開幕の行動となっている。

必殺技も最大チャージ時は隙が少なくガードさせて有利、さらにはアーマーもちでバースト力も高いとチャージさえ溜まっていれば出し得の強技なのだ。

チャージなくなるけど。

 

後ろに下がった俺とは逆に、nanashiは開幕とともに突撃をしてくる。

ファウンドは遠距離攻撃に手裏剣もあるため遠距離技を持たないグラスバイオには距離を取るかと思ったが予想に反してインファイトを仕掛けてきた。

なんだかんだファウンドに掴まれたらそれだけで即死を決められかねないので、こちらは全力で空中後ろ攻撃や後隙の少ない下強で拒否をする。

 

差し合いが展開されるが、すぐにこちらが捕まってコンボを決められてしまう。

でもグラスバイオはコンボされやすい反面「耐える」ことに関しては強いんだ、100%超えてもアタックとか食らわなきゃ耐えるからな。

あぁ、着地や復帰阻止されまくって死んだわ。

ファースト取られるの早かったな……。

 

そのまま試合は進み、なんとか1ストックを奪うことには成功したがボコボコにされてしまった。

 

nanashi:お疲れ様。

harami:強すぎんだろ!もっかいだもっかい!

 

その後1時間ほど対戦をしたがこちらが全敗し、1番善戦した試合でさえ初見殺しメテオと最大チャージのラッキーヒットで2ストックを奪うのが最大だった。

 

harami:お疲れ様でした…

nanashi:お疲れ様でした。

harami:くやしいです。

nanashi:まだまだだな。

 

コイツいつか絶対ぶちのめすわ。

そう心に決めるのだった。

 

 

 

***

 

 

それから月曜日。

 

登校して教室へと入る。

そして、あれ?と思ってしまう。

 

土曜日に中村と友崎がアタファミで対戦することは結構クラスの中でも浸透している話題だったはずだが、だれもその話を話題にはしていないようだったから。

 

周りは何となく「空気」で分かったんだろうな。

中村に聞くにも負けていたらと思うと聞きづらいし。

友崎もなんか、意外と誰も話題にしていないようでほっとしているように見える。

 

まぁでもそれはそれとして、俺は友崎とアタファミの話をしたいな。

友崎はなにをしたらあんなにうまくなるのか聞きたいね。

友崎に勝つために友崎に聞く。

おかしい気もするが、まぁ上達するにはうまい奴の真似をするのが一番だしな。

 

「よ、友崎。おはよ」

「……ん、あ、ああ」

 

めっちゃ『なんで話しかけてきたのコイツ』みたいな顔されたわ。

ってか、ここまで来て俺も思ったが、いまアタファミの話を友崎としたら、中村まで聞こえて周りの空気を壊しかねないじゃん。

 

やっちまったか……?

いやまだ挨拶しかしてないしセーフセーフ!

とりあえず適当な話でするか。

 

「おいおい、そんな、なんで話しかけてきたのコイツ、みたいな顔すんなよ」

「いや、そんなわけじゃないけど、えーっと、なんか、呼び出し?」

「ちげーわ!なんかボーっとしてんなぁと思って声かけただけ」

「……すごいな、最近の若者は何もなくても話しかけるのか」

「おいおい、なんだそれ。同級生だろ、俺たち」

 

そんなズレた回答に笑ってしまう。

友崎は意外と面白い奴だったのかもしれん。

 

「い、いやでも何もないのに話しかけるとか、俺はしないっていうか……やっぱりなんか用があって話すもんじゃ、ないのか……?」

「俺はするんだよ。細かいこと気にすんなよ。」

 

そこからは、今日の授業の課題がどうだとか、当たり障りのない会話をしているうちにチャイムが鳴り、HRとなった。

全員が席に戻るのに合わせ俺もそれとなく席に戻る。

 

中村が意外と席が近いため、この場でアタファミの話はしにくかったが、よくよく考えたら飯の時にでも聞けばいい。

俺の昼は大体が食堂かコンビニのパンだったりする。

記憶違いじゃなければ、何度か食堂で一人の友崎を見たことがある気がする。

食堂なら一緒に行けばいいってことだ。

そんな予定を脳内で立てているうちにHRが始まった。

 

 

***

 

 

4限が終わり昼休みとなる。

俺は朝に続いて再び友崎に声をかける。

 

「よ、友崎。飯ってどうしてるんだ?弁当?食堂?」

「え、あぁ、食堂、だけど」

「ならちょうどよかった。俺も食堂だし行こうぜ。ゲームの話したいし」

 

また嫌そうな顔をされたわ。

 

「いや、俺いつも一人だから……」

「なるほど、じゃ問題ないな。よっしいくぞ」

「え?」

「え?」

 

え?ってなんだよ!

とまぁ、そのままごちゃごちゃいう友崎を納得させ一緒に食堂へとむかった。

 

 

食堂で二人ともカツ丼を注文し、食べながらアタファミの話をする。

 

「でさ、昨日とかはめっちゃ練習はしてたんだけど、結局まだまな友崎には勝てる気がしなくてさー。何をしたらあんなに強くなるんだ?」

「まぁ最終的には場数をこなすしかないんだけど、相原はもっと根本的なところの気がするな」

「はー、根本的?」

「そう。例えばだけどさ。ちょっと待って……」

 

そういいながらスマホを操作する友崎。

てか友崎、アタファミのことになると結構饒舌になるんだな。

 

「はい、これ。アタファミでいろんなテクニックをまとめて一覧化しているサイトなんだけど全部知ってる?」

 

スマホを受け取り画面をのぞく。

結構の長さだが、目次を上から見ていく。

 

「ぁー、ベクトル反転とか瞬とか有名なのは知ってるし練習もしたけど……。コントローラ設定でCスティックを強攻撃に変更って、こんな設定とかもあったのか」

「だろ?基本の動きはできてるんだけど、こういう上級者向けの小技を知らなそうな動きだったから。それにその一覧は全キャラ共通のテクニック集でキャラ固有テクニックはまだまだあるよ」

「マジか。アタファミは奥が深いな……」

「だからアタファミは神ゲーなんだ。てか、むしろよくそんな知識でレート2000までこれたな」

「グラスバイオは耐えるし一発があるからなぁ、差し込みうまくいければ結構勝てるんだわ」

 

そんなこんなでいろいろアタファミの話で盛り上がった。

さすが、日本1位になるだけの知識と努力が伺えた。

 

勝つためには、勝つための要因。

目標をひとつずつ積み上げていくしかないんだ。

対戦こなすだけでは、俺みたいに操作に慣れてそこそこ動かせるようになったところで壁にぶち当たり止まるんだろう。

 

「さすが友崎、なんか話聞いていろいろ試したくなってきたわ。練習したらまた今度対戦しろよ?次は倒すから」

「はは、まぁ。楽しみにしてるよ」

「あぁ、地元最強の座は返してもらうぞ。お、そろそろ飯も食い終わったし教室に戻るか」

「だな。てか、地元最強の座ってなんだよ。俺は一応、日本最強だぞ。たぶん」

「なんで自信なさげなんだよ」

 

友崎とは土曜日のファーストコンタクトは最悪だったが、なんだかんだアタファミを通して仲良くなれた気がする。

その後も今週はいろいろとアタファミの話もしつつ一週間が過ぎた。

 

 

それから日曜日。

一週間で鍛えたアタファミの成果を発揮するべく友崎と対戦したが、またボコボコにされる。

まるでサンドバッグくんだな……。

 

キャラの知識を増やすためにサブとしてファウンドを触ったり、テクニック集を確認しながらいろいろ試して練習した結果、俺の引き出し自体は増えているはずなんだが……。

どうも練習した内容を意識しすぎるあまり以前よりも動きが悪くなっている気がする。

レートも少し下がり2000を割ってしまったが、どうせ一時的なものだ、すぐにとりかえせばいい。

月曜になったらまた友崎対策を友崎に相談しよう。

 

 

 

月曜日。

友崎がマスクをしていた。風邪か?

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