弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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俺の部屋で友崎によるアタファミ講義が開かれている。

受講者は泉で、おれは見学。

なんか真面目な雰囲気だし俺は黙ってみてようかな。

 

はじめに泉の現状を確認するということで友崎と泉が対戦をする。

ちなみにゲーム機は俺のものではなく友崎が持ってきたものを起動している。

セーブデータとか色々あって自分のを使いたいらしい。

凝り性かな?

 

泉は中村との対戦の時には女の剣士キャラ「ラカノン」を使っていたが、友崎の中村の練習に付き合うのならという指摘により、いったん友崎の持ちキャラ「ファウンド」を選択した。

逆に友崎は中村の持ちキャラの「フォクシー」を選択する。

 

試合の結果は……。

まぁ火を見るより明らかだ。

友崎がノーミスどころかノーダメージでボコボコにしていた。

えげつねェな。

 

「あ、ありえない……」

 

ありえないなんてことは、ありえないんだわ。

むしろ残当。

勝った方の友崎は最低限基本は……とか、大ぶり攻撃が……とかブツブツとなにか言っている。

そんな友崎を見て泉はドン引きだ。

 

「ね、ねぇほんと不気味なんだけど…」

 

そうつぶやく泉の言葉を遮るように友崎が声を出す。

 

「泉!」

「はい!?」

 

急に呼ばれた泉のびっくりしたのか背がビクッと跳ね、背筋をピンと張った。

 

「とりあえずやってもらうことは決まった」

「え!なに!?」

 

それから友崎の説明は続く。

本当の基本操作はできているということで、まずは小ジャンプの練習をするらしい。

たしかに必須技術だな、出来なけりゃ話にならん。

 

泉はカバンからメモ帳とボールペンを取り出して書き始めた。

真面目だな、えらい。

勉強もそれくらい真面目ならいいのに、たしか成績は……いや何も言うまい。

 

泉が実際に操作をしてみると小ジャンプは全然できていなかった。

まぁたしかに初めはそんなもんだよな。

結構難しいもん。

一応ジャンプと同時に攻撃ボタンを押しても攻撃を出しつつ小ジャンプにはなるけど、まぁ今はおいておこう。

 

「そう、これ結構難しいんだよ。けどこれができないと中村と戦うレベルってなると話にならない」

「じゃ、じゃあ練習する!」

 

やる気満々の泉ではあったが、そこを友崎がストップをかける。

友崎は持ってきた鞄の中から何かを取り出した。

それは、ストップウォッチ……?

 

友崎のだしたストップウォッチは一部が壊れているようで、ボタンをしっかり押し込んでも押している時間が短すぎると止まらなくなっているらしい。

 

つまり、これで時間が止まらない押し方=小ジャンプの練習をいつでもでき、指で感覚をつかめるということだ。

 

「これから毎日、通学中、移動中、テレビを見ている時も。つまり、人とあっているとき以外は常にストップウォッチを止めない練習をするのよ!そうすれば小ジャンプができるようになるわ!」

 

するのよ?……なるわ?……

まあ、なるほど、たしかに効率的だ。

泉もびっくりしながらも納得したようだった。

 

最近はなにかとタイパタイパっていうし、なにかのついでに練習できるならいいね。

俺もタイパってやつをあげるために動画2倍速で見たりするし、なんならそこにネットニュースやらも追加で見たりするし。

……みんなもするよな?

 

「てかさっきのオネエ口調なに!?」

 

びっくりしたのはたぶんこっちのほうだよな。

なんでいきなりオネエ口調になったのか。

ボケか?ツッコミ必要だったか?

どちらかと言うと役割的には俺はボケ寄りだし泉は天然だし、ツッコミは友崎の担当だと思ってるんだが。

 

ノッて来たらしい友崎はさらに説明を続ける。

アタファミができない時間で小ジャンプの練習をする。

ではアタファミができる時間には何をするのか?

 

友崎はアタファミを操作して、リプレイデータを起動し始める。

ファウンドとフォクシーの対戦データ。

 

プレイヤーネームはnanashiと……NONAME!?

現在ランキングトップ1,2じゃねぇか!

でもよく見ると友崎がフォクシーみたいだし、レートはキャラ単位で付けられているから正確には1,2ってことでもないっちゃないかもだけど。

中の人が一緒なら1,2でいいか。

 

えらいハイレベルな戦い繰り広げられている動画を見ながら友崎はやることの説明をしていく。

泉がやることは、つまりこの動画の動きに合わせてコントローラを操作できるようにすること、らしい。

 

相変わらず友崎はアタファミになると教え方はスパルタのようだ。

この動画は10分強もあるらしいんだが、それを真似るのは相当大変だろう。

たしかに、効率的ではあるように思えるが。

 

てかそもそも試合時間10分ってなんだ。

大会ルールだと7分半が多いから普通にタイムアップになってる長さじゃねぇか。

俺の試合なんて間違いなく平均3分くらいだぞ。

 

泉が、やることはわかったが操作方法がわからないというと、友崎は今度はルーズリーフとシャーペンを取り出し絵を描き始める。

 

内容は、ファウンドの技表……。

簡易なイラストによる技範囲、技のコマンド、発生速度、持続時間、ダメージ、吹き飛ばし力……。

全部覚えてんのかよ、ヤバすぎんだろ。

 

いやまぁ俺もそこそこ覚えているけど数値を正確には覚えてはいねぇぞ。

経験則から各キャラの技範囲とダメージとふきとばし力をこう雰囲気で、だいたいあれくらい……レベルの記憶だ。

 

どうやら泉もコイツやべぇと思ったようで、友崎に質問をする。

 

「すごいんだけど、どうしてそこまでやるの?そんなにやっても、なんにもないじゃん?」

 

……おい、コイツ俺たちの敵か?

なんにもなくはねーよ、友崎なんか言ったれ。

 

「は?なんのためって、なんだ?俺はアタファミをみんなと仲良くなるためにやってるわけでも、褒められるためにやってるわけでもないぞ?」

「そうなの!?ゲームなのに!?」

 

おい、コイツ今度はゲームのことディスったろ?

俺たちの敵で確定だこれ!

友崎なんか言ったれ!

 

「お前はゲームをなんだと思ってるんだ」

「だって、そんだけ強かったら、引かれるじゃん。対戦になんないし私もさっきドン引きしたし。そこそこ強いくらいならすげーってなるかも知れないけどさ。行き過ぎると、キモいってなるじゃん。それ、いやじゃないの?」

 

なんとなくだけど、ネットとかでうますぎてキモいみたいなのって称賛を含んだ感じで使われることが多いイメージなんだが、それをリアルに持ち込んだ際にニュアンスが変わってきちゃったように思うんだよな。

 

言葉の表面をとって、キモいって言ってるからアイツキモいんだーみたいな空気になってさ。

あとはもう周りが言うから俺もそうしようみたいな大多数に押し流される感じ。

 

ゲームでもスポーツでもなんであれ、なにかを極めてるやつはすげぇよ。

キモいは、まあ俺も口にすることはあるけどいい意味でなんだ。

……俺も言葉には気をつけないとかも。

 

あ、友崎なんか言ったれ。

 

「気にならなくはないけど、それよりも重要なことがあるっていうか……」

「でも、みんなから浮いてるとキツくない?みんな、たのしくなくなっちゃうじゃん……?実際私、友崎が学校で楽しそうにしてるところ見たことないし」

「ほっとけ!」

「あはは!」

 

友崎はたしかにそんなイメージがあるけど、最近は雰囲気も変わってきてると思うんだけどな。

まぁ前のイメージが強すぎたかね、イメチェンのほうは引き続きがんばってくれ。

大丈夫、見てるやつは見てるさ。

 

「……なんだろ、わたしはそういう風に思えなくて、周りの目を意識して言いたいことはいえないでさ。昔から変えたくても変えられないんだよね。……あ、ってかごめん、なに語っちゃってるんだろうね私!あー、もう今のなしなし!」

 

泉は話しながらしゅんとうなだれたかと思うと、ハッとして今のはなしと慌ててなかったことにしようとする。

なんか、思っていたよりも深刻、というかどこか危うさを覚えた。

 

でも本人がなしって言っているんだし深く聞くことでも……「別に、変えられないってことはないだろ?」

「え?」

 

友崎マジか。

俺、お前のそういうところ嫌いじゃないぞ。

 

「今からでも、変えたいなら」

「え、性格?無理無理!もう17になるんだよ?もう遅いって!もういいから、この話は終わり!」

 

泉はこの話を終わらせようとする。

それでも友崎は止まらなかった。

 

「……俺も生まれてからこの年までずっと変わらない性格というか、考えみたいなのがあって。『人生はクソゲーだ』ってのが俺の考えなんだよ。『人生』は理不尽。強キャラが得をし、弱キャラは搾取される。それもただの運ゲー。そんなものに自分の情熱と時間を注ぐ価値はないし、必要もないってさ」

 

友崎は思いの外マジなトーンで話を続ける。

泉もあっけにとられながら相槌を打つ。

 

「けど最近俺は、ある性格の悪い、けど俺と同じくらい強いゲーマーに出会ってな。ソイツは『人生は神ゲー』だなんて言うんだ。正直こいつ何いってんだって思ったよ。けど色々説得されてさ、そいつのこの一回だけ信じてみようって、『人生』を真剣にプレイしてみようって思ったんだ」

 

最近の友崎の行動ってそういうことだったのか。

えらく前向きに何かしようってのが伝わってきてたもんな。

ってか誰なんだソイツは一体。

ネットで知り合った仲間とかか?

 

「それで、努力の仕方とか色々教わって、自分なりに努力してるうちに悔しいけど確信したんだよ。人生は神ゲー……かはわからないけど、少なくても絶対に良ゲーではある!ってな」

 

良ゲー?

そうかなぁ、クソなとこばっかだぞ。

クソゲーとまでは言わんケド……

 

聞いていた泉はポカーンとしていたが、少し笑ってから口を開く。

 

「『神ゲー』じゃないんだ?」

「あぁ、まだそこまで確信したわけじゃないからな。けど、すごい変化だろ?だから、関係ないんだ。何年変わらなかった性格だからとか、そんなの関係ない。泉だって変わりたいんだった変われるはずなんだ、今からでも、絶対」

 

友崎は言いたいことは言ったぞって顔をしている。

泉も思うところはあったのか、なんとも言えない表情だ。

俺はずっと黙って聞いていたけど、なんか言っておこうかな。

 

「友崎良いこと言うじゃん、俺もそういうのいいと思うぞ」

「あ、相原まで言うんだ!」

 

んー、だって変わりたいと思って変わることは悪くないはずだろ。

あ、そうだ。

たしかこの引き出しの一番下に……。

あったあった、なつかしーなこれ。

 

「ほれ、見てみろよ」

 

俺はそう言って友崎と泉の近くまで行き、机の引き出しから取り出したものを開いて2人に見せる。

 

「中学の卒業アルバム?」

「おう。で、これ俺」

 

出席番号1番を指を差す。

その先には相原みなとと描かれて写真が貼ってある。

今の俺とは髪型が全然違っており、無造作に伸びて整えられてもいない。

雰囲気もどこか暗さがあり、お世辞でもカッコいいとは言えないだろう。

 

「全然似てない!ウケるんだけど!」

「え、これが相原……?」

 

うるせぇなぁ、今はマシになってるからいいんだよ。

 

「ふっ、イケメンになっただろう?」

「あっはは、相原って高校デビューだったんだ!」

「たしかにこれから今の相原って、変わるもんなんだなぁ」

 

高校デビューって言い方やめろ!

友崎にも、お前にそう言われたくねえし!

コイツラはぁ……みせなきゃよかったかな。

ぁーまぁ、いいか。

 

「高1のときだってそんな感じだったんだぞ。それに見た目通りこう、いつでも隅にいる感じでな。でも今はそうでもないだろ?自分で言うのもあれだけどさ」

「……相原はなんで変わろうと思ったの?」

 

なんで、なんでかぁ……。

この真面目な感じ、ちゃんと答えないとだよな。

俺から言ったことだししゃーないか。

 

「んー、なんだろ。キッカケなんて大したことじゃないけど、ちょっと真面目に部活やろうかなって思ったところからかなぁ。髪は邪魔だったからバッサリ切ったり、あと俺サッカー部だろ?1人じゃどうしようもないから周りとうまくやる方法を考えたり……まぁその程度に変わりたいと思ったから、変わったんだよ。大したもんじゃないさ」

「あはは、なんかすごいね、相原も友崎も」

 

あははなんかすごいね、じゃない。

お前もやるんだよ!

てかそもそものところ、言わないだけで理由にはもっと不純なものがあったりする。

 

ちょっと俺よりたまコロ上手く蹴れるからと馬鹿にしてくるやつをボコボコにしてやろうレベルだったり……。

反骨精神は時に強いんだぜ。

 

「ま、泉は手始めにアタファミを極めて中村ボコボコにしてやろうぜ」

「ボコボコにするためじゃなくて練習相手になるためなんだけど!」

「はは、どっちにしろ上手くならないとな。友崎センセ頼むぜ」

「先生って……。でもアタファミに関してなら任せてくれ」

 

そうして引き続き友崎によるアタファミ講習が行われ、ほどほどの時間になって今日のところはお開きとなった。

 

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