弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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金曜日の放課後。

俺はなんとか課題を達成しようと1週間の間『泉優鈴に2回話しかける』ことのチャレンジを今日まで続けた。

 

結果としては散々だった。

初日の1回目から話が上手くできず、この日は2回目を行うことすらできなかった。

それでも日南に喝を入れられ、開き直りながら泉さんに話しかけ続けた。

 

会話こそ弾まなかったが、初日以降は1日2回話しかけること自体は達成した。

そして先程、金曜日の放課後に日南への報告で全然ダメでしたと謝ろうとしたところ、及第点ということらしい。

 

なんで?と思ったんだが失敗自体は想定内、失敗したときのほうが経験値は得られるのだという。

だからこの泉さんへの連敗、そしてそれに対する反省やリトライを続けたことで経験値を得たのだとか。

 

でも、経験は積めたかもしれないんだがダメージは受けまくっている上に、泉さんには『なんかへんに話しかけてくるやつ』って印象を与えたようだが……。

 

それでも課題は終わったのだ、俺はもう帰ろうと思い第2被服室から玄関に向かい帰ろうとする。

そんなとき、玄関で落ち込んでいる泉さんを発見した。

 

経験値稼ぎは終わっているので話しかける理由とかはないんだけど、なんとなく話しかけることにした。

と言っても今使える話題は暗記したものの中では思いつかない。

こういうときは相手の服装とか表情とかその場の雰囲気を話すといいと日南が言っていたな。

 

「泉さん……顔暗いね」

「は、はぁ?暗くないし!なに!?」

 

やばい、失敗だ。

めっちゃ怒らせてしまった。

これ以上やらかす前に帰るか……。

 

「ご、ごめん、それじゃ」

「まって、友崎。友崎ってアタファミ強いんだよね……?」

 

そそくさと帰ろうとしたが止められてしまった。

無視をするわけにもいかないので足を止めて返事を返す。

急にアタファミってどういう事だ。

 

「じゃ、じゃあさ、私にアタファミを教えて!」

 

…………え?

 

 

泉さんの話をまとめると……。

中村が急にアタファミの練習ばかりで構ってくれなくなった。

ならばと自分もそれに付き合おうとしたが一蹴されてしまったと。

まぁ中村もグループの中では負けなしって話みたいだったしそれはそうだろう。

 

てか理由聞く際に馬鹿だとかキモいだとか言われた上に、一発スクールバッグで痛いやつ貰ったんだが。

納得はしたんだが、口にするものではなかったか……。

 

泉さんが必死に頼み込んでくるし、教えること自体は別にいいんだが、それにしても場所が問題だった。

ソフトがあるならオンライン対戦という手もあるにはあるが、泉さんは持っていないらしい。

 

俺の家か泉さんの家しか選択肢がないわけだが、俺の家にはバド部の妹がいる。

泉さんもバド部だから妹とは面識があるようで、俺の家は却下。

 

そうなると泉さんの家しかないわけなのだが……。

既に涙目だ。

流石に気まずいと言うかかわいそうというか、むしろそこまで嫌がられていることに俺も泣きたくなってくる。

仕方ないのか?と思ったところで1つ閃いた。

 

1人でダメなら応援を呼ぶのもありだ。

最近そこそこ仲良くなり、アタファミが得意で、泉とも仲がよさそうな奴がいるじゃないか。

難関ダンジョンに行くには仲間が必要だ。

サンドバッグくんだけど。

 

「泉さん、ちょっと待って。応援呼んでいいかな?」

「え?応援って、だれ……?」

「相原。中村とよく一緒にいるし泉さんとも仲悪くないでしょ?」

 

一緒のグループで会話してるのとかたまに見る気がするし。

 

「相原なら……うん、わかった」

 

俺はスマホでLINEのアプリを開き相原にも連絡を送る。

やべ、てか既読付くかな?

ちょっとドキドキするがLINE通話してみるのも手か……?

あ、既読がついた、よかった。

 

「相原、すぐ来るらしい」

「うん……」

 

そして待つこと数分ほどで相原がやってきた。

泉さんと相原が挨拶をしてるが、さっきぶり?

さっきまで一緒にいたのか?

 

やってきた相原に大体の説明をする。

相原はなかなかに察しがよく、なにが問題かを理解したのか自分の家でアタファミをやることを提案してくれた。

よかった、これでとりあえずなんとか場は整ったか。

 

「ああ。助かった、サンキュ」

「おう、困ったときはお互い様だろ?ま、貸しにしといてやるよ」

 

貸し、か。

まぁ仕方ないのかな。

いや反論しておくか、先週こういう事が大事だと知ったしな。

 

「せ、先週は俺の家を使っただろ?」

「そりゃそうだけど、この件に関しては関係ない俺がわざわざ間を取り持ったうえで家まで提供するなんて、流石に釣り合ってないんじゃないのー?」

「む……」

 

それはそうかもしれん。

正直今もここに来てくれたことには感謝しているからこれ以上突っ込むのも恩知らずになってしまうか。

 

「相原と友崎ってそんなに仲良かったんだ。なんか意外!というか、びっくり?」

 

泉さんは俺と相原のやり取りを見てそう口にした。

仲良くなったのも最近ではあるし、クラスで俺が誰かと話していることなんてほとんどなかったのだからそう思うのも仕方ない。

 

「おう、俺達マブダチなんだぜ、なぁ友崎!」

「まだ言うのかそれ。マブダチってわけじゃないけど、最近はそこそこ話すかなぁ」

 

相原はこういうところ本当にノリと勢いで生きていると思う。

マブダチって、俺なんかと……、いやこういう考えは矯正しないとだったな。

 

「ふふ、やっぱりなんか気安い感じで仲良さそうだね」

「まぁな!」

「……まぁ、そこそこな」

 

少し照れくさいが、マブダチだとかそこまではいかなくても、多分もう友達だと思ってもいいはずだ。

だったら否定、卑屈、そんなことをするよりも、友人として誇れる人間を目指すべきなんだろう。

……すぐは無理かもしれないけど、一歩ずつ、さ。

 

相原の家に行くことも決まったので、日が暮れる前にと俺達は駅に向かって歩き出した。

 

帰宅中は泉さんが中村とか同じグループの人の話、というかだいたい中村への愚痴みたいな話をして、それを相原がフォローしていた。

いや、マジで相原がいてよかった。

2人だったらこんな会話を俺がしなきゃいけないの?

できる気がしないわ。

 

そしていったん俺の家によってから相原の家へ。

俺も自宅から色々教えるのに役立ちそうなものだけ持ってきた。

 

「おう、ここよ。上がって上がって」

「おじゃましま〜す」

「お、おれも、おじゃまします」

 

相原に促されるまま家へとあがる。

こうやって人の家に来るのっていつぶりだろうな。

上がったら、先週の相原を見習って靴を揃えて端へ、と。

 

そうしている間に玄関の音が聞こえたのか、相原の母さんが出迎えをしてくれたので軽く挨拶をした。

 

「あらあら、可愛い女の子にかっこいい男の子ね!みなとと遊んでくれてありがとう!」

「いえ!こちらこそいろいろ助けてもらってます!」

「お、俺も仲良くさせてもらってます」

 

か、かっこいい、か。

たぶんお世辞ではあるんだろうが、初対面でこう言われるのは、最近の自分の成果が出ているのではないかと思えて正直少し嬉しくもある。

 

そうして挨拶をしたあと、相原は自分の部屋へと案内をした。

 

「ほい、ここね。ちなみにお手洗いはこの部屋でて右の奥、ドア見ればわかるよ」

「へぇー、部屋は結構片付いてるね」

 

泉が言ったように相原の部屋は片付いていた。

床はフローリングでカーペットは敷いてはいないようで、客人用にクローゼットに座布団を入れているのか、2枚出してくれた。

 

ここでふと先週のことを思い出す。

先週相原が俺の家に来たときには、俺の部屋を色々と探っていたな。

それに、日南からの課題であったように対等になるのにイジるイジられるっていうのは必要なはずだ、やられた事をやり返すというのは悪くはないはずだよな?

 

そこまで考えてから今ちょうど相原と泉さんが話のネタにしていた勉強机の前に立つ。

ここまで来て少し躊躇いもあるが……まぁ相原だし大丈夫だなと思い、机の引き出しに手をかける。

 

「よーし、物色するか」

「あ、おま、やめろ友崎ぃ!」

 

相原はそうは言いながらも本気で嫌がっているようでもなさそうだった。

というかお前もさんざん俺の部屋で物色してたよな?

 

「お約束だろ?」

「あはは!やっぱり仲いいよね、2人共」

 

泉さんにもウケたようだ。

うーん、成功ってことでいいか。

 

そんなやり取りをしてから本題へと入っていく。

俺が泉さんにアタファミを教える。

中村の練習相手になるレベルまで泉さんを成長させなければいけないということだ。

 

相原はアタファミを起動してコントローラを渡してくれたが、今回は俺の方のデータを使いたいので相原の断りを入れてから俺のゲーム機で起動をし直す。

本体をドッグに繋ぎなおすだけで換えられるのだからこの設計は本当に便利なものだよなあ、さすがはヨンテンドーだ。

 

と、そんな準備をしている間に相原は俺達にお茶とコップを持ってきてくれた。

 

「お茶ドゾー」

「!、ドモドモー」

 

あえて聞くような野暮なことはしないが、ネタを挟んだようだ。

少しだけ笑みを浮かべながらスラングで返す。

 

持ってきたコップもみてみればヨンテンドーのグッズらしい。

相原って結構というか、思ったよりもゲーム好きだったんだな。

 

そこから、本格的に泉を鍛えるために取り掛かる。

手始めに俺と泉で対戦してわかったこととして、泉は初歩の初歩は最低限抑えている。

けど、それだけだ。

 

細かいテクニックは何一つとして知らないのだろう。

なのでそこから今一番必要なテクニックはなにかを考えて、小ジャンプの練習をして貰うことにした。

 

もちろんそれだけではとても勝てるようにはならないため、小ジャンプには練習用のストップウォッチを渡し、アタファミができる時間では俺の渡すリプレイデータを完璧に再現できるように操作を覚えてもらうこととした。

 

これができるようになれば、十分に中村と戦えるレベルまでに成長できるだろう。

方針は決まり、泉にやることを伝えた。

 

こうしてやるべきことは決まったのだが、泉からどうして俺がアタファミをここまで頑張るのかを聞かれた。

どうして、か。

なんか最近みみみにも似たようなことを聞かれた気がするな。

 

俺は思ったことをそのまま泉へと伝えた。

ただアタファミが好きだから。

そこには他人がどうとかは関係ないんだ、結局自分がやりたいから、アタファミが好きだから、それに尽きる。

 

どうやら泉は、みみみみたいに自分が折れて折れて、自分が思ったことよりもまわりに合わせてしまうことに疑問を持っていたようだった。

 

話はそこで終わってもよかったが、最近自分を変えようと努力を始めた俺にとって、変えたくても変えられない泉がなんだか他人事には思えず、さらに踏み込んで語ってしまう。

 

今俺は自分を変えようとして、たしかな結果を得られている、だから泉だって変われるはずだと。

泉は驚いた顔をしていたが、言いたいことは伝わったような気がした。

今度こそこの話は終わった。

 

と、そう思ったところで今度はずっと黙っていた相原が口を開いた。

 

「友崎良いこと言うじゃん、俺もそういうのいいと思うぞ」

「あ、相原まで言うんだ!」

 

そういうの、とは変わろうとすること、だろうか?

相原は袖机の一番下の引き出しから何かを取り出し、俺たちに見せてきた。

 

「ほれ、見てみろよ」

 

それは、中学の卒業アルバムだった。

相原の指を差した先を見ると今の俺よりも暗いんじゃないかという感じの男子が写っている。

これが、中学の相原……?

 

「全然似てない!ウケるんだけど!」

「え、これが相原……?」

 

どうやら相原は中学の時、というか高校一年の時まではこんな感じだったらしい。

それが1年で、俺からしたらリア充グループに入るだろう人間たちと仲良さそうにして、クラスでも目立つ側の存在となっている。

 

「……相原はなんで変わろうと思ったの?」

 

泉も相原の変わりようが気になったようで理由を聞く。

というか、俺も気になる。

 

「んー、なんだろ。キッカケなんて大したことじゃないけど、ちょっと真面目に部活やろうかなって思ったところからかなぁ。髪は邪魔だったからバッサリ切ったり、あと俺サッカー部だろ?1人じゃどうしようもないから周りとうまくやる方法を考えたり。まぁその程度だけど変わりたいと思ったから、変わったんだよ。大したもんじゃないさ」

「あはは、なんかすごいね、相原も友崎も」

 

相原の話を聞いて思った。

すごいのは、相原だけだ。

俺はまだここまで変われてはいない。

それに日南のサポートがあってようやく一歩踏み出したくらいなんだろう。

 

……いや、また思考が後ろ向きになったな。

逆に考えるべきなんだろう、相原は変わろうとして自分を変え、今ではリア充グループの一員だ。

つまり俺だってできるはず。

 

むしろ相原のマネをしたり、俺が変わろうとしているということまで話したのだから直接コツを聞くことだってありかもしれない。

 

相原はこの話を切り上げて元のアタファミの話へと戻した。

 

「ま、泉は手始めにアタファミを極めて中村ボコボコにしてやろうぜ」

「ボコボコにするためじゃなくて練習相手になるためなんだけど!」

「はは、どっちにしろ上手くならないとな。友崎センセ頼むぜ」

「先生って……。でもアタファミに関してなら任せてくれ」

 

こうして、今日は泉へのアタファミのアドバイスをしつつ、俺にとっての難関のダンジョンアタックは終わった。

今後もアタファミを教えて欲しいという話だったので、泉とはLINEも交換した。

 

今日の結果については予想以上の戦果を上げられたのではないだろうか?




ハーメルンが一時落ちていたようなので投稿が少し遅れました。
すぐに復旧されてよかったー
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