弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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14+

あの事件から三日がたった土曜日。

北与野にあるイタリアンの店で日南に一週間の報告をしていた。

 

なぜ土曜かといえば、本来なら木曜・金曜と放課後に第二被服室で報告するところ、あの事件の後始末に日南がいろいろ動いてくれていたので時間が取れなかったのだ。

 

だが、そのおかげもあってか俺の周りでは特に問題もなく、中村たちも表面上では紺野達と普段通りに接しているらしい。

リア充ってすげぇな。

そう思いながら、配膳されたサラダを一口食べる。

……うまっ、なにこの店。

 

「しかしまぁ、散々だったな」

「それでも、あなたへの悪影響は少なくすんでよかったわ」

「それもそうか」

 

俺は中村をボコボコにした後、紺野に啖呵まで切ったのだ。

正直もうクラスの居場所がなくなるくらいの覚悟をしていたのだが、意外なことに俺への影響はそこまででもなかった。

 

あったのも、あの時のことを野次馬根性で聞いてくるクラスメイトが何人かいた、とかそれくらいだ。

それも悪意があるものではなく、本当に好奇心から結末を聞きたかっただけのようで、質問に答えるとへー、マジかーって感じで満足して帰っていった。

 

今回の事件がこれくらいで済んだのは、日南が色々暗躍したからこそだろうか。

 

「あの状況でも、あなたのしてきた根回しが少しは役に立ってよかったわね」

「根回し……?というと?」

「相原や優鈴よ」

 

あぁ、と納得する。

たしかに、俺が紺野に啖呵を切った時にあの二人は間に割って入ってくれたな。

泉なんかは特に紺野達と仲がいいのにわざわざ仲裁してくれたのだから、本当に感謝だ。

 

「たしかにあの時、間に入ってくれて助かったな」

「それだけじゃないわ。あなたへの被害が最小限になっているのはあなたがこの二日間ボケーっと過ごしていた間にも、二人がいろいろと動いてくれていたからよ」

「え……そ、そうなのか?」

「そうよ。ああいうものは後から広まる噂が一番厄介なの。その場の出来事を知らない人達には、噂でしか情報がはいってこないんだから。そこでエリカ達主観の噂だけが広ったら、あなたが100%悪の吊るし者にされるわよ。『ゲームがうまいだけのキモイ奴が調子に乗ってケンカを売り始めた』みたいに」

 

ひえっ、リア充怖すぎるだろ!

 

「でも、あの場の当事者に相原や泉といったあなたの味方にもなってくれる人たちがいて、完全にあなたが悪、ということにもならなかった。そのおかげもあって『ゲームがうまくてキモイ奴が紺野にケンカを売ってキレさせたらしい』くらいに落ち着いているわ。あと、エリカと仲のいい真央と美佳が先に帰っていたのも幸いしたわね」

「キモイ奴……でもそういうことなら相原と泉の二人に感謝しないとだな」

 

キモイ扱いされるのなんとかならないんですかね。

いや今はいいか、そこは精進していくしかない。

 

「そういえば、相原もアタファミ結構強かったのね。あなたとアタファミ対戦をしたって報告は何度か聞いていたけど、中村と同じくらいだと思っていたわ」

「あぁアイツは結構ガチでやっているぞ。最近は明確に俺対策までしてきているし。うまいほうだと思う」

 

あの場での相原との対戦を思い出す。

いつものアイツのプレイとは違って、なんていうんだろう。

怒らせることに特化したような戦い方だった。

対戦前にアイツが言った、俺が中村にしたプレイにイライラしているってことは本心だったんだろう。

だから戦い方を変えて俺が中村との試合で行ったプレイの真似みたいなことや、わざとイライラさせるようなプレイをしてきた。

 

無論、俺としては中村との対戦でも全力を出したつもりではいた。

俺はアタファミにおいては手加減ができない(たち)なのだ。

試合さえ始まれば、あとはいつも通りに操作するだけ。

 

とはいえ……振り返ってみれば、中村に対して『コイツはうまくない』と決めつけていたことや、俺が見た撃墜への道筋の中で、自分の練習も兼ねるように実用性以上の難しいコンボを使っていたのも確かではある。

相原も、それに中村もそれがわかるくらいのところまでアタファミをやりこんできているからこそ、イライラしていたのかもしれないな。

 

しかし、相原に3機も撃墜されたのはあれが初めてだ。

相原はもしかしてああいったヒールなプレイのほうがうまいんじゃないか……?

いや、俺も頭に血が上っていただけかな。

 

「まぁこの話はもういいわ。終わったことだもの。それよりも、風香ちゃんの件はどうなったのかしら」

「あぁ。それは、一応、一緒に映画に行くことになった、かな」

「本当?やるじゃない!それじゃあ、あなたの言う誠実っていうことの答えは出たのかしら?」

「それは、まだだけど…」

 

菊池さんにはアンディ作品を通じて興味を持ってもらっていた。

だけど、俺はその作品を読んでいないのにまるで読んだことがあるように言って勘違いをさせてしまった。

その引け目をずっと感じていたんだ。

だから、菊池さんには正直に話すことにした。

 

俺はアンディって人のことを好きでもないし、むしろ読んだことすらない。ただなんて説明すればいいかわからなくてその場をやり過ごしちゃったんだと。

嘘をついていてごめん、と。

 

そして菊池さんがいいのなら、菊池さんがそこまで好きだというアンディ作品を改めて読んでみようと思う。

それで、もしよければこれからも好きな作家なんか関係なく普通に話したいと伝えた。

 

少しずるい気はしたがその流れのまま日曜日に日南からもらったチケット、マリー・ジョーンの試写会のチケットがあるので一緒に行かないかと誘ったのだ。

 

「って感じ。嘘をついたことを隠してそのまま話すのは俺には無理だと、それは絶対に不誠実なことだと思った。だから正直に話したんだけど、でもそれとは別に騙して期待させてしまった事への責任は取りたいとも思ったんだ」

「ふぅーん。まぁやる気があるのならいいんだけどね。これで小さい目標は無事にクリアできそうじゃない。早かったわね」

「目標とかそういうのを意識していたわけじゃないんだけど、結果的にはそう、かもな」

 

むしろ、目標のために誘った、という考え方のほうが後ろめたさが出てしまっていやだなと思う。

 

「でもあなたも少しは味わったんじゃない?現実で、努力によって自分の結果を得た時の実感というか、達成感ってやつを」

「たしかに、そうだな。おかげで少しは『人生』も悪いもんじゃないんじゃないかと思えるようになれたとおもう。これからもよろしく頼むよ」

「ふふ、いいわ、任せなさい。それで、明日の準備はできているのかしら?」

 

こうしてこの日は日南に事前準備のアドバイスを受けながら過ごすのだった。




これで原作一巻分が終わりになります。

2巻に入るにあたって現在ストックが0なので書き溜めたいのと、いろいろ読み直したいので次回は時間が空くかもです。
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