弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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俺、友崎文也はなぜかクラスメイトの中村に、土曜日の学校に来るようにと呼び出しを食らってしまった。

 

俺が何かしたか……?とビビりながら聞いてみたところ、要約するとどうやらアタファミで勝負をしよう、という話らしい。

 

正直中村のようなクラスでもカースト上位の存在と一緒にいると息が詰まりそうになるので断りたかったのだが、断ったらそれはそれで後が怖いのでとりあえず首を縦に振ってしまった。

 

そして約束の土曜日。

学校の視聴覚室にはまだだれも来てはいない。

時間は、12時過ぎくらいか。

それから数分待つと呼び出した本人の中村とその取り巻きの相原が一緒に入って来た。

 

中村と相原は部活もクラスも同じで一緒にいることはよく目にする、気がする。

結局どちらともほとんど話したことがないためよくは知らないが。

 

「おいおい、友崎くんガチガチじゃん。大丈夫かよ」

「え、いや、まぁ……」

 

急に話しかけられたことにテンパり、よくわからん相槌で返す俺。

 

「はは、中村ビビられてんぞ」

「うっせ、さっさとやんぞ」

 

この二人、やはり結構仲がいいらしい。

まぁ同じ部活に入っていて、ここにも一緒にくるんだからそれはそうか。

それから話をしてから、直ぐにアタファミの対戦を開始した。

 

ただまぁ、始まってみれば実力の差は歴然だった。

試合は俺がストックを4つすべて残したまま中村に勝利。

あっけないほど簡単に勝ってしまい画面にはGAME SETの文字が浮かぶ。

 

「よし」

 

……しかし、あまりにもあっさりと勝ちすぎたらしい。

中村のほうを見ると釈然としない表情をしており、相原も驚いた顔をしている。

 

「キャラのせいだ」

「はい?」

 

思わず聞き返してしまった。

 

「キャラのせいだろこれ、普通に?」

「い、いや。このキャラとこのキャラ、性能的には同じくらいだけど……」

「じゃなくて、相性。どう考えても相性悪いじゃん、これ」

「た、たしかにフォクシーは落下が早いからコンボはつなげやすいっちゃやすいけど」

「だろ。キャラ相性じゃん、こんなゲーム」

 

中村の言葉に脳がフリーズしそうになる。

これは明らかに言い訳だ。

この差はただ単純にアタファミに対して向き合った時間の差でしかない。

 

そしてこれはたぶん、俺相手に負けた、という事実を認めたくないからの言い訳だ。

完全になめられている。

 

まぁそのことには別にいい。

見下されるのには慣れている。

でもアタファミに関してだけは俺の中に譲れないものがある。

俺はこのゲームにガチで向き合って、努力をしてうまくなったんだ。

なのにろくに努力もせずにキャラのせいだなんだと言い訳をして正当化することが許せなかった。

 

「…そんなの、言い訳だろ。」

「実際そうじゃん。こんなので勝ってうれしいのお前? クソゲーじゃん。くだらな」

 

そこから先はもう何を言ったのかはあまり細かく覚えていない。

とにかく衝動的な怒りをぶつけていたと思う。

ざっくりと内容的には、納得がいくようにキャラやコントローラ替えてやってやるよと啖呵を切ったことは覚えている。

 

その後、中村と場所を入れ替え、コントローラを入れ替え、キャラを入れ替え、ストックを8に設定して、でも服は入れ替えずに対戦を行った。

結果としては、おれが8ストックすべて残したまま勝ったのだった。

 

試合後、ここにいるのは気まずくなってしまったのでそそくさと視聴覚室から出ていく。

俺はアタファミでは日本一でも、人生ではどうしようもなく弱キャラなのだ。

これ以上ここにいたらどうなるのか分かったものではないのでさっさと逃げたかった。

 

「じゃ…俺はこれで帰るから」

 

そういうと俺は視聴覚室を後にする。

月曜からの学校のことは、今は考えないことにした。

 

 

その後、家に帰るために校舎の玄関で靴を履き替えていると、さっきまで視聴覚室で俺と中村の戦いを観戦していた相原がやってきて声をかけてきた。

 

「友崎くんちょっと待ってくれよ」

「あ、え、さっきの中村の取り巻きの……まだなにか用?」

「相原な?取り巻きじゃねーって。中村とは同じサッカー部だけど。アタファミやるって聞いたから見学しただけ」

 

俺はまだ冷静ではなかったらしい。

そりゃ一緒にいるだけで「取り巻き」とひとくくりにしたら怒っても当然だ。

 

とはいえ、中村と一緒につるんでいるリア充グループの一人で、さっきあんなことをしでかしてしまったことの制裁的な何かが仕掛けられてくるのかも、という不安が拭えない。

用件だけ聞いてなんとか切り上げて逃げよう。

 

「そ、そうなんだ……で、何?」

「いや友崎くんめっちゃアタファミ強かったじゃん、今度俺ともやろーって」

「え、またあそこに呼び出されるの?」

 

ほら、ろくなことにはならなかった。

どうせ中村とつるんでいるあたりアタファミに関してのうまさや熱意も同じレベルだろう。

などと思っていたら斜め上の話をされた。

 

「いやフレコ交換すればいいじゃん。俺もこれから帰るから、Lineでも交換して帰ったらやろうぜ!」

「え、ら、Line?」

 

Lineの交換って普通友達同士がやるものなんじゃないの?

そのままどうするか悩んでいると、さらに相原は強引に話を進めてくる。

 

「なんならお前んちに向かってもいいぞ! ほら、Line交換して熱帯か友崎くんちでローカル対戦か選べ。アリー!アリー!」

「じゃ、じゃあ、Lineで・・・」

 

ごりごり押してくる相原の雰囲気に耐えられずLineの交換をさせられてしまう。

言われた通りの方法で操作するとスマホ画面にQRコードが表示される。

それを相原に見せて読み込ませ、Lineの交換が完了した。

これで用は終わりだろう。

さっさと帰らせてもらおう。

 

「じゃあ、俺は帰るから」

「おう。つっても駅行くんだろ?俺ももう帰るから道中は一緒だろ」

 

え、もしかしてコレいっしょに帰る流れなの……?

なんか適当に理由でもつけられないものか。

 

「な、中村の事はいいのか?ほら、仲よさそうだしそっちと一緒にいたほうがいいんじゃ」

「いやあんな機嫌悪いですオーラ出してるやつと一緒とか無理だから。誰が中村をあんなイライラさせたんだろうなぁー」

 

あ、はい、俺ですね。

そんなことを言われると何も返すことができず、一緒に駅まで向かうことになった。

 

道中、相原はアタファミについていろいろ話しをしてくる。

驚いたことに相原は俺が思ったよりも結構アタファミをやっていたらしく、レーティング対戦でもレート2000はあるようだ。

このあたりまで行くと身内でちょっとアタファミやるくらいでは簡単にいかない数値で、勝つために相当の試合数をこなさなければたどり着かない場所だろう。

 

そして思う。

こいつはこいつで、アタファミの事がそれなりに好きなんだろう。

レート2000もあるなら、勝つために努力をこなしてきたはずだ。

 

学校の玄関で対戦しようと言われた時は面倒に感じたが、これなら少し期待をしてもいいのかもしれないと思えた。

 

そんな感じでアタファミに話していたら駅に着く。

俺もちょっと楽しくはあったがやはり誰かといるのはつかれてしまう。

これでやっと開放か、という気分になった。

 

「友崎くんは駅どこなんだ?」

「え、あぁ、北与野駅かな」

「お、マジで?方面一緒だな。てか、俺はその手前」

 

しかし、どうやらもうちょっと解放はされないらしい。

まぁ、今更電車くらいはいいか。

 

「てか一駅隣ならマジでローカル対戦しにお邪魔しに行けるな。今度遊び行こうか?」

 

それは勘弁してくれ……。

 

 

それから電車に乗って帰宅後、約束通り夜に相原からLineでアタファミのフレンドコードが送られてきたので、登録をする。

 

名前は、harami?

相原のharaと、なんかかな?

とりあえずフレンド申請を送り、時間的にも問題はなかったため対戦できることを伝える。

 

『フレンド申請送った。時間も大丈夫。』

『いや、全国1位じゃねーか!』

 

あ、そういえばフレンド申請したから向こうも名前見えるのか。

 

『正直レート2000くらいなら負ける気がしない』

 

俺も興が乗ってきて、結構思ったことそのままLineを送った。

送信後にちょっとマズかったかな?と思ったが、もう中村相手にやらかしすぎてるから今更気にする必要もないか、とも思った。

実際、相原もあんまり気にはしていないようだった。

 

それから相原の建てた対戦部屋に入り、対戦開始となる。

どうやら相原はグラスバイオを使うようだ。

 

グラスバイオもなかなか侮れない性能をしている。

単純な性能比較的にはトップのキャラから外れて入るが、十分に戦っていける性能と強みは持っているのだ。

耐久力と一発の強さによるバースト力ならトップクラスなので差し合いが上手ければどこからでも逆転を狙っていける。

 

とはいえ遠距離技を持たず、当たり判定の大きさからファウンドのコンボを抜けるのが難しくなるのでこちらの有利というところだ。

 

そして互いに準備ができて試合開始。

 

 

結果で言うと俺の圧勝だった。

中村と比べると相原のほうがうまかったのは間違いなが……レート2500と2000の違い、それが明確に出ていた。

俺は1ストック奪われたものの、3ストックを残したまま勝利した。

 

でも、グラスバイオ自体はネット対戦でもあまり使われていないキャラだったのもあり、俺はけっこう楽しさを感じていた。

レーティング対戦で上の方になるとどうしても使用キャラが性能的に優秀だったり人気から研究が進んでいるキャラに偏ってしまうし、効率的な動きっていうのを求めてほとんどの人が似た動きになってしまう。

 

その点、グラスバイオは使用率もそこまで高くないので対戦数自体が少ないし、たぶん相原の動きもネットの動きを真似たと言うよりもコツコツ対戦をこなして自分でキャラの理解を深めていったように感じた。

でもそれ故か、結構新鮮な感じがして俺は楽しんでいた。

 

nanashi:お疲れ様。

harami:強すぎんだろ!もっかいだもっかい!

 

断る理由もないのでそのまま1時間ほど対戦を行った。

対戦はすべて俺の勝ちであったが、相原の動きも結構やり込んでるやつのそれでまだまだ伸びる可能性を感じる。

 

相原はどこか独特の動きがしており、若干のセオリーを無視したような無茶苦茶なメテオを当ててきて、そこまで追い打ちできるのかと関心もさせられた。

 

だからこそ、もっと知識をためて練習を積み重ねれば更にうまくなるだろう、とそんな気がした。

ま、今は全体的にまだまだなのだが。

 

harami:お疲れ様でした…

nanashi:お疲れ様でした。

harami:くやしいです。

nanashi:まだまだだな。

 

対戦を終えて、なんとなく俺の中では相原は結構良いやつなんじゃないか、という評価ができ始めていた。

 

 

***

 

 

中村、相原とアタファミを対戦した翌日。

俺はアタファミのレーティング対戦を行っていた。

 

俺のレートは日本一位ではあるが、誰も意識していないというわけでもない。

レート2500以上でここの所ずっと2位をキープしているプレイヤー「NO NAME」。

まだ直接の対戦をしたことはないが、ここ数ヶ月で2位に登りつめて以降、2位を明け渡したことがないのだ。

 

そんな事を考えながらも対戦を繰り返していると次の対戦相手が表示され俺は息を呑む。

 NO NAME レート:2561

 

今までランキング1位と2位でありながら直接の対決をすることはなかった。

それがついにマッチをしたのだ。

胸が熱くなるのを感じた。

 

 

対戦の結果、俺は勝った。

現状の実力だけで言えば俺のほうが上であり、2ストックを残して勝利。

ただし、このまま実力を伸ばしていけば俺を追い越す可能性だってあり得るように感じた。

 

nanashi:お疲れ様でした

 

俺は試合を終えた挨拶を送る。

すると帰ってきた答えは

 

NO NAME:関東住みですか?

 

どういうことだ?と思いながらもチャットを続けると、オフ会への誘いのようだった。

俺はそういったものに参加したことはないが、相手がアタファミ2位のNO NAMEだったら、面白そうだと考えてOKをした。

 

こうして来週の土曜日、14時にNO NAMEとのオフ会が決定するのだった。

 

 

***

 

 

それから月曜日がやってくる。

中村に啖呵を切ったことで内心ヒヤヒヤしていたものだが、思いの外平穏なものであった。

俺と中村がアタファミで対戦をすること自体はクラスに浸透していたのだが、なんとなく察して空気を読んでくれているのだろう。

おれもそれに乗っかり一人でぼっちを満喫……。

 

「よ、友崎。おはよ」

「……ん、あ、ああ」

 

とおもっていたのだが、なぜか相原から話しかけられる。

 

てか、はじめは俺のことをくん付けだった気がするのに気がついたら呼び捨てにされていた。

俺も相原を呼び捨てにしていたし、別にいいんだけど。

 

そして適当な話をしたら、チャイムが鳴り相原も自席へと戻っていった。

結局なんだったんだろう。

 

それで終わりかと思ったら今度は昼休みにまで俺に声をかけてくる。

 

「よ、友崎。飯ってどうしてるんだ?弁当?食堂?」

「え、あぁ、食堂、だけど」

「ならちょうどよかった。俺も食堂だし行こうぜ。ゲームの話したいし」

 

たぶんだけど、こいつは何となくそう言っただけで深い考えとかはないんだろうな。

けど、俺は正直人と話すのには慣れていないので一人でいるのが気楽なんだ。

適当に断ることにした。

 

「いや、俺いつも一人だから……」

「なるほど、じゃ問題ないな。よっしいくぞ」

「え?」

「え?」

 

あれ、俺今断ったよな?

 

「ん?いや、俺は一人だから」

「あ、おぉ。で食堂に行くんだろ?じゃあ何にも問題ないよな?」

 

え?これって断ったことにならないの?

あれ、たしかに一人だから一緒に行くのも問題ないように聞こえるか?

 

「あ、まぁいいや、食堂いくか……」

「おう、席とらないとな」

 

そして諦めた。

 

相原とは土曜日に初めて話したような仲だったので、昼食中は気まずい雰囲気になるかと思っていたが、思ったよりも話しやすい奴だった。

 

というよりも、話すことがアタファミばかりだったので俺もつい話に乗ってしまっていた。

なんでも相原は俺に負けたことを気にしており、アタファミをうまくなりたいとか。

 

俺は土曜日の試合を思い出しながら相原に足りていないことを分析する。

相原がアタファミを好きということも、短い時間だったが十分に伝わっていた。

ということもあり、俺は割と真剣に考えていた。

 

相原はおそらくほとんど自力でアタファミをプレイをしてきたのだろう。

だからこそ足りていないのは他人の知識。

今の時代、少し検索するとプレイのテクニック集やYouTuberがまとめたプレイ動画がたくさん出てくる。

そういった知識の収集やうまい奴を真似ることがうまくなるための一番の近道なのだ。

 

相原も対戦数はこなしているようだが、今すべきことはその知識の収集とその練習だ。

 

「そう。例えばだけどさ。ちょっと待って……」

 

俺は登録をしているアタファミの攻略情報を開く。

ここにはアタファミで勝つためのテクニックが詰め込まれている。

 

「はい、これ。アタファミでいろんなテクニックをまとめて一覧化しているサイトなんだけど全部知ってる?」

 

相原にスマホを手渡し、開いたサイトを見せる。

食い入るように見る相原。

どうやら全然知らないらしい。

 

「てか、むしろよくそんな知識でレート2000までこれたな」

 

相原のレート2000は、俺と比較すると大したことなく感じられそうなものだが、全体で見ればかなり強い部類に入る。

 

それこそ全ユーザの中の上澄みで1%以内に入っているんじゃないか?

ここに来るまで自己流ということは、ゲームのセンスで言えばかなりのはず。

 

そんな感じで、今までアタファミの話をする相手もいなかったのでつい話し過ぎてしまったかも。

ただ、こういうのもよかったかもと思う自分がいた。

 

アタファミが好きな同志、というのが身近にはいなかったのでうれしく感じてしまったのだ。

 

 

こんな感じで月曜日以降ちょくちょく相原とはアタファミの話をするようになり、不定期ではあるがたまに昼食を一緒に取るようにもなった。

 

ただ、相原はもともと運動部で中村のグループにいることが多かったので、そっちのグループで話をしていたりすることのほうが多い。

 

俺と話をするのはまぁその合間くらいの頻度だ。

とはいえ、なんだかんだで土曜の中村との対戦があってから一週間が過ぎたが、俺が普通に過ごせているのはアイツのおかげなのかもしれないと思った。

 

所々で中村から俺に対してのフォローをしてくれているんだと理解した。

これに関しては相原に感謝しようと思う。

 

水曜日にはクラスの人気者の日南葵と中村が一緒にいるところでアタファミの結果を聞かれた。

中村が自分でも負けたことを認めたが、それで特に何かあったわけでもなかったし、これはもう問題がなかったってことでいいのだろう。

 

 

***

 

 

無事に一週間が過ぎ、休日に入る。

俺は土曜日にNO NAMEとのオフ会を予定していた。

しかし、このオフ会で俺の中での大事件が起きてしまった。

 

NO NAMEとのサシのオフ会。

そこで待ち合わせ場所にいたのは、クラスメイトの日南葵だった。

彼女は学校では成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能とまさにまさに絵にかいたような優等生である。

 

のだが、どうやらそんな日南葵が尊敬していたnanashiが俺であることに落胆。

声にまで出して「うだつの上がらない奴が……」とまで言う始末。

そこからはもう売り言葉に買い言葉での言い争いとなった。

 

まぁ細かく言うと長くなってしまうが、お互い譲れない点があった。

俺にとって人生ってものはとてつもない「クソゲー」なのだ。

そしてコイツはそういう俺に対して、負けたくせに努力をせずに、それを正当化するやつが一番嫌いだと言い放った。

 

それを言われ、俺が先週に中村に対して抱いた感情がそのまま俺へ帰ってくる。

ろくに努力もせずにキャラのせいだと言い放った中村。

俺がさっき人生がクソゲーと言い放ったことはまるであの時の中村と同じではないか。

 

それでも……人生ではキャラ変更ができない。

結局生まれ持ったパラメータから変えることができないんだ。

このどうしようもないキャラ差を覆せない、だから、できるやつの価値観を俺に押し付けるな。

だんだんと弱弱しくなりながら、そんな感じのこと言う。

そしたら日南は来なさい、というや俺の腕をつかみ無理矢理にどこかへ連行するのだった。

 

 

困惑のままについていくと、なぜか日南の家に上がることになった。

案内された部屋でちょっと待っていなさいと言われたので正座で待っている。

まるで借りてきた猫状態である。

 

待っているとすっぴんになった日南がやってきた。

正確に言うと、日南だということに気付かず、姉か妹かと思ったのだ。

まるで別人なんじゃないかというくらいに印象が変わっていたのだ。

だが、それは断じていつもの日南が厚化粧だとかそういう話ではない。

なんとも言い表せないが、とにかく別人というくらいの変化に驚かされた。

 

そこからもいろいろあったのだが要約すると、

俺が言った、初期パラメータですべてが決まる、キャラ変更ができない、というところに文句があるそうだ。

初期パラメータが決まっていても成長させることはできるし、自分を変えていくことだってできる。

日南葵はそういう努力を積み重ねて今の自分を形成していたのだ。

 

そして何より日南が許せなかったのは、あらゆることを努力で勝ち抜いてきた自分に、たった一分野とはいえアタファミで勝っているnanashiが人生において醜い負け犬で言い訳で自分を正当化していることだったらしい。

自分に勝ち続けているnanashiは自分以上の努力家のはずだ、そう思っていたのに実際のところは人生負け犬の俺であった。

唯一尊敬していたanashiが人生で負け犬だなんてまるで自分の努力が何の価値もないものと言われたようなものだと。

とんでもない言い様である。

ここまで言われるとむしろすがすがしくすら感じてしまう。

 

とはいえ俺は今は人生が「クソゲー」だと思っている。

そして日南は人生をぶっちぎり1位の「神ゲー」、それもアタファミと並んでのトップタイ1位だという。

俺が人生を「クソゲー」だと思っているのはそのプレイ方法を理解していないから。

ちゃんとプレイしたうえでクソゲーだというのならともかく、何もせずにクソゲーと決めつけることは許さないと。

日南が俺に人生のルールを一つ一つ説明していくから、俺に「人生」という「ゲーム」に本気で向き合えということだ。

無茶苦茶ではあるが、日南の言うことには確かに筋が通っていた。

 

コイツは人生はアタファミと並んで、一位の「神ゲー」といった。

それに、俺はNO NAMEがアタファミを本気で取り組んでいたことも対戦を通じて知っている。

だからこそ、アタファミと並んで1位だと言ったコイツのことを信じてみてもいいんじゃないかと思った。

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