弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「友崎の家、また来たな。この間ぶり!」
「へぇ〜、ここが友崎の家かぁ、立派だねぇ!」
「立派って……普通だって。まぁ入ってくれ」
そう言って友崎が「ただいま」といいながら家に入っていくので、俺とみみみは後に続いて「お邪魔します」と言いながら上がらせてもらう。
そうして脱いだ靴を揃えて横に置いたところで、隣のリビングから妹ちゃんが出てくる。
「あれ!?この間の……相原先輩!?そ、それにそちらは七海先輩!?」
なんだか妙に驚いている妹ちゃん。
あー、でも今回は俺みたいにあまり目立たない人間だけでなく学校でも色々有名と言えるだろうみみみもいるしな。
というか、俺も俺で妹ちゃんに名前を覚えられていることに驚く。
「この子が噂の友崎の妹ちゃん!?めっちゃかわいいじゃん!兄に似なくてよかったね!」
「は、はい!」
「おい、どういう意味だ」
それを見て俺とみみみはあはは!と笑う。
「あー、ちょっと家使っていいか?俺の部屋からは出ないようにするから」
「ぜ、全然!部屋から出てもいいけど!」
そんな事を言いながら妹ちゃんはこちらの方を見ている。
まぁ、たしかにみみみはすごいやつだし運動部系には大体の人から顔を覚えられているよな。
「あそうだ、妹ちゃん。来週の生徒会選挙ではこっちの七海みなみが立候補するので清き一票をよろしく!なんか、同じく2年の日南葵も立候補するらしいけど、ぜひこちらの七海みなみに、ね!」
「え!そうなんですか!?七海先輩に、日南先輩も!?えっと、わ、わかりました!七海先輩に投票します!」
やったぜ一票いただきました!
妹ちゃんが可愛く見えてきた!
……いやまぁ実際結構かわいいしな。
「やったー、言質取りました!よろしくね!」
「は、はい!」
みみみはそう言いなから妹ちゃんの手を取って上下にブンブンと振っていた。
「とりあえず俺の部屋は上だから、こっち」
「お、そうだな改めてお邪魔しま〜す」
「わたしも〜、お邪魔しま〜す!」
そうして俺達は友崎の部屋に案内され、妹ちゃんも奥に戻っていったようだ。
……。
「お、お母さ〜ん!大変だよ、またお兄ちゃんが友達を連れてきた!今度は2人も!!」
「ええ!?あの文也が、友達を2人も!?」
「し、しかも片方はめっちゃイケてる女の人!?」
「ええ!?こ、今度こそケーキを用意したほうがいいかしら!?」
この会話全部筒抜けなの、いいのか?
みみみはこらえきれない、といったようにふふっと笑い出した。
「いやぁ友崎のうちは面白いね〜」
「そのセリフ、この前相原が来たときにも同じこと言われた気がする」
「ははは!前もこんな感じだったよな。実際面白いじゃん」
「それ、やっぱり馬鹿にしてるよな?」
「してないしてない!」
そう言いながら友崎の部屋へと案内された。
この前ぶりだな。
俺は勝手知ったる部屋なのでフローリングの上に敷かれたカーペットの上にストンと座らせてもらう。
まぁ、勝手知ってると言いつつ2回目だが。
「うおぉー、ここが友崎の部屋か!エッチな本は、DVDはどこだぁー!?ここかな!?」
床に座った俺と違い、みみみは部屋の中を色々漁りだした。
いやぁなんて無礼なやつだ。
「おいおいみみみ、人の部屋を漁り回すなよ。失礼なやつだな」
「私と友崎の仲だし問題ないっしょ!」
親指を立ててサムズアップしながら答えるみみみ。
そんなに仲良かったか?
「いや大アリだから。というか、相原もこの前同じことしてただろ!」
「うーん、忘れたー」
「なぁんだ、やっぱりはらみーもしてるんじゃん。じゃあ問題ないよね」
「いやあるだろ!どういう理屈だよ!?」
みみみは部屋を荒らし回っているのを尻目に俺はゆっくりとくつろがせてもらうとしよう。
おいおい、押し入れっぽい所まであけて探し出してるぞ、そこまでするか……?
友崎は友崎で、疲れた顔をしていたが、そこから立ち直って「公約の書かれたプリントを探す」といい勉強机の引き出しから紙の束を取り出して探し始めた。
あ、プリントの仕分け手伝うか。
どれどれ紙束の半分頂戴よっと……あ、テスト結果も入ってるじゃん。
ぬ、でてきたのは文系のテストだが、負けてる……。
いやいいんだ、どうせ俺は理数系だし。
そうしてプリントを順番にめくり確認しているうちに、友崎が声を上げる。
どうやら見つけられたらしい。
「あった。たぶんこれだよな?」
「お、どれどれ?」
挨拶とか氏名とか日付とか色々書いてあるが公約の内容に目を通す。
1.挨拶運動を実施し明るい学校を目指します。
2.目安箱を設置し問題の解決に努めます。
3.体育祭の規模拡大を図ります。
4.旧校舎の空き教室の再利用を検討します。
ほ〜ん、去年って立候補者は何人だったっけ。
あんまり記憶ないけど競合数が少なかったのかな、かいてある内容はやる気のありそうな記載ではないなと思った。
「なんか、微妙だな」
友崎も俺と同じことを思ったのかそう口にした。
わざわざ苦労して探したのがこれなら、まぁたしかに悪態の1つはつきたくなるだろう。
「これならまぁ、公約の方は参考程度でいいかもな。でもレイアウトの方はこれ真似しちゃえば直ぐに作れちゃうし探した意味はあったってことで」
「それもそうか。じゃあWordでレイアウト真似て作って、公約だけ考えて書き換える感じか」
「そうだな。あ、今Wordって使える?使えなきゃ公約だけ考るしかないな」
「印刷は無理だけど俺のPCにOfficeなら入ってる。ちょっと待っててくれ」
そう言って勉強机の上にあるノートPCを部屋の真ん中にあるテーブルに置いてから起動する。
PCが立ち上がるまでの間にさっきまで紙の束をしまい始めたので、俺も受け取っていた分をまとめて手渡し、片付けは完了。
PCも起動されたのをみて友崎がWordを起動して掘り起こしたプリントのレイアウトを真似て書き始める。
みみみも部屋の散策が終わったのか、こちらがPCを取り出したのを見て友崎の横にやってきてPCの覗き込む。
「プリントあったんだ!しかももうなんか書き始めてる!ってか打つのはやっ!?やっぱパソコンとか詳しいんだ?」
「あぁ。まぁな。っとこんな感じで、あとはここに書く公約を決めないとな」
″やっぱ″?
いやまぁいいや、友崎のことだし。
そう思いながら見ている間に友崎はササッと枠組みを作り上げた。
やるじゃん、友崎。
「おぉー、テキパキだね。友崎って、実は意外とできるやつ?」
「え、う〜ん……。まぁみみみとか相原と違って挨拶運動とかは自信ないけどさ、こういうブレーン的なことなら役に立てると思う」
「ぶ、ブレーン……!」
「いいね、さすが友崎!頼りになるな」
そう言って軽く友崎の肩をパンパン叩く。
みみみの方も明るい表情でニコニコと笑っている。
うーん眩しい笑顔。
「やるじゃん!たしかに私ってそういうのあんまり得意じゃないし、それに……」
「それに……?」
「ブレーンって響きがかっこいい!」
「はぁ?」
みみみの方を見るとなんか無駄にキラキラしたような表情をしている。
こーれ、暴走するパターンです。
友崎も何いってだコイツと言う顔をしているよ。
「うん、いい!すごくいい!『私、ブレーンがいるんだよね』って言いたい!言いたすぎる!友崎も『俺、ブレーンなんだよね』って言いたくない!?言いたいよね!?」
「ま、マジですか……?」
「半分本気!半分ノリ!」
「そ、そっか……。なんかさ、みみみと相原って結構似てるよな」
えぇ、いきなりなにを言い出すんだコイツ。
「いやこの流れで似ていると言われても全然嬉しくないんだけど」
「私とはらみーが似てる?そうかな?あ、お似合いって事かな!?」
「ははは……なんだろ、ノリと勢いで生きてるところが似てるなって思った」
そういえばいつだったか、ノリと勢いで生きてるって俺言ったわ。
みみみも、たしかにそんな感じ、か?
まあ似ているっていうのもあながち間違いではないかもしれないけど。
正確に言うと、俺がみみみの喋り方の影響を受けているのが大きいんだろう。
俺が昔の陰キャ時代から変わろうと思って、周りとうまくやる為にまず参考にしたのがみみみだ。
だって、なんかいつも楽しそうだったたし、俺からしたら変わるきっかけでもあったんだもん。
声も大きいからよく聞こえるし、会話が聞こえた時にはなるほどこう答えるのか、こういう回答だと面白いかも、とか勉強させてもらっていた。
俺とみみみが似ている、って感じたとしたらそういう部分のことなんだろうな。
だから俺はなんとなく友崎の言っていることは理解できるけど、俺に勝手に真似をされた側のみみみはピンときていないのかもしれない。
「まぁ少しはそういうのもあるかもな、たしかに俺はノリと勢いで生きているから。でもとりあえず公約考えようぜ、ここに埋めるんだよな」
俺は話を戻そうかと思ってPCの画面を指さしながらそう答える。
だが、ここでみみみから待ったがかかった。
「その前にさ、2人に1個聞いてもいい?」
「ん?」「なんだ?」
みみみはPCを覗き込んでいた体勢から正し、改めてこちらを向き直す。
「二人はさ、なんでそんなに手伝おうとしてくれるの?」
俺はみみみの言葉の意図が理解できずに聞き返す。
「手伝おうとするっていうか、推薦人を頼んできたのはみみみだろ?友崎も今日流れで俺から頼まれたからじゃないか?」
「んーん、そうじゃなくてさ。引き受けてくれたのも、今こうして色々考えてくれているのもすごい助かってるんだけど、もっとこう……手を抜くことって出来るじゃん?最低限だけの仕事をするとか」
手を抜く、か。
たしかに方針決めとかを立候補者のみみみが決めて、俺は演説と挨拶だけするのもありなのかもしれないな。
それに加味して、今回は相手があの日南葵だ。
ちょっとやそっとでは勝てないのでどうせ負けるなら……と言う考えが浮かんだとしても責められないだろう。
「それにはらみー、この前は推薦人について言ってたじゃん。面倒くさいしやるメリットなんかないって。それなのに引き受けてくれた上に、こんなにやる気を出しててさ。友崎も友崎で、昨日は直接私に推薦人をやりたいって言ってくれてたよね?」
ん?
おいまて、友崎はみみみの推薦人に立候補してたのか?
知らんぞそんな話は!
なんとなくイラッとしたので友崎の背中を軽くつねる。
イッ!なんて声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「ん、まぁ俺はさ。強いて言うなら、みみみがやるって言ったからかな?じゃあ俺も!って感じで」
「え?うーん、回答になってなくない?」
回答になってないか?
というかいちいち理由がいるのか?
あ、
誰かを助けるのに理由がいるかい?(ジタン)
「そもそもそんなに深く考えてないんだよ。後付けでいいならいくらでも理由はだせるけどな?例えば、俺は無謀なチャレンジャーが好きだ、とか、当選確実!って思っているだろう日南の鼻を明かしてやりたい、とかさ、色々あるよ」
あと、実はたまちゃんにお願いされてるから、とか、えっと……みみみに頼まれたから実はちょっと張り切ってる、とか……。
これらは言えんけどね!
「まぁそんな感じで色々あるけどさ。みみみはきっと日南に勝ちたいから立候補するんだよな?そんで、みみみがやるっていうのなら、勝つ為に俺なんかでも必要だって言うのなら、手を貸すさ」
「そ、そっか。というか私が葵に対抗心を燃やしてたことにも気づいてたんだ。でも、うん、ありがと」
気づかんでか。
今度は納得してくれたらしい。
結局大した理由なんかないんだよな、小さいことの積み重ねだったりノリと勢いだったり。
そんで、みみみがやるって言うなら俺も応援したいなと思っただけ。
あ、
お前が行くって言ったからさ!(ジタン)
「っていうか、そもそもメリットがないって言ったのだって、あれは日南の推薦人についてだろ。みみみの推薦人について言ったわけじゃないじゃん」
「んん?」
首を傾げてから、何か思いついたようにニヤッと笑うみみみ。
あやべ、口滑ったかも。
「葵の推薦人はメリットがないけど、私の方にはメリットがあるんだ?なにがあるのかなぁ〜?」
「で!友崎はなんでなんだっけ?」
「あ、話逸らした!」
あ、おい、何ため息ついてんだ友崎!
「俺も同じだよ」
え!?
俺と同じ!?
俺は再び友崎の背中をギュッとつねった。
「イッつ!?なんで今つねった!?」
「あ、いやつい。ごめんごめん、で、なんだっけ?」
「いやなんだっけって……。だから俺もみみみと同じで倒してみたいんだよ。あの日南葵を」
あ、あー、そっちね!
俺と同じじゃなくてみみみと同じ、か!
「ほら、あいつは無敵すぎるっていうか、強キャラすぎるじゃん?だから、一回負けさせてやりたいっていうか……俺ってゲーム好きなんだけど、相手が強ければ強いほど燃えるんだよね。ならさ、日南と戦って、倒せたら、超楽しいだろうなって」
あぁ、やっぱこいつnanashiなだけはあるな。
アタファミでも強いやつをみては立ち向かい、反省をしては次のステップに進んで、そうして1位にまで上り詰めたんだろう。
「友崎って……」
それを聞いたみみみはこれまたニヤニヤとしながら友崎の肩をたたく。
「実は超身の程知らず?」
若干哀れみを込めたような表情とトーンでそう言った。
「ほ、ほっとけ!みみみだってそうだろ!」
「あはは、そうだね。うん、はらみーも言った通り、私は葵に勝ちたい!超身の程知らず、だからね!」
「いいじゃん、そういうの。全員エゴだらけだ。個人のわがまま上等、むしろ燃えるだろ」
「そうだよね、うん!よーし、3人で葵を倒すぞー!」
「イェー!!」
「お、おー?」
こうして改めて3人て日南に勝つことを誓った。