弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「ってことになってさ、みみみの推薦人になったわけ」
「そうなんだ、よかったね」
俺は朝のHRが始まるまでの間、隣の席のたまちゃんと話をしていた。
この間推薦人の話もしていたし、やることになったってことを報告しておこうと思ったからだ。
「よかった、のかな?まぁたまちゃんには、ああも言ってたからなぁ。頼られたからには全力でやるさってね」
「そうだね。相原が一緒なら……うん、頑張ってね」
「おう!それに頼もしい協力者もいるしな!」
「頼もしい協力者?」
聞き返してくるたまちゃん。
うむ、頼もしい協力者にして我が親友だぞ。
「ああ、友崎も選挙期間中はみみみの協力者として色々やることになってたんだよ」
「友崎が?う〜ん、頼もしいの?」
「おおっと、俺の親友だぞ、侮るなよ?はっはっは!」
「笑ってはぐらかさない!」
ビシッと指摘をしてくるたまちゃん。
曖昧な回答がお気に召さなかったようだ……。
けどさ。
「大丈夫大丈夫。冗談抜きで頼もしいよ。みみみってさ、考えるよりも行動する派だろ?友崎はたぶん逆。慎重派っていうか、考えることとか確実なステップアップは得意なんだよ」
「みんみは、たしかに行動派だと思う。けど、友崎は……あんまり想像つかない」
そうか?そうか……。
でもさ。
「本当にそうか?アイツ、最近変わってきたと思わない?最近ではたまちゃん達とも会話すること増えてないか?その時は大体みみみとか日南と一緒かもだけど、少し前まではそんなことなかったでしょ」
「うん、たしかに話すことは増えたと思う。そっか、ステップアップてそういう事?」
「どういう事かは知らんけど、そういう事だって。一つ一つ考えた内容をこなして、成果も出してるだよアイツ。だからたぶん得意なんだわ、そういう事。選挙活動でも色々面白い事考えてくれているぞ」
「面白いこと?」
「おう、公約とかね。明日には教えるよ」
そんな話をしているうちにチャイムは鳴り、HRの時間となった。
「……というわけで先週から伝えていた通り、生徒会選挙の立候補受付が今日から一斉に始まるぞ〜。出す人は忘れないように。投票は、えー、今週の金曜日だな〜。届け出は私のところまで持ってきてくれ。つーところかな、はーいそれじゃ起立」
川村先生の気だるそうな口調でお知らせ事項を述べHRは終わった。
そして1限の授業までの小休憩の時間になるとすぐさま川村先生へと向かっていく人影が一つ。
日南葵だ。
さっそく生徒会選挙の届け出を提出したらしい。
俺の席は最前列なので、その様子を伺っていた。
周りからの注目を浴びており、クラスメイトから応援の声を浴びていた。
俺はチラッと後ろを振り返りみみみの方を見る。
みみみも俺の視線に気づいたようで、コクンと小さく頷くとプリントを手に持って前へと出てくる。
「お願いしまーす」
「お、七海もか。うちのクラスから2名も立候補者がでるとは、やる気があっていいな!」
川村先生の声にクラスメイトの視線が再度教壇の前、みみみへと集まる。
先程の日南のときと同じように声援が上がる。
ただまぁ、その中には「勇気ある〜」とか「負けるな〜」って感じのものも混じっており、みんな心の中では日南の方が部があると思っているんだろう。
自覚があるのかは知らないが。
でも、だからこそそれをひっくり返した時は気持ちいいんだろうな。
そう思うと自然と口角が少し上がるのを感じた。
前に出ていたみみみがこっちを見てきたことに気づいたので、俺はその表情のまま小さく親指を立てる。
それを見て、みみみもニッと笑った。
「葵!内申点の奪い合い、負けないよ〜!」
「ふふ、私も負けないからね!」
こうしてクラス内は授業が始まるまで楽しそうな雰囲気で選挙の話題が続いた。
***
そして昼休み、俺はコンピュータールームに来ていた。
みみみと友崎もいる。
この前決めた公約をプリントアウトするためだ。
今日の放課後については部活に行く予定にしていたので選挙活動を手伝えるのはこの時間しかなかったため、昼に作成することにしていたのだ。
といっても、この前友崎が作成したものを参考に改めてWordに打ち込んでプリントアウトするだけだ。
しかし、学校のPCはデータの持ち込みとかできないんだな、面倒くさい。
せっかくWord形式でファイルを作ったのに改めて打ち込むことになるなんてな。
まぁ作ったのも今打ち込んでいるのも友崎だが。
このへんはウイルスとか色々考えると仕方ないのかね。
PCと紙を自由に使わせてもらえるだけありがたく思うか。
「はい、完成。後は印刷だけど何枚にするんだ?」
「おぉ〜おつかれ!じゃあどーんと100枚!」
「余ったりしないか……?」
「とりあえず明日配る分として、余ったら各教室に貼りつつ何枚か置いてくればいいし大丈夫だろ。むしろ理想は全生徒に取ってもらいたいから全然足りないくらいだ」
たぶんね。
まぁどうせ各教室に演説に行く予定だったし。
みみみが。
余ったらそんとき教室に残していけばいい。
「じゃあどどーんと200枚いっちゃう!?」
「いや、さすがに明日配る分には十分だと思うから、明日の様子見てから足りなければでいいよ。資源の無駄遣いは厳禁」
「意外とエコ!」
「というより大量に印刷して余らせると切ないからな。受け取ってもらえないかもだし……」
「小心者なだけだった!?」
そうして印刷したプリントを半分ほど受け取る。
これでここでやることは終わりだな。
「じゃさっそくたまちゃんにこれみせてこよ。朝、面白いもの見せるって言ったし」
「え、はらみー!たまに渡すのは私の役目でしょ!?」
「ははは、早い者勝ちじゃー!んじゃ教室戻るか、お先ー!」
「ちょっと!私はコンピュータールームの鍵を返さないとなんだけど!?」
「そだな、鍵返却よろしく!よし友崎、教室に戻るぞ」
「え、あ、あぁ」
「ブレーンまで!裏切り者ー!」
友崎がPCの電源を切ったのを確認してコンピュータールームを後にし、俺と友崎は教室へと戻った。
コンピュータールームを出て教室に戻る際に後ろから「覚えてろよー!」と言われた気がしたが忘れよう。
もう忘れた。
「というわけで、はいこれ公約」
「相原と友崎、急に来て″というわけ″じゃ意味がわかんない。ちゃんと説明をする!」
「ほらほら、朝言ってたじゃん。面白いもの」
教室に戻るとたまが自席で座っているのを見かけたため公約のプリントを1枚渡した。
たまはそのプリントに目を落とす。
1.購買部・食堂の商品拡大を図ります。
2.髪型・服装に関する校則を緩和することで、
生徒達の生活力、自主性の向上を促進します。
3.昼休み限定での屋上の開放を目指します。
4.文化祭にゲストとして芸能人を呼ぶことで、
盛り上がり、活気の向上を目指します。
「……いいの?これ」
「惹かれる公約はあったか?」
「うーん、ちょっと引いてる」
お、おう。
こんなふざけたもの書いていいのか、と言いたげな顔だ。
「これ書いたの友崎だから俺はセーフ!」
「俺を売るな、全員で考えたものだろ!」
「はは。まぁ公約は目標だし実際に当選したら実現を目指すからな。みみみが」
そう言うと、たまが呆れたような目で俺を見る。
「でもなるほどね。朝に友崎の話をしてたのはこれのことだったんだ」
「朝から俺の陰口言ってたの!?」
「んーん、相原は褒めてたよ。頼りになるって」
「えっ?」
「ちょ、たまちゃんストップストップ!」
まてまて本人に言うことじゃないだろ!
「相原はこう言ってるけど、私が本当に頼りになるの?って聞いた時に冗談抜きでが頼りになるって言ってたよ。みんみが行動派なら友崎は慎重派で一つ一つをこなしていくのは得意だって。だから私も期待してる!」
「え、あぁ、……おう!」
「もーやだ、恥ずかし……」
たまのこういう所は強すぎる……。
「でも、本当にこんなの配っていいの?先生に止められたりしない?」
「大丈夫だと思うぞ。これら全部学校の雰囲気向上の為って建前もあるし、相原とみみみなら先生に捕まってもなんとでもかわせるさ」
「うーん、やり方が汚い!」
「勝ちゃあいいのよ、勝てば官軍じゃい!それに、嘘を書いたつもりはない。当選したら全て実現に向けて奮起するつもりだ……みみみが!」
頑張れよ、当選したときのみみみよ。
俺はあくまで推薦人なのでその時には無関係よ、ふはは!
「てい!」
「いたッ!」
ガハハと笑っていた俺の頭に物理的な衝撃が走った。
後ろを振り返ると若干息を荒くしたみみみがたっていた。
いきなりチョップするなんてご挨拶だな!
「はらみー!それに友崎も!鍵返しに行くの一緒に行ってくれてもよかったじゃん、薄情者!というか、もしかして当選後に頑張るのは私だからって気楽にかいてたの!?」
「鍵は、まぁ一人でもいいじゃん?それに生徒会長になって頑張りたいって言ってるから推薦してるけど、俺は生徒会とは関係ないし……」
「あー、もう怒った!当選したら絶対はらみーも生徒会のメンバーに加えて巻き込んでやるからね!」
「えぇ……たまちゃん助けて……」
「これは相原が悪いと思う」
孤立無援!
誰かたすけてー!
「あー!公約のプリント、私より先にたまに渡したの!?たまに渡すのは私だって言ったよね!」
どうやらみみみはたまちゃんが手に持っているプリントに気が付いたようだ。
「早い者勝ちとも言っただろー!」
「ズ〜ル〜イ〜!私のたまなのにー!」
「私はみんみのじゃないよ」
「当選した暁には絶対にはらみーを生徒会に押し込んで雑用としてコキ使ってやるからなぁー!」
「うーん、俺のかわりに友崎をどうぞ」
「だから俺を売るな!」
はははと笑いながら軽口を言い合う。
みみみも怒ってますーみたいに言っているがその実ほとんどが冗談でまぁ実際のところ軽いじゃれ合いのようなものだ。
「もー!で、どう、たま?惹かれる公約はありましたか!?」
「うん、ちょっと引いてる」
「おい、その会話さっき俺とたまでやったぞ」
「やっぱり相原とみみみってそういうところ似てるよな」
「ガーン……」
おい、そのガーンはどこに当てはまるんだ?
昼休みの残り時間はそのままあれよこれよと話をしているうちに過ぎていってしまった。
公約のプリントも用意したし、明日は朝から校門前で演説をする予定ではあるが内容は考えているしみみみとも認識合わせ済みだ。
今日はもう俺のやることがないことを再確認しながら残りの授業を受け、放課後は予定通りにそのまま部活へと向かった。
部室につくと部活前ということでそこそこのメンバーが集まっており、部活の時間まで各々かスマホを読んだり真面目なやつは部活の準備をしたりしている。
さてさて……
「おー中村、はいこれよろしく!お前らもこれ受け取ってくれよ」
「あ?んだよ」
部室に先に来ていた中村へ俺は公約の紙を渡した。
ついでにと部室にいたメンバーたちに紙を渡す。
おお、明日の朝に配る前から10枚くらいは消化したな。
中村達は渡された紙に目をやる。
「見ての通り、生徒会選挙立候補者七海みなみの選挙活動だ!素晴らしい公約だろ?」
「あぁ、みみみのか。つかお前が推薦人なのかよ」
「そうそう、頼まれたから引き受けたわけよ。どうだ、公約の2番なんてそそるだろ、髪型・服装は何かとうるさいからなぁ」
「ふーん、というかこんなの全部実現できんのか?」
「……実現に向けて努力することを誓おう。そもそも服装は俺も何とかしてほしいわ、夏はポロシャツくらい許容されるべき。ワイシャツにネクタイとかしてられるかっつの」
クソ暑い中部活で汗だくになって、タオルで拭いたり肌着の交換はしてもワイシャツが残った汗で張り付くし暑いんだよ……。
それでもネクタイはつけろってうるさいしさぁ。
「つーわけでこれら実現のためにもみみみをよろしく~」
「まぁ考えとく」
「おう!1年もよろしく。ちなみに公約は割とマジで取りに行けるギリギリを狙ってるから可能性は結構ある」
……と思ってる。
当選したらみみみ頑張れよぉ〜。
「相原さん、取りに行けるって4番とか実現できるんですか?文化祭に芸能人を呼ぶってありますけど」
そんな事を後輩の一人が聞いてくる。
それね、まぁそう思うよな。
「実は、呼べる可能性はしっかりとある、らしい。なんと立候補者、七海みなみの母は美容系のお仕事?をしているらしくてモデルとかにその伝手があるかもだとか。で、マジで呼ぶ場合は依頼方法をそこから確認することが容易だから計画もなんか立てられるっぽい。つーわけでマジで実現可能な範囲らしい」
「へぇー、なんか意外としっかりと考えてるんスね、このふざけた公約」
「ちゃんと考えてふざけてんの!つーわけで投票するように!」
「ぇー……。まぁこれが実現できるならいいですよ」
「よーし、たのむぞー」
こんな感じで部活が始まるまで宣伝活動を行っていた。
他の学年やクラスに日南の立候補が広まったりする前に稼げるものは稼いでおくべきだ。
ついでに部活が始まってから、顧問の先生には明日から火水木と3日間は推薦人としての選挙活動で部活に出られないことを報告しておいた。
これで明日からの選挙活動は問題なく行えるだろう。