弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
俺とみみみと友崎でバスケ部やバレー部が練習をしている体育館へときていた。
「おーっす、たちばなー。部活やってっかー?」
なんとなく同じクラスメイトがいたので声を掛ける。
知り合いが目に入ったら声をかけるのも普通だろう。
「お、相原とみみみじゃん。あと、友崎?ってか体育館に来るなんてどーした、珍しいな」
「ほらあれ、選挙活動でちょっとな。佐々木もいる?」
「あぁなるほど。ん、あそこ」
指を指す方向には、バスケ部のボス格である佐々木が練習をしていた。
じゃあ後はみみみにまかせるか。
「橘、ありがと〜。ちょっと話つけてくるね、おーい佐々木ー!」
そう言うとみみみはバスケ部ボスの佐々木のところに向かっていった。
「で、何を話に行ったんだ?」
その場に残った俺に橘が質問をしてくる。
「票集めの秘策ってやつ。まぁぶっちゃけるとみみみが当選したら部活の活性化のためにボールの電動空気入れの購入をしますよって感じ」
「お!まじ!?たしかにそれならバスケ部でも食いつくやつ結構いるかもな!」
「だろー?これ、友崎の発案なんだわ。そういえばみみみの掲げてる公約もみたか?あれもコイツ。裏で暗躍してんのウケる」
そう言って若干後ろに下がっていた友崎に話題を振る。
「あー、あの媚を売りまくった公約な!ちょっと笑っちゃったわ!ってかあれ友崎が考えたのか?やるじゃん!」
「おう、サンキュー」
そういえば同じクラスだけどこの2人が話してるのあんまりみないな。
2人のやり取りをみながらそんな事を考えていた。
「あの公約も含めて、そそられるところがあったのならみみみに投票よろしくなー」
「はは、いいぜ!つか、マジで葵に勝ちに行くつもりなんだな」
「そりゃ勝つ気もなく立候補なんてしないだろ」
「いやー、みみみならノリで立候補しそうなような」
あぁ否定できねぇわ。
俺は、はは……と苦笑いしながら額を軽く押さえるように手を当て目をそらす。
正直土曜日の様子を見るに、みみみが勝ちたいのは本気なんだろうが勝つための方法ってものを考えている様子はなかったな。
考えるより行動なタイプだし、出たとこ勝負のつもりだっのかも……。
「てかそっちも気になってたんだけど、お前らって仲良かったんだ?一緒にいるの見たことなかったけど」
橘は俺と友崎を交互に見てそう言った。
最近は結構学校でも話してるんだけどな。
まぁそこまで俺たちには興味ないってことだろう。
「おうマブダチよ。そんでアタファミをやる仲だ。なあ友崎」
「あーまあ、そうだな。アタファミをやる仲だ」
おい友崎、前半分をスルーすんな?
「アタファミ!っていえばあのとき、ヤバかったよな!ははは!」
そういえば橘もあそこの立ち合いにいたっけね。
「そーそー、紺野に歯向かって叫んだのとかさ。あの場では何も言えなかったけどめっちゃ面白かったよな!いや今も紺野たちの前では禁句レベルだけどな」
あれこれと話をしている間に視界の端でみみみがこっちに向けて手を振っているのが見えた。
どうやら向こうの話は終わったようだ。
さすが、要領いいな。
ってかこっちが無駄話をしすぎたな。
「お、みみみのほうは終わったみたいだから次行くわ。隣のバレー部かな。んじゃ橘は部活頑張れよ〜。あ、みみみに投票って話は忘れんなよな!」
「へいへい、電動空気入れって話と合わせて覚えておくよ」
そうして橘とは別れ、俺と友崎もみみみの向かった体育館のいまいた場所の逆側のコートへ……。
「ちょっとみんみ!意味わかんない!」
「うぅ〜ん、たまの匂い!」
うぅ〜ん、意味わかんない。
俺達が体育館の隅を移動してバレー部側の向かっている途中、みみみは急にコートの中に入りたまに抱きついたかと思ったら、たまの服をめくってそこに頭を突っ込みだした。
「なーにやってんだ七海」
「その声は、愛しの栞先輩!」
なんかわちゃわちゃし始めたけど、見かねたバレー部の先輩がみみみの頭をパコンと叩いた。
先輩ってことは、3年生だよな。
バレー部はまだ部活に残っている人がいるんだな。
「声は聞こえるのに栞先輩が見えない!何故だ!」
「お前が夏林の服に顔を突っ込んでるからだろ、早く出ろ」
「てへ、そうでした!それじゃあ失礼して、えろん」
「ひゃぁっ!」
「外の空気がうまい!」
たまの服から顔を出すみみみ。
それと同時に妙に可愛らしい悲鳴を上げるたま。
お腹を押さえてるたまに、栞先輩が声をかけるのも。
「夏林、どうした?大丈夫か?」
「あ、あり得ない……おへそ……」
「おへそ?」
たまは消え入りそうな声で恥ずかしそうに小声で言う。
「おへそ甜められた」
「お前は馬鹿か!」
それを聞いた栞先輩は再びパコーン、とみみみの頭を叩いた。
つか、俺と友崎がみていていいのかこのやり取り。
チラッと見えたたまちゃんのへそや、羞恥に染まった顔はなんというか、こう、いいものだった。
これがチラリズムというやつか……。
そこからみみみは選挙の話を切り出して話し始めた。
俺と友崎は完全に手持ち無沙汰であるが、まぁ仕事がないのは良いことだな。
仕方なく周りをキョロキョロ見渡すと、見覚えのあるバレー部1年生と目があった。
あれは、朝に友崎の妹ちゃんと一緒にいた友達だな。
丁度バレー部の結構な人数がみみみの周りに集まったりしているタイミングに合わせて、流れでこちらにも声をかけて来てくれた。
「相原先輩も選挙活動で来たんですか?がんばってください!」
「おお、朝に友崎の妹ちゃんと一緒にいた……。ありがと、そっちも部活頑張ってね。俺はみみみの推薦人で、あとこっちはみみみの協力者の友崎。って、あ、そうだ」
俺は横にいる友崎の方を親指で指す。
「ほら、こっちは友崎の兄の方」
「え、あ、ども」
「えっ!もしかしてザッキーのお兄さん!?」
急に振られて慌てる友崎。
そして、驚きの声を上げる妹ちゃんの友達。
「なんだか、ザッキーから聞いていたよりふつーですね!」
「聞いていたよりって、アイツは俺のことなんて言ってんの……」
「ははは!普通だってよ、友崎!」
友崎は釈然としない顔をして、それを見て二人で笑った。
「ま、今日はみみみ付き添いでね。向こうの話が聞こえたかもだけど、当選したらボールの電動空気入れの購入とか検討しているからよろしくね」
「はい!」
そこそこに会話をしていると、栞先輩への宣伝を終えたらしいみみみがジト目でこっちをみていた。
「はらみー、私が一生懸命宣伝をしている時になにかわいい後輩達に手を出してるの!?」
「いやだしてないよ!?」
「ほら次の部活行くよ!友崎も!それじゃあみんな、部活頑張ってねー!」
そう言うと、みみみは俺の腕をつかみ、引っ張って反転させるともう片方の手で俺の背中押して歩かせ始める。
いや器用だなおい。
「ちょちょ、おい。押すなって!あ、部活頑張ってね!」
「先輩たちもがんばってください!」
各部には向かわないとなので特に抵抗もすることなくみみみに押されるまま移動を開始する。
あとはソフトとサッカー部だな。
と思ったところだが、みみみは俺が抵抗しないことを理解したのかぱっと手を離してからバレー部の方を振り返ってたまに声をかけた。
「あ、そういえばたま、自分の背中触ってみ?」
「背中?……え!?」
急に焦ったような顔をしてしゃがみ込むたまちゃん。
なんだ、あれは?
「……み・ん・み〜!」
「え、なにしたんだ?」
友崎も疑問に思ったのかみみみに聞く。
「ふっふっふ、指先のま・ほ・う!」
指先の魔法?
俺と友崎は互いに頭に?マークを浮かべている。
その傍ら、たまちゃんは顔を赤くしながら壁際に移動してモゾモゾと背中を触り始める。
………!
あ、そういう……いやなにやってんだこいつ!?
みみみは俺の動揺に気付いて話しかけてくる。
「あれー、はらみー顔赤くなってるよ?」
「いや、おまっ、たぶん理解したわ!なにやってんだよ!」
「ん〜なんのことかなぁ〜?」
「ぁー、もう!次の部活行くんだろ!」
そう言って体育館を背にして出口へと歩き始める。
そしてサッカー、ソフトと順番に回って無事宣伝は完了した。
***
根回し諸々を終えた俺たちは帰宅していた。
全員同じ方向だし割と自然に全員で帰っていた。
「いや〜、うまく行ったねぇ〜。友崎の案は大成功だよ、やるじゃん」
「いや、みみみの交渉が上手かったからだよ」
バレー部のあとも、サッカー部ソフト部共に確かな手応えを感じた。
友崎の言う通りみみみの交渉も相まって上手くいったと思う。
「これでいい勝負できるかな?」
「えーと、そうだな。最低限、戦えないことはないと思う、たぶん」
みみみと友崎の会話を聞きながら考える。
全校生徒は600人。
各学年200人くらいと考えておこう。
そこで、今日の部活周りで各25人くらいの部活の半分の手堅い支持者が得られたとして50人ほど。
クーラーで上手く1年生を乗せたとして半分の100人。
電動空気入れとクーラーで被りも考慮すると130人くらい……か?
「それで、ブレーン。それにはらみーも。明日はなにをすれば良いんでしょう?」
「あぁ……」
「そうだなぁ……」
考える俺と友崎は。
まぁ予定していた3年生の教室周りはするとして、放課後にできることは何かないか。
そう思っているところで友崎はみみみに質問をする。
「そういえばさ。みみみも、なんでそんなに勝ちたいんだ?」
「ん?」
「いや、昨日俺に聞いたじゃん?逆にみみみはどうしてそう、日南に勝ちたいのか気になって」
昨日……?
その話、俺知らないんだけど。
まぁいいや、それはそれとして話は気になる。
「ん〜〜……」
「あ、ごめん、言いにくければ別に」
「いや、大丈夫、大した話じゃないんだけどね」
ちょっと困ったような顔をしたみみみだが、大丈夫と言い続けた。
「ではここで問題です!世界一高い山はなんでしょう?」
いきなりのクイズ?
「え、クイズ?富士山だけど……」
「正解ー!では、2番目に高い山は?」
「2番目?なんだっけ……」
チラッとこちらもみてくるみみみに、俺もわからないことを伝えるように両手で小さくお手上げのジェスチャーをする。
「ブッブー時間切れ、正解は北岳でした!」
「北岳?知らなかった……」
「でしょ?」
俺も全く知らなかった……。
「では第2問。アメリカの初代大統領は?」
「ジョージ・ワシントン」
「正解!では、2代目は?」
「え、誰だっけ……?」
誰だろう……。
再び見てくるみみみに俺は渋い顔で同じお手上げポーズを返す。
悔しいです……。
「ハイ残念、正解はジョン・アダムズでした。二人共世界史は苦手?」
「ど、どうだろ」
俺は正直苦手だが、それは答えられない言い訳にはならないので黙っておく。
「ではサービス問題!5月のスポーツテストで女子の総合1位はだれ?」
「日南、だよな?」
「うん、正解。じゃあさ……」
少し間を空け、トーンが少し下がった声で続けるみみみ。
「2位ってわかる?」
「……いや、わからない」
……俺は知ってるぞ、前にたまちゃんから聞いた。
答えたほうがいいのかこれは。
わからないと思われるのはなんか癪だと思ってみみみの目を見る。
アイコンタクト、伝わるかね。
「……でしょ?そういうことですよ。一番ってすごい目立つし有名になるけど、二番になった瞬間!価値が一気に下がる!」
「……じゃあそのスポーツテスト2位って」
「そう、2位はわたくし七海みなみなのです!どう?実はすごいの私、知ってた?」
「い、いや?」
知ってたよ。
でも言いたいことも、なんとなくわかった。
しかし、どうなんだろうな。
他人からの価値にそこまで意味はあるのか?
1位以外は価値がないのか?
……いや、考え方はそれぞれか。
俺は自分の考えを頭ごなしに否定されるのが大嫌いだ。
よく他人の行動にかじったような知識で否定してくるやつがいるが、ああはなりたくないと思っている。
例えば野菜ジュース飲んでる所を見ればそれは別に健康に良くはないだの、ランニングマシンでランニングしてると言えば路上や坂道の方が負荷が高いだの……そんなん知ってるっつーの、お前らは他人にケチを付けるだけで自分は何かしてるのかよっつーの!
……いかん、思考がズレた。
まぁみみみがやる気になっているのなら、それでいいとするか。
それに俺だって……何かにしたら褒められたいしチヤホヤされたい願望だって、なくはないしなぁ。
「つまりは、そーゆーことなのです!あ、ちなみに勉強も1年の学期末試験まではずっと2位だったよ!この間の中間と期末はちょっと落ちちゃったけど」
「え、そうなの!?そんなふうには見えないのに」
その友崎の発言に少し真面目に聞いていた俺は、ブフッ!と吹き出してしまった。
「ちょっと!それ失礼!はらみーも何笑ってるの!」
いやいや、みみみもさんざん失礼なことを友崎に言ってきてただろ。
けどやばい、なんかツボに入った、わ、笑いが止まらない。そんな風に見えないって!
俺はふふ…と笑いをこらえようと押し殺しているところ、それを無視して二人は会話を続ける。
「けどさー、みんな知らないんだよね。実はワタクシ七海みなみは文武両道の容姿端麗、大和撫子の美男美女だということに」
「いや、美男ではないだろ」
「お、さすが細かいね友崎!でも他のところは認めてくれるんだ、や・さ・し・い!」
「うるせぇ」
立ち直った俺も話に加わる。
「でもさ、知ってるやつは知ってるからな?たまからスポーツテスト2位だったってことは聞いてたぞ」
「あぁ、なるほど。たまから聞いてたんだ」
「そういう事。まぁ、やるからには1番を目指すのは大賛成だけどな。ちなみに、俺のスポーツテストは何位だと思う?」
「え、わかんない……半分くらい?」
「男子3位」
「え、うそ!去年はサッカー部でヘタだったってなかむーとかにいじられてるじゃん!」
思った以上にびっくりするみみみと、ついでに友崎。
サッカーの上手さと身体能力は関係ないんだよ!
むしろ昔からやってるのに下手なままだったから基礎と体力だけはバッチリだぞ。
ちなみにスポーツテストではハンドボールを投げるのが下手すぎるのと、結構体が硬く長座体前屈でしょぼい得点になっているのが足を引っ張りまくっている。
つか走る跳ぶはシンプルでいいが、投げるのは技術がいるだろ、あの項目スポーツテストから消せよ!
……体の硬さは、風呂上がりにストレッチとかしたほうが良いかなぁ。
「結構昔からクラブチームでサッカーやってたから体力だけはあるのよ。その頃は、なんつーか成り行きでやってるだけで頭を使ってなかったから下手だったけど、その分地味な基礎練ばかりやらされてたからむしろ体力的なところはついてるよ」
「へぇ、知らなかった」
「まぁ1位以外に価値がないなら仕方ないね」
「あ!もう、そういう言い方する!」
そうしてはははと笑い合う。
「今回は1位、取ろうぜ」
「……うん、そだね!」
「あぁ、日南に勝とう」
そうして駅までの道を帰っていった。