弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
来月の中旬くらいまでこんな感じかもです。
朝から校門の前で選挙活動をするみみみ達の姿がある。
本日から選挙活動がスタートしたようだ。
「だからこそ、七海みなみさんこそ生徒会長として―――」
相原が周りに通るような大きい声で演説しているのが校門に入る前から聞こえる。
相原も頑張ってるなぁと思いつつ、俺は普段通りに校門へと入る。
そして校門を通る時に相原は俺を見つけ、当たり前とばかりに声をかけてきた。
「ん、おっす友崎、おはよう。公約の紙はいかが?」
「あぁおはよう。でもそれは昨日もらったからいらん。てか作ったの俺じゃん」
相原はそっかそっかー、なんて適当な返事をする。
会話はここで切り上げてもいいんだが、会話のスキルアップもしたいし何か話しかけるか。
とは言え話しかけるネタがパッと思いつかないので、とりあえず選挙の話を聞いてみる。
「それで選挙の方は順調なのか?」
「おお、バッチリバッチリ!無難なスタートって感じだろ。なんとかなるもんだな!」
バッチリなのか無難なのか。
というかなんとかなるもんだなって、お前昨日までは妙に自信満々だっただろ。
ただの謙遜した物言いなのか、実は虚勢だったのか判断に迷うところだな。
「あ、ブレーンおっはよー!どうどう?これ似合う?」
「おはようみみみ。ああ、たすきを作った甲斐があったな」
みみみもこちらに気付いたようで挨拶をしてくる。
それに応対しながら、俺も無難な挨拶はできるようになったなぁと若干の実感を得る。
「あっはは!昨日はありがとね!ブレーンには今日も期待してるよー」
「任せてくれ。しかし、なんか改めて推薦人は相原でよかったっておもったわ」
「ん?というと?」
「いや、俺も推薦人やりたいって言ったじゃん?相原とみみみをみて思った。おれには絶対無理!」
相原もみみみもでかい声でPRをしていた。
これは絶対ムリ。
「あー、はらみーって意外と声通るよね。部活中でも同じグラウンドとは言え声が陸上部の方まで結構聞こえてくるもん」
「はは、スポーツに声出しは基本だしな。それに、こういうの意外とやってみればなんとかなるもんだぞ。友崎も無理と言いつつやるしかなくなったらやる人間だろーしな」
「いや、どうかな……そもそもそんなでかい声出したことないし」
認めてもらうような言い方に少し嬉しさはあるが、果たして相原が言うようにやってみたらできるものだろうか?
……いや、やっぱり無理だと思う。
「お、なら今度カラオケでもいこうぜ?叫ぶと気持ちいいぞ。そんで一緒にゲーソンを熱唱しよう!アタファミの主題歌とかもいいよな!」
「カラオケ!いいねー、わたしもー!」
「いやみみみとかがいるとアニソンとかゲーソン歌いにくいから遠慮してくれ」
「えー!なにそれ!私は気にしないのに!」
カラオケ自体には少し興味があるが、リア充って一体どんな歌を歌うんだ……?
つーか相原もみみみとかならアニソンゲーソンが歌いにくいって、俺ならいいのかよ。
ナチュラルにオタク扱いしてきやがったな?
あんまり間違っていないので反論もできないんだけども。
俺はなんとか、「まあ、考えとく」とか無難な返しをした。
「でも、人には向き不向きはあるからね。ブレーンはブレーンだからブレーンな働きに期待してるよ!」
「えと、俺はブレーンだから裏方の考える方に期待してくれてるってことでいいのか?」
「おお!さすがブレーン、その通り!」
あ、合ってた、よかった。
「友崎よくわかったな、この何も考えてなさそうな言い方で」
「まぁニュアンス的にそうかなって」
「ちょっと、はらみーには言われたくない!私は私なりに考えています!」
「はは……」
そんなやり取りをしてから、せっかくのPRをこれ以上邪魔をしても悪いかと思い、会話はそこそこに別れを告げて校舎の方へと向かった。
といいつつ、少し進んでから俺は人の歩行の邪魔にならないところ立ち止まり、みみみ達の様子を少し見てみることにした。
放課後も手伝うことになるわけだし、本人達の所感だけでなく実際のところPRが受けているのか少しだけ観察しようと思ったからだ。
様子を見てると、相原はみみみのPRはしつつも合間合間で個別にいろんな人へと声をかけているようだ。
部活関係だったりで相原は思いの外顔が広い。
同学年だけでなく上級生や下級生まで個別に声をかけていた。
しかし、「清き一票を」なんていいつつ聞こえてきた話の内容には清さなんて微塵もなかったぞ。
日南と水沢をカップル扱いして妬みの対象に仕向けて売りやがった……。
とはいえ、俺が考えて出した案ではまとまった組織票を取りに行く内容が主だったので、相原のように個別に票を取りに行くのは有効にも感じる。
もしかしたらそこまで考えているのかも……?
そこまで確認すると、あまり長居してもなぁと思い今度こそ校舎の方へと進んだ。
校門からしばらく歩くと校舎の前で人だかりができている。
「―――だれしもが認める関智高校のスーパーヒロイン!日南さんの知能!それにこのルックス!おや、見た目は関係ありませんかね?」
この声、水沢だ。
「テニス部の人ですよね!この間練習されているのを見ました!あなたは園芸部の!いつもあそこお花には癒されています!」
そしてその後ろでは集まった人だかりの中、直接的に一人一人支持者を集める日南の姿があった。
てかよく見ると握手の順番待ちができているような。
なんだあいつは、アイドルかなんかなのか……?
みみみや相原の演説も消して悪いものではなかったが、さすがにこれが相手だと分が悪いな。
相原本人も言ってたっけ、演説ではアイツラに勝てないって。
単純に比べるられるものではないけど、優劣をつけるなら間違いなく負けているだろうな。
これに勝つにはやはり票を集める何かが必要だ。
この光景を尻目に俺は教室へと向かった。
それから放課後。
みみみと相原はもともと予定していた通りにHR前に1年生の教室を回れるだけ回って、エアコンをだしに1年生の票集めを行ってきたらしい。
そして今度は運動部の票を集めるためにと、これまた予定していた通り各球技系の部活へと顔を出してボールの電動空気入れによる票集めを行った。
しかし、朝も思ったことなんだが相原の顔の広さには驚いた。
バスケ部やサッカー部などはまぁなんとなく想像もできるのだが、女子がメインのバレー部やソフト部などにまで知り合いがいるようでみみみが各部の影響力が強そうな人間に話をつけている傍らで地味ながらも個別に声をかけて隙あらば宣伝をしていた。
逆に俺はついて行っていただけで空気と化していたため、途中からあれこれ俺いらなくない?ということに気付いたのだが、これは今後の方針のための観察だ、と自分に言い聞かせて2人について回った。
そうしてその日の選挙活動の手伝いは無事に終わりを告げる。
結果として、運動部からはなかなかの食いつきがあったので効果はそこそこ望めたように思う。
とはいえこれは俺の案ではあるが、うまく行った要因はみみみの交渉術のおかげだ。
……日南に人生の攻略法を学び始めてから俺はずっと疑問に思っていた。
俺のやり方は人生では通用しないのか?
しかし、それを試すにも今の俺には能力値が足りなすぎていた。
けど、もし俺がプレイヤーとして強キャラを操作をできたのなら?
みみみ、それに相原という強キャラを思い通りに操作できたのなら、
だから試してみたい、人生においても自分のプレイスタイルが通じるのかどうかを。
***
翌日、移動教室による移動の前に俺は普段通り図書館に来ていた。
いつもの位置で菊池さんの向かい側に座り、一緒に本を読む……振りをしながら今日もまた戦法を考える。
昨日の帰り道に話してわかった事がある。
―――今回は1位、取ろうぜ。
―――……うん、そだね!
みみみに、相原も。
本気で選挙活動に取り組んでいた。
本気の本気で勝ちにこだわっていた。
特にみみみは今までは2番に甘んじてきた。
でも、今度こそ勝つ、という思いをたしかに感じた。
ガチでやってる仲間がいるのなら、それにガチで
俺は俺のできることを考えたい。
みみみからはブレーンとしての期待していると言われた。
だからそれに応えたい。
俺だってNO NAMEに人生でも勝ちたい。
これはゲーマーとしての本心だ。
だから考える……。
日南のプレイスタイルはいうなれば、圧倒的な努力による正面突破だ。
システムがあるならそのシステムを理解し、ルールに則って最大まで鍛えた武器で正面から叩きつけてくる。
同じ土俵に乗ったうえで、誰よりも努力を続けたその成果で押しつぶす。
それがあいつだ。
けどな。
日南、お前は知ってるか?
アタファミをガン逃げ主流からコンボゲーに流れを変えて勝利を掴み続けてきた人間が誰なのかを。
俺には
それが人生でも通用するのかを。
誰かが敷いたルールの上で戦うんじゃない、俺が新しいルールを提示する。
そのためにやることは……
「友崎くん……?」
「へ…ふぁっ!?」
思考の海に潜り続けていた俺は、天使の福音によって一瞬で引っ張り上げられた。
慌てる俺を、菊池さんはじーっと見つめていた。
「あ、あの、どうかした?もしかして、顔とか変?」
肯定されたら「元々だから気にしないで」と言おう。
「いえ、なんというか、表情が……」
「う、うん…」
表情?
考えるあまり変な顔をしていただろうか……。
「いつもより、凛々しかったので……びっくりして」
「り、凛々ッ……?」
想定外の言葉に打ちひしがれ、おそらく俺の顔は赤くなっているだろう。
菊池さんも片手で口元を隠すように触れながら、視線を少し逸らしていた。
おっと、危うく透き通るような瞳に吸い込まれそうになるところだった。
でも、考えている途中ではあったがやることはだいたい決まった。
後はみみみと相原に相談して俺のやり方を試させてもらおう。