弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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選挙活動でバタバタとしているうちに気がつけば金曜日。

泣いても笑っても今日が選挙活動の最終日にして投票日だ。

今日は朝会があり、そこで投票も行われる。

 

俺とみみみはその前に、最後の呼び込みとして朝から校門の前に立って選挙活動、PRを行っていた。

 

関友高校の校門は正面口の他に裏門もあるため場所はちょこちょこ変えていたりするがやることは同じだ。

なので4日目ともなると慣れたものではじめの方にあった不安も何処へやら、ルーチンワーク化されたようにこなしていく。

 

まぁ、作業って慣れたら高い意識をもてなくなるからルーチン化されるのはどうなのよって思わなくもないけど、4日間の話ならそう変わらんだろ。

これは意識の低下ではなく効率の上昇、のはず。

 

そんな感じで活動をしつつ、今日は朝会なのでちょっと早めの時間で切り上げる。

 

「これで選挙活動も演説を残して終わりだな。やれることはやったよな?」

「うん、私なりのベストを尽くしたと思うよ!」

 

元気な返事が返ってくる。

たしかに、やれることはやったよな。

 

この地道な朝の選挙活動を行ない、HR前には各教室を回り、放課後は各部活に票集めの買収に回り……。

そこから更に俺と友崎は今日の演説のための台本を作り、その間にみみみは放課後まで校門付近で帰宅する生徒に声掛けを行っていた。

俺もみみみもやれることは全部やったはずだ。

けど、1つ訂正させてもらおうかな。

 

「″私″ではなく、″私達″だろ?な〜に俺と友崎の手柄まで取ろうとしてんだ、っつの」

「あっ、たしかに!いやぁ失敬失敬!でも本当にありがとね。私一人だったら1日目で心が折れてたと思うから」

 

みみみが折れる?

おいおいそんなたまかよ。

とは思いつつも感謝は素直に受け取るべきかな。

 

「初日からアイツラ凄かったもんなー。まぁ、困った時はお互い様々。今度は俺が困った時に助けてもらおうかな。貸した分だけ返してもらわないとね」

「あはは、オッケー!はらみーが困ったら今度は私が助けるよ!」

 

そんな風に軽口を叩きながら、教室へと向かって歩いていく。

貸した分だけなんて言っても、本当は俺のほうが先に助けられてるんだけどね。

まぁそんな事はいいや。

 

「後は朝会の演説だけだけど、そっちはバッチリなのか?」

「もちろん!台本は友崎が作ってくれたからね。打ち合わせもバッチリだから後は本番だけだよ」

 

打ち合わせ、か。

水曜、木曜と放課後の選挙活動はみみみが実働部隊として挨拶回りをして、俺と友崎は演説用の台本書き起こしてたもんな。

 

俺は無論自分の応援演説の台本。

そして友崎はなにやらまた悪巧みを思いついたようで、みみみの台本を書いていた。

なんかその仕込みに体育館に行って、たまにも少し手伝ってもらったりしてたようだし。

 

俺としては台本書くのなんか別に家でもいいと思っていいたし、放課後はみみみの活動について回ろうと思っていたんだが、無駄に俺が出しゃばるよりもみみみ1人のほうが効率が良さそうってことで放課後は活動しないことにしたのだ。

 

まぁそれもわからなくはない。

女の子の横に野郎がいたらね、票は若干集めにくくなるから。

 

人間ってのはそういうもんだろう。

少なくても男はそうだと思う。

可愛い女の子の横に男がいたら、「ケッ、仲良さそうなこった」みたいになってちょっと印象が悪くなるのさ。

ソースは俺。

俺なら嫉妬に狂っちまうね、間違いない。

 

「はらみーこそ応援演説は大丈夫なの?」

「おう、2日も放課後は任せちまったしな。おれも台本のほうはしっかり作ったし、後は読むだけ」

「さっすが!じゃあ期待してるよ」

「人前に立つのは慣れてないんだけどな。まぁなんとかやるよ」

 

「またまた〜」なんて言いながら肩をバシバシたたいてくるみみみ。

またまたもなにもあるか。

 

しかし、全校生徒の前で発表かぁ。

1年前だと想像もつかなかったけど、今だとなんとなく問題なくこなせる気がする。

家でも何度か読み上げる練習してきたし、俺って経験上緊張すると早口になる癖があるけど、それも今は把握しているからゆっくり読めばなんとかなる……と思う。

 

「なんにしろ今日で終わりだ。終わったらお疲れ様会でもするか?なんてな」

「あ、いいねー!じゃあ友崎も呼んで祝勝会やろう!」

「負けてたらアレだから、お疲れ様会で……。ほんとにやるでいいよな?間が空くと忘れそうだし明日か明後日に昼飯とか食いに行くのどう?すぐ友崎も誘っちゃうぞ?」

「明日なら、たぶん大丈夫!りょーかいであります!」

 

言い出しっぺの法則……ってわけじゃないが俺が幹事だよなこれ。

なら好き勝手にしちゃうか、3人だとあれだしたまちゃんも誘うおう。

友崎の台本作りというか、ネタの仕込みに手伝っていたみたいだし、みみみも女子1人よりたまちゃんがいたほうが楽しいだろ。

 

俺とみみみとたまちゃんはどうせ部活で午前に学校来るだろうし、友崎には悪いけど可能なら昼あたりに学校周辺来てもらおう。

 

 

***

 

 

体育館のステージ裏、舞台袖。

俺とみみみ、それに友崎もそこで待機をしていた。

 

ってか友崎もここにこれるんだな、よかった。

これなきゃ作戦がおじゃんだったわけだし。

 

幸か不幸か、順番としては日南たちが先で俺達は後になっていた。

カードゲームなどでは基本的に先攻有利なんて聞くが、演説の場合はどっちかね。

でも野球は後攻が有利って言うし、気休めとして後攻が有利と考えておこうかな。

 

みみみのほうをちらっと見てみると台本を読んだり、鼻とか頭とかを触ったりと落ち着きがない。

緊張してるのかね、ってそりゃそうか。

 

視線に気づいたのか小声でみみみが話しかけてくる。

 

「はらみーは緊張したりしないの?」

 

そわそわしているみみみとは逆に、俺は意外と落ち着いていると思う。

私的な考えだが、こういう時はいっそ直前の叩き込みみたいなことを控えるのも手だと思ってる。

 

台本なんて昨日家で何度も声に出して読む練習はしたし、逆に直前まであれこれ見てると「この部分おかしくないか……?」みたいな考えが湧いてきて混乱してしまう。

あれだ、ゲシュタルト崩壊ってやつ?

 

まぁそんなだから開き直って今は自分のことは何も考えない。

水沢の流暢な演説を内心で、おー!とか思いながら聞いている。

……現実逃避とも言うかも知れない。

 

俺も小声でみみみに返答する。

 

「まぁねー、結局は多少失敗しても俺が笑われるくらいで済むっしょ。むしろ今は何も考えないほうが楽」

「うわぁ〜、頭空っぽ」

「頭空っぽのほうが夢詰め込めるんだよ」

 

何が起きても気分はへのへのカッパ!だな。

 

そして軽くクスクスと笑うみみみ。

なんだ、結局みみみも余裕そうじゃん。

そして水沢の応援演説が終わり、日南の番となる。

 

 

―――そして、俺たちの策がほとんど潰された。

 

 

拍手を受けながら舞台袖に戻って来る日南。

日南は演説の内容でこちらの手を虱潰しに消してきた。

 

電動空気入れ含む生徒の不満である公約。

それに俺達にとっての虎の子、クーラー作戦。

それを正面から、それも全生徒を納得させるだけの根拠・説得力を持って公約と宣言された。

 

元々の作戦はそれらで固定票を稼ぎ、最後の演説でダメ押しとして押し切る作戦だった。

 

これまでの活動から600人近くいるうちの200人分くらいの票を集めた気になっていた。

だからこそ演説では多少負けていようが残り400人から100人ちょっと、たった1/4を集めれば勝ちになるという元に今までの選挙活動をしてきたのだ。

それを一気に無に帰された。

これは……

 

いや、1回ちゃんとしよう。

どうせここまで来たらもう俺のやることは変わらないんだから。

1番ダメなことは動揺して演説でやらかすことだろ。

 

台本はある。練習もした。

また、頭空っぽにしてしっかり自分の仕事をしよう。

 

『続いて、相原みなとさんによる会長立候補・七海みなみさんへの応援演説です』

 

俺はアナウンスに従って舞台袖からステージに向かった。

 

―――

 

『推薦人の2年生相原みなとです。

七海みなみさんの応援演説を行わせていただきます。

 

ですが、七海さんの紹介する前にまずは私自身のお話を少しさせてください。

 

えー……、正直なところ今の私は、そこそこイケているんじゃないでしょうか?』

 

ヒヤッとした空気が流れる。

大丈夫大丈夫、負けるな俺。

へらっと笑いながら続ける。

笑ってもらうにはまずこっちから笑わなきゃ、な。

 

『今、全員が何いってんだコイツ?と思ったかもしれませんが、もう少しだけ続けさせてください』

 

笑顔のまま身振り手振りも交えつつ演説を行う。

幸い、少しだがふっと軽く笑う声も聞こえた。

だれか知らないが、ありがとう。

 

『えーっとですね、今の私は髪の毛を短く整え、最近では毎朝髪型をセットをするようになりました。

変なところ、ないですよね?』

 

俺は笑顔を作ったまま、髪の毛の端っこを持ち上げつつもそう言う。

今度はさっきよりも笑いの声が増えた気がした。

 

『あとは姿勢、それに立ち振舞もですね。

どうすれば人からよく見えるのかを考え、それを実践して少しでもイケてる自分を見せる努力をしてきました。

なのできっと、今の私はそこそこイケているようにみえるんじゃないでしょうか?

私は、そう自負しています!』

 

「何いってんだ」というような、ただ微妙に生易しい視線をそこそこ感じる。

それは、結構効く……。

 

『……私は去年まではどちらかといえばもっと内気な人間で。今と違って髪も整えず、もっと暗い表情でなんとなく生きていたような気がします。

部活もその時からサッカー部に所属していましたが、その時は下手で、続けるのが辛くなってやめようかと悩んだりもしました』

 

少しトーンを下げて話を変えつつ、周りの反応を見ながら言葉を続ける。

 

『そんな落ち込んでいる時に、私を元気付けてくれたのが、同じクラスだった七海みなみさんでした。

それまで特に話したことがなかったのですが、クラスに馴染めていなかった私に気を使って声をかけてくれたのだと思います。

……その内容は大したことではなく「これから部活?私もこれから陸上部の練習だから、そっちも頑張ってね」とか、そんな感じだったと思います』

 

周りは初めのときとは違ってシーンと静まり返っている。

 

『それだけではあるのですが、その時に私は「少し頑張ってみようかな」と思えるくらいの元気をもらいました。

これこそ七海さんの人柄。魅力なのだと思います』

 

俺の実体験。

だからこそ感情を込めて言える、と思う。

 

『その後もサッカー部と陸上部はグラウンドが同じなので、部活に精を出す七海さんの姿をよく目にしました。

そこでは七海さんは誰よりも明るく、楽しそうに走っていて、何時でもその持ち前の明るさで部の中心にいたように思います。

……きっとこの中には私と同じように、そんな七海さんのお陰で前を向けた人がいたのではないでしょうか?』

 

俺の他に、たまだってそうだろ?

見てればそれくらいわかるさ。

去年も同じクラスだったわけだしな。

それに面倒見のいいみみみのことだ、下級生にも同じようなことをしているだろうよ。

 

『そのようにいつでも人の中心で努力し、何より周りを変えていくことのできる七海さんだからこそ、生徒会長に推薦をしたいと思います。

現に私はこうして全校の前で演説を行えるくらいまで変えてくれました。

そんな七海さんだからこそ!

きっと、学校をより良い形に変えてくれると思います!

もしも自分も一歩踏み出したい、成長をしたい、そう思う方がいたのなら、七海みなみさんに清き一票をお願いいたします。

以上、相原みなとの応援演説でした!』

 

―――

 

はぁ、やりきったやりきった。

締めくくったところで、思ったよりも盛大な拍手を貰った。

 

俺のやれることは全部やったさ。

そう思いながら舞台袖に戻る。

 

次の番として待っていたみみみが若干難しそうな表情をしていたような気がしたが、戻ってきた俺をみてハッとしたような顔をしてから軽く手を挙げて迎えてくれていたので俺も手を軽く挙げ小さくハイタッチをした。

 

そして俺は元いた場所にまで戻る、が……。

やべぇ足の震えがとまんねぇ。

俺ってこう人の前に出たときとかよりも、終わったときのほうが緊張?ではないけど足の震えとかが止まらなくなるんだよな。

 

終わってからのほうが、何言ってんだろ俺……って気分になってくる。

内容が真面目過ぎて滑ってたんじゃないか?

水沢や日南のようにもっと笑いをいれるべきだったのではないか?

そんな思考でいっぱいだ。

 

いや、また切り替えよう。

つかもう忘れよう。

……いや忘れちゃだめか、納得いかない部分があるなら反省して次に活かさにゃな。

 

とりあえずみみみと友崎、あとは任せたぜ。




僕らも選挙に行かなきゃ
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