弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
打ち上げをして楽しんだ土曜も終わり、部活のオフだからと軽い筋トレだけをしたあとにゴロゴロしていたらあっという間に日曜日も終わった。
また月曜日かぁ、1週間頑張っていかないとなぁ。
選挙も終わって登校時間も元通りになったわけで、若干の朝早い選挙活動もなくなり気持ちゆっくりに登校できる。
とは言えそろそろ夏も本番、部活に力を入れていきたいところだ。
そう思いながらいつも通りに登校し、朝のHRが始まる前に自分の席に着く。
周りは仲いい者同士のグループで会話が繰り広げられているが、今俺は特段誰かに話したい話題があるわけでもないし、まぁいいか〜なんて思いながら自分の席についてボーっと過ごす。
しかし、7月も中旬になるし結構の暑さだ。
本当に教室にクーラーが欲しいな、日南には頑張ってもらわないと。
なんて思いながら自席でだらけていたら、友崎から話しかけられた。
軽く返事をしてから、なんか話があるのかと思っていたら……。
「人を笑わせるにはどうすればいいと思う?」
うーん、つまりどういうことだ?
「えーっと、お笑い芸人になりたいって話か?みみみ呼ぼうか?ツッコミ役の相方が欲しいって言ってた気がする」
「い、いや違うから。呼ばなくていい」
違ったようで。
じゃあなんだよ。
「人に話を聞いてもらうときって、こう、ユーモラスみたいなものって必要な気がするじゃん?で、相原はどう考えてるのかなぁ〜って」
「お〜、なるほど?つまり、笑いを取れるくらい会話をうまくなりたい、と」
「まぁ、そんな感じ。たぶん」
たぶんってなんだよ。
「だそうですよ、たまさん。どう思います?」
ちょうど教室に入ってきて荷物を机に置いているたまに話を振ってみる。
席が隣なため距離も結構近く、なんとなく話しかけやすい位置なのだ。
「え?急に聞かれてもよくわからない。ちゃんと説明をする!」
そうビシッと言い放つたまちゃんを見て相変わらずだなぁと思い、俺と友崎は軽く笑う。
「ははっ、こういうのなんじゃない?コツって。たぶん」
「なるほど…?わかったようなわからないような」
「ちょっと、話を振っておいて2人だけで納得しない!」
そしてたまちゃんのツッコミを受けて俺が答える。
「なんか、友崎が人を笑わせるコツを知りたいんだってさ」
「そうなんだ。というか、私も人を笑わせるのは得意じゃないからその話は振られても困る」
「ははは、だろうね!」
「あ、その反応はちょっとムカつく!」
俺が笑いながらそういうと、たまちゃんも怒っていますーみたいな口調で腹立つと言ったものの、その後俺につられたの表情を崩して笑っていた。
うーん、かわいい。
つかなんか最近ちょっと雰囲気柔らかくなった?
「以上です。いかがでしたか?」
そんなやりとりが終えてから、友崎になんかのブログやらの終わりみたいな口調でかえす。
「参考に、なったかなぁ……?」
さっきから曖昧だなぁおい。
「私もよくわかんないんだけど、今ので何がいいたいの?」
隣で聞いていたたまちゃんも反応し、興味深げに聞いてくる。
チラッと友崎の方を見てお前はわかったか?を問いかけるが、微妙な顔をしている。
もー、しょうがないなぁー。
「つまり人が笑う時は楽しい時よ。楽しい雰囲気になれば自然と笑うだろ?そういうことだよ」
「ん、んんん?つまり楽しい雰囲気を作れってこと?そしたら今度は楽しい雰囲気を作る方法が必要になるんだけど」
おーそうだな。
そこまでは百点満点、花丸です。
っつか雰囲気作るのは、友崎も最近よくなってるから理解していると思っていたが。
「まぁ友崎の言う通りだけど、そっちは簡単な事だよ。相手笑わせようってんだ、まずは自分が笑顔になるべきだろ?そしたら俺も楽しいお前も楽しい。な、簡単だろ?」
そう言って笑みを作りながらグッとサムズアップする。
「は、はは。なるほど……」
「理解してくれたようで何より。というか友崎も最近どことなく明るくなったし口調というか、トーン上げて話すようになったから意識してると思ったのに」
「あ、たしかに!友崎って最近明るくなったよね!」
たまちゃんも友崎の最近の変化に気づいていたようだ。
なんか、たまちゃんのこの素直に感想を言えるところってすごいよなぁ。
「ま、まぁ最近はそういうことを考えるようにはなった、かな」
「ははは、そうじゃないとそもそもこんな質問しないわな」
そんな話をしているところでHR開始のチャイムが鳴ったので友崎は「サンキュ、参考になった」なんて言いながら自席へと戻っていった。
役になったのなら何よりだ。
***
そしてその日の放課後。
部活が終わってから中村からさそわれアタファミの対戦を少し付き合い、普段帰るにはちょっとばかし遅い時間になった。
空も日が沈みかけ、まさに夕暮れというような色になっている。
時計を見ると大体19時を回る前くらいで、部活が終わってから30分くらいは中村に付き合っていただろうか。
俺は部室をでてから校門へと向かって歩いていく。
そしてその通り道に見慣れた人影。
結構な時間だから誰もいないと思っていたんだけど、なんかこの時間にしては珍しい人物がいるな。
「よぉ友崎。こんな時間に学校にいるのは珍しいな。もしかしてまた図書館か?」
「おぉ、相原。まぁそんなとこ。そっちは、部活終わりか?」
「んー、正確には部活終わりのあとのアタファミ対戦終わり」
どうやら今日も図書館にいたらしい。
友崎は実は本の虫だったのか、知らなかったな。
「ここで立ち止まってたみたいだけど、なんかあったか」
「グラウンドの方。こんな時間まで日南とみみみは部活をやってるんだなって思って」
友崎の言葉を聞いて、俺もグラウンドの方を見る。
ああマジだ、2人でグラウンド整備をしてる。
「本当だ。こんな時間までやってるだな」
「相原も知らなかったのか?」
「まあ、俺は基本時間通りに終わるからわざわざ居残って練習はしないしな。というか居残るやつはサッカー部には居ないな」
「そうなのか」
部活の練習時間は基本2時間を目安に作られている。
わざわざそれ以上練習するやつはいないし、何より居残ったらグラウンド整備ができない。
グラウンドのトンボがけを1人とかやってらんねーぞ?
でもまぁ陸上部では日南がちょくちょく残ってることは噂というか、そういう話を聞いたこともあるから知ってはいたが……。
「みみみもやっているのか。なんか珍しい気がするな」
「珍しい?」
俺のつぶやきに友崎が反応する。
「あー、日南は居残って練習してるって話は結構有名だからまぁ納得って感じなんだけど、みみみってそんなに居残ってまで練習してる印象はなかったなぁって」
「へぇ……」
みみみもこんな時間まで練習してるんだなぁ。
あれかな?
この前言ってた日南に勝負する、って話しの一環なのかね。
つっても確か専門の種目は日南とみみみで違うよな。
確か高跳びと、短距離?
つか短距離って何メートルなんだっけ。
100m?200m?
100mなら俺も自信あるぞ、200mは走ったことねぇや。
……あぁそーだいいこと思いついた。
俺も選挙で負けた借りを何処かで返したいと思ってたんだ。
部活後の練習、ね。
部活全体の終わりは大体一緒だし、今度ちょっとお邪魔させてもらおうかなー。
そう思いながらグラウンドから目を離して友崎に声を掛ける。
「俺は帰るけど、もしかして日南でも待つのか?」
「日南?い、いや俺も帰るよ」
「ほーかい、んじゃあ行きますか」
***
そして翌日。
朝のHR前なんだが……。
いつもより遅い時間にみみみが教室へと入ってきて、俺とたまちゃんが話していたところにやってくる。
まぁ『俺とたまちゃんのところ』というよりも『たまちゃんのところ』というのが正しい気がするんだけども。
みみみからお笑いがどうの〜なんて話がとんでくる中、俺は気になったことを聞いてみる。
「みみみ、もしかして今日は朝練とかしてたのか?」
「えっ、なんでわかるの!?もしかして汗臭い!?」
思いの外に慌ててパタパタと手を振ってわたわたするみみみ。
そんな驚くことでもないだろ。
あーいや、デリカシーってやつがなかったかな。
反省しなきゃ。
「そういうわけじゃないけど、汗の匂いというより砂っぽさというか、っていやなんでもない!見れば雰囲気とかなんかでなんとなくわかるよなぁ、たま?」
「えっと、言われなければわからないけど……?」
わからないかぁ……。
でも言われればわかるんだ?
「いやまぁ……。そんなことより最近頑張ってるみたいじゃん。昨日も部活、居残って練習してたみたいだし。日南と2人そろって練習してなかったか?」
「あ、あぁうん!前言ったように、部活も勉強も頑張っていきたいから。というかはらみーが私のこと知りすぎてて怖い!まさか、ストーカー!?たま、どうしよう!?」
そんな事を言いながらたまちゃんに擦り寄るみみみ。
たまちゃんも笑いながら「ストーカーは犯罪だよ?」とか言ってくるし、好き勝手言ってらぁ。
たびたび言うよな、ストーカーじゃないです!
「昨日は部活後にだべってたら帰るの遅くなって、たまたま見かけただけだっつの。遅い時間にグラウンド整備してるの見たぞ」
「なるほど!見てたなら声かければいいのに!」
納得するみみみ。
声かければー、なんて言われてもそんな空気でもなかったし。
「はは、整備を手伝わされたらたまんねぇし。それにしてもよーやるな。今日もやる気なのか?」
「まぁね。なんなら、はらみーも一緒に残って練習していく?」
「んー、考えておこうかな」
みみみが冗談交じりにそういうのを、曖昧な返事を返した。
その後も適当な会話をHRが始まるまで続けた。
***
放課後の部活終わり。
俺は昨日思いついたことを、早速実行する。
とはいえ別に深い考えがあるようなものでもない。
日南たちが今日も部活終わりに自主トレをするなら、ちょっと100m勝負をしようと持ちかけるだけだ。
俺も足には自信がある。
というか謙遜せずにいえばめちゃくちゃ早い部類だ。
スポーツテストで測ったときなら50m走で得点上は最高点をもらっている。
100mは、長らく測る機会がなかったから分からないんだが50mの倍よりも加速する分速くなるはずで、多分今なら11秒台に乗る可能性もあるはずだ。
まぁガチでやってる陸上部とはスタートで明確な差は出るだろうが、最高速度だけでいえば負けていない自信が俺にはある。
そして日南は部活終わりでそこそこ疲労もあればタイムも微妙に落ちるだろう。
俺も部活終わりではあるけど、それはそれとしてこっちは準備万端!
なんと今日は普段の部活では使ってない、BCAAを持ってきたのだ!
BCAA……なんの略かは詳しく知らんが一言で言ってしまえばアミノ酸だ。
Aのどっちかはアミノ酸のAだろたぶん。
とにかく、こいつは水に溶かして飲めば疲れにくくなるというスペシャルなやつである!
毎日飲むにはお財布的な意味で懐に痛いので休日の筋トレのお供くらいにしか使っていないのだが、今日はあらかじめペットボトルで水に溶かして持ってきて部活中に摂取済みだ。
ちなみに水に溶かしたものは真っ青で色がやばく、それを飲む俺を見た中村はドン引きしていた。
飲んでみると結構うまいのに。
……関係ないけど、ゾンラーメンなんていう青いラーメンとかあったっけ。
というわけで下準備は完璧。
グラウンドのサッカーコートから隣にある陸上部のトラックに移動する。
こっちもぶかつは先ほど終わったようでほとんどの生徒は帰り始めている。
さて、日南はと……お、みみみと話してるな、やっぱ今日もこれからまだ練習するようだ。
一緒にいると話も切り出しやすいしちょうどよかった。
「や、お二人さん。おつかれ」
「あれ、はらみー!おつかれ!」
「あら、相原。おつかれさま。こっちの方にまで来て何かあった?サッカー部は終わりみたいだけど」
2人に挨拶とともに話しかける。
若干日南からは『練習で忙しいから用なら早くしろ』みたいな態度に見えるのは、俺の心が汚れているからだと思いたい。
「……日南って短距離の専門なんだっけ?練習終わりなら100mを1本だけでいいから勝負してくれない?」
「う〜ん、ごめんね。陸上部全体の練習は終わったんだけどこの後も練習を続けるつもりだから、勝負はちょっと」
断られてしまった……。
まぁ想定内だし、ちょっとごねてみる。
チラッとみみみをみる。
アシストくれないかなぁ、なんて勝手な思いを込めながら。
「ぁー、でも短距離の練習もするんだよな?そのうちの1本だけ横に俺が入るだけだろ。その後はおとなしくするし……あぁそうだ!グラウンド整備の手伝いもするから、それで頼むよ」
「う〜ん……」
「まぁまぁ、葵。1本くらいいいんじゃない?こう言ってるんだから、1本だけ付き合ってバシバシとグラウンド整備をさせてやろうよ」
「もー、みみみは……。じゃあ1本だけね。後、グラウンド整備をお願いするのは今日じゃなくて別の日でもいい?」
グラウンド整備は今日じゃない日?
はて?
意図は分からないが、まぁ別にいつでもいいか。
やることは変わらんだろうし。
「あぁまぁいつでもいいよ。じゃあ頼まれた日に1回手伝うってことで」
「オッケー。じゃあ金曜日に手伝ってもらおうかな」
「金曜日?了解。ちなみになんでその日?」
「んー、土曜日も練習したい分、金曜日の整備が1番念入りにしておきたいから、って感じ?」
なる、ほど?
なんか適当にとってつけたように見えたが、なんでもいいか。
日南は約束の立て付けに納得したのか100mのコースに向かって歩き出す。
俺も向かうかと思ったが、みみみにお礼を言っておかないとな。
「サンキューみみみ、フォロー助かった」
「なになに、いいっていいって!」
とりあえずアシストを出してくれたみみみに感謝を告げる。
それに対してみみみはニシシっと笑いながら返す。
あぁ、ついでにもうひとつお願いしなきゃ。
「じゃ、スタートの合図もよろしくな」
「うんうんまかせとけ!……ってええ!私も隣で走ろうと思ったのに!」
「そしたら誰も合図出せないだろー」
「えぇー。もーはらみーは……しょうがないなぁ」
なんだかんだで引き受けてくれるみみみ。
いい奴だなぁ、ほんと。
「あ、はいこれ。ストップウォッチ」
「ん?」
「タイム計るなら自分で持って計ってね」
「おお、そりゃそうか!サンキュ」
みみみからストップウォッチを受け取る。
そりゃゴール地点に誰もいないんだから開始もゴールも自分で押すしかないわな。
ってかストップウォッチ小さっ。
なにこれ、指にはめるタイプなの?
試しにポチポチ触ってみる。
なるほど、こうやって親指で押すのか。
そうやって小型のストップウォッチを確認したら、俺は100mのスタート地点まで軽く走っていく。
「ところでなんで急に100mで勝負しようって言ってきたの?」
位置についたところで日南から話しかけられる。
「おっと、長くなるけど聞きたいかね?」
「んー、じゃあいいや」
「いいのか……」
そんな事を言いながらクラウチングスタートに使う名前のわからん器具の調整をする。
ん〜、よくわからんがまぁこの長さでええか!
そして足をかけてみてこんな感じかよし、なんて思ったところでみみみが俺と日南の横にやってくる。
「あ、はらみー。一応言っておくと練習だからピストルとかは使わないからね。あれ消耗品だから普段使わないし」
「おー、了解了解。じゃ、俺は準備オッケー」
「私もいつでも大丈夫だよ」
「というわけで合図よろしく」
「オッケー!」
俺も日南も準備万端なのを確認してみみみが身振り手振りもつけて合図を出す。
「それじゃ。位置について。よーい。ドンッ!」
みみみが言い切ると同時に俺と日南は全力で走り出す。
さすが、日南は陸上部で毎日練習をしているだけありスタート開始で明確に俺よりも早く飛び出している。
けどそんなのはもとより計算済み。
おそらく50m走だったら何度やっても俺には勝ち目はない。
スタートの瞬発力や加速は間違いなく積み重ねの差で埋まらないものがある。
だけど、最高速度だけなら俺だって自信がある。
小学生の時から今までにどんだけ走ってきたと思っている。
今、おそらく半分の50m地点を通過した。
この段階で俺は日南に約1歩分ほど負けている。
けど、スタートからに比べて距離は少し縮まっている。
やはりそうだ。
スピードに乗ったところなら、たぶん俺の方が速い。
そしてたぶん75mくらい位置。
着実に距離は詰まってはいるが……ギリギリだ。
抜けそうで抜けない。
もう一歩。もう一歩だけ、速く……。
もうゴール手前。
やっぱ最後は気合しかねぇんだよな、クソ動け俺の足ッおおぉぉぉ!!
ッシ、ギリ抜い、た!ゴール!
ラインを踏み越えるとともに親指でストップウォッチのボタンを押し込む。
ピッという小さい音が俺の耳に響く。
抜いた。
間違いなく最後のラインを越えるときに、ほんの少しだが俺の方が早かったはずだ。
切らした息を整えるように歩きながらストップウォッチのタイムを見る。
11.8秒。
おおすっげぇ、12秒切った。
自分で押した分だけ正確性には欠けているだろうが、中学の時より断然早くなってる。
こうやって数字を目にするとなんか嬉しくなってくるな。
後ろを振り返れば膝に手をついて息を整えながらも、めちゃくちゃ悔しそうな顔をしている日南が見える。
「はぁ、はぁ、日南、どうだ!最後は、俺の方が、早かったな!」
俺はクルッとUターンして日南の方に歩いていき、息を切らしながらもそう声をかけた。
たぶんもう一度やったら日南が勝つだろう。
部活後の疲労。
摂取しておいたBCAAの効果。
微妙に俺のことを舐めて油断していた日南。
これらがすべて重なり合った結果だ。
というか、たぶんそれでも同じ条件で10回に1回くらいの確率でしか勝てないんじゃなかろうかと思うが、ともかく今回は俺が勝った!
「……もう1回!」
「はい?」
「もう1回、勝負!そうすれば今度は私が勝つ!」
おおう、負けず嫌いか!
つーか知っとるわ、次やったら負ける。
間違いなく負ける。
「1回だけって言ってただろ。っつーか、もう1回やったら絶対負けるからもうやらねー!勝ち逃げする!」
「ちょっと!ずるい!」
ずるくなーい!
わざわざ負けるために勝負なんてできるかっての。
しかし、結構際どい判定だったし個人レベルの見立てだからどっちが先にゴールしたかうやむやにしようと思えばできる内容ではあったはず。
それなのに負けを認めた上で再戦を叩きつけてくる日南からは尋常ではない心の強さを感じるな。
俺だったらまずはいちゃもんをつけてしまうかもしれない。
はっきりいってそういうところはめちゃくちゃかっこいいと思うし、リスペクトしたいものだ。
そんな事を考えながら、後ろから勝負をしろー!と言ってくる日南から逃げるように元のスタート地点へと駆け足で戻っていく。
「みみみ、日南に勝ったぞー!うぇーい!」
「えぇ!?うそっ!?」
「ウソじゃないゾ、なぁ日南」
「今の1回だけ!もう1回やれば今度は私が勝つ!だからもう1回勝負!」
「はは、絶対にやらなーい」
めちゃめちゃ驚くみみみに、『もう1回』しかいわなくなった日南。
いやー気持ちいぃー。
なんか正直選挙で負けた悔しさみたいなのは全部吹き飛んだわ。
みみみには少し申し訳ない気がまだあるけど、
「む〜、なんて器の小さい……。みみみからも何か言ってあげてよ」
「え、え?はらみー、もう1回やってあげたら?」
「絶対にしないゾ。やったら負けるもん」
「もん。じゃない!」
さっきまで悔しそうにしてた日南も、俺が絶対にやらないのを察知して「はぁ…」とため息をつくと仕方なく諦めてくれたようだ。
いやぁ、一矢報いたな。
最高に気分がいい。
今日は気持ちよく眠れそうだぜ。
2人は練習に戻ってたのを見てから校舎に付いている時計を見る。
18時半前くらいか。
気分は最高だし俺もちょっと練習、ってものでもないけどボールでも蹴っていようかな。
むろんシュートだのドリブルだのなんて場所を使うものではなく、狭いところで1人で楽しめる基礎の基礎、リフティングで。