弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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28+

「えーっと、すみません!寝てはなかったですけど意識とんでました!寝てはなかったですけど!」

 

その言葉に教室内で軽く笑いが起きる。

 

「わかったわかった。じゃあ次だな、えーと……ここから」

「はい、すみません!」

 

みみみは明らかに居眠りをしていた。

俺はみみみと同じクラスになってまだ3ヶ月しか経っていないが、授業中に居眠りをするみみみは今まで見たことがない。

それに、まだ3限目なのにこれですでに3回目だ。

 

この前までのみみみとは明らかに様子が変わっている。

それも、悪い方に。

……

 

「みんみ、大丈夫……?」

 

授業終わりにそんなみみみを心配したたまちゃんがそう声をかけていた。

 

「いやぁ!昨日ちょっと面白い動画見つけてさ、止まらなくなっちゃって!ほぼ徹夜で見ちゃった!正直眠い!かなり眠い!あはは!」

「じゃなくて、大丈夫なの?」

 

たまちゃんはさらに真剣に、少しの怖さすらでているような声で言う。

 

「……うん、大丈夫」

「わかった。大丈夫なのね?」

 

たまちゃんが本気で心配しているのを察して、みみみもそう答える。

そして二人とも移動教室のために教室から出ていった。

しかし、どちらの表情もいいものではなかったと思う。

 

みみみは一応、『大丈夫』、らしい。

ならこれ以上俺が何か聞いても意味はないだろうし。

とりあえず俺も、教室移動をするか……。

 

 

「どうしたんでしょう、七海さん……」

 

移動教室前、いつも通りに図書室に寄っていつもの位置に座っていたところ、今日は菊池さんが積極的に話しかけてきた。

こういうところ、気づくんだよな。

この子は。

 

「そうだね。様子がおかしいよね」

「珍しい、ですよね」

 

主語はなかったが、居眠りのことだろう。

 

「最近部活を頑張っていたみたいだから。無理がたたったんだと思う」

 

日南が言うには今日も朝練に日南より早い時間から来ていたらしい。

グラウンドの足跡などから、とんでもなく早い時間というわけではないようだが、おそらくは自分よりも数十分早く来ているのでは、とのことだ。

 

「生徒会選挙からですよね……」

「うーん、きっかけはそうなのかな」

「日南さんに、勝ちたいって話ですよね」

「たぶんそうだと思う」

 

生徒会選挙で争う発端となったみみみの感情。

そこから続いている、と予想をつけたのだろう菊池さん。

 

「……日南さんってどういう方なんでしょう?」

「え?どういうって?」

「あ、すみません!前に一緒にお店に来ていたので……仲がいいのかなって」

「ああ」

 

そういえば前に日南との会議として行ったお店でアルバイトをしていたっけ。

それで、日南はどういうやつ、か。

 

「一言で言うと、完璧主義で努力家、かなぁ」

「そうですよね……じゃあ……」

 

じゃあ…?

相槌を入れながら綺麗な瞳でこちらを見つめてくる菊池さん。

まっすぐに見ながらも少しの照れが見えるのがまた愛らしい。

 

「どうして完璧主義で努力家なんでしょう?」

「え、ええっと?どうして、う〜ん……」

「あ、ご、ごめんなさい!わからないですよね、そんなこと」

「う、うん」

 

菊池さんの質問への回答は持ち合わせていなかった。

どうして努力するのか、か……。

 

「七海さんは日南さんと競おうとしているんですよね。そういう風に、この人はこうしたいんだな、とか、この人はこういうことがしたいのかな?とかいろいろ想像しちゃうんです」

「あ、そうやって想像をするのが得意って言ってたっけ」

「は、はい」

 

俺の言葉に顔を赤くしながら頷く菊池さん。

か、かわいい……。

 

「でも、日南さんの動機がわからなくって……」

「日南の動機?」

 

たしかに、俺にもわからない。

なぜ日南はあんなにも努力を続けるのか。

いつのまにか日南がただひたすらに1位を目指す姿が当たり前のように感じてしまっていた。

それが日南葵なのだという風に。

 

「動機が分からない人と競うのは、とても苦しいことだと思います。ゴールが見えないから……」

「ゴールが見えない……」

 

それは……たしかに相当きつそうだ。

俺だって、『人生』攻略のために日南から出されるている課題にしてみても、細かい目標の積み上げでクリアを重ねてきている。

 

仮に、俺の最終目標の『日南並のリア充になる』という目標だけ掲げても、それだけでは正直俺だけじゃどう足掻こうともその目標に達することができないだろう。

つまりそこに通じるまでのロードマップ、一つ一つこなしていく小さい目標達が必要なのだ。

 

俺には、日南自身が出す課題というところから1つずつステップを踏むことによって前進して入るが、みみみにはそのロードマップを作るだけの情報となる……日南の動機というものが見えていないのだ。

 

「だから七海さんも……」

「きついってことか……」

 

 

***

 

 

「すまん、菊池さんとの課題はクリアできなかった」

 

放課後。

会議にて日南に謝る。

課題では、で、デート……映画の日付を取り付けるという話題を出されてはいたのだが、それができていなかった。

 

「そこまで難しい課題を出したつもりはなかったけど?」

 

眉をひそめて不機嫌オーラを出す日南。

たしかに、やろうと思えばできたかもしれないんだけどさ。

 

俺は日南に事情を説明する。

みみみの話題になり、そんなことを切り出す空気ではなかったこと。

当然、日南に付いての話題はぼんやりと避けながら。

 

「そう……たしかに、ちょっとよくないことになっているわね」

「やっぱりか。みみみ、無理しているよな」

「ええ、けれど……どうだろう。みみみがこのまま私の練習に合わせ続けるなら、ちょっと問題かもしれない。けどどこかで辞めるようなら、それで済む話だから……」

「まぁ、だな」

 

今はまだ、それで済む話か。

 

「それとなく私も言っておくわ。ある意味、私が原因だからね」

「そういう言い方は……」

 

日南もなぜ今みみみが無茶をしているのかを把握しているのだろう。

 

「いろんな思惑がすれ違うば、授業中の居眠りなんてよくない結果を招くことはある。そう考えて様子を見るのが良策でしょうね」

「それは、まぁ、そうだな」

 

これは、俺や日南など周りから言っても仕方ないことだろうから。

 

「でも、さらによくない流れがあるかもしれないわ」

「さらによくない流れ?」

 

日南にしては珍しく少し歯切れの悪い言い方に引っかかる。

 

「えぇ、昨日のことよ。私と相原が100mで勝負したの。本当は受ける気はなかったんだけど外堀と言うか、みみみにも押されたから断れなくてね」

「あぁ。……え、それってもしかして」

 

日南の言葉を繋げて考えると、つまりは……。

 

「そう、その100mでは私が負けたの。正直悔しいわね。少し油断していたっていうのもあるし、たぶんもう一度やれば私が勝つ自信はあるのだけど、それは言い訳にしかならないわ。相原もそれをわかっているのか再戦は断って……あぁやっぱり悔しいわね」

「マジか!」

 

この前練習してる時に足早いな、とは思っていたけど日南に勝つとかあり得るのか!?

 

しかし、負けた事自体は相当悔しそうにはしているがそれと同じくらい楽しそうに話しており、そんな日南を見てやっぱりコイツはすごいやつだなと改めて実感する。

そして日南は一回咳払いをしてから話を続ける。

 

「まぁそこはよくて……いえ、よくはないけど。問題はそれをみみみが見ていたってことよ」

「あ、あぁなるほど。もしもその勝負に触発されたら……」

「そう。だからよくない流れ、ってこと。とはいえさっき言ったように様子を見ることしかできないし、今はそれが最善なのは変わらないんだけどね」

 

さっきの日南の言葉のとおり様々な思惑がすれ違った結果、ということか……。

しかし、今の話とは別に気になることもある。

 

「なぁ日南。みみみって、どうしてあんなにお前にこだわるんだ?」

 

日南は考えるように顎元に手を置き、やがて手を元の位置に戻してから口を開く。

 

「中学の時にバスケの県大会でね。みみみの中学校を負かせたのが、私」

「え?」

「けど、これは私がする話じゃない。だから気になるなら、他の人から」

 

そう言って口を閉じる日南。

これは……。

俺は大きなキーポイントを見つけた気がする。

 

日南は口を閉じながらも、そこには拒絶の意思はないように感じ、むしろ期待しているようにも見えた。

だったら、俺がやるしかないよな。

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