弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
全力で走って駅に着いた俺は構内に入ってすぐにみみみと相原が話をしているのを見つけた。
距離こそあったが奥のベンチに座りながら話をしているようだった。
間にあったということに安堵しつつ話しかけに行こうかと思ったが、息を切らし汗だくになっている状態で話しかけるのも少し恥ずかしさを感じ、ひとまず呼吸を整えることにした。
相原が先に話しているのだ、この状態で無理してそこに入る必要もないだろう。
とにかく、今は呼吸を整える。
普段運動をしていないツケだ。
そこまでの大した距離でもないはずなのに汗が引かない。
歩いて呼吸を整えながら、2人の話しているところまで近づいていく。
みみみと相原の近くに着くころには何とか呼吸を整い、少し魔が差したのでこっそりと二人が座るベンチの裏側に座る。
ベンチの間は大きめの広告の看板で仕切られているために、立って回り込まなきゃ俺がいることには気づかないだろう。
呼吸は整ったが、汗は引いていないんだ。
だからそれまで、という言い訳をしながらベンチへとゆっくり座った。
さて、何の話をしているのか。
……。
そうしてみみみと相原の会話を聞いてしまった。
本当はどこかのタイミングで出ていこうと思っていたのだが、想像以上に真面目な話だったり、その後にケンカみたいなことになってしまって出られなかった。
話している最中に来た電車に乗ってみみみは帰っていき、ベンチには相原が取り残される。
そして相原は立ち上がり……あ、やべっ。
「よぉ友崎。どっから話し聞いてた?」
「ご、ごめん!盗み聞きするつもりでは、いや。えっと、みみみが日南の中学で試合した話をしてた所らへんから……」
「ほとんど最初からじゃねーか!」
う、出るに出られなかったんだ。
しょうがないじゃないか。
俺が悪いっていうのは、それはそうなんだけどさ。
さすがの相原もみみみと喧嘩別れのような形になったのは効いているようでため息が増えていた。
コイツがこんな調子だと、なんか俺まで調子が狂ってしまう。
しかし、相原がみみみとケンカだなんてな。
どっちも争いをしないタイプというか、面倒を起こすよりは周りに合わせる人間だと思っていたからちょっと意外というのと、正直あまり見ない光景に心配をしてしまう。
そういえば、相原とみみみは去年から同じクラスだったんだよな。
こんなときだけど、なんだ、経験値稼ぎ……。
いや、と、友達が心配だから、だな!
相原の話を聞いてみたくなった。
思えば俺は、相原のことを全然知らないから。
「なぁ相原。1年のときってみみみとはどんな関係だったんだ?」
「おっと、今度は俺の過去の情報集めか?」
「い、いや、そういうわけじゃないけど気になって。なんというか、仲が良さそうだから」
「さっきケンカ別れしたばかりだけどな」
「ご、ごめん!」
相原は「いや、いいっていいって」、と気を悪くする様子もなかった。
それでも話はしてくれるようだ。
「なんだっけ、1年の時の俺とみみみが何かあったかって話?まぁでも普通だったよ。何かあったかって言うと、あの恥ずかしい演説聞いてただろ?あれくらい」
恥ずかしい演説。
選挙の時の応援演説で行っていた内容か。
俺としては、恥ずかしいものではなく純粋に良かったと思うけど。
「落ち込んでる時に元気づけられたんだっけ?」
「そ。まぁ向こうはもう当時のことなんて何も覚えてなさそうだけどな。みみみはたぶんそういうことを自然とやっているだろうからさ。俺なんてそのうちの一人で。その他大勢のうちの一人なんて覚えてないんじゃねーかな。つか、そもそもそれだって一言二言会話しただけだし」
たしかに、みみみなら困っている人を見たら助けに向かうだろう。
実際にたまちゃんにだって手を差し伸べて、今は親友みたいな関係になっているわけだし。
「じゃあなんで今はそんなに仲がいいんだ?」
「さっきケンカ別れしたばかりだけどな」
「だ、だからごめんって!」
「はは、冗談冗談。ギャグの基本は繰り返しだろ」
いやそれギャグのつもりなのかよ!
心が抉れるからやめてくれ。
「で、まぁ、なんだ。ほら、そんなことがあった俺としては気になるじゃん?だからクラスも同じだし、俺から話しかけてみることも増えていって、そしたらさ。みみみだろ?」
「な、なるほど」
みみみだろ、と言われるとなんとなく納得できてしまうところがある。
恐るべしみみみパワー。
「それで三学期ぐらいからはみみみと、それにそこによく一緒にいるたまとかと話すことが増えた感じかなぁ」
「へぇー、なるほど」
そこは、たまちゃんからも似たような話を聞いたっけ。
三学期くらいからは相原とよく話すようになったとか。
ここで俺は気になったことを聞いてみることにした。
「そういえばさ、なんか前から思っていたけどみみみと相原ってなんか、こう、似てるよな。しゃべり方っていうか、なんだろ」
「はは、キャラが似てるってか?」
「おぉ!そうそれ!」
選挙の時くらいからだろうか?
けっこう前からずっと思ってたんだよな。
相原の言葉を借りるなら、キャラが似ているって。
「んー、まいっか。みみみと俺が似ているというよりは、俺がみみみのノリの影響を受けているんだろうな。だからたぶん、似ていると感じるんだろ」
「えっと、影響を受けてる、っていうと?」
「いやそのまんまの意味だよ。周りへの影響力ありありだろ、みみみは」
そのまんまの意味、ね。
これまでで知っていった相原の性格と、ここ最近できいた話。
そこに俺自身の実体験を組み合わせていくと思いつくことが1つある。
そしてその思い至ったことをそのまま相原に聞く。
「それってつまり、みみみの喋り方とかを相原が真似してるってことか?」
「お、おおー?よくわかったな。あんまりそんなことは人には言った記憶がないんだけど、だいたいそんな感じ」
だいたい合っていたようだ。
相原は俺からそんなことを言われるとは思っていなかったようで少し驚いている。
「ま、なんだ?俺ってもともとは人と話すのはそこまで得意じゃなかったけどさ、いろいろ変えなきゃって思ったわけ。それで上達にはできるやつのマネが1番だろ?そしたら、誰とでも仲良くなるクラスの中心人物って1人しかいないよなぁって。あと、俺って実は人の真似するのが結構得意だったらしい」
そう言ってちょっと自慢げにする相原。
真似が得意って、そういうもんだろうか?
「真似るのが得意って言う割にはアタファミだとお前の戦い方は全然テンプレに沿ってないけどな」
「それはそれ、これはこれ。俺ってばゲームをやる時は攻略情報あんまり見ない派なのよ。ネタバレとかあるじゃん?」
そういえばそんな話は前も聞いたっけ?
たしかにネタバレがあるゲームとかもあるし物によってはそういうのもわかるんだけど……。
「アタファミに限ってはネタバレも何もないだろ。シナリオがメインのものではなく対戦ゲームなんだから」
「そう言われればそうだな。でもアタファミに関しては最近はしっかりテクニック集とかは見てるし練習してるけどね。こっちは誰かさんの影響でな」
軽く肩を竦めながらそう言ってくる相原。
俺の影響だってか?
けどアタファミに関しては相原のそういうスタイルも悪いものではない。
上手くなるための最短は人の編み出した技術を取り込むために真似をするのが1番だろうが、それをしすぎると戦い方も誰かの合わさった集合体となりみんながみんな似てきてしまう。
そうなれば対策も容易だ。
そういった意味で相原はテンプレの戦い方からは逸れた立ち回りをしながらも対戦回数を重ねて裏打ちされた強さがあり、今はそこにテクニック集等から使える択をどんどん増やしてメキメキと上達していっている。
けどまぁ、俺に勝つとしたら……
「それも、まだまだみたいだけどな」
「流石友崎、アタファミになるとガチになるね」
「う、うるせぇ。最近はなんにでもガチのつもりだよ」
「はは、たしかに。俺はお前のそういうところ嫌いじゃないぞ」
きゅ、急になんだよ、ちょっと照れちゃうじゃん!
っといかんいかん、ついアタファミの話をして元の話から逸らしてしまった。
「は、は……。けどみみみの真似か」
「そうそう、あいつの真似。しかし出来るやつは真似するとかもしてないだろうに、どっからそう言うのを覚えるんだろうな。人とうまくやるすべとか」
それには激しく同意だ。
しかし、みみみの真似ということでなんとなく合点がいった。
つまりはみみみと相原の仲がいいのはそれが理由なんだろう。
自分に似ている人間と話が合わないわけないんだから。
あれ?
もしかして、相原がたまちゃんと仲良さそうなのもみみみの影響か……?
そんな風に考えていたら次の電車のアナウンスが流れた。
もうそんなに時間が経っていたのか。
「そろそろ電車来るみたいだな。入り口前並んでおくか」
そう言って立ち上がる相原。
俺もつられるように立ち上がって乗車口前へと移動する。
その間にまた、湧いてきた疑問を頭の中で整理する。
相原とみみみが仲がいい理由はわかった。
けど、ならどうして今回は言い争いをして喧嘩別れみたいになってしまったのか。
そんな疑問が頭の中に残った。