弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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相原とみみみがケンカのようなことになってから土日を挟んで月曜日。

朝の会議は俺の課題については一旦置いておき、そのほとんどの時間がみみみのことの情報共有となった。

 

「みみみは、土曜日は練習に来なかったわ。……それに今日の朝練にも」

「そう、か」

 

日南の言葉を聞いて項垂れる俺。

 

みみみの体調だけでいえば、部活を休んだことによって回復しているのかもしれない。

というか、少し前の会議の時には、みみみが日南と張り合うのをやめれば解決する問題だと思っていたはずだ。

 

けど、今はもうそんな段階はとっくに過ぎていたと俺は感じる。

 

たしかに肉体的な疲労は取れるかもしれないが、それより先に精神的な……心が疲弊してしまっているはずだ。

 

「金曜日、みみみとは……?」

 

日南が頭を抱える俺に対してそう聞いてくる。

 

「ああ、えっと。俺自身はみみみとは話せなかったんだけど2人の会話、みみみと相原が話しているのを、なんというか、盗み聞きしてしまって……」

 

そうして、金曜日に盗み聞きしてしまった話を覚えている限りかいつまんで日南に報告をした。

 

 

「そう……。それにしても相原も心にもないことを言うのね。みみみが怒るのも、納得だわ」

「え?」

 

みみみが怒るのも納得?

正直に言うと俺には原因というところが理解できていなかった。

言い合いになった結果だと思っているが、日南の言葉から察すると相原の言った内容の何処かに問題があるということだろう。

 

日南は俺のその様子を見て、何も分かっていないことを理解したようでため息をひとつついて説明をする。

 

「はぁ呆れた。あなたは私と一緒のはずでしょ、この感覚は。アタファミをあそこまで極めているなら。それに、相原だって思ってなければ私に短距離勝負なんて仕掛けてこないわ」

「同じ、ってなんだよ。結局何に対しての怒りだったんだ?」

「それは、あなたの口から説明を受けた通り、みみみが口にしているじゃない」

 

みみみ自身が口にしたこと?

説明した内容を頭の中で整理しながら考える。

ここまでヒントをもらえば理解すると言うよりも、ここかな?という所の見当くらいはつく。

 

「1位じゃなくてもいい、って所、か?」

「そうよ、やっぱり分かってるじゃない。1位じゃなくてもいい、なんて思うわけがないでしょ。私も、あなたも。それに相原も」

 

当たってはいたらしい。

しかし、思うわけがないというところがまだわからない。

 

「なんだよそれ。俺はどちらかと言うと相原の言葉に賛成だ。1位にこだわる必要なんてないだろ?」

「なにそれ?あなたはアタファミで1位を取り続けているのに?」

「関係ないだろ。アタファミは自分自身との戦いだ。俺は本気でそう思ってるぞ」

 

日南は少し驚いた顔をして、すぐに表情を戻して「そう」とつぶやく。

 

「それってそんなに大事な話なのか?」

「まぁ、いまはそれよりみみみの話よね。過程はどうあれうまくいかなかったと」

「そう、だな……すまん。間に入って話すことすらできなかった」

 

俺があそこで割って入っていれば状況は変わっていただろうか?

土曜日も朝練にも来れなかったみみみのことを思うとやはりどこかで声をかけるべきだったのではないかと後悔が湧いてくる。

 

「ううん、気にしないで。私の問題や責任をあなたや相原にかぶせてしまったようなものだから。それに、私もその場では割って入らなかったのは正解だと思う」

 

日南にしては珍しく落ち込んだような素振りを見せながらそういった。

コイツのこんな姿を見ると、調子が狂ってしまう。

 

「あー、えっと。そうだ、今日の課題はどうするんだ」

「そうね、今日の課題は……。あなたが気になることを全力で取り組むこと、にするわ。このままにするつもりはないんでしょ?」

「日南……。あぁ、わかった。それで行こう」

 

ピースは断片的にだけど揃ってきている。

 

結局のところ、みみみが折り合いを付けられればきっと解決する問題だ。

けどそれは、1位になれないと自分に価値は生まれないと思っているみみみに対して、1位になることを諦めろと言うのに等しいこと。

 

あっちを立てればこっちが立たないような、デッドロックのような状態。

それを解決する方法を見つけるんだ。

 

 

***

 

 

そして、昼休み。

ついに決定的な問題が発生した。

 

「みんみ、それ本当なの?」

 

クラスの一番前の席のたまちゃん。

その周辺てたまちゃんとみみみ、それに相原が会話をしていた。

 

「うん、なんだろ、いろいろあるんですよ!」

 

そんなふうにおちゃらけた様に話すみみみ。

けど、たまちゃんの声は真剣そのものだ。

 

みみみはわざと明るく言い放った言葉は、周りにいたクラスメイトを固まらせるには十分な威力を持っていた。

たまちゃんの横で一緒に話を聞いていた相原ですら固まって反応できずにいる。

 

「みんみ、本当に部活辞めちゃうの?」

 

話は、みみみが部活を辞めるという話だった。

しかも、辞めることを考えている、とか、これから辞める、とかそういう話ではなく既に退部届を提出済みだということらしい。

 

「土日で色々と考えたんだけどね。これしかないかなって思って」

「なぁ、もしかして俺のせいで……」

「ううん、違うよ!はらみーは関係ない!関係なく、私が決めたことだから」

 

相原は7月下旬の夏真っ盛りにも関わらず顔を青くしていた。

それほど衝撃だったのだろう。

 

俺も、声が聞こえる位置にいながらも口を挟むようなことはできずに、ただ見ているだけだった。

その時、その会話をしている二人に近づく影がひとつ。

 

「それ、本当なの?」

 

日南葵だ。

 

「葵……。うん、いろいろ考えたんだけどね。体力の限界だから、ごめん」

「私は、みみみともっと陸上をやってたかった」

「ごめんね、葵」

「ううん、謝ることじゃない!」

 

そういいながらも日南は悲しそうな顔をしており、みみみはそれを誤魔化すように、はは……と笑っていた。

 

 

……折り合いを付ける、と言う意味ではこれで解決なのかもしれない。

たしかに1位は諦めて、これから無茶をすることはなくなるだろう。

 

でも、日南にたまちゃんに……相原にみみみだって。

全員があんなに悲しそうな顔をしているのに本当にこれが最善なのか?

そんなやるせない気持ちがこみ上げてくる。

 

「ねぇ、友崎……なんかこれまずくない……?」

 

そう思っていたところで、隣の席の泉が声をかけてくる。

 

「たしかに、ちょっとまずいのかも」

「ケンカかなぁ……?」

「……いや」

 

たしかに相原とみみみはこの間ケンカのようなことをしていたが、問題はもっと根本的なところだろう。

 

「すれ違い、みたいなものだと思う」

「すれ違いかぁ。……仲直りできないのかな?」

「どうだろう。でも」

 

けどたぶん、これってさ。

 

「誰も悪くないんだよ。きっと」

 

誰も悪くないのにすれ違いで起きた問題って、どうすれば元通りにできるんだろうな。

誰かが悪ければ非を認めて謝ることでだいたいは解決する。

けど、誰も悪くないのなら?

俺はその答えを持ち合わせてはいなかった。

 

 

 

そして放課後。

 

「たまーっ!今日は先に帰るね!」

 

みみみからたまに対してそんな声が届く。

俺はみみみのほうを見てみれば、なんとみみみはクラスの女子4人ほどに囲まれていた。

 

全員部活をやっていない生徒だろうか……?

コミュニティに所属するのがはやすぎる。

そこは、さすがみみみだ。

 

「えっと……」

 

なにかいいたそうにするたまちゃん。

しかしそれを守るように4人のクラスメイトに遮られる。

実際のところはそんな意図などは全くないのだろうが、たまちゃんの目にはそう映っただろう。

 

たまちゃんの隣で相原もまたその光景に納得がいかないような顔で見ている。

 

「じゃあね、たまー!また明日!」

 

そう言ってみみみが教室を出ようとしたところで、俺は1つの方法を思いつく。

しかしこれは諸刃の剣……。

いや、知ったことか。

 

そうだ、朝の課題。

『あなたが気になることを全力で取り組むこと』。

課題だからな、やるしかない。

 

思えば俺のできることなんて元より1つしかなかったんだ。

全力で取り組む、それだけだろ。

 

俺みたいな弱キャラがみみみを助ける?

おこがましいにも程があるよな。

 

そういうのは、もっと強キャラ達に任せればいい。

俺は自分を操作して、味方やアイテムを集めたらあとはおまかせするだけだ。

俺にできることは『行動』して人を巻き込むだけ。

 

だから……

 

「み、みみみ!」

「ん?」

 

思った以上に大きい声がでてしまった俺。

みみみはその声を聞いて立ち止まる。

 

俺は席を立ってさらに言葉を続ける。

 

「い、一緒に帰らない!?」

「……え?」

 

軽く口を開けて困惑するみみみ。

さらにみみみの後ろにいた4人はもっと困惑してポカーンとしている。

教室にはHRが終わったばかりのためかなりの生徒が残っており、これを聞いて唖然としている。

 

俺はそれにもめげずに、周りが止まっているところにさらに追い打ちをかける。

 

「たまちゃんと、それに相原も入れて!4人で!」

 

そう言うと、たまちゃんはビックリとした顔をしてからこちらを見る。

相原も同様だ。

 

「私、今日部活サボる!」

 

たまちゃんは真剣な表情でそう言い放った。

さすがはたまちゃん、明確に『サボる』と言っそ清々しいほどの宣言をする。

 

「中村!悪い、実は今日ちょっと頭痛くてさ。部活はでれそうにないから、先生に伝えておいてくれ」

「あぁ。わぁったよ。今度ラーメン奢りな」

「恩に着る」

「別に。ほら、さっさと帰っとけ」

 

そうして相原も部活を休む立付けをした。

こっちはこっちで、抜け目ないと言うかちゃっかりしていると言うかいつも通りと言うか。

まぁそんな印象を持つくらい自然にサボりの名目を作って中村に依頼していた。

 

この光景を目にしたみみみは固まっていたところから再起動して、後ろの4人へと話しかけた。

 

「ごめん、みんな!今日は友崎の勇気に免じて4人で帰らせて!」

 

俺にできる行動はこれで全部やったよな。

あとは当人たちの問題だろ?

 

強キャラには強キャラをぶつけるのが正攻法だ。

たまちゃん、相原。

あとは頼んだぞ。




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