弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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「回答を、もらってもいいか?」

「……うん。でもごめんね、はらみー。いまは付き合えない、かな」

「みんみ!?」

 

……はぁ。

でも、さっき決めたことは反故にはしない。

もう逃げない。

金曜日は逃げて失敗したんだ。

結果がどうであれ俺はみみみからは、もう逃げない。

この場から消え去りたくて駅まで走り出したい衝動に駆られているが、グッと堪えて我慢する。

 

「そっか。まぁ仕方ない、か。悪いな急にこんなこと言って、気持ち悪かったよな」

「そんなことないよ!嬉しかった!でも、私ははらみーに何も返せてないし、対等じゃないの!」

「返せてないって。もらってばかりいるのはむしろ俺のほうで「違うの!」」

 

えぇ……。

 

「私ははらみーが思ってるほどいいやつじゃないんだよ?」

「おいおい聞き飽きたぞ、それ」

 

そう言うが真面目な顔をしているみみみ。

いやなんだ、まだなんかあるのかよ。

 

「はらみーが変わるきっかけになったのは、私が声をかけたからって言ったよね?」

「え、あぁ。選挙の時にも言ったよな。まぁみみみはもうそんなこと覚えてないのかも知れないけど」

「覚えてるよ。ううん、忘れることなんてできないよ」

 

え、マジ?

それは意外だった。

俺の他にも所構わずそんなふうに元気付けて回ってるもんかと思ってた。

 

「へぇー。なんか100人くらい声かけて回ったうちの1人とかそんなレベルだと思ってたから意外」

「違うよ、私ってそんなに親切な人間じゃないから。はらみーに声をかけたのだって……。それってさ、いつぐらいのことだったか覚えてる?」

「もちろん。一学期の終わりくらいだったな。おー、ちょうど去年の今ごろかね」

 

そうそう、懐かしいな。

入学から3ヶ月経ったくらいだよな。

友達もいなかったしなぁ、あの頃は。

あれ、今もそれはあまり変わってないか?

でも友達は数じゃない。と思うことにしよう。

 

「それで、私がたまと仲良くなったのっていつぐらいか知ってる?」

「その話は打ち上げの時にたまちゃん本人から聞いたっけ?たしか、2学期に入ったくらいって言ってたよね?」

 

ちらっと横を見れば、急に話に出てきてたまもびっくりしている。

 

「うん。そうだよ。……はらみーはさっきさ、私の事ヒーローって言ったでしょ?」

「ああ。言ったけど、つまりどういう?」

「私ね、はらみーのこと利用しただけなの。失敗してもいい、練習台みたいに思って」

 

まだイマイチ理解できていない俺。

 

「1学期からたまに声をかけたかったんだけどね。私失敗することが怖くて、話しかけられない時期があったの」

「え、みみみにもそんな時期が?」

「あるよ。私だっていつも悩んでるし考えてるって言ったでしょ」

 

あぁ、たしかに一昨日電話でも言ってたね。

でも話しかけてほっぺたツンツンしに行くのは失敗を恐れる人間のそれではないと思うんだけど。

 

「だからね、失敗してもいい練習台みたいに思ってはらみーに声をかけたんだよ?その時は、どうせ大した関わりもないクラスメイトだし、失敗しても大丈夫、みたいに思って」

「おー……なるほど?」

 

あのときの俺は道端の石ころ位の……いや、道の隅に落ちてるゴミかなにかだったもんな!

たしかに失敗してもなんも起きねぇわ。

うん、その判断は大正解!

 

「ね。最低だよね。クラスメイトをそんな風に都合のいいように、絶対に殴り返さないサンドバッグか何かみたいに利用して」

 

……。

まぁ、それを聞いて何も思わないかと言われたら嘘にはなるけど。

利用されたら利用し返す、それが今までの俺のやり方だったし。

けど、なんだろね。

 

「え、それだけ?」

「だけ!?だって、私ははらみーにそんなひどい扱いをしたんだよ!」

「いや、気にしすぎだろ。今更そんな事いいじゃん」

「よくないよ!」

 

えぇ、1年も前のことじゃん。

むしろ俺はそれで救われてるんだぞ。

というかそんな昔のことを重く受け止めすぎだろ。

時効だ時効。

 

「……ははは!」

「ちょっと、なんで笑ってるの!私は真剣なんだよ!」

「い、いやすまん。だって、みみみの心情を気にしなきゃさ、結局やったのって俺に声かけて元気づけてくれただけじゃん。それに、そんなの言わなきゃ知られなかっただろ」

「私は!……逆の立場でそんなことになったら、嫌な気持ちになると思うから」

「なんだろ、そのバカ正直な所さ。友崎みたい」

「なっ、失礼!」

「おい!どっちが失礼だ」

 

今まで黙って聞いていた友崎も、これにはたまらず口を出した。

ん……?

 

「もしかしておれとは付き合えないって言ったのって」

「うん」

「今も俺のことどうでもいい、練習台のサンドバッグくんって思ってるってこと……?」

 

あ、それはさすがにショックだ。

練習台でもサンドバッグくんでも別にいいけど、どうでもいいは辛い。

1年たっても道の隅のゴミはゴミのままか……。

 

「ち、違うよ!そんなわけない!はらみーはいつも頑張ってて、でも私はそんなはらみーにひどいことしたってずっと思ってて、だからはらみーの気持ちに応えるのには相応しくないって!」

「お、おい」

 

そういうとみみみはまた涙をポタポタとこぼしはじめた。

 

「泣くなよ……何度目だって」

「な、泣いてない!」

 

おう……。

とりあえずポケットからティッシュを取り出して渡す。

泣いてないと言ってはいたがすんなりと受け取り目元を拭うみみみ。

 

「わた、私は!こんなひどい人間で、だからはらみーとは釣り合うわけがなくて!」

「だから付き合えないってか」

「うん。少なくても、自分が許せるまでは……無理」

「そっか」

 

えー……俺自身は許してる、というかもともと知らなかったし、そんな昔のことを今言われても気にしてないんだけど。

でもこれは、仕方ないのか?

 

「……最近、みみみ泣きすぎじゃない?」

「だ、誰のせい!?」

「誰のせいだ!たまちゃん、みみみを泣かせるなよ!」

「みんみを泣かせてるのは相原でしょ!私は1回だけ!相原は2回!」

「むぅ」

「……ん!?まって、2回って。たま、もしかして金曜日のこと知ってる!?」

 

俺とたまはキョトンとして顔を見合わせる。

あぁそうか、俺がたまちゃんに相談したことは知らないのか。

 

「友崎も知ってるぞ、な?」

「え!?はらみー、言いふらしたの!?サイテー!!」

「あ、ちょっと待て、俺が言いふらしたわけでは!いや、たまちゃんには俺が言ったんだけど……」

「ほらやっぱり!」

 

そんなバカなやり取りをして、みんなで笑っているうちにみみみの涙も乾いていた。

そのあとバカ話を続けた後に、ふと思って話を戻す。

 

「なぁこれ、俺が振られたことになるわけ?たまちゃんどうおもう?」

「うん、相原が振られたことになると思うよ」

「マジかよ、今まで振られたことなかったのに」

「わぉ、モテゼリフだね!」

「……告白したことないだけだろ」

「バレたか」

「バレバレだね」

 

わざとらしく大きめのため息を一つ吐く俺。

いやしかし、アレだな。

 

「はぁ、みみみってさ、やっぱり面倒くさいやつだったんだな」

「あはは、もう知ってるでしょ。私は面倒くさい奴なんだよ」

「はは。そうだな、知ってる。じゃあさ、俺を利用したことに負い目があるなら、1個くらい俺の言う事聞いてくれてもいいんじゃねーか?」

 

そう言ってみみみの方を向き視線を送る。

 

「1個くらい?……え、えっちなことはだめだからね!」

「アホか」

 

自分の体を抱きしめるようなポーズを取りながらそんなボケをかますみみみ。

もう完全に立ち直ってるじゃん。

 

「そろそろ夏休みじゃん?」

「お、そうだね。いろいろ遊ぶ予定も立てなくちゃ!」

「俺、夏休み中にサッカー部の試合があるから観に来てよ。まぁ公式戦じゃなくて練習試合なんだけどね。夏の合宿があって最後に近隣校との練習試合あるからさ。たまちゃんと、ついでに暇なら友崎でも入れて」

「そんなのでいいの?」

 

そう言って俺の顔を覗き込んでくるみみみ。

そんなのとはなんだ。

自分を、そんでたまちゃんを低く見積もるなよ?

学生の貴重な休みをもらうんだ、大サービスじゃないか。

友崎が俺はついでかよ、って顔をしているが空気を読んでか声には出さなかった。

 

「あぁ。それでチャラな。貸し借りなし、みみみが以降その程度のことで気に病むのは無しな」

「……うん。分かった。じゃあ観に行く。でも、私たちが応援に行くからには点決めろよ〜?決められなかったら罰ゲームね!」

「俺のポジションはディフェンスなんだけどなぁ……」

 

まぁ、いっか。

俺は振られたけど、なんか全部精算されてスッキリしたかもな。

俺は振られたけど……。

 

「そういうばはらみーってさ」

「ん?」

「普段は『好き』って単語使わないよね?」

 

あれ、どうだろ。

 

「そうでもないと思うけど」

「ううん、物とかに対しては使うかもだけど、人に対しては使ってるの聞いたことないよ。そういうときは、『嫌いじゃない』っていうの」

「……ぉぉ、そうかも」

 

言われてみれば……。

嫌いじゃない。嫌いになれない。

たしかによく使うな、そのワード。

っつかよく分かったなそんな事。

俺自身が言われるまで気づかなかった。

 

「だけどさっき私には『好き』って言ったよね。うんうん、なんかはらみーの不器用さと気持ちが伝わってきて、すごく情熱的で良かった!」

 

そんなことを言ってからかってくるみみみ。

そこにはにやにやとした笑みを浮かべている。

コイツ……。

 

やっぱり俺はやられたからには何かしらやり返さないと気がすまないようだ。

 

「なぁ。俺を振ったみみみ」

「なぁに、私に振られたはらみー?」

 

にやっと笑いながら答えるみみみ。

はん!

 

「いつまでも俺がお前のことだけ好きだとは思うなよ」

 

少し驚いたように目を開くみみみ。

これくらいは言わせろ。

なにより俺は惚れやすいからな。

なんなら、ちょっと優しくされただけで惚れちゃうぞ。

 

つーか誰かに告白されたら一発OK出しちゃうね。

ま、俺なんかが告白されることなんてはないんだろうけどさ。

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