弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
夏休みに入ってから数日が経った頃。
合宿、もとい中村と泉をくっつけよう作戦の計画を立てるということで、みみみの家に集まって会議をすることになっていた。
キャンプの計画自体は日南や水沢が色々頑張ってくれた結果、もう俺とかが考えるようなことは無くなっており、会議の目的は2人をどうくっつけるかという内容だけとなっている。
そうして北与野駅の入口前集合ということで来ていたのだが……。
今来ているのは友崎と水沢だけか。
日南とみみみとたまはまだみたいだな。
「よっす、早いな二人とも」
「おー、相原」
「よぉー、俺達を待たせて悪いとか思わないわけ?」
「まだ時間前だろ」
とりあえず挨拶をして他の三人を待ちながら会話をする。
「それにしても合宿、うまくいくといいな」
「あー、そうだな」
「くっつけ作戦、なんだもんな」
水沢が振った話にうなずく俺と友崎。
一応の目的はそれだからな。
まぁ正直俺は楽しむ事を1番に考えていたりするんだけど。
「あの2人、お互い好き同士っぽいのになかなかくっつかないもんな」
「そーそー。この作戦の前に優鈴にお前らいつ付き合うんだよって聞いたら『私からはいけない!』ってビビってんだよなー」
「はは、そりゃなんか泉らしいわ」
「アイツラ普段はギャーギャー騒がしいくせにこういうことになると超純情で、世話が焼けるったらありゃしないよな。あのバカ2人ときたらほんっとさ」
肩を竦めながらそんな軽口を言う水沢。
言いたい放題だな。
まあアイツラ揃ってバカとアホって感じだからそれもわかる。
「どいつもこいつも単純っていうかアホっていうか、計算が足りてないんだよな」
「お、おう」
「はは、わかるわー」
「いや、相原。お前がアホ筆頭だろ」
「なぬ!?……アホと天才は紙一重というしな。ふっ、俺はどっちかは言うまでもないな?」
「あー、言うまでもないなぁ」
なんて軽口を叩いてる間に女子たちもやってきたようだ。
「おまたせー」
「おお、早いねみんな!」
「ごめん、遅れたかな?」
「いや、俺達もさっき来たとこ」
「久しぶりだねーみんな!ブレーンも!」
「いや、まだ夏休み入って3日目だけどな」
そんな軽口を言い合う。
結局のところ部活組は校内でちょくちょく顔見てたりもするし。
そして挨拶も済んだところで水沢が仕切るように声を上げる。
「そんじゃ行くか。みみみの家だっけ?」
「あ、それなんだけど……ごめん、今日はおばあちゃんが来ることになって家が使えなくなっちゃって。やっぱりファミレスとかでいい?」
「おー、別にいいよ。近くにサイゼとかあったっけ?」
「ごめんね!……あ!」
そうしてみみみは思い出した様に友崎の方を見るみみみ。
「そういえば友崎の家も北与野だよね?」
「え、そうだけど」
「じゃあ友崎の家行けない?」
困惑する友崎とそれを見ている俺たち。
そして更に日南から追撃が入る。
「それいいね!どうかな、友崎くん?」
「えっと、い、行けなくはないけど……」
「さすがにブレーン!頼りになる男!」
「文也の家かー楽しみだ」
「私もちょっと楽しみ」
「たまちゃんまで……」
全員の期待した目に友崎も完全に諦めたようだ。
もちろん俺も賛成だ。
あ、そうだ。
ちょいとLINEをっと……。
『いま友崎(兄)+その他多数と一緒にいるんだけど、これから全員でお邪魔させてもらうね。
全部で5人とちょっと多いから煩くなるかもだけど』
送信っと。
ついでに友崎を写真撮って送っておこ。
「友崎。ちょっとこっち見て」
「ん?『カシャッ!』っておい!なんで写真撮った!?」
友崎のほかに水沢と端にはみみみも映っている。
……あれ、もう既読がついた。はやいな。
『全然!大丈夫です!ぜひゆっくりしていってください!』
おー、よかった。
あとは、さっき撮った写真も送信……。
『えっ!?もしかして七海先輩に、水沢先輩もいらっしゃるんですか!?』
結構ミーハーよね、妹ちゃん。
水沢まで顔と名前を覚えてるのすごいな。
「いや。友崎の妹ちゃんに伝えておこうかと思って今LINEで送った。ゆっくりしていってってさ」
「え!?なんで友崎の妹ちゃんのLINE知ってるの!?」
いやなんで友崎じゃなくてみみみがそこに突っ込むんだ。
「この前、選挙の後くらいになんやかんやあって交換した」
「なんやかんやって何!?」
「まぁいいじゃんそういうの。友崎の家行こーぜ、こっちだよな?」
「あ、あぁ。そっち方面だな」
家近いしアタファミしに何度か遊びにも行ってるからなぁ。
「友崎の家はたまに行くし、もう勝手知ってる我が家みたいなもんだな!」
「いや他人だから。少しは遠慮はしてくれ」
「お、もしかして相原って文也の家によく行ってるのか?」
俺の言葉に食いつく水沢。
……ってか、いつの間にか友崎のこと文也呼びなんだな。
「ま、そこそこな。アタファミ対戦するし」
「なるほどなぁー。それを口実に文也の妹に近づこうって魂胆か」
そんな風に茶化してくる水沢。
「はらみー!そんな不埒な目的がっ!?」
「そんな目的ないから……」
マジなのかノリなのかわからんみみみ。
「あはは、その相原が狙っている妹ちゃんってたしかバド部の1年生だよね?相原も隅に置けないよねー」
「別に狙ってないから……」
完全に悪乗りしてる日南。
「私も相原が狙ってる友崎の妹のこと、ちょっと気になる」
「たまちゃん、今日は乗ってるねぇ……」
いつの間にか敵しかいなくなっていた。
俺と、それに友崎はこの流れで友崎の家に着くまでチクチクとイジられ続けるのだった。
***
「「「「「「おじゃましまーす」」」」」」
「あぁ、部屋は上だからとりあえず上がって」
そう言ったところで奥から友崎の妹ちゃんが出てくる。
「相原先輩に七海先輩に水沢先輩……あれ、日南先輩まで!?」
「相原から聞いてたのかも知れないけど、家使っていいか?俺の部屋から出ないようにするから」
「ぜ、全然!全然部屋から出てもいいけど!」
どことなくキラキラした表情で俺含めた客人たちを眺める妹ちゃん。
ちょっと小っ恥ずかしくなってくる。
1年上って本当は大して変わらないのに、なんか凄い人に見えることってあるよな。
というか俺以外はマジで結構凄い奴らだらけなんだけど。
「あ、妹ちゃん。俺はいつもお邪魔させてもらってるからこれを。ちょっとしたお菓子だからどうぞ」
「相原先輩、いつもありがとうございます!こんな兄なんかと遊んでいただいて……」
「お前は何視点なんだよ」
とりあえず持ってきていた手土産を妹ちゃんに渡す。
そして奥の部屋にパタパタと戻っていく妹ちゃんを見送ってから友崎の部屋へ。
「はらみー、妹ちゃんと距離感近くない!?」
「はは、たしかに!相原、これポイント稼ぎ?やるじゃん」
「いやだからちげーって!」
めちゃめちゃイジるやん!
「それにしても文也の家は面白いな。さっき奥でケーキとか赤飯って聞こえたぞ」
「みんなそう言うけどさぁ。それ褒めてないだろ……」
「そんなことないかもしれないぞ?」
「そ、そうか…?」
「……たぶん」
「いややっぱ褒めてないだろ!」
そんな友崎と水沢のやりとりを聞いて笑いながら部屋の中へと入った。
そこから案内された部屋で各々が好き勝手に部屋を荒らし回るなんてことがあったが、少し落ち着いたら本題の合宿の話が開催された。
「やっぱり肝試しは必須だと思うんですよ!」
「まぁたしかに、それくらいしないとあの2人は何も起きなそうだしな」
「あぁ、吊り橋効果って言うしな」
つっても今どき夜道程度で怖がるやついるのかねぇ。
いやでも泉ならなぁ。
「そうそれ!吊り橋効果!ブレーンわかってるぅ!薄暗い夜道、2人きり。まるで幽霊が出そうな雰囲気。そして怖がるたまが私の腕に抱きついてきて……」
「抱きつかないよ」
「残念ながら、たまは抱きつかないらしいぞ」
「そんなぁ〜」
ボケるみみみに、たまちゃんは冷静に返して水沢もそれに乗っかった。
……たまも中村グループとの確執がどうなるかと思ってはいたものの、とりあえず水沢1人なら問題ないようだ。
本人的には話してみたらこんなもんか、ってなったのかもな。
そんなもんだよな。
「そもそも男女で組みたいよな」
お、よく言った水沢!
そこに俺も便乗だ。
「そうだよな。つか、ただでさえ男のほうが多い事を考えるとみみみとたまちゃんがペアだと野郎二人のペアが発生してしまうぞ」
「それはそれで有り!」
「いや、なしだろぉ……」
なんで暗がりに男二人で肝試しなんかせにゃならんのだ。
俺は嫌だぞ、そんなの。
女の子2人のペアってのは俺的に有りだけど!
「修二と優鈴をペアにするとして、他はその時考えればいいか。あとは、なんかいいアイディアある?」
肝試しの話をまとめ、周りにそう言う水沢。
ううむ、まとめ役が様になってるな。
「バーベキューするんだよな?だったら役割分担で2人きりにすることはできるんじゃないか?」
「お、いいなそれ!火起こしとかか?」
「いや、火起こしは……。意外と難しいみたいだからあの2人に任せるのはちょっとな……」
「ははは!そういう理由?でもたしかにな、火がつかなかったら何も出来なくなるからな!」
そんなテンポのいい会話をして愉快そうに笑う水沢と、釣られるように笑う友崎。
火起こしは難しいのか、となると……。
「じゃあ調理とかか?食材を切るとか」
「うん、それいいと思う!でも、結構な人数だから食材も多くなるし2人だけだと時間かかるかも……」
「2人きりにはできないってことか……」
俺の提案に日南も太鼓判を押してくれた。
だが2人では終らないとなると、もう何人か入ることになって2人きりにはできないか。
いやまてよ、共同作業で2人ペアすれば……。
「だったら、食材カットはあの2人に加えて、俺とたまちゃんでどうだ。それで、俺とたまちゃんでささっとペアを組んであの2人に、どっちが多く下ごしらえできるか勝負しようぜ!みたいに言えば、たぶん乗ってくるだろ?」
「お、いいね!勝負になれば修二はやる気出すだろうし、ペア共同で作業するなら距離も縮まるかもな」
「はいはいはい!なんではらみーとたまのペアなの!?私とたまで良くない!」
水沢からは賛同が得られたが、みみみとしてはたまと組むのが自分じゃないのが納得いかないらしい。
「いやそれも考えたけどさ、女子3人と中村1人になったら中村と泉がペアを組むとは思えないっていうか」
「あぁー、たしかに!修二はともかく、優鈴が照れて2人の方に逃げるかも知れないな」
「あっはは!たしかに!優鈴ってそういうとこあるもんね」
「むぅ……」
「そ、だからたぶん俺とたまちゃんがベストってわけ」
みみみはまだ納得は強いなさそうではあるが、理由は理解して特に反論はでないようだった。
と思ったところで水沢が口を開く。
「あ、でも俺と葵でも良くない?」
「いや、よくないだろ!」
「え、なんで?」
若干にやっとしながらそんな事を言う水沢。
なんでって、ペアが強すぎるわ!
勝負になんねぇよ!
そう思ったところで友崎からフォローが飛んでくる。
「いや、ペアが強すぎて勝負にならないだろ。それに、さっき言ってた火起こしは難易度が高いから日南か水沢がやったほうがいいと思う」
「ははは、なるほどな。でもまぁ実際のとこそうかもな。俺も普通に包丁くらいは使えるし、葵もそうだろ。けど難易度が高いものを任せられる、俺も結構信頼されてるのな」
そう言ってカカカと笑う水沢。
割と本気で嬉しそうで何よりだ。
「じゃあそれで行くか。今さらだけどたまもそれでいいか?」
「…うん、大丈夫」
若干の躊躇いが見えたものの、たまからの了承もでたのでこの案は可決となった。
と思ったところだが、水沢がニヤニヤとしている。
「それにしても、相原はそんなにたまとペアを組みたかったのか〜?」
あっ、コイツさっきわざわざ自分も、って立候補したのはこういうことか……。
はっ、けどそのくらいどうってことないね。
「まぁ、正直たまちゃんには気を使わなくてもいいから楽だしなぁ。ペア組んで作業するのも悪くないかなって。なぁ、たまちゃん」
そう言ってたまの方を見ると、一瞬ビクッと肩を揺らした。
ん?と思いじっと見ると少し顔を赤くしている。
いやいや、今更何照れとんじゃい。
学校では席が隣だし、よく気軽にどうでもいい話をしてるだろ。
「ちょ、ちょっと、ストップ!」
そんなたまを見てか、話に割り込んでくるみみみ。
「え、えっと、そう!私のたまに手を出すのは許さないよ!」
「手を出したつもりはなかったんだけどな……」
「……私はみんみのじゃないよ?」
「「あはは!」」
この混沌とした場を見て発端になった水沢や横目に見ていた日南は大きく笑っていた。
こんな感じで会議は続いていく。