弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
水辺遊びのあと、全員で今日泊まる予定のログハウスへと移動した。
このログハウス、そこそこの大きさがあり10畳のワンルームもあるので野郎が5人いたとしてもまだそこそこの広さを感じることができる。
当然ながら部屋の中は必要最低限のものしか置いてなく、その何もない空間に俺達はそれぞれ荷物を好き勝手に置いてくつろぎ始めた。
「ここってトランプとか借りられるんだっけ」
「ああ、無料で借りられるらしいな」
「他にもボールとかもあるみたいだったな」
「ふーん」
次の予定までは時間もある。
確かにトランプも悪くない。
「夜に温泉に行くんだったか?それまで時間つぶすか。……友崎」
「え?」
おお、これは俗に言うパシリ。
「それよりさぁ修二。島野先輩とはどうなんだよ、最近は」
という水沢の声によってそれは中断される。
やるなぁ水沢、パシリキャンセル。
「はぁ?んだよ急に。どうもこうもねーよ」
「アレからなんもないわけ?」
あー、そういえばフラれたって話だったな。
けどそれはもう二ヶ月も前のはなしだろ。
「まぁたまにLINEでやりとりしてるな」
「お、またヨリ戻すとか?」
「いやアイツ今彼氏いるし。つかなんで急にそのはなしだよ」
「そりゃーキャンプって言ったら恋バナだろ、なぁ?」
そういって友崎や俺の方を見る。
あーそうか、中村のは事情を聞き出すっていうアドリブかな。
聞き耳立てている竹井も乗り気みたいだ。
「おう、間違いないね」
「友崎、調子のんな」
「ぶふっ」
「何笑ってんだ相原」
親指上げながら言う友崎の動きと即座に突っ込まれるのが面白すぎて吹いちまった。
中村はため息一つついてから話を続ける。
「微妙な状態。彼氏いるくせにLINE送ってきて、『今の彼とうまく言っていない』とか」
「えぇー……そんな匂わせ送られてくるのか」
「なるほどな、そりゃ微妙な状態だ」
おれもそんな連絡受け取ってみてぇわ。
「おれもさっさと次行こうと思ってたんだけど、どうもな」
「たしかに、島野先輩にまだ可能性ありそうなら行けねーわな」
「胸でかいしな」
「それな」
そして全員で笑う。
友崎、顔引きつってんぞ。
そういえば、その島野先輩ってなんかXでいろんな男に連絡取ってるとかって話を見なかったかな……。
いや、たしか見たぞ、ちょっと探してみるか。
「んだよ、友崎。その顔」
「いや、まぁ」
「あ?まごまごして、気持ちワリィな」
おお、容赦ねぇな。
友崎の表情で舐められているとでも思ったのか威圧的だ。
「文也。なんか思ったことあんだろ?」
「ま、まあ……」
「なになに?」
そして、意を決したように言葉を放つ友崎。
「それって、キープってやつなんじゃ?」
そして俺と水沢に、続いて竹井まで吹き出して笑ってしまった。
本人にそれいうか、普通!
「おい友崎、お前マジで調子乗りすぎ」
眉間にシワを寄せてそう言う中村だが、俺たちが笑い続けていることで観念したのかさらに言葉を続ける。
「はいはい、俺はキープされてんの」
そしてさらに笑いが加速した。
「き、キープの話は置いておいてさ。次の候補とかは居んのか?」
「いるはいるけど、そいつからも恋愛の相談受けてる」
「へぇ…」
さっきまで笑っていたのに、結構真面目な表情に戻して相槌を打つ水沢。
「『今身近に好きな人がいるんだけど、その人が全然振り向いてくれない』だとさ」
「お、おう」
水沢が口元を押さえながら相槌を打つ。
……なんか笑いをこらえてるように見えたが?
「ってことはそっちも脈薄いのかぁー」
竹井のその言葉を聞いて、水沢はさらに口元を押さえたままプルプルと震えていた。
そこでようやく理解する。
その相談って泉かよ!
面倒クセェな、泉も相談とじゃなくもっとストレートに言えよ!
……と、そんなふうに思うのが俺のモテない理由なのかねぇ。
「そういえば話戻るんだけどさ、島野先輩ってこの人だよな?」
ちょっと話の区切りがついたところで俺はXの過去ログを漁り見つけ出した、おそらく島野先輩だろうアカウントを表示して全員が見える位置に置く。
それを中村が拾い上げて画面をスライドする。
「は?これマジか?」
中村がアカウントの画像一覧をスライドしてみていく。
中には日焼けとかアクセサリーがとか言いながら胸元のアップを写したもの、さらには顔のアップや全身を写したものまで公開されている。
「こ、これは……」
「思った以上にアレだな」
「さすがに、ないっしょー…」
竹井にまで言われるのは相当だよな。
「なんか、女子の間で最近これの話で持ちきりだったらしい。もともと色々やってたけどついに校外にも手を出したとか」
「はっ、なるほどな。なんか冷めたわ」
そういって俺のスマホを山なりに投げ渡す中村。
意外と投げ方は優しい。
「じゃあもう次の候補に行くしかないっしょー!」
「あー、まあそうだな。つーか相原はそれどこで知った情報だよ」
「お、たしかに。女子の間の噂話をなんで相原が知ってるんだ?」
あぁ、中村の話に区切りがつくとともに流れ弾が。
水沢はニヤニヤしながら聞いてくるあたり、俺でイジる気満々と見た……。
少し考えて、「ん」と言いながら友崎を指さす。
「はぁ?お、おれ!?」
とびっくりの声を上げる友崎。
「の、妹ちゃんがXでリツイートしてたぞ」
「友崎の妹ぉ?」
「あーなるほど?そういえば同じ学校らしいよな」
「え、友崎の妹って同じ学校だったの?という妹いたんだ?」
とまぁ三者三様に驚きの声を上げる。
水沢はちょっと演技クセェなぁと思ったけどそれは友崎の家で顔を合わせているっていうのを俺が知っているからだろうか。
「それで、なんで友崎の妹と仲がいいんだ?」
「いやまぁ、結構友崎の家には遊び行くから顔見知りっての?」
「いやいや、それだけで仲良くはならないだろ」
「そーだな、それで通じるとでも?さっきは俺に話をさせたんだから、次はお前の番だろ?」
「俺も気になるぅー!」
ひえぇ、こいつら全員手を組みやがった。
もう止まらねぇぞ。
「いや、本当にそれくらいだって。あとは、みみみの選挙の時に知った顔だからって、個別に投票してねってお願いしたり、ちょっと頼み事があって……交換条件に連絡先聞かれたりしたくらい……」
「いや何がだけ、だよ。完全に脈アリじゃねぇか!」
んなバカな!
いや、本当は俺もそんな気はして……。
「いや、あれだろ。年上の先輩ってポジションに憧れ的ななんかを抱いてるだけだろ、たぶん」
妹ちゃんが水沢を見る目もそんなだったぞ、と言おうとしたがこの間友崎の家で作戦会議をしたことは藪蛇になりかねないので口を紡ぐ。
「じゃあ仮に、あっちに脈があったとしてお前はどーすんの?」
ぬ、ぬぅ。
仮定の話はズルいだろ。
「いやぁ、どうだろ……。あーでも友崎をお義兄さんと呼ぶのはちょっとなぁ」
そう言うと友崎を除いた3人声を出して笑っていた。
友崎は複雑そうな顔をしている。
「ふーん。じゃあやっぱり本命がいるってことだな?最近仲いいもんなぁ、それも2人も」
「えー!だれだれ!?」
「オラッ、ここまで来たらゲロっちまえよ。どっちが本命なんだ?」
誰かコイツラ止めろよ!
最近仲がいい相手、それに2人。
もう誰のことを言いたいのかは明白だ。
俺はこういうのが顔に出やすい体質なもんで、顔から熱が出ていることがわかる。
「ぐぅ……。けどな、まず大前提として一つ間違ってることがあるからな!」
「お、なんだ?」
聞き返してくる中村。
これはもう別に隠すことではないので問題なしのこと。
「そもそも俺は夏休みに入る少し前にみみみに告白して振られてるからな?」
「はぁ?」「え、マジ!」「えぇ!相原がみみみに!?」
驚く三人。
そして俺は友崎を再度指差しながら言う。
「マジマジ、そいつ証人」
「え、あぁまぁ。そうだな」
「はぁ!?おい友崎、そんなおもしれぇこともっと早く言えよ!」
「い、いや流石にそんなことペラペラと人には言えないし…」
「ははは、そりゃそうだわな!しかし、なるほどねぇ」
なんか考え始める水沢。
「つーことはあれか?夏休み前のタイミングって言ったらあの時しかねぇよなぁ」
「だよな」
流石、そういうところは察しがいいよな。
それにまぁ、中村には部活サボる事の言伝をお願いしたし。
「むしろあれから付き合いはじめたのかと思ってたのに。距離が縮まったように見えたしさ。そんで、隠してるつもりなのかな、とか思ってた」
「それな。そもそも振られたのに前よりも仲良くなるってどういう状況だよ」
「いろいろあるんだよ」
ほんとにいろいろあって、しかもそれが思いのほか根が深くって、何がなんなんだかな。
「じゃあ、なんて言ってフラれたんだ?」
「おー、知りたい知りたい!」
「いうかよ、そんな事!」
「友崎、聞いてたんだろ!教えろ!」
「えぇ!?いや、それはさすがに……」
「反則だろそれ!!」
その後も色々根掘り葉掘りと聞かれ、まぁここまでなら言ってもいいか……というところまで情報を吐かされた。
しかもコイツラ聞くたびにゲラゲラ笑いやがって。
「で、まとめると……選挙や部活で葵に負けてメンタルが弱ってるみみみに告白するも、気持ちは嬉しいが今は友達としか見れないから無理と断られた、と」
あぁそうだよ。
ちょっとぼかしたけど。
「で、しかも弱ったみみみのメンタルをケアしたのもお前ではなくたま、と」
あぁそうだよ!
「ははは、だ、ダセェ!」
笑っているコイツラの前で俺も開き直って言い放つ。
「それだけじゃないぞ。振られたあとにこう言ってやったわ。『いつまでも俺がお前の事を好きだとは思うなよ』キリッってな」
そして全員爆笑する。
「ご、ごほっごほっ!」
「ははははは!い、いつまでもお前のことを好きだと……っ!……はははっ!」
「お、俺たちを、笑い殺す気か!」
「あははははっ!相原カッケー!」
そんな笑わなくてもよくない!?
「あーもー、お前らはモテていいよなぁ!水沢とかは選びたい放題なんだろ!」
「ははは、そうでもないって。で、相原はどうするわけ?」
どう、とはいったい?
俺の表情を読んだのか、水沢が続ける。
「結局本命はみみみか?それともお前も次に行くのか?」
「あぁ、そう言う。いや正直わかんない。というか、フラれたのにみみみの距離感近くてそれが一番悩んでるっていうか……」
「おい相原、お前こそキープされてんじゃねぇか」
「あぁ!たしかに、これってキープってやつじゃん!?」
これが駆け引き……?
意外と悪女だったかみみみ!
いやもう、なんもわからん。
「けどバーベキューとか見てたら脈ナシには見えなかったけどなあ」
「あー、完全にいちゃついてたな」
「いちゃついてって……。まぁそんなで、間違いなく振られてるんだけど、あー、そのままキープされてるわけだな」
またキープって単語を聞いて笑う全員。
それにしても誰が本命なんて言われてもやっぱわかんねぇっていうか、そもそも振られた理由がみみみの罪悪感云々でそれさえ解消すれば……。
いや、そもそも解消ってなんなんだろうな、その時がこないことすらあり得るのか。
「ははは、悩んでるみたいだからアドバイスをやろう」
「お、おぉー!流石水沢!いや、タカヒロ様!」
「調子のいいやつだな。まぁいいや。じゃあおまえ、モテる条件ってなんだと思う?」
モテる条件?
それがわかってないからだめってことか。
「顔か?それと身だしなみ?人間、第一印象が9割って聞くしな。マッチョ社長も身だしなみが最も費用対効果の高い自己投資と言ってたし」
「誰だよマッチョ社長…」
「いいね、それも正解。けど一番じゃないな」
違うのか。
でも他は、思いつかないな。
わからんからシンプルに聞く。
「じゃあ何が一番なんだ?」
「それはな。モテるやつがモテる、ってことだ」
なるほどねえ……。
わからん!
「……つまり?」
「モテてる奴はそれだけで市場価値が高く見えるってことだ。そうなれば、誰かに取られちゃうんじゃないかって焦りにつながるだろ?それに、モテてる奴は選択肢がたくさんあるってことに自信や余裕もできるってわけ」
なるほどね、完全に理解したわ。
あ、本当に理解したよ。
これが俗に言うモテスパイラルってやつか。
「よくわかったよ。けどそれはそれでモテなきゃ始まらないんだろ?いまモテてないならどうしようもなくないか?」
「そりゃそうだ。けどモテてるように見せる事はできる。それに、友崎の妹に連絡先を聞かれてたり、今日もたまと楽しそうに料理してたり、そういうところをチラッと見せていけば……」
「おおぉぉぉー!タカヒロ様流石っす!」
「その呼び方と口調やめろ、気持ちワリィ」
「ッス!ッス!」
そんな感じで会話も一段落。
途中から中村や竹井がスマホをいじりだしたところで各々好きに休憩をしだした。
俺もお手洗いにと外に出て、散歩がてらキャンプ場を軽くうろついていた。
と言っても少し回り道をする程度だけど。
そろそろ戻るかってところでLINE来てスマホを開く。
| 修二は島野先輩から 「今の彼氏と上手くいってない」 って相談されて次にいけないんだと |
| 修二、キープされてるんだ(笑) |
| 今こっちでも文也が直接 「キープ」っていってマジ爆笑だった |
| 言ったらめっちゃ睨まれた…… |
| wwwwwww |
| アレは腹よじれるかと思った |
| 今日の裏MVPは文也だな |
軽い情報交換か。
俺はスマホの画面を開きながら、近くのベンチに腰を下ろす。
どうやら女子のほうでも同じように恋バナをして泉からいろいろ聞き出したようだ。
まとめると……。
中村は気になってる相手から身近な人が振り向いてくれないと相談を受けた。
泉は中村に「気になってる人がいる」って相談をしたとか。
カップル成立してんじゃねぇかよ。
そこまで確認してからそろそろ戻るかと思ったが、水沢の発言から俺の名前が出てきて俺の動きは止まる。
| あと島野先輩の件は何とかなったかも 相原が島野先輩のXの裏垢を 修二に見せたら冷めたみたい |
| 相原、ないすっ! |
| あー、女子の間で話題になってたよね 島野先輩のあのアカウント 男子にも広まってたんだ |
| 相原だけが知ってたっぽいな 女子から聞いてたらしいぞ(笑) |
| はらみーにそんな知り合いがあたんだ、 びっくら! |
| 選挙の時に知り合った後輩から Xのアカウントをフォローされて そのリツイートから拾った |
| 手当たり次第に声かけてたもんね(笑) |
| バレー部にも手を出してたもんね(笑) |
| はらみーがそんな軽薄な男だったなんて!? |
| (笑) |
| おまえらなぁ |
(笑)じゃないわ、なにわろてんねん!
特に友崎ぃ!
しかし水沢もなぜこんな余計な発言を。
って、これもしかしてさっきのモテてるやつがモテるって話のやつか?
女子に声かけられているような演出ってこと?
お節介しやがって。
……まぁありがとよ。
ちょっとだけモテる振りってやつが分かった、気がするわ。
つかよく見ると、みみみが誤字してるな。
わざとなのか、そう言う演技なのか。
うん、俺はこういう駆け引き向いてねぇなぁと実感。
俺ってどっちかって言うとアレだからな。
右ストレートでぶっとばす、真っすぐいってぶっとばす、的なタイプだから。
俺はLINEの内容をここまで読んで、ようやくログハウスへと戻った。
割と時間がかかったせいで中村と竹井に「どれだけでかいウンコしてたんだ」なんて笑われた。
おのれ、この屈辱忘れないからな。