弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「相原も戻ってきたし、行くか。タカヒロ。それに、友崎も」
俺がログハウスに戻るなり、竹井と話していた中村がそう声を上げる。
「行くって、どこに?」
「そりゃあ決まってるっしょ!」
友崎の疑問に竹井が反応する。
まぁコイツラの考えることは決まってるわな、俺が横から答える。
「女子の部屋だろ?よっしゃ行くかー」
「えぇッ!?」
驚く友崎を尻目に全員立ち上がり移動を開始した。
***
そうして女子達の入っているログハウスへと移動し、中村がノックする。
「はーい」なんて声が返ってくるとともにドアが開き日南がでてくる。
「暇だろ、なんかしよーぜ」
「なかむー、絶対来ると思った!」
「えへへ、来ちゃった♡」
「相原、キモいからちょっと黙ってろ」
俺なりに愛嬌を出そうと努力をしたが失敗したらしい、水沢に鋭いツッコミをもらう。
とりあえずは中には入れそうなので、ズカズカと入っていく中村に続いてログハウスへと侵入。
中ではみみみにたまに泉、それから今扉を開けた日南もお菓子を囲んで床にどかっと座っていたようだ。
ログハウスに入ると、なんというか既に女子の匂いがする。
男子側と同じでまっさらな状態のログハウスだったはずなのにそう思うのは何の違いだろうな。
ただの雰囲気なのか、女子たちが各々持っている香水関連の匂いなのか。
「何かって何するー?」
そう切り出す泉もどことなく楽しそうだ。
「なんかゲームでもやろうぜ。トランプとかUNOとか」
「お、どっちもあるよ。この人数だと、UNO?」
たしかに、9人もいるとなかなかできることも限られるな。
トランプは54枚しかないしな。
ふっ、しかしそこは抜かりない俺だぜ。
「じゃーん!こっちもさっき散歩がてら、トランプをレンタルしておいたのだぁ!2セットあればだいたいできるだろ」
「お、いいじゃん。大富豪やろうぜ」
ということで108枚で始まる大富豪。
特別ルールとして、以下を取り決めておく。
・革命はなし。(同じカードが8枚もあるため)
・都落ちも無し。(中村があるとつまらんと言ったため)
・特殊ルールは8切り11バック♠3返しの3つ。
これで大富豪が開始される。
ふふふ、この特殊ルールはそうそう経験したやつはいないだろう。
だが、田舎で親戚の集まりがたまにある俺はちょくちょくやることもあって慣れているし、何より数字は俺の得意分野、負ける気がしないぜ。
……
…………
………………
「は、白熱してる……」
泉が少し震えるような口調でそういう。
ここまで7試合。
大富豪は日南が3回友崎も3回、そして俺が1回。
2戦目くらいに1回勝っただけだ。
ぐぬぬ、この俺が負けているだとっ!
一応、言い訳をするなら位置があまりよろしくない。
時計回りの順番に回してはいるが、俺の右隣が友崎でその右が日南だ。
この2人、後半に甘い手は撃ってこないし俺が上がる前に上がられてしまう。
そして8回戦目が始まるところで、そろそろラストにしようということになった。
つまり、例え最後に俺が勝ったとしても回数ではこの2人には勝てない。
それどころかコイツラはもう俺の存在は気にしてなく最後の試合をどっちが取るかしか頭にないようだ。
……ふーん、そっかそっか。
俺が一番燃えるシチュだわ。
なぁに仲良く2人タイマンしてる気になってるんですかね、俺が勝ってめちゃくちゃにしてやんよ!
配られた12枚のカードから作戦を考える。
手元にはジョーカーが2枚、かなり上振れだ。
あとは、友崎も日南もコイツラ同士でお互いの手札を意識しているが俺への意識は低い。
今なら、″刺せる″。
……
試合も進みカードの枚数もそこそこになってきたとき、日南のカードは6枚、友崎は残り2枚だ。
俺は手元にまだ9枚もあるが、勝ち筋は見え始めている。
そして日南のターン、ジョーカーを含めた5の2枚を出す。
これは、おそらく友崎の手の内を読んだ手だ。
たぶん、こいつの手元には単発の強いカードか8が入っている。
弱いカードとジョーカーの組み合わせに、友崎以外からは「は?」という空気が流れるが、友崎には効いたようだ。
「ぐ、パス……」
手持ちが2枚の友崎は単発カードしか持っていないことが証明された瞬間だな。
俺のターンになるので、7を2枚場に出す。
日南は悔しそうにしている友崎を尻目に勝ち誇ったように言いながら、再度回ってきた自分のターンに2を2枚出す。
「甘いわね、読まれないとでも思った?」
「く、くそ」
まぁ残り2枚の手札とかバレバレだわな。
そんでたぶんこれが通れば、日南の勝ちなんだろう。
「ちょっとそこのお二人さーん、なに一騎打ちしてるんですかね。大富豪ってそういうゲームじゃないんですけどー」
そんなおどけた口調で言う水沢。
「ふっふっふ、負けるほうが悪い!」
「そう言われたら何も言い返せん!」
そんなやりとりで笑いが起き、そのまま日南は場のカードを流そうとするが、俺が待ったをかける。
「おっとまった。出すぜ。ほらよ」
「ぇ゙」
とても乙女の声とは思えない日南の声に更に笑いが起きる。
俺は場にジョーカー2枚を出す。
これで残りは5枚。
「そして、8,9,10の階段で8切り。4を2枚出して。よっしゃ、あーがりっと!」
「ええぇーっ!」
「マジか…」
かわいい悲鳴をあげる日南に、項垂れる友崎。
いや、俺は上がったけど君等はまだ試合は続いてるからね。
「いやぁー、最後の試合に勝つって気持ちいーなぁ!」
「……私の方が勝った回数は多いし!」
「例え何度負けたって最後に勝つ。あこがれのヒーローもそうだった」
「ヒーローにあこがれてんのかよ、ダサっ」
「ははっ、でもやっぱ本気でやってるやつはすげーな」
ヒーローに憧れてなにが悪い!
俺はいつかスパイダーマンになってニューヨークを守るぞ。
スパイダーマンも誰だってマスクはかぶれるって言ってたし!
マスク被ってうろついてたら補導されそうだけど。
こうして最後の大富豪は俺が1位で幕を閉じた。
とは言え、日南の言った通り勝った回数で負けてるのは悔しいっちゃ悔しい。
次があれば絶対に俺が勝ち越してやる。
そしてゲーム後に水沢の「そろそろ片付けて風呂の準備でもするか」という声のもと、全員でゴミやカードを片付けはじめた。
2つ混ぜ合わせたトランプからそれぞれをまとめて、1セットをみみみの元へ返す。
残りのもう1セットは俺のもとに。
「はらみー、そのトランプ何してんの?」
俺が受け取ったトランプを1枚ずつめくり床においては並べているのを見て、みみみが尋ねた。
「ん、借りたときカードの順番や向きは揃ってたから、同じよう揃えて返そうかなって」
「それやる必要あるか?」
と中村のツッコミ。
あるに決まってんだろ、借り物だぞ。
「自分のなら気にしないけど、レンタルしたものだし。同じようにキレイにして返さないとなんか嫌じゃん」
「お前いっつも適当なクセに、たまーに変な生真面目さを見せるよな」
「うるさいぞ中村。いつも真面目だし!あと、母さんには他所様への配慮は忘れるなって言われて育ったから」
「やっぱりお母さん苦労したんだね」
「たぁまぁ?だからそれ誰視点なんだよ!」
みんなで陽気にはははと笑いながらも手を動かし、とりあえず片付けは完了した。
あとは誰かの一言で解散になるかと思ったが、片付けながら始まった会話をダラダラと続けていた。
とは言え男女が入り混じっても、相変わらず恋バナトークのようだ。
水沢が他校の女子と付き合えそうだっていう話を根掘り葉掘りと聞かれている。
なんでも、他校の先輩と付き合おうと思えば付き合えるくらいには仲いいんだとか。
そりゃいいねぇ、うらやましい。
どうすればそんなにモテるようになるのやら。
そんな話しの途中で水沢が立ち上がる。
そこにすかさずみみみが口撃。
「あ、逃げるのか!」
「ちげーよ、ちょっとトイレ」
「お、おれも!」
そう言って水沢と友崎が外へとでていった。
「あの2人、最近仲いいよね~」
「怪しい関係?」
野郎2人で怪しい関係ってなんだよ。
「男子陣はタカヒロ以外は誰かと付き合ってる人いないのー?」
熱も冷めずといった調子でそんな事を口走る泉。
しかし、残っているのは俺と中村と竹井なわけで。
「チッ、うるせぇな」
「ま、中村は別れたばかりだもんな」
「あ?そう言う相原は誰かと付き合ったことすらないだろ」
「ぁーぁー、キコエナーイ。あ、竹井は?まぁいないか」
「なんだよその言い方ー!いないけどさー!」
というわけで全滅です。
残りの友崎に賭けるという手もあるが、失礼ながらベットするには少々頼りない気もする。
「じゃあ気になってる人とかは!?」
と泉はさらに追い打ちをかける。
グイグイいくなぁ、これはなんとか中村に応えさせたいところ。
泉の視線も中村の方を向いているし、とりあえず俺はだんまりしておけば中村が答えるだろ。
「ま、そろそろ次を探さないととは思っているな」
「つ、次ッ!?」
それを聞いた泉はビクッと反応している。
みみみとたまと日南は若干肩を震わせてピクピクしてる。
お前ら、バレるだろ。
そう思いながらも俺もちょっとニヤついたところを中村に捕捉され話を振られた。
「相原はどうなんだよ。おまえ、この間告白してフラれたんだってな?」
「えぇ、それいま言う?」
「え!?誰に誰に!?」
めちゃくちゃ食いついてくる泉。
ビクッと反応するみみみ。
ついには顔まで伏せ、プルプル震えるのが加速するたま。
つか、誰にって、泉以外は全員知ってるじゃん。
すごい拡散速度だ。
まぁ俺が聞かれたから答えてるってのが大きいけど。
「誰とかはいいだろ、別に。まぁ、フラれたんでどうしようかなって感じ。俺も次を探さなきゃかなぁ」
「えー!じゃあ諦めちゃうの!?」
「あー、諦めないなんて言う選択肢もあるのか?」
「あるある!だから、誰かなのか教えて!」
何が″だから″、だよ。
つか本人が目の前にいるからさすがに言えんわ。
ふとみみみの方を見ると、目が合った瞬間なんかすごい勢いで顔をそらされた。
うーん、今は無関係を装えってことか?
とりあえずこの場では言わねぇから安心しろよ。
「もーいいだろそれは。俺の話はおしまい!ほら、竹井、はいいか。女子陣こそどうなんだよ」
「ええっ、おれは!?さっきからひどくない!?」
ぞんざいな扱いにそう言う竹井。
残念、誰も興味ねぇよ。
たぶんな。
「私たち?うーん、ヒ・ミ・ツ♡」
俺の質問に、人差し指を口元まで持って来ながらそんな風に答える日南。
ずるい回答だなぁ、おい。
しかもなんかその仕草も様になっているせいか、『可愛いからいいか』みたいに思えてしまうところが悔しい。
「私も秘密!男子にバラすほど安くないよぉー?」
「えっと、じゃあ私も」
とみみみとたまもそれに乗っかるように答えた。
「安くないって、それじゃあ答えた俺たちは大特価大安売り中なんですかねぇ。今なら買い時ですけどいかがです?」
「おい、俺まで巻き込むな」
「んー、値崩れした粗悪品は遠慮しとこうかな」
「誰が粗悪品だ!相原株はきっと高騰するからな、売り切れてから後悔しても遅いぞ」
とまぁそんな会話が水沢と友崎が戻ってくるまで続いた。