弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「それじゃあ上がったらこの辺集合で!」
銭湯の待合室前、日南が全員を見回しながら元気よく呼びかけた言葉に、俺は適当な声で「あいあい」と返した。
ここはキャンプ場からちょっと歩いた銭湯だが、ちゃんとした湯船につかりたいという女子たちの要望によりここまで来ている。
それじゃあ風呂に入るかー、と思ったところで中村が女子たちに向かって一言放った。
「長湯しすぎてまたせんなよ〜」
中村らしい軽いノリで、女子が風呂にこだわるのをからかうような一言だった。
そして反応したみみみも「覗くなよ〜」と一言。
じゃ、俺も一つボケておくか。
「ののの覗かねーしッ!」
「すっごい動揺してるんだけど……」
「はは、マジでバカな真似しそうなら俺が止めとくから」
たまがドン引きして、水沢が突っ込む。
おい、俺をダシにポイント稼ぎなんてずるいぞ。
とまぁ軽口を叩きながらも暖簾をくぐって脱衣所へ。
脱衣所で空いてる籠を確保して、ちゃちゃっと服を脱ぎ捨てる。
男の着替えは早いからな、タオルを持って向かうかと思ったら、
「友崎、これおっさんじゃーん!」
「ほ、ほっとけ」
竹井が友崎のたるんだ腹をつまみながらそんな事をいう。
中村と竹井はサッカー部なのでそれなりに体が引き締まっていて、水沢は帰宅部なのに何故か運動部並みのガタイをしている。
一方で友崎は水沢と同じで帰宅部だが、運動とは縁遠い生活の結果があの腹なんだろうな。
中村まで友崎の腹をつまみ一言。
「これはおっさんというよりムーミン……いや、フーミン谷のフーミンだわ」
「あはははは!フーミンこっち向いて!」
「う、うるせぇ」
「ドンマイ文也」
ひとしきり笑いものにした後、中村たちは満足そうに浴場へ消えていった。
俺も向かうか。
けどその前に友崎に声かけとこ。
「友崎、筋トレが必要なら相談に乗るぞ。自宅でできる効率的な自重トレーニング、ながら時間の20分で効果あり!」
「胡散臭っ!?ひ、必要だと思ったら聞くよ」
「おお、意外と前向きな一言。ちゃんと毎日20分を続けられればマジで効くんだけどな。まぁ、お先ー」
結局継続が1番の力だからな。
そして俺は浴場へ向かいゆっくりと過ごす。
ササッと身体を洗ったら、人の少なそうな浴槽に肩まで浸かる。
水風呂やサウナで騒いでいる竹井や中村を見つつのんびりしていると水沢と友崎がやってきた。
「なんだ相原、覗くみたいなこと言っておきながらえらくおとなしいじゃねーか」
「いや覗かねーって言ってただろ」
「ははは、そうだった。じゃ、それはそれとして作戦会議と行くか」
「おー、真面目だな」
主語こそないが、何の話かはすぐに分かった。
つか、作戦会議っていってもなぁ。
「もう中村と泉は両思いじゃん」
「まぁそうだな」
逆になんでお前らその状況で付き合ってねぇんだよ、と内心ツッコむ。
しかしそこには何か理由があるんだろう、知らんけど。
で、それを解消しないといけないってことなんだろうな。
「俺達がやれることは、両思いだってことを気付かせるか、又はそのためのお膳立てって事だよな?」
「文也の言う通りだな。それでなんかいい案ある?」
「いい案っていうか、そのお膳立てに肝試しをやるんだろ?これ以上やる必要ってあるのか?」
だって中村も″次″に行くって言ってるし、その″次″が泉なわけで。
だったら2人きりにでもしてやりゃあ、あとは勝手に進むだろ。
というよりも、たとえそれで進まなかったとしても俺たちができることなんてこのあたりが限界だ。
「それとも、もしかしてなんか懸念とかあるわけ?」
「実はあるっちゃある」
あんのかよ!
俺にはさっぱり思いつかないので隣の友崎を見るが、友崎も同じように首を傾げていた。
そして友崎がストレートに質問する。
「懸念ってなんだ?」
「んー、相原が修二に島野先輩のアカウントを見せてたろ?」
「あぁ、それで次に行くって話になったんじゃないのか?」
「いやー、アイツの面倒くさいところでさ。単純にそうはならない可能性があるのよ」
「えっと。よくわからないんだけど、どういうこと?」
友崎が水沢に聞き返す。
俺も全然わからん。
次行こうって言ってるじゃねぇか。
「つまりだ。このあとすぐ優鈴に行ったら、『島野先輩に冷めたから優鈴に行った』俺らに思われるだろ?」
「ぇ、つまりそれでイジられるかもしれないから行けないって事か?」
「そういう可能性もあるって話。けど修二も竹井の『次行くっきゃ無いっしょー』って言葉に頷いてたし、二人きりにして進展するのかは半々ってところかね」
「ぷ、プライドが高すぎる……」
「たしかに、中村はそういうところあるわ」
水沢の言葉に納得する。
どんだけいじられたくないんだよ。
けど、一応懸念は分かった。
何とかできるのかは別問題だけど。
「もしかして島野先輩のアカウントを見せたの失敗だったか?」
「あれは見せなきゃ始まらなかったから仕方ないだろ。むしろファインプレーだと思うぞ」
「たしかに。あたらしい問題が見つかるのは1個進んだ証拠だよな」
「お、文也いいこと言うじゃん」
そこまで話をしていたところで中村と竹井がこっちへとやってきた。
「3人でたむろって何話してんだ?」
「内緒の話?気になる気になるー」
「あー、相原の恋愛相談。次どうするんだって話な」
中村と竹井が来たことで急に話題の中心に放り込まれる俺。
誤魔化すのはわかるが、なんで俺の話なんだよ。
「お、それでどうするんだ?」
中村は興味津々かよ。
いいけどさ。
「いや、フラれたって言ったけど実質回答待ちみたいなもんだから向こうのアクション待つのもアリかなって」
「アリなわけねーだろ」
「えぇ……」
俺の答えに呆れたように切り捨てる水沢。
じゃあどうしろと。
そうして水沢、中村、竹井の3人からあれやこれやと俺の今後についてダメ出しだのなんだので盛り上がっていた。
結論として本人の俺が何とも煮え切らない態度を直すためにいろんな女子と遊んでみるのが一番というよくわからない答えが出てしまう。
そもそも女子と遊ぶまでがハードルたけぇだろ。
「あ、友崎。今さらだけど湯船にタオルをつけるのはマナー違反だぞ。湯船の外に置いとけ」
「え、あぁそっか」
そう言って友崎は立ち上がりタオルを置きにいくところで竹井が待ったをかけた。
「まった友崎!」
「え?」
友崎は立ったまま動きを止める。
そして竹井は視線を下の方に向けながらでかい声を出す。
「友崎のちんこでけ〜ッ!」
「お、マジで?」
「どれどれ?」
「ほう?」
俺含め全員立ち上がり、友崎の近くへと移動する。
それに混乱して慌てた友崎は湯船に浸かろうとしたところを竹井に後ろから持ち上げられた。
悲しいかな、パワーに違いがありすぎる。
「でかっ!」
「と、友崎、おまえ……」
「なんてこった」
水沢と中村が驚きの声を上げる。
俺も驚愕のあまり淡白なリアクションしか取れなかった。
「これ前腕くらいあっしょ!」
「ははは、前腕って!」
「フーミン改め前腕くん、いや、ワンちゃんだな」
「や、やめてくれぇ!」
竹井はそこで手を離し、解放された友崎は湯船に下半身を沈めた。
そして周りを囲んだ全員を見てから何を思ったのか一言。
「……あ、中村のちんこちっちゃ!」
それには俺と水沢と竹井が腹を抱えて笑い、中村も顔をしかめていた。
***
「ワンちゃん牛乳飲んでんの?子犬かな?」
「大きくなれよー。って、もう大きいか!」
「うるせぇよ」
風呂上がり、俺たち男子組は待合室で飲み物を飲みながらワイワイと会話をしていた。
風呂の一件から意外と中村と友崎の距離感も良い方向に縮まったようで、友崎が中村から絡まれている。
そこに女子たちも上がって来たようで、待合室に入ってくる。
「お待たせー。おー、風呂上がりはやっぱり牛乳飲むよね」
「俺はポカリだけどね」
「あはは、そこはなんというかイメージ通り!」
こちらを見つけたみみみが先頭にこちらへやってきて、友崎が牛乳を飲んでいるのを見付ける。
俺としては汗をかいたあとならやはりポカリが一番だと思うんだ。
みみみは短パンにタンクトップとラフな格好で風呂上がりのためタオルを首にかけている。
肌色が多くて素晴らしいね。
チラチラ見ると怒られそうだからガッツリ正面から見て目に収めておこう。
「私も牛乳飲もうかなぁ」
「あ、牛乳飲むと大きくなるっていうもんね」
「葵!別に身長を気にしたわけじゃない!」
「あはは……」
みみみの後ろからたまと日南とじゃれつきながら歩いてきて、その隣で笑いながら泉もついてくる。
これで全員集合か。
女子たちも飲み物を購入して全員で一服したところで、竹井が隣にあるゲームスペースで卓球をしようという話になりそちらに行くことになった。
……
………
「よし、来い」
「なんで俺が卓球を……」
中村と泉ペア対俺とたまのペアでダブルスの試合がスタートしようとしていた。
なんでも、料理ではちゃんと決着つけていなかったから卓球で決着をつけるぞ、とのこと。
ちなみに張り切っていた竹井は隣の台で日南とシングルスをやっている。
竹井に勝ち目あんのかそれ?
「ぬ、ふっ!」
「アウトだ下手くそ」
そして実は俺、卓球がど下手くそだ。
というより正確に言うと、卓球をまともにやったこと無いから、最低限のルールを知っているだけで打ち方とか知らねぇ。
ぶっちゃけサッカー以外だいたいこんなだからね、俺!
「とりあえず入れればいいから」
「面目ない……」
「あはは、これは勝てそうだね!」
「相手に1人下手くそがいるからな」
フルボッコの俺。
全員運動部だから動きがいいのは分からなくはないが、君等サッカー部とバレー部とバド部でしょ?
なんで卓球もできるの?
でもまぁ卓球はパートナーと交互に打つわけだから4回に1回しか撃たなくてもいいってことだし、落ち着いて当てて相手コートに入れればいいだけだからなんとかなる、ハズ。
「
「いやいや、コツがつかめてきたところだ。ここから盛り返すぞ」
「ほんと?しっかりしてよ?」
大丈夫大丈夫、急には上手くならないから出来ることで戦うしか無いんだ。
今までの点で俺の原因はアウトが3つ、返球がコートに入るようになってからはそれらを泉に余裕たっぷりに打ち返されたのが2つ。
幸い球を打ち返すのは出来るようになってきたんだ。
たとえ緩いショットでも相手の嫌がるところに打てば効果はあるだろう。
ダブルスは交互に打つのだから拾う方とは別のやつに向けて打てば……。
俺は中村の打球をなんとか拾い、緩い打球ではあるが中村の正面へと返す。
「あ……」
それを返そうとした泉が中村に近づくのをためらい返球がふわっとしたものとなった。
おお、完璧。想定通り。
それをたまちゃんが情け無用のスマッシュを叩き込み、さすがの中村もそれは取れなかった。
「っしゃ!
「相原も、本当に良くなってきてる!かも?」
「かも、じゃない。よくなっているの!もっと褒めて!」
「はいはい」
とまぁ少しずつ自分の返球の精度も上がっていくにつれ何とか追い上げを見せるも、9-11でゲームを落とした。
人数もいるため1ゲーム勝負としていたのでおれたちの負けだ。
「お疲れー、いい勝負だったね!」
「くっそ、追いつけんかった。コツは分かってきたのに」
「はは、どっちが上かはっきりしたな、相原」
「ぐぬぬ……」
なんとも言い返せないまま観客をして水沢友崎みみみの3人の所に戻る。
それに続いて試合をしていたメンバー全員が同様にベンチまで戻った。
「俺にはラケットで返すセンスはなかったわ。サッカー以外向いとらん。ほら次誰か」
「はらみーどんまい。たまも、おつかれー!惜しかったね!」
「相原に足引っ張られなければ勝てたかも?」
「た、たまちゃん?」
「なんてね、冗談!」
そして聞いてた他のメンバー含めてはははと笑う。
足引っ張ってたのはマジだからあんま強く突っ込めねぇわ。
選手交代、ということで俺が持っていたラケットはみみみに渡す。
その間に隣のテーブルでやっていた竹井と日南が(主に竹井の強い主張により)ペアを組み、「誰か試合しようぜー」と呼んでいた。
「お、じゃあ俺やろうかな。修二、ラケット貸して」
「あぁ、ほら」
そう言って中村からラケットを受け取る水沢。
「もう1人誰かー」
「俺はパスで」
「私も。たまとシングルスやるから」
「んーじゃあ優鈴、もう一試合よろしく」
「えぇ!いいけど!」
打ち合わせたように友崎とみみみはそれを断ると、水沢は泉を指名してテーブルへと向かった。
それをふーん、といった感じで見ていたところで俺のスマホが震えたので中身を確認する。
LINE通知にて水沢から。
文章を先に書いてて、いま歩きながら送ったのか?
中身は、
『修二にどっちが早く彼女を作れるか勝負を持ちかけろ。これはアイツらをくっつけるのに必要なことだから絶対な?』
……は?