弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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とりあえず水沢のLINEの内容を読み返し考える。

 

『修二にどっちが早く彼女を作れるか勝負を持ちかけろ。これはアイツらをくっつけるのに必要なことだから絶対な?』

 

……うん、なんとなく察した。

 

くっつけるのに必要なこと、というのは風呂で話をしていた懸念に付いてのことだな。

 

イジられるのが嫌で泉に行かない、という中村に対してどうすれば動かすことが出来るのか?

それなら別の″イジられる″可能性を提示して天秤に賭けさせ、よりダメージの少ない方へと誘導させればいい。

 

ここで俺に「どっちが先に彼女作るか勝負なー(笑)」とか言われ、もし負けでもしたらひどい屈辱になる。

そんな最悪の可能性を考慮したら、島野先輩からすぐに泉に変更したことをイジられるくらいたいしたことないと判断するはず。

 

けど、このやり口は水沢やみみみではなく友崎だよなぁ。

そう思って友崎の方をギロリと睨んでいたら、俺の視線に気づいた友崎が露骨に視線を逸らした。

うん、100%コイツだ。

 

とは言え癪だけど中村に対してなら呆れるほど有効な戦術かもしれない。

……しゃーない、乗ってやるか。

どれ、中村のところに行くか。

 

そうして俺は、ベンチに座ってスマホをいじっていた中村の横に腰を下ろした声を掛ける。

 

「ふー、結構楽しいもんだな。卓球って」

「お前は下手くそだったけどな」

「いいんだよ。たぶん俺は、誰よりも楽しんでたから」

 

俺の言葉に少し顔を上げてからそう返してくる中村。

 

「ふーん?ま、結局勝負は俺の勝ちだったけどな?」

「ぐぬぬ……」

 

中村の言葉は正論なので若干悔しいが、一応期待通りの言葉は引き出した。

 

「いいさ、卓球は確かに俺の負けだ、認めよう。そして俺は別の勝負を仕掛けさせてもらう!」

「はぁ?」

 

そして、周りに聞こえないくらいのトーンに抑えて俺は続きを言う。

 

「次はどっちが先に彼女作れるか勝負だ。中村も島野先輩から次に行くとか言ってたろ?けど、俺が先に彼女を作る…!さっきも風呂でいろいろ言われてたが、俺も決めた!」

「急にぶっ飛んだ話になったな。まぁいいや。いいぜ受けてやるよ。つーか、お前がその勝負で俺に勝てるわけねーだろ」

「はぁ〜?勝負はやってみないとわかんないんですけど!俺は諦めちゃいねぇよ!」

 

うん、こんなもんでいいか。

正直後半はもう演技とかでなく思ったまま口にしたが。

 

つか、言葉にするとなんか思い込むっていうか、元からそうしようとしていた気になることあるよな。

言葉の魔力だ。

 

ふと、顔を上げて卓球のテーブルを見る。

 

「おっし!」

「ナイススマッシュ!」

 

水沢がスマッシュを決めて泉とハイタッチしていた。

水沢がこっちを見て、「そっちはどうだ?」とでもいいたそうな顔をしていたので、俺も親指をあげて答える。

それを見て水沢が声を上げた。

 

「よっしゃ、この勝負俺たちの勝ちだな!」

「いやまだ勝負ついてないっしょ?」

 

水沢の言葉に竹井が首をかしげる。

あぁ、水沢の言う通り、俺たちの勝ちだ。

……たぶんな。

 

 

***

 

 

「ま、マジでやるの〜…?」

「もちろんっしょ!むしろこれが本番なんだから!」

 

銭湯から上がったあと、俺たちはそのまま流れるように近くの林道へと入っていった。

予定していた通りの肝試しだ。

 

この林の中、道自体はしっかりとあるのだが街灯も少なく肝試しをするのになかなかいい雰囲気がでているように思える。

それに当てられ、泉は既にビビっているようだった。

 

「お、スタートはこの辺だな」

 

そう言って立て札を確認しながら立ち止まる水沢。

ここからキャンプ場まで一直線ながら、林の中で道は狭く光も乏しい。

 

「ね、ねぇ、マジで怖いんだけど……」

 

そんな聞いてるだけでも震えているのがわかる声を上げながら、その隣にいた中村の服の裾をつかむ泉。

なんだよ、肝試し効果抜群じゃねぇか、まだ始まってすらいないっていうのに。

 

「おーおー、お熱いこって。もう2人でさっさと行ってこーい!」

「まぁ、そんなことされたら、ねぇ?」

 

と、水沢と日南に冷やかされる。

 

「え、え?いや、これはそういうんじゃ……」

「いや、これはもう無駄だ……。ほら、行くぞ」

 

この2人に押された段階でなにを言っても無駄なことを悟ったらしく、中村は裾を掴んでいた泉の手を取って歩き出した。

 

「ちょ、ちょっと待って修二!」

「おせーんですけどー」

 

そんな風にイチャつきながら林道の奥へと進んでいった。

そうして二人が完全に見えなくなったことを確認すると……。

 

「タカヒロ、ナイース!」

「おう!ま、けどこれで」

「作戦終了だね!」

「そうだな、おつかれさん」

 

そう、くっつけ作戦はやれることすべてやった。

これにて作戦完了!

あとはあの2人が勝手に話を進めるだろーし、進まなきゃもう知らねーってことだ。

 

「え?何の話?」

 

そして、1人だけなら理解していない竹井を軽くスルーしながら残りの肝試しのメンバー決めを始める。

少し話した結果グー、チョキ、パーで3組作ることになった。

 

「グーチー、グーチー、グッチッパ!」

「あはははは、なにそれー!」

「私もそれは初めて聞いた」

「えぇっ!?俺のとこでは昔、サッカーでチーム分けるときはこう言ってたんだよ!」

 

ほとんど全員が俺の掛け声を聞いて笑い、手を出したのは俺だけだった。

ちなみにこの掛け声、グーとチョキだけに分けるときは″グッチッパ″が″グッチッチ″になる。

 

「う、ウケる……ふふ……」

「みんみ、笑いすぎ!……ふふ」

「あー、もう!誰か掛け声しろよ!」

 

腹を抱えて笑うみみみに、注意するような声をかけながらも釣られて笑うたま。

音頭だったらこれだよ、俺はもうやらねぇ!

そして竹井が声を上げる。

 

「オッケーイ!グーチー、グーチー、グッチッパ!」

「ブフッ!あはは!」

「や、やめて、あはは!」

 

そしてみみみがもう1度吹き出し、日南まで笑い出し、声は抑えているが友崎もその横で笑いをこらえるように震えていた。

 

竹井、お前俺を煽ってんのか!

しかし本人は何笑ってるんだ?みたいな顔してるから素でやってるんだろう……。

 

そして繰り返すこと2回、ようやく人数がバラける。

俺とたま。

友崎と日南。

水沢と竹井とみみみ。

この3組になった。

……うん、男2人ペアにならなくてよかったぁー。

そしてさっそくということで、俺とたまが出発する。

 

 

***

 

 

「さっきまでバカ騒ぎしてたけど、静かになると結構雰囲気出るもんだな」

「そうだね。たしかに1人だったら結構怖いかったかも?」

「お、マジ?怖かったらいつでも俺に抱きついてきてもいいぞ」

「調子に乗らない!」

 

ビシっとこっちを指差しながらスパッと切り捨てる。

さいですか、俺も言ってみただけだ。

か、悲しくなんて無いんだからね!

 

「……これでイベントは全部終了だな」

「うん。楽しかったね、この合宿。くっつけ作戦も含めて」

 

そう言うたまの横顔を見る。

暗い道で街灯の明かりも乏しく表情をよく見ることはできなかったが、それでもさっきの言葉は嘘を言っているようには聞こえなかった。

本当に楽しめたんだろう。

 

「ちょっと意外だったかも。たまちゃんあんまりこういうイベントには参加しないと思っていたから。それに、正直中村とはいろいろあったじゃん?だから、くっつけ作戦にも乗り気だったこともさ」

 

ちょっと嫌な言い方かなとも思ったが、たまには正面から話をするのが1番かと判断して、思ったことをそのまま口にした。

 

「それ相原が言う?今日のイベントに誘ってきたのは相原でしょ」

「いや、そうなんだけどね」

「じゃあ逆に、なんで私を誘ったの?みんみと2人で誘いには来たけど、たぶん発案は相原でしょ?」

「なんでわかんだよ……」

「みんみなら、私をあの3人から離すようにするから」

「あー。みみみは、大事なものは宝箱にしまうタイプだよな。ガッチリガードして」

 

自分のことになったら無鉄砲なのにね。

それなのにたまのこととなると保守的な所あるからなぁ。

 

「うん。けどね、みんみの私を守ろうとしてくれる所はすごい好きだけど、守られているだけの私が情けなく感じちゃうときもあってね」

「おう」

 

そう言って軽い悲壮感を漂わせるたま。

なんとなくその気持ちはわかるっていうか、庇われるとそっちのほうが惨めに思えてしまう時ってあるよな。

沈黙になったので、空気をごまかすように俺が口を開く。

 

「そうだ、誘った理由だったっけ?合宿に女子がもう一人欲しかったから。それだけ」

「え?」

「たまちゃんもいなかったら男5人で女子3人だろ?人数割合が悪いじゃん!」

 

何いってんだ、というような呆れた顔をするたま。

 

「更にいうなら、たまちゃんなら嫌なら嫌って言うから。じゃあダメだったらダメでとりあえず聞いてみよっかな、ってね!」

 

語尾のトーンをあげて軽い感じに答える。

ついでに親指を立ててサムズアップ。

そしたらなにに腹を立てたのか、俺の脇腹に軽めながら拳を突き立てた。

 

「えい」

「ぐぁ、ちょ、たまちゃん!今どき暴力系ヒロインは流行んないぞ」

「ちょっと何を言っているのかわからないよ?」

 

しかし、こんな軽いじゃれ合いみたいなことをしているたまは、そこそこ楽しそうに見えた。

 

「けど、実はたまちゃんを誘うって言った時にみみみと日南はちょっと渋った顔してたんだぜ?」

「……うん、それは想像つくかも」

 

俺の言葉に少し自嘲気味に答えるたま。

あーいやいや、そういう顔させたかったわけじゃない。

言葉を付け足す。

 

「俺は2人がそんな表情をするのが納得できなかったというか。たまちゃんと中村達でたしかに確執なようなものはあったけど、そんなんきっかけさえあればたまちゃんはすぐ解決できるって思ったから。ちょっとアイツラはたまのこと甘く見すぎなんじゃねーの?って」

「相原が過大評価してるだけじゃない?」

 

自嘲気味のままにそうつぶやくたま。

いーや、それこそ過小評価だね。

俺とみみみが喧嘩した時に、相談に乗ってくれたのだってたまだろ?

 

「んなわけないね!まぁでもさ、そしたら見せつけてやりたくなるじゃん?勝手に無理と決めつけんなよって。あの2人はさ、他人にはリスクがあったらやらせないっていうか、優しすぎるから」

「もしも私が失敗したらどうしたの?」

「実は意外と知られてないんだけどな?失敗って奴はすぐに取り戻すことができるんだよ。折れない限りは」

「……ふふ、みんみがよく言う『はらみーらしい』ってものが少し分かったかも」

「でたよ、そのよくわからん表現!」

 

ははは!と笑い合う。

褒め言葉として受け取っておこう。

 

「ま、発端はどうあれ楽しめたのならよかった。そういえば中村と泉とはペアを組んで何回も勝負したよな。もういつの間にか打ち解けてるように見えたし」

「相原が足を引っ張らなければ卓球では勝てたはずなのにね」

「それまだ言うー?」

 

なんかそれ、この先もずっと言われ続けそう。

 

「うん。相原、ありがとね」

「んー、結局俺は何もしてないからなぁ」

「はぁ、そういう所はみんみにそっくりだよね」

 

そう言われて返す言葉がなかったのでポリポリと頭をかく。

 

「私も、私の嫌な部分を変えたいって思ってたけど、ずっと踏み出せなかった。けど、相原のおかげで一歩進めたと思う」

「一歩進めたのはたまちゃんが踏み出したからだろ。俺はただ合宿を楽しんでただけ」

「それでも、きっかけをくれたのは相原だから。ありがと」

「ん、じゃあどういたしまして。実はお節介だったかなって思ってたから、そう言われて安心した。でもきっかけを作ったのなんてたまたまなんだよね。あ、たまだけに!」

 

そう言ってははは!と笑ったら再び「えい」という掛け声と共にたまの拳が俺の脇腹に刺さった。

 

「いたっ!だ、だから暴力系ヒロインは流行らないよ?」

「馬鹿」

 

そう言ってふいっと俺とは逆側に顔を背けるたま。

たまちゃんも加減してくれてるから全然痛くないんだけどね。

なんならいつもバシンバシン叩いてくるみみみの肩ビンタのほうが痛い。

っつーかあれはマジで痛いから加減してほしい。

 

「でも正直、ひと揉めふた揉めくらいにいろいろあるんじゃないかって思ってたのに、何にもなかったな。実はたまちゃん世渡り上手?」

「そこは、最高のお手本も反面教師もどっちも見てきたから、かも」

「最高のお手本だなんて、照れるなぁ」

「相原は反面教師だね」

「ひっでぇ……」

 

軽口を叩いて笑いながら少し進んだところで、キャンプ場の中央センターの明かりが見えてきた。

先に行った中村と泉も首を長くして待っているかもな。

あいつらの仲はどうなったのか、気になるね。

 

「キャンプ場の建物見えてきたな。いくか」

「うん」

 

そう言って見え始めた中央センターの建物へと向かっていった。

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