弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

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俺達がキャンプ場に到着してから20分もしないうちに全員が肝試しを終えて集合していた。

最後に日南、友崎のペアが到着する。

 

「いやぁー、あんまり怖くなかったね」

「もー!超怖かったんだけど!」

「でも雰囲気は出てたよな」

「だ、だよね!」

 

たまも言ってたが、一人だったらちょっと怖かったかもね。

 

「コイツ、バカみたいに怖がってたわ」

「はぁ!馬鹿は余計だしー!」

「はいはい。じゃ、ログハウスに戻るか」

「ちょっとー、なにそれ!」

 

そう言ってはイチャつきながら先頭を歩いていく中村と泉。

これを見るに、俺達の頑張りも無駄ではなかったってことだろう。

 

「ねぇ、修二と優鈴どうなったの?聞いた?」

 

小声で聞いてきた日南。

それに水沢が答える。

 

「んー、まぁ。告白はしなかったみたいだな」

「えぇー」

 

そう言ってはわざとらしくもガクッと肩を落とす。

 

「けど、今度2人で遊ぶ約束はしたってさ」

「……遊ぶ約束、だけ?」

「そう、それだけ」

 

水沢は肩を竦めながらやれやれ、とでもいうようにそう口にした。

日南はため息を付きながらも、慈愛の籠もった表情で答える。

 

「ほんと、あの2人は……ねぇ」

「ちょっとずつしか進まないよな、あの馬鹿2人は」

「他校の先輩相手にサクサク進めるタカヒロを見習ってほしいなぁ」

 

……別にいいだろ、ゆっくりでも。

そこは他人が口出すことではないさ、たぶん。

 

「ちゃんと進展あったんだろ?じゃあいいじゃんか。人には人のペースがあるさ」

「それもそうだな」

「うん、あの2人にしては大きな一歩かもしれないね」

 

そんな話をしながら、他のメンバーも中村達を追うようにログハウスへと歩き出した。

 

 

俺は友崎と適当な会話をしながら歩いてたところ、前を歩いていた水沢が少し速度を緩めて俺の所まで来て小声で声をかけて来る。

 

「それで、お前らはなんかなかったのか?」

「肝試しの話?」

「そーそー、肝試し中に抱きつかれたとか、そういうの」

「あ、あるわけないだろ!」

「声でけーよ、アホ」

 

でかい声を上げる友崎に突っ込む俺。

最後尾を歩いていた俺たちだったが、動揺した友崎の声に前を歩いていたみみみとたまが振り返る。

それを俺と水沢が手をヒラヒラ振って何もないからとアピールする。

 

「水沢さーん、みましたぁ?絶対なんかありましたよ、このワンちゃん」

「たしかにこれは間違いないよなー。いったい何があったか聞きたいよなぁ?」

「だ、誰がワンちゃんだ。でも、本当に何もなかったから……」

 

まぁなんかあったんだろうなって反応ではあるが、口は割らなそうに思えたので俺と水沢はそれ以上言及することはなかった。

 

「文也はこう言っているし、それはいいか。相原はなんかなかったん?たまと二人きりだったんだろ?」

「別に何もねぇなぁ。まぁ、合宿に誘ったことの礼を言われた、くらい。楽しかったって」

「おぉー、それはそれでもっと詳しく聞きたいねぇ!」

 

それを聞きながら水沢はニヤニヤしていた。

なんだよ、その表情は。

 

「俺の話は別にいいだろ。お前らが俺の次に到着した時のみみみの第一声忘れたか?」

「ははは、あれは笑ったな!『たま大丈夫!?はらみーに襲われなかった!?』だもんな!」

「えっ、そんな話をしてたのか」

 

友崎は最後の到着だったからその時の会話は聞けていなかったんだよな。

 

「あれ、絶対水沢がみみみになんか吹き込んでただろ。肝試しの道中に」

「んー?さぁ、どうだったかなぁ?」

「コイツは……」

「ははは……」

 

 

***

 

 

それから女子たちとは別れログハウスへと到着。

時間もそろそろ寝るにはいい感じの時間で10:00を回っていた。

それぞれがスマホで起床時間を設定して室内の電気を消した。

 

今日はあとは寝るだけだ。

が……

 

「いやぁー泉の濡れTシャツエロかったよなぁ!」

 

そんな竹井の一言が暗い部屋内に響き渡った。

 

「まーアイツ、スタイルだけはいいからな」

「塗れTってコケた時だっけ?友崎にゲームの解説してて見逃ちまった」

「川辺で何やってんだ、お前ら……」

 

何って、石取りゲームさ。

 

「んー、俺はみみみくらいのスタイルが好きだけどな?」

 

話題に便乗する水沢。

ふーん、わかってんじゃん。

 

「たしかに。みみみはスポーツやってるだけあって体引き締まってたよな。それにたまも小柄な割には、なかなか……」

「えー、やっぱ泉の巨乳が一番っしょ!」

 

各々が好き勝手に言ってる中、いままで黙っていた友崎を軽く笑うように中村が話を振る。

 

「おーい、ワンちゃん。寝たふりかぁー?」

「いや、起きてるけど……」

「文也はどうなんだ?」

「お、おれは……。えっと、日南の姿勢のよさがツボ、かな?」

 

それには中村が軽く吹き出す。

 

「ははは、なんだそれ!姿勢フェチなんて聞いたことねーぞ!」

「やっぱ文也は変わってんなぁ」

「ワンちゃんマジウケる!」

「ま、友崎だしな」

「ぐ……言わなきゃよかった。あとワンちゃんってのはやめてくれ」

 

やはり友崎は日南が気になっている、ってことなのかね。

それと、ワンちゃん呼び気にしてたのか。

まぁ嫌がるなら俺も辞めるか。

 

「なんで?似合ってんじゃん、ワンちゃん」

「まぁ……犬もチンコでかいって言うしな」

「あはははは!」

 

犬のチンコってでかいのか。

猫はトゲ付きで、豚は形がドリルと聞いたことはあるが。

 

「で、デカくてこまることはねーし。小さい中村よりはいいだろ」

 

おお、友崎が中村に牙を剥いた。

が、しかし風呂場の時とはうってかわって中村は余裕の態度に見える。

 

「へぇ?で、お前使ったことあんのかよ、それ」

「う……」

「あのぉ!それはこっちにも流れ弾が飛んでくるんでやめてもらえますぅ!?」

「あっはっは!」

 

返り討ちに遭い言い負かされた友崎と流れ弾でダメージを負う俺の反応を見て、爆笑し始めた水沢。

覚えてろよクソッタレ。

 

そんなトークが十数分くらい続いてから自然と口数も減っていき、それぞれがスマホをいじるなりし始めていた。

 

俺もそろそろ寝るかと思い、スマホを置いて目をつぶり始めたところで「ちょっとトイレ」という声とともに外に出ていく人影が見えた。

声からして友崎だが、ふむ。

 

さらに少ししたら、「俺も便所」という水沢の声が聞こえた。

……!

やはりコイツラ本当に怪しい関係!

 

なわけないか。

どっちにしろ俺には関係ないな。

俺は再度スマホで時間を確認。

10:30を過ぎた頃か。

マッチョ社長も睡眠時間は必ず確保しろと言ってたからな、俺は寝る。

おやすみ!

 

 

***

 

 

翌朝、俺は掛けていたアラームよりも早く目が覚ました。

時計を見ると、時間はまだ6時を少し過ぎたところ。

ログハウスの中は静かで、みんなまだ寝息を立てている。

こう静かだと昨夜のバカ騒ぎが嘘みたいだな。

 

俺はせっかくだから外の空気でも吸おうかと思い、そっと布団から抜け出す。

靴を履いてログハウスを出ると、朝の少し冷めた空気が気持ちいい。

キャンプ場の周りは霧が薄くかかっているが、日差しは良く水蒸気に日光が跳ね返ってキラキラしている。

これなら霧もすぐ晴れるかもな。

 

いつもならランニングとかするところなんだが、今は汗の処理なんてできないし、適当に散歩でもするかと思ってキャンプ場の小道を歩き始めた。

 

しばらく歩いてると前の方からこっちに向かってくる、よく知っている人影が見えた。

あれは、みみみか。

向こうも俺に気づいたようで、手を振りながら軽快な足取りで近づいてくる。

 

「はらみーじゃん!おっはよー!早起きだねぇ」

「あぁおはよう。みみみこそ早いな、散歩か?」

「そんなとこ。はらみーは?」

「俺もそんなとこ」

「あはは、じゃあ一緒だね!」

 

みみみは笑いながら、俺の前へと来る。

朝とは言え夏真っ只中だからか軽く汗をかいているが、いつもの元気な声で話し始めた。

 

「昨日はめっちゃ楽しかったよね!バーベキューとか肝試しとか、いろいろ!」

「だな。それに中村と泉も遊ぶ約束までこぎつけたみたいだし、この合宿も大成功ってとこか」

「うんうん!でも本当はあの2人が付き合うくらいまで進んでほしかったよね!」

「まぁそこはしゃーないだろ」

 

しかし、そういうみみみはなんかいつも以上にニコニコしているというか、言葉以上に嬉しそうだ。

 

「何だ、その顔は?」

「いやさ!実は昨日女子部屋でもその話になってね」

「ほー、どんな話?」

「優鈴に肝試しのこと根掘り葉掘り聞いて、本当にうれしそうになかむーと2人で遊ぶ約束をしたって言ってたよ。だから私たちも実はこの合宿がなかむーと優鈴を仲良くすることも目的だったんだよーって言ったら、優鈴ったら涙目になりながら感謝してさ。合宿して本当によかったなって」

「はは、そっかなるほど。うん、本当によかったな」

 

そう言ってはニシシって感じに笑うみみみ。

相当嬉しかったんだろう。

 

ってか、泉にはもうくっつけ作戦のことバラしたのか。

やることは全部終わった今、隠すこともないもんな。

そもそも泉は中村に気になってる人がいるんだけど〜みたいなアプローチかけてるわけだし。

 

面倒くさい中村には絶対にバラしたら駄目だけど、たしかに泉にならオッケーだわ。

 

「それに。はらみー、ありがとね」

「ん?それはなんの感謝?」

 

この合宿、俺は自分が楽しむことしか考えてなかったから礼を言われても何のことやら、さっぱりわからない。

 

「たまのこと。一緒に合宿に来て、たくさん遊んで……本当に楽しかった」

「おう、それはよかったな。俺も楽しかった」

「うん。私ね。本当は、たまのことは私が守んないと駄目なんだ、って思ってたの」

「へぇ」

 

少し視線を下に向けながら下がった声のトーンで話しを続けるみみみ。

まぁそんなことは、見てりゃわかるけどな。

 

「けどさ。この合宿中、たまはいつの間にか周りに混ざって楽しそうにしてて。昨日の夜とかも前までは優鈴とはそこまで接点はなかったはずなのに、なんかすっごい仲良さそうに話をしてたよ。前はあんなに不器用だったたまが!」

「なんか波長でも合ったんじゃない?」

「それはあるのかも、あはは!」

 

泉は人に合わせるのうまいしな。

あと、言いたいことをはっきりいうたまちゃんとは話が合いそうだ。

 

「やっぱりはらみーがたまを誘ったのって正解だったかなって。本当はちょっと心配だったんだけど、たまが楽しそうにしてたの見たら安心したっていうか」

「心配って何だよ」

「だってさ、たまってなかむーたちとギクシャクしてたじゃん!私、もしも合宿で変な空気になったらどうしようって思ったから。でもそんなの全くの杞憂で、なんかホッとしたというか肩透かしというか」

 

みみみって普段はガサツな所とかあるけど、その実誰よりも仲間思いではあるよな。

何もなくてよかったということなら俺も同意だ。

 

「よかったな」

「少し前までは本当に、たまは私が守らなきゃーって思ってたんだけどね。いつの間にかこんなに成長していてびっくりしたっていうか……」

 

みみみの言葉や表情には嬉しいという感情のほかに、少しの寂しさのようなものを感じた。

 

「たまちゃん本人に言ったらどうだ?俺はただきっかけ作っただけでなんもしてないからな」

「はらみーって急に謙虚になるよね」

「謙虚というか、他人の頑張りまで自分のものみたいに言いたくはないかな」

 

俺がそういうと、みみみは「またまたー!」なんて笑いながら俺の肩をバシバシと叩いてきた。

痛いってば。

 

「はらみーがそう言っても、私はお礼は言いたいって思ったの。だから、ありがとね」

「じゃあその言葉だけ、受け取っておこうかな」

 

昨日たまにも同じ事言われたし。

礼を言われて悪い気はしないけさ、大したことはしていないからむず痒いっての。

 

みみみは言いたいことを言ってスッキリしたのか、笑顔で朝日の方を見て目を細める。

俺もつられてそっちを見る。

霧もいつの間にかさっきより薄くなってきており、キャンプ場の景色がはっきり見えてきた。

 

「さて、俺はもうちょっと歩くかな。みみみは」

「んー、じゃあわたしも!一緒に歩こう!」

「みみみ1人だと迷子になりそうだしな、そうするか」

「なにおー!!」

 

そう言って、話をしながら2人でキャンプを歩き始めた。

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