弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
あれから、みみみとはそこそこに会話をしながらキャンプ場をクルッと一周したあたりで、そろそろログハウスに戻るといって別れた。
ちなみに、みみみはなんでこんなに起きるのが早いのかと聞いたら前日楽しみであまり眠れなく、そのまま昨日はそこそこはしゃいだ結果疲労ですぐにぐっすりと寝てしまったらしい。
みみみらしいといえば、みみみらしいな。
「戻ったぞぉ」
小声でそう言いながらログハウスに入る。
時間はまだ7:30ほどで、相変わらずこの部屋の人間はいびきを書きながら寝ていた。
まぁ9時に起床という話をしていたからまだまだ時間はあるしいいだろう。
……昨日結構長起きしてたんかな?
それから合宿の帰りは早かった。
全員が起床したら荷物をまとめ、ササッと帰宅の準備をする。
朝食も、各々がキャンプ場やら近場の店やらでパンなど何かを買って簡単に済ませたものだ。
全員の支度が済んだら、来たときと同じようにバスに乗って談笑をしながら帰路へと着いた。
ちなみに帰りのバスでも俺の隣は竹井とたまちゃんの3人席だった。
別に、不満があるとかそういうわけではないけどさ。
友崎がみみみの隣に座ってるのがちょっと釈然としないかなぁ?
なんて考えてはいたが、前の方で中村と泉がいちゃついてるのを見たら、なんかもうどうでもいいかって気分になった。
「竹井は写真たくさん撮ったんか?」
「そりゃ、バッチリ!Xにもあげてるから後で見てよー!あ、たまは俺のアカウントわかる?」
「ん、わかんないや。相互フォローする?」
「もちろんっしょ!」
はえぇ、仲良くなるの早いよねぇ、ほんと。
たまちゃんの意外な順応性にみみみがびっくりするのも仕方ないわ。
「たまちゃんも写真とか撮った?」
「んー、少しは。でもキャンプ場の風景とかがほとんどかな。たまにみんみや葵が写ってるのが数枚」
「お、たまだけに!あー、せっかくなら俺を撮ってもよかったのに、なんて」
俺のたまだけに、発言に眉をぴくっとさせてから切り返してくる。
「んー、たしかに魔除けにはなるかな?悪霊退散的な意味で」
「お化けも逃げるってか?辛辣すぎん?」
「肝試しでも幽霊でなかったし」
「それ、俺の顔のせいだったん!?」
そう言って、俺は顔を手で覆いながらよよよ…なんて泣き前をし、それを見てたまちゃんと竹井は笑っていた。
「相原は写真撮ったの?」
「俺もたまちゃんと似たようなもんかなぁ。キャンプ場の風景とか、バーベキューの準備や食べてる時の数枚くらい……。しまった、みんなの水着を取っておくんだった!?」
「まぁ、川に入るからってスマホはコインロッカーの中に入れてたもんね」
そりゃそうだ。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した……。
「ガチべこみ。もうヤダ。帰りたい」
「そんなにショックだったん!?」
「今帰ってるからね。それに盗撮は駄目、犯罪!」
そうズバッと言うたまちゃん。
まあそこは相変わらずだな、なんて思ってはは、と笑う。
「それに夏なんだからまた海とかプールに行けばいいんじゃない?」
「おっ、いいねー。そん時はたまも来てくれんの?」
「んー……その時次第かな?」
「「えぇー」」
俺と竹井の声がハモった。
そんな感じでバスに揺られながら適当に話をして、バスでの移動が完了。
その後は電車でそれぞれの方面へと帰っていった。
終わってみればあっという間だったな。
合宿を脳内で振り返る。
中村達と調理対決をしたバーベキュー。
水着になって河原で椅子取りゲーム。
ログハウスで大富豪をし……。
銭湯で卓球勝負……。
あとは肝試し、と。
ゲームばっかりだ!!
まぁゲーマーの休日はこんなもんか、キャンプ場に行っても本質は変わらねえんだ。
俺は帰宅してから、なんだかんだ疲労に包まれたままベッドの上に横になった。
横になったままゴロンと体の向きを変えると、壁にかけたカレンダーに目が行く。
昨日今日、8月4,5日と合宿をしていたわけだ。
そしてその翌日、つまり明日の8月6日には赤丸がつけられている。
この赤丸はなんだったっけ……って、やべぇ花火大会の丸じゃん!
何も準備してねぇ!
いやまぁ、いざとなったら着の身着のまま向かえばいいだけではあるんだが。
こういうときは袴?法被?いや、浴衣とか甚平か。
とりあえず祭りの服装ってもんがあるのかもしれない。
ってかそれより結局参加メンバーってどうなったんだっけ?
LINEグループを開いて確認する。
水沢が駄目で、友崎も他の人と行く約束がある?とかで駄目、と。
で、たまとみみみと日南がオッケーなのか。
……男俺だけか、肩身狭いな。
つか、友崎が他の人と行くっていうのがちょっと気になるんだが。
日南は狙いじゃなかったのか?
俺の知らない誰かとか?あ、妹か!
それとも、実はやはり水沢と……?
っていやいや、んなことはどうでもいい。
とりあえず着ていくものをどうするか考えないと。
着るなら浴衣か甚平だろうけど、それはそれで俺だけ和服を着てきてたらなんかはしゃいでる人間っぽくならないだろうか?
だったらいつも通りの私服でいいか?
しかし、逆だったらそれはそれでまずいか。
俺だけ私服だったら空気読めない人間みたいになっちまうかもしれん!
1人だけはしゃいでる、扱いなら最悪ネタにもなるしあれば浴衣にするか。
そんなもの持ってないから、母さんと父さんに家にあるか相談だが。
なきゃないで私服だ。
早く確認してしまおう。
それが終わったら現地の花火大会のことも調べておくか。
正直田舎のこじんまりした祭りになら行ったことはあるが、花火大会ってのに入ったことがないから規模感とかよくわからない。
席とかってどうなってるんだろ、いいスポットとかあるのかな。
いろいろ調べねば。
***
そして、祭り当日。
集合時間の18:00に合わせて待ち合わせ場所に向かったのだが、そこにやって来たのはみみみだけだった。
「えっと、つまりどゆこと?」
「だから、なんかね。たまと葵は2人で回ることにしたから、私とはらみーで回ってきたらって言ってきたの!」
「何がどうしてそうなったんだ!?」
「私が聞きたい!あの2人、裏切ったんだー!」
ということで、何か日南とたまが結託して余計な気遣いをしていたらしい。
……まぁそういうことなら仕方ないか。
別に嬉しいわけではないが、女性3人に男1人よりは気圧されなくて済んだかもしれない。
べ、別に嬉しいわけじゃないがね?
「じゃ、2人で行くか。もし見かけたらなんか言ってやろうぜ」
「あはは、そうだね!急に約束破ってるわけだから、なにかおごってもらわなきゃ!」
「お、それいいねぇ」
そう言って俺とみみみは2人ではははと笑った。
……気のせいでなければ、みみみも照れているのか少し顔が赤くなっているようにも見えた。
あ、そうだ。
こういうときは言っておくべき言葉があったのに、いきなりのアクシデントに言えてなかったことを言っておかなければ。
「みみみ、今日は浴衣で来たんだな。なんだ、その。浴衣姿似合ってる、な」
「あ、ありがと…」
やべぇ、もっと自然に言えるはずだったのになんか、うまく言葉にできなかった。
たぶん俺の顔は赤くなっていることだろう。
この羞恥などで顔が赤くなりやすい体質、直せないものだろうか。
俺の言葉を聞いて、みみみもさっきとはちがってはっきりとわかるくらいに紅潮していたが、俺まで顔を赤くしていることに気づいたのかニヤッと笑いながら返してくる。
「はらみーも、浴衣似合ってるね。馬子にも衣装とはこのことかぁ?」
「はは、ありがとよ。けどいつでもカッコいいだろ、俺は」
「……そうだね。うん、知ってるよ」
みみみの軽口にそう返したら、笑顔ながらも少し真剣なトーンで返ってきたみみみの言葉に面食らう。
てっきり軽く流されると思っていたのに。
「お、おう。そっか」
俺は照れをごまかすように首の裏をさすりながらそう言った。
「……ぷっ!このっ!」
「った!なんで!?」
そんな俺を見てみみみは軽く吹き出したかと思ったら俺の肩をバシンと叩いた。
「それじぁあ行こっか!せっかくだし楽しむぞー!」
「ってて……。りょーかい、行きますか」
そう言って花火大会に合わせて出店している縁日の屋台の方へと歩き始めるみみみ。
「向こうは結構人いるな。はぐれないように手でも繋いでおくか?」
「……はらみーがどうしてもって言うなら、繋いであげてもいいよ?」
「冗談だ。そこまで言われたら、別にな」
「むぅ……ふんっ!」
「いたいって!なんでさっきから肩を叩く!?」
みみみがバシン!と俺の肩を再び叩いた。
心なしかさっきよりも痛かった気がする。
浴衣は思ったより布も薄かったからそんな強さで叩かれたら紅葉の跡ができるだろ!
こうして俺とみみみは人混みへと紛れていった。