弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
花火大会から数日経った頃。
俺は部活で夏休みの強化合宿に来ていた。
まぁ、来ていたと言っても場所は学校なんだけどな。
合宿用に使える宿泊施設があるのでそれを利用するのだ。
無論、個室なんて上等なものはないので広い空間に参加者20名ほどで雑魚寝だ。
一応個室自体はあって、女子マネージャーはそっちか。
夏の合宿は毎年お盆が始まる前くらいに予定されており、今年は10,11,12日の二泊三日の予定となっている。
そして、その合宿最終日が他校との練習試合となるわけだ。
その合宿が始まり初日の練習が終わったので全員で雑魚寝する予定の広い空間から自分のスペースを確保しつつ、休憩がてらにスマホでLINEアプリを開いていた。
映っている画面は、友崎とのメッセージ画面。
確認したのは数日前に送った友崎へのメッセージ。
アタファミで対戦をしようぜ、と言う内容を送ったものの未読の状態が続いている。
今までは遅くてもその日のうちに既読にはなっていたのだが。
「もしかしてあいつ、夏休みに入ったからだらけてスマホすらチェックしなくなったのか?」
でもここ最近の友崎の様子を思い出すとそれも違う気がするんだよなぁ。
あんなに自分を変えようと努力していたやつが、夏休みにはいったからといって急にスマホを放り出すか?
むしろ逆に連絡手段はスマホしか無いんだから手放すことは考えにくい。
そこまで考えて、連絡手段というところで思い出す。
菊池さんと花火大会一緒に行ってたっけ、友崎のやつ。
歩いてる時にチラッと見えただけなので本当に友崎と菊池さんだったのかは確証が持ててはいないのだが、友崎も誰かと花火大会に行くと言っていた以上、本人だった可能性は高い。
となると。
……もしかして菊池さんに告白してフラれたか?
お、なんか点と点が繋がってきた気がするな。
今日の俺は冴えている!
そういうことなら仕方ない、1人になりたい時間だってあるのだろう。
一旦は放置でいいか。
それでも、あまりにも連絡が来なかったら直接文句言いに乗り込んでやろうかな。
俺は友崎とのメッセージの画面は一旦閉じ、次にみみみとたまと友崎の3人を招待して新しいグループを作成する。
建てたばかりのグループトークにメッセージを送信。
『前に言ってた、俺達サッカー部の夏合宿がそろそろあるから、約束通り最終日の練習試合は見に来てよ。試合は12日で、たぶん13時くらいからだと思う。場所は関友高校の第1グラウンド』
これでよし、と。
試合は久しぶりだし、3人も見に来てくれると言うなら張り切っていかないとな!
その時は合宿の最終日どからどれだけ気力が残っているのか分からんけど。
そんな事を考えているうちにみみみからさっそく返信が来ており、問題ないとのことだった。
それから少ししてたまからも返信があり、同様に見に来てくれるようだ。
「相原、さっきから何ブツブツ言ってんのー?」
「合宿に来てもスマホが手放せねぇのか?」
竹井と中村が声をかけてくる。
声に出てたかな?
つかスマホいじってんのはお前もだろ。
「明後日に試合じゃん?みみみとたまが暇なら見に来るってさ」
「おー!もしかして葵も来る?」
「んーいや、みみみとたまにしか送ってねぇや。直接聞いてみたら?」
竹井って日南のこと好きだよな。
いや、好きというか懐いてるよな。
つっても日南のこと嫌いなやつなんて、この学校で見たことないから普通と言えば普通なのかもな。
俺は一瞬中村にも「泉呼べば?」と言いかけたが、これは言うと逆に呼ばなくなるパターンだなと声を発する前に気付いて、別のことを口にする。
「せっかくだし周りにかっこいいとこみせてチヤホヤされたいから、アシストよろしくなお前ら。おれもいつか決めるぜ、稲妻シュート!」
「お前はディフェンスだろ」
「なら顔面ブロックか?鼻血出して倒れるのはいやだな」
あぁ、俺自身は大空翼よりも石崎了のほうが近いかもな……。
とりあえず、そんな適当な会話をしてごまかした。
余計な事を言わなければ勝手に呼ぶ可能性はありそうだし、もしかしたらみみみあたりが泉にこっそりと予定を伝えてるかも知れない。
それから俺はスマホをしまって中村や竹井達部活のメンバーと適当な会話だったり、一部が持ってきていたトランプなどで時間を潰した。
しかし、寝る前にLINEを確認したが通知は既読数が2のままで、友崎がメッセージを読んだ形跡はなかった。
***
合宿の最終日。
初日、二日目と朝から夕方まで練習漬けであったので俺も所々筋肉痛で体の節々に痛みを感じていた。
とは言え、なんだかんだで運動始めると痛みとか忘れちゃうんだけどな。
ランナーズハイってやつだっけ?
それはそれとして、友崎からは結局連絡が来ることはなかった。
アイツが試合を見に来るって約束を破ったら、少しくらいは文句言ってもいいよな?
そんな事を考えながら午前の作業に取り組んでいた。
今日は合宿最終日かつ練習試合のため、午前はほとんどが練習試合の準備と宿泊に使用した建屋の掃除だ。
いつもは他の部活とのスペースの兼ね合いでサッカーゴールをハーフコートでセットしているので、ゴールの位置をフルコートに合わせて全員で運び、石灰でラインを引く。
ペナルティエリアとかゴールエリアとか、距離を測って引かないとだから結構面倒くさいんだよね。
それらを全部終えたら、ほんとに軽く基礎練をして練習は終わり。
11時頃に少し早い昼食をとってから、13時の試合まで休憩となった。
どうやらみみみとたまは午前はそれぞれ部活の練習だったが、もう終わったらしくこれから昼食をとったら見に来るらしい。
時間があれば試合前に声かけようかと思ったけど、無理そうだな。
あと、友崎は相変わらず未読だったのでもう諦めた。
しゃーないけど、後で文句は言いに行くからな。
それじゃあとは試合するだけだな。
いっちょ気合い入れて頑張りますか。
そして、13時には予定通りキックオフとなった。
***
試合について結果だけを言えば、勝つことができた。
俺達は疲労で動きが悪かったが、相手も相手で秋大会の新人戦に向けての新メンバーを試していたようで動きがお世辞にも良くはなかった。
そのため、互いに攻めきれずに拮抗したまま後半戦になったわけだが、後半にてついに俺が点を決めた。
大事なことだからもう一度いうが、俺が点を決めた。
その1点が決勝点となって試合に勝ったわけだ。
練習試合なので勝ち負けに意味があるわけではないけど、やっぱり勝てば嬉しいし自信にもつながるので勝敗に意味はなくても勝った事実には意味があるだろう。
その後も時間はあるということで試合時間を半分にした練習試合2本目、メンバーを互いにガラッと入れ替えたB戦なんて試合もしていた。
人数の問題でB戦にも駆り出された俺はもうクタクタである。
ちなみにこっちのB戦は0-0で引き分け。
なんというか、攻め手が足りなすぎたな。
ただ、1年生メインの試合にしてはよく戦ったほうだろう。
正直俺は試合に出てた1年を褒めたい。
ボール支配率向こうが7割くらい占めてたんじゃね?
よく守ったわ。
そうして予定されていた練習試合も無事に終わり、勝ったためか機嫌の良さそうな顧問の短い締めの言葉とともに俺達は合宿は幕を閉じた。
そして各々が荷物をまとめて現地解散、好きに帰ることとなった。
「はらみー、おつかれー!」
「相原、お疲れ」
「あら、みみみとたまちゃん、おつかれ。まだ残ってたのか」
帰ることになったところで声をかけられ、その方向をみればみみみとたまちゃんがいた。
「はらみーが誘ったから試合観に来てたのに何その言い方!」
「あいや、すまんすまん。来てくれて本当にありがとうなんだけど、試合も1時間くらい前には終わってたはずだしてっきり帰ったのかと……」
そんな言い訳みたいな事を言っている俺に対して、たまちゃんはとある方向に指を差す。
その先を見ると。
「中村と泉か」
「そうそう!せっかくだから優鈴も呼んだの!でも試合が終わったら優鈴がなかむーに声かける前に帰ろうとしたから、私とたまで足止めをして」
「うん、さっき向かわせたところ」
「なるほどね」
それでこの時間まで残って、中村に泉をけしかけさせたわけか。
「あ、そうだ!約束通り点を決めたぞ!」
「あー!見てた見てた!あれ見間違いじゃなかったらめっちゃ曲がったよね!サッカーボールってあんなに曲がるんだ、びっくりした!」
みみみの言う通り、自分でもちょっと驚くくらいのカーブシュートが決まった。
敵の攻撃を抑えてからのカウンター速攻でオーバーラップした俺にボールが渡り切り込んでからのミドルシュート。
あそこまで前線に上がったのははじめてだったかもな。
練習自体は何度も繰り返し行っていたことなのだが、試合でそんなシュートを撃てたことに自分自身で驚きと、そしてそれ以上の手応えを感じていた。
「1年の頃から練習してたからな、うまくなったもんだろ。誰かさんを見習って努力を続けてた甲斐があったもんだ」
「たぶん、その誰かさんよりよっぽど努力してるよ」
「そうでもないさ。俺も体調崩すまで練習したことはないからなぁ」
そう言うと、むぅーと唸りながら少しむくれるみみみ。
おれは笑いながら「冗談冗談」と手をヒラヒラさせながら軽いノリで返した。
そのまま俺達は帰宅するために駅に向かって歩き始めた。
「でも、本当にはらみー試合頑張ってたね」
「そりゃ頑張るさ。モテたくてな!かっこよかったろ?」
「調子に乗らない!でも、珍しく少しね」
「め、珍しく」
たまの言葉にわざとらしくガクッと落ち込んでみせる俺。
「あはは。でも、私は点を決めた試合より、2試合目のほうがはらみーが目立って見えたなぁー」
「アレがか?ってかそっちも観てくれてたんだな。0-0の泥試合だったじゃん」
「んー、試合は引き分けだったけど。内容っていうのかな。ずっと攻められてたように見えたけど、はらみーはずっと声出して、みんなでゴールを守ってたじゃん。それを見てたら、なんというのかな。うまく言葉に出来ないけど、あ、そうだ!すごい王様って感じがした!」
「王様って……」
俺はそんな偉ぶったつもりはないんだが……。
「た、たまちゃん。俺そんなだったか?」
「えっと。偉そうではあったかな?」
「ぐふっ」
その言葉にダメージを受ける俺。
試合中は語気が荒くなることも確かにあるけど。
そもそもディフェンスは声を出して意思疎通を測るのが大事だし、B戦ではほとんどが1年だったってのもある。
動き出しが遅いので逐一連携のために絞れだとかフォローだとか下がれ上がれと指示を出していたかもしれん。
「でもさ!味方が活躍した時にはしっかり褒めるんだよね!先輩によかったプレイを褒められる時って結構嬉しいし。私も中学でバスケやってたからわかる!」
「私も、今でもしおり先輩達に褒められると嬉しいし、ちょっとわかるかも」
「ね!上手い先輩が、厳しくもいい所は褒めてくれる。いやー、たしかにあれなら後輩にも慕われるわー!」
「や、やめろよ。むず痒くなってきた。俺は別にそんなこと考えてやっているわけじゃないし」
そもそものところ今日のB戦では顧問からディフェンスとミッドフィルダーは声出して1年たちをまとめろと言われたからやっていただけだ。
「あっはっは!私はサッカーはよくわかんないけどあっちの試合のほうが、いくら攻められても何度も跳ね除けて、その泥臭さなんかはらみーだなぁって思った!」
「さっきは王様と言いつつ、泥臭さってどっちなんだよ」
「たしかに!どっちだろう!でも私はあの試合ではらみーがチームをまとめて頑張ってたから引き分けになったんだと思ったよ?」
「俺の頑張り?」
「そうだよ、1年の時から見てたから私にはわかる!言うなら、はらみーを1番理解しているのは私だって言う自負すらあるよ!その私が言うんだから間違いない!」
真っ直ぐな言葉を投げかけてくるみみみ。
その言葉が俺の頑張りを肯定された気がして、ちょっとだけ目頭が熱くなる。
……俺ってこんなにメンタル脆かったっけね。
俺はチョロくない、と自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせた。
「私、中学でバスケやってた時はさ、チームを動かすより1人でやるほうが手っ取り早いとか思っちゃってたから。今日のはらみーはチームで戦ってるって感じて、なんかすごいなって思った」
「ん。まぁ、1年達もやる気満々だったからな」
「そのやる気を引き出してるのがはらみーでしょ。少なくても何割かは絶対にそう!」
「そんなことはないと思うけどなぁ……」
「たまに思うけど、はらみーは自己評価が低すぎるときあるよね」
あるかなぁ。
ちょっと怒った感じの雰囲気を出しながらいうみみみに、横でたまも『うんうん』みたいな顔をしている。
そんなことはないと思うんだが。
「むしろやったことはちゃんと誇ってると思うぞ?今日だって俺はシュート決めて大活躍したとか内心思ってるし」
俺はそう言うが、それでも納得していないような顔をするみみみ。
むぅ……?
つまり、なんだ。
「あー、言いたいことはちょっとわかったかも。おれ、記録や証拠に残らないものは自分のものとは思えないからさ。でもさ、今日は1年がやる気出して粘り強く勝負してたけど、それを『俺がやる気出させた!』なんて思えるわけないじゃん。そもそも、その試合も勝ってねーしな」
「……はらみーはそういうところあるよね。それもはらみーらしい、なのかなあ」
「またでたよ、それ。でも俺の座右の銘の1つは、『男らしく』でいこう、だから」
「1つって、何個あるの?」
「さぁ?思いついたら増えるし忘れたら減るからわかんない」
「てきとうだー」
「でも、そこは相原らしいかも」
「またでた、俺らしい。ま、たしかに男らしいだろ?」
ふふんを軽く胸を張るが、はは…と2人に乾いた笑いで返された。
そこそこ話をしたところで駅につく。
そして、そこからは方面が違うたまとは別れる。
「じゃあ、私はこっちだから」
「おう、応援サンキューな。また今度ー」
「じゃーねーたまー!」
そうして俺は方面が同じみみみと二人きりになった。
電車が来てそれに乗るが、みみみとの会話は続く。
「そういえばさ、俺はちゃんと点を決めたよな?」
「そうだね。あれは素人目から見てもすごいシュートでした!」
「俺が点決めたら、たしか。何でも言うことを聞くって言ってたよな?」
「うん。……って、言ってないよ!?えーっと、点を取れなかったら罰ゲームって言ったけど、点を取ったときの話は何もしてないよね!?」
そうだった。
勢いで約束を盛ってみたけど秒でバレた。
「失敗したな、点を取った時のことも何か取り付けておくんだった」
「残念でしたー♪」
「点を取れなかった時に俺が罰ゲームなら、逆説的に点を取ったらみみみが罰ゲームを受けるべきなのでは?」
「私、わざわざ試合を観に来たのに罰ゲームまで受けるの!?」
「いま俺の試合を観に来るのは実質罰ゲームみたいなものって言った?」
「わぁお。今日のはらみーは一段と面倒くささに磨きがかかってるね!」
そんな応酬をしながらも、みみみは楽しそうに笑う。
「じゃ、小さいこと1つくらいは聞いてよ」
「よっしゃ、言ってみなさい!聞くだけは聞いてあげよう!」
「聞くだけ……。まぁいいや。俺さ、サッカーうまかったろ?これは1年の時にみみみに助けてもらったおかげだとおもうんだよ。だから、みみみが俺を利用したみたいに思ってることを許すための一歩とか、きっかけくらいにしてくれてもいいんじゃないか?」
「んー……」
乏しい反応。
うーん、駄目か。
鉄壁ガードだな。
そう思ったところでみみみが口を開く。
「じゃあ、今度また試合があるときがあったら教えてよ。その時、予定が空いてれば見に行いくから」
「……おう!そん時は教えるよ!」
「うん、たまと見に行くね。たまと!」
そんなにたまちゃんを強調する必要ある?
けど、一歩前進した気がする。
この一歩は気の所為じゃないといいな。
実は試合描写を書いて、完成してから「やっぱり要らないわコレ」と思って全て消した……。
結果、次話予定とガッチャンコして少し文字数多めに。