弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
いい加減友崎から返事がないことに痺れを切らした俺は、友崎の妹ちゃんにラインを送った。
『最近友崎(兄)と連絡取れないんだけど、何かあった?』
用件を簡素に送る。
そのうち帰ってきたらいいなぁくらいの気持ちで送ったものだが、返信は割とすぐに返ってきた。
『相原先輩、聞いてください!兄は少し前から部屋に閉じこもってゲームばっかりやってるんです!』
おお……。
『最近は相原先輩達を家に呼んだり、少しはマシになってきたと思ったら急に元に戻って!意味がわかんないです!』
おおぉう……。
『兄のスマホはリビングに放置されてました!未読が、2日前!ありえないですよね!?』
おおおおおぉ……。
ピロンピロンと流れてくるメッセージから、妹ちゃんの兄に対する怒りを感じる。
ちなみにその2日前って最新のメッセージからで、最初の未読メッセージは4、5日前くらい前のものだと思われる。
言わないけど。
『ケガとか病気ではないんだ、安心した。今も家にいるの?』
『はい、相変わらず閉じこもってゲームをしているみたいです……』
『りょーかい。今からそっち行くね。30分かからないとおもう』
『え!?』
言うや早し、俺は最低限の身支度だけを整えると友崎の家に向けて出発した。
電車もいいけど、一駅分なら走ったほうがたぶん速い。
まぁ、汗だくにはなりたくないからほどほどのペースでだけど。
***
「おじゃましまーす」
「わわっ!ほ、本当に来たんですか!?しかもこんなに早く!」
その言葉を聞いて俺は腕の時計を見る。
20分ちょいか。
結構距離あるな、いい運動になった。
「あはは、急にごめんね。上がってもいいかな?友崎、兄の方の顔を拝みにさ」
「はい!どうぞどうぞ!あ、これ兄のスマホです」
そうして妹ちゃんからスマホを受け取った。
そのままとりあえず上がらせてもらい、友崎の部屋に向かわせてもらう。
そしてコンコンとノックを2回してから反応をまたずにそのままドアを開ける。
「よぅ友崎、元気にしてっか」
「は?え!あ、相原!?」
「おう、LINEメッセージを無視され続けてる相原さんですよ?」
困惑する友崎を無視して部屋に入る。
つか、部屋くらいぞ電気つけろ。
勝手に付けるぞ。
「ほれ、お前のスマホ」
「えっ、ああ」
俺はスマホを友崎へと投げ渡す。
受け取った友崎はスマホをいじり、LINEのメッセージ画面を開く。
「……その、すまん。スマホ放置してた」
「みたいだな。まぁ過ぎたもんは仕方ないさ。つか、なんかあった?」
「え?」
俺がそうきくとビクッと体を震わせ、まるでなんかありました!とでもいうような反応をする友崎。
分かり易すぎる。
「いや、どう考えてもなんかあったんだろ。スマホは放置するし、妹ちゃんは部屋に引きこもって昔に戻ったみたいとか言ってたぞ」
「あいつ……。別に、なんにも」
「はぁー、試合観に来てくれるって約束していたのに、まさか来ないばかりか無視されるなんてなぁー?その間にしていたことは、部屋でアタファミですか。あぁ、俺は友達だと思っていたのに……」
「……はぁ」
俺のそのわざとらしい言葉に、友崎は少しの苛立ちが込められたようなため息で返した。
やべ、ちょっとウザくしすぎたかな。
「いや、すまん。今のは相原に対してじゃない」
「あぁ。で、結局なんかあったのか?花火大会の日に菊池さんにフラれたか?」
「は!?な、いや、何で菊池さんのことを知って、いやそれにフラれたわけじゃないし!」
俺の言葉に過剰に反応する友崎。
フラれたわけじゃないのか、てっきりそれで塞ぎ込んでると思っていたのに。
「花火大会、現地でおまえと菊池さんっぽい人見つけてな。気を利かせて声は掛けないで去っていったのだ」
「いや、声掛けろよ!」
あっはっはと笑いながらそういう俺にツッコミを入れる友崎。
なんだ、結構元気そうじゃねぇか。
「邪魔したくはなかったからなぁ。てか、違うならなんなんだよ。何かしらあるんだろ、悩み事なり何なり。俺は約束をすっぽかされたんだ、聞く権利くらいあるんじゃねーの?」
「まぁ、そうかもな」
それを引き合いに出されて、友崎も納得したようだ。
「でもちょっとまってくれ、先にトイレ」
「便意すら我慢してゲームしてたんかい!」
部屋から出ていく友崎。
そうして場を仕切り直した……。
それから数分ほど経って戻ってきた友崎か話を始める。
「相原はさ、俺と話してて急に話しにくくなったり、話しやすくなったりとか、そういうことってあるか?」
「なんだそれ?んー、あんまピンとこないけど。別に……あー、けどたまに妙に踏み込むじゃんって思うことはあるかなぁ」
友崎の言葉になんだそれと思いながらも、答える。
直近だと、キャンプ場で中村いじってたところとかそうだな。
あの攻め具合にはびっくりしたもんだ。
「な、なるほど。実はさ、最近とある人にいろいろ言われて。例えば、話す話題を事前に用意して暗記しておいたりとか、他にもしゃべり方の練習に上手いやつの……お前とか水沢のマネをしてみたりとか、いろいろやっててさ。そのうえで自分の中に目標とか課題とかまで立てて、実行したりって」
なるほどね。
けど水沢はともかく俺の真似するのは大きなミステイクだろ。
ってか、それって前に聞いたよな。
「その話覚えてるぞ」
「え?」
「いや、いつだったか言ってたじゃん。なんだっけ、性格が悪いけどクソ強いゲーマーに努力の仕方とかを聞いたとかなんとかって」
「あ、そういえば、前にも言ったんだっけ」
「聞いた聞いた」
『人生』は糞ゲーじゃなかった、とか言ってたっけ?
あの時の友崎は泉に熱弁してたからな、覚えてる。
しかし、クソ強いゲーマーが誰なのか、なんとなく予想がついてきたな。
あのときもnanashiとNONAMEの10分を超える対戦動画なんてもんを用意してたよな。
よくよく考えれば10分を超える対戦動画なんて、専用部屋などでルール変更しない限り成立しないんだ。
レート対戦では試合時間が最大7分半だからな。
ってことはNONAMEとは何かしら接点があるわけで、コイツがそのゲーマーのことなんだろうな。
オフ会とかで知り合った、とかか?
いや、いったん置いておこう。
「で、それがどうかした?努力するのはいいことじゃん。努力というか、進むことは」
「でも、花火大会の時に菊池さんに。いや、もっと前にもなんだけど。俺と話していると急にしゃべりやすくなったり、かと思ったら急にしゃべりにくくなったりするって言われたよ」
おぉ、そんな違いがわかるものなのか。
菊池さんって雰囲気に機敏?なのかな?
いや、そういうもんか?
「それで一応原因はわかったんだけど、俺が暗記した話題を出すと喋りにくくなって、何も用意しないでその時思ったことを言っているときは話しやすくなる、らしいんだって」
「それは、またなんとも」
「ああ。感覚的に見抜かれていたんだろうな。こういう風に自分を偽っていた不誠実なところをさ。……けど、今までそうやって作ってきた仮面というか、スキルで会話がうまく言った時には達成感みたいなのを感じてて。この間のキャンプの時とかは本当に楽しくて、これは『偽り』なんかじゃないとも思ったんだ」
「……ふーん」
そんな真面目なトーンで話を続ける友崎。
普段の俺ならボケでもいれそうだったが、その真面目な雰囲気から俺も真剣に話を聞いていた。
「だから、素のままの自分でいるべきなのか、このままスキルを磨くべきなのかがわからなくなって。本当は花火大会の日に菊池さんに告白することも自分の中で課題にしていたんだけど、結局告白することはできなかった」
「そっか。で、自責の念にとらわれて引きこもってたわけか?つか、だったらそのクソ強いゲーマーさんとやらと話をすればいいだろ。今までだってそうしてきただろうに」
悩みは時に歩みを妨げるが、そのまま立ち止まっていたら何も進まないぞ。
「まぁ、そうなんだけど。そもそも課題を考えていたのはその、クソ強いゲーマーと一緒に考えていたから。進むことを放棄して歩みを止めるのであれば、もう何もいうことはない、って言われて……。喧嘩、かなぁ?をしてな」
いやそこで放り投げられたのかよ。
たぶんお互いの言い分とかなんかあったんだろうけど、ちょっと見放すの早すぎんだろゲーマーさん。
「なるほど、それでこんなことになってたわけか」
「まぁ、うん」
……。
だいたいわかった。
「俺も少し前知り合いと喧嘩したことがあったんだがな」
「知ってる」
「最後まで聞け」
そりゃ喧嘩した時に後ろで聞いてたもんな、お前は!
「その時学んだけどな、結局悩んだときも何か行動するしかねぇんだよ。俺があの次の日になにしたと思うよ?」
「え、いや。わからん。なにしたんだ?」
少しは考えてから聞け。
まぁいいけど。
「翌日たまちゃんに相談した。で、話を聞いてもらってさ。その後、すぐにみみみに電話して話をした」
「な、なるほど」
そういう友崎はびっくりしながらも、少し面白そうに話を聞いていた。
「て、結局お前はどうしたいんだよ」
「それは……」
「どうしたいのかって大事なことだと思うぞ。それとも、人に言われなきゃ大事なことも決められないのか?」
「う……」
「ってたまちゃんに言われたよ」
「は、はは、たまちゃんらしいな」
痛いとこを突かれたみたいな顔をしながらも友崎は決心をしたらしい。
「わかった、俺ももう一度話をしてみるよ」
「そうだな。けど、それには先に決める事がありそうだな」
「ああ。俺が何をしたいのか、自分で考えて自分で決める。大事なことは、たしかに人に言われて決めるものじゃないよな」
「飲み込みがはやいな、さすがゲーマー」
「最高の褒め言葉だな」
もうすっかり元気を取り戻したらしい。
普段のコイツの行動力には目を見張るモノがあるから、あとは大丈夫だろう。
そういうところは俺も見習いたいね。
「まずは俺がどうしたいか考えるよ。それから、喧嘩したゲーマーと、対決してくる」
「いいんじゃない。けどやることもう1個追加だ」
「もう1個?」
「菊池さんとは花火大会以降話してるのか?」
「あ、それは……」
「そういうとこだろ。課題云々で罪悪感を持ってるならなおさら、なんか話したほうがいいんじゃねーの?まぁ、決めるのはお前だけど」
「そうだな。……相原、サンキューな」
「思ったこと言っただけさ。けど、どういたしまして?」
俺としては結局菊池さんに告白するのかどうかが気になって仕方ないんだ。
けどそこまで踏み込むのも野暮だからこれ以上は言わないけど。
「あそうだ、もう1個」
「さっきから何個あるんだよ」
「これが最後だ。俺とアタファミで勝負しろ。そろそろ勝てると思ってたのにおまえはもう5日も連絡を未読スルーしてるからな。今日はわざわざ直接乗り込みに来てやったんだ」
「それは悪かったけど。もしかして、そのために来たのか?」
「たりめーだ。シカト決めたことに文句言うのと、アタファミ勝負するために来たんだよ。お前の悩みなんぞ知るか。さっさと勝負せい」
「はは、でもこれが一番俺たちらしいか」
そう言って友崎にアタファミの2コンを用意させる。
この間にさっき気づいたことを聞いてみることにした。
「ところでさ、そのクソ強いゲーマーってNONAMEであってる?アタファミランキング2位の」
「!?な、なんでわかった!?」
「そりゃヒント多かったから見当はつくだろ。お前が認める強いゲーマーだとか、泉に用意した対戦動画だとか、色々」
「な、なるほど」
「しかしゲームで知り合ったネット友達とリアルの話かぁ、いまいちピンとこないな。俺は未だに知り合い意外とはボイスチャットすら違和感があるし」
「そういうもんか?」
そんな話をしているうちに準備ができたらしくコントローラを受け取り、アタファミの対戦を開始した。
結果は、なんだ。
この前まで調子よかったはずなんだけど、部活で合宿とか試合とかいろいろあったからなぁ。
まぁ、そういうことだ。
……次は勝つ。
絶対にだ。