弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん   作:mosumosu

8 / 102
5

月曜日、中村とアタファミで対戦したから家に帰った後、俺は家でまたアタファミを起動してレーティング対戦をしていた。

 

俺に必要だと思うテクニックはあらかた操作のコツを掴んだ。

それなら次は対戦を重ね、練度を上げるべきだ。

正直、中村との対戦での敗因はこの覚えたテクニックを半端に使ったせいで俺のリズムが崩れていたのが原因だろう。

だから、前までの俺の動きを思い出し、そこに練習した操作を1つずつ落とし込んでいく。

 

覚えたテクニック自体は多岐にわたる。

強攻撃の上下打ち分け、最速ダッシュ攻撃、ダッシュ強攻撃、ガーキャン上アタに上必殺、一部技の着地キャンセル、透かし掴み……まだまだある。

これらでリターンの大きさや使用用途の高さを考え順番に取り込んでいく。

 

「まずは、技の着地キャンセルだな。グラスバイオは空N中で一定のタイミングに着地をするとその後の行動が早くなる。うまくいくと次の行動までが4フレ?らしいから直後に緊急回避をすればガードした相手の掴みにも回避が間に合うと……」

 

まぁそれでも一部の掴みよりも発生が早い技や持続が長い技はくらうが、投げさえ避けられればそれで十分。

 

頭の中でイメージしながら対戦相手が見つかるのを待つ。

相手はすぐに見つかり、対戦が開始される。

ステージは台のない平らなステージ。

俺の選択したステージだ。

グラスバイオはどちらかと言うと高台ありよりもこの平面のステージのほうが得意なのだ。

 

「空Nは当てたいが、空対地だと上下の判定の大きさで不利だ。だから、地上攻めに混ぜて空中からの奇襲をする!」

 

地上でのみ判定の広い下必殺技を中距離から嫌がらせのように挟んでいく。

相手はたまらずとジャンプしての接近を試みる。

こうやって牽制を挟みジャンプさせたら、こちらは一歩引きリーチの長い強攻撃で対応。

こうやって近接としては長めのリーチを持つ技でチクチクと差し合いをし、相手にリーチが長めでも隙の大きい攻撃を誘発させたらジャンプから奇襲を行う。

俺はそれをジャンプで避けつつの落下空Nで接近するが、相手はしっかりとそれをガード。

そしてそのままカウンターにつかもうとして……

 

「よっしゃできた!マジで掴みを回避できるじゃん、やべーこれ!」

 

その場緊急回避で掴みの回避に成功し、逆に隙を晒した相手を掴んだ。

そのまま投げ始動のコンボを決めて50%のダメージを入れる。

 

ある程度アタファミをやっているそ人にとってはガードしたら掴みで反撃、というのはもはや反射的行動だ。

これは、かなり使えるんじゃないか?

まぁもしかしたら友崎みたいにかなり深くまでキャラの性能を把握している人がいたら見破ってくるだろうし連発しても対応はされるだろうが、それでも掴みに対して牽制をできるのならかなりのプラスだ。

 

そんな感じで試合は俺の有利に進み、無事に対戦に勝利した。

その後も1時間ほど対戦を行い、練度を高めていく。

結果として今日は勝ちがかさみ、日曜日まででレートは2000を割ってしまっていたが、今日で下がった分のレートも無事に稼げ、俺は2000以上へと咲き返ったのだった。

 

 

***

 

 

そして火曜日。

昨日は友崎の周囲でいろいろあったものだが、今日は昨日とうってかわって特段なにかあるわけでもなく学校での1日が終わった。

 

更に火曜日は部活すらない日だ。

なんか、詳しくわかんないけど部活動って週に4日までしかやっちゃいけないらしいね。

だから週に1回は部活が休みの日がある。

まぁそのへん実は、部活としては休みだけど勝手にやりたい人は止めませんよ?みたいな暗黙のルールがあったりするが。

 

普段なら俺はこのまま直帰、というところだが今日は寄るところがある。

なんかリベンジに燃えてる中村が旧校長室使ってアタファミの練習するらしい。

たしか、中村の家って親が厳しくてゲームばかりやってられないんだったか……?

ゲームに限らずとにかく厳しいらしく、前はそれが原因で喧嘩をした結果、学校を数日休むとかあった気がする。

 

そんなこんなで家で長くゲームをできないから学校でちょくちょくやることにしたみたいだ。

家でコンボの練習をして、学校で対戦ってわけだな、たぶん。

 

中村と仲のいい何人かはアタファミしに行くみたいだし、俺も声かけてもらったから今日はそっちに寄っていこうかな、というわけだ。

 

ホームルームも終わり、ぼんやりしながらゆっくりと荷物をまとめていた所、日南から声をかけられる。

 

「相原は今日部活動ないんだよね?だったら私達と一緒に帰らない?みみみとか花火とか、あと友崎くんも一緒なんだけど」

 

うーん、と少し悩む。

日南がこうやって周りと友好を築こうとするところは好感が持てるし誘ってくれたのは正直すげー嬉しい。

それにみみみとたまに、友崎も一緒か。

あいつらと一緒にいるのも楽しいんだよな。

 

そこまで考えてから、先に中村たちのところに行くと決めてたしやっぱり断ることにした。

まぁ中村たちの方にLINEでやっぱ帰るーとか入れても問題はないんだけど、先に約束してたしなぁ。

 

「あー、うーん、すまん、今日はちょっと予定あるから無理だわ」

 

日南はまるで意外と言わんばかりの顔でキョトンとしてから、ニヤリと笑って口を開く。

 

「あらら、それじゃあしょうがないね。私にみみみに花火にと、こんなかわいい女子からの誘いを断るなんて。次も誘ってもらえると思わないほうがいいんじゃな〜い?」

「くぅ〜、それ言われると辛い……。まぁでも先に約束とかあるからなぁ、マジですまん」

 

あー、でもやっぱ中村達との方断ればいいかなぁ〜。

みみみたちと一緒に帰りたいなァ。

 

「そっか。まぁたしかに『人間、馬鹿は構いません。だが、義理を知らないのはいけません』っていうみたいだしね」

「うんうん。っておい、誰が馬鹿だ!」

「あはは!それじゃあねー!」

 

そう言って日南は去っていった。

おのれ、絶対に許さんぞ友崎文也(八つ当たり)。

まぁいいか、旧校長室に行こう。

はぁ……。

 

 

旧校長室に入ると先に来ていた中村、水沢、竹井のいつもの3人に、他何人かのクラスメイトがいた。

既に対戦中みたいだ。

まぁ起動したらすぐに戦えるところもアタファミのいいところだよな。

「おまたせー」

「相原か、ちょっと遅いんじゃない?」

 

とりあえず適当な挨拶をしながら入ると水沢もまた適当な返事を返してくれた。

 

「まぁね、ひなみとかみみみが部活無くて帰るから一緒にどうかって誘われたわ」

「マジ?一緒に帰ればよかったのに。俺なら帰ったね」

「マジ。めっちゃ悩んだんだけどこっち来るって先に言ってたしなー」

 

本当に悩んだ。

てかやっぱ一緒に帰ればよかった。

今からでもまだ間に合……っていやいや、無理か。

 

「ははは、相原はそういう所馬鹿だよなー。ま、嫌いじゃないぞ」

「だろぉ?『人間、馬鹿は構いません。だが、義理を知らないのはいけません』って言葉もあるしな」

「そんな言葉あるのか。誰の言葉だ?」

「え、いや、さぁ?ダレダッタカナー?」

 

水沢はため息を付きながら答える。

 

「お前さてはそれを日南あたりに言われて使ってみたくなっただけだろ……」

「バレたか……」

「バレバレだ」

 

俺はスマホを開いてChromeで検索をかける。

どれどれ……

ははぁ、久保田万太郎の言葉なのか。

また一つ賢くなってしまった。

でも明日まで名前覚えていられるかな……?

 

そんなことを調べていると、アタファミの対戦が終わったようだ。

さすが、中村ももともと周りから強いと言われるだけあってきっちり勝っているみたいだな。

 

「相原もきたか。コントローラ持てよ、対戦だ」

「おし、待ってました!」

 

中村から指名されて対戦をしていたクラスメイト、橘と変わる。

 

「今日も勝ちに行くぞ」

「あぁ?あんまり調子に乗んなよ」

 

昨日と同じく俺はグラスバイオを選択し、中村はフォクシーを選択する。

まぁ、早々持ちキャラなんて変わるものでもないから当然といえば当然だ。

ステージは決戦場。

ちょっと狭めの台形ステージで中央に足場が3つのシンプルながら人気のステージだ。

俺は足場というか、段差が苦手なのでちょっと嫌いなステージだったりする。

 

 

試合の開幕とともに、お互いに距離を取り間合いギリギリの攻撃で牽制をしあい出方を伺う。

そんな中、中村は距離を離し飛び道具で攻撃をしてくる。

こちらは遠距離技を持たないので距離を離されてチクチクされるのは厄介ではある。

特にこのステージは足場が邪魔で動きがとりにくい。

ジャンプでよけつつ接近したいが、基本的にアタファミでは台の上と下では下にいるほうが有利なのだ。

接近して誤って台に乗れば不利になるし、乗らないように攻撃しようものならガードからの反撃を受ける。

 

ならばどうするか。

俺のわからん殺しその1だ。

ダッシュして接近し、相手の遠距離攻撃が当たる瞬間に上必殺技を使う。

この技にはアーマー効果がついているため、攻撃に耐えながら接近しつつ反撃をすることができるのだ。

意表を突かれた中村はその技にあたり、ステージの外へと吹っ飛ばされる。

とは言え%はまだ低いためステージの近くではある。

 

そして俺はさらに追撃をする。

わからん殺しその2。

ダッシュでステージの外へと追いかけ、そのままブレーキをかけずステージ外へ飛び出して落下しながら下必殺技を使う。

これは威力は低いながら、発生がそこそこ早く前方向に広めのメテオ技なのだ。

 

突然の追撃に意表を突かれた中村のフォクシーにメテオがヒットしてそのままバーストする。

わからん殺しを二つ重ねた糞コンボだ。

まぁ、奇襲なだけで上必殺技はガードすれば反確だし下必殺技もジャンプが余裕で間に合うので本当に意表を突いたときにしか当たらないという初心者殺し……

いや、どちらかというと下からの復帰ルートが戻りやすいことを覚え始めた中級者殺しだ。

まぁ昨日も使ってるけど、日が空けば奇襲でなら同じ人物相手でも決まるもんさ。

 

わずか10秒ちょっとで1ストックを奪った。

完全にペースに乗ったな。

ストック一つ差というのはある程度実力が同じだったり、うまい側が有利を取ってしまえばそうそう覆すことはできないのだ。

あとは慎重に進めていけば普通に勝てる。

 

初めの奇襲により焦り始めた中村相手に有利に試合を進め、2ストックを残して俺の勝利となった。

 

「よしよし、奇襲が効いたな」

「クソッ、もう一回だ!」

中村はマジで負けず嫌いだからまぁ、こうなるよな。

 

「へぇー、相原もアタファミ強いんだな」

水沢が驚いたように口を開く。

 

「まぁな、結構やってるから。レーティング対戦ではレート2000を誇ってるんだぜ?」

「よくわかんねぇわ。レート2000ってどれくらいなんだ」

「んー、地元最強ってレベルかな?」

「いやわかんねぇって」

地元最強だぞ、わかれよ!

 

「うーん、高校サッカーで言えば県大会出場校のエース位、かなぁ」

「あー、うん、まぁなんとなく強いのはわかった?」

なぜ疑問形なんだ。

まぁいいか。

 

「でも友崎のほうが強いんだろ?あいつはどれくらいなんだ?」

全国一位なんだよなぁ。

でも本人には言うなと言われてたっけ。

 

「さぁなぁ。まぁでも俺より強いから相当高いんじゃないか?」

「ふーん、ガチ勢ってやつか」

ガチのガチ勢だな。

全国一位は伊達じゃない。

けどぜってぇ一泡吹かせてやる……。

 

「いいからさっさとキャラ選択しろ」

「へいへい、続きやりますか。昨日帰ってからいろいろ練習してたから今日は負ける気しないぜ?」

 

せっかくだし俺もいろいろ練習をさせてもらうとするか。

昨日は着地キャンセルを試合中に使用できるくらいにはタイミングやコツをつかんだ。

つぎはその先の選択肢、透かし掴みだ。

これはたぶん難易度が高いテクニックといえるだろう。

透かし掴みとは、こちらが空中攻撃を使うと見せかけて実際には攻撃をせずに着地し、相手にガードを誘発させて固まったところを掴むという技だ。

 

言葉にしてみれば簡単に聞こえるかもしれないが、実際にはタイミングが難しくもしも攻撃されたら無防備に攻撃を食らってしまう諸刃の剣だ。

ただ、グラスバイオは掴んだ時のメリットは大きいため、うまく使いこなせればかなりのアドバンテージを得られるだろう。

これを空Nの着地キャンセルでの攻めと混ぜ合わせればかなり効果を発揮するはず。

 

そんな感じで俺の方も色々と練習もしながら中村との対戦をした。

しかし着地キャンセルは結構行けるんだけど透かし掴みは難しいな、普通に攻撃技で迎撃されると食らうからなかなか決められない。

そこそこミスも重なり負けた際には適度にクラスメイトにバトンタッチしてアタファミを楽しむのだった。

 

俺も中村もリベンジに成功するにはまだまだ練習が必要そうだけど、どうなるんだろ。

中村はなんかそこそこになったら謎の自信で挑みに行きそうなんだよな。

 

まぁその時はその時でいいか。

今は牙を研ぐときだ、待ってろよ友崎ぃ!

 

こうして俺達は部活のない火曜日の放課後をアタファミへと時間を注いだのだった。

みみみたちとの帰宅を断ったのはちょっと後悔していたが、まぁこんな日も悪くないかもな、とも思えた。




コロナのため来週は投稿できないかもです……
寝込んでいたら連休がなくなってしまった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。