弱キャラ友崎くんとサンドバッグ相原くん 作:mosumosu
「来たぞー、ふーみやー。おじゃましまーす」
俺がそう言いながら友崎の家の呼び鈴を押して玄関に入り、友崎が出迎えるのを待つ。
「そ、そんなに声出さなくてもいいから……」
「おう、友崎。呼ばれてきてやったぞ。この俺を呼び出すとは、偉くなったもんだな!」
「そっちの方が偉そうじゃねーか」
「ははは、んじゃ改めておじゃましまーす」
「あぁ上がってくれ」
とりあえず許可も貰ったので上がらせてもらい、友崎の部屋へと入った。
ついでに移動する際にちょうど顔が見えた妹ちゃんにも一言だけ挨拶をしながら。
「それで、アタファミやるって話だったか。最近はローカル対戦にでもハマってるのか?」
「別にそういうわけでもないんだけど……ちょっとまっててくれ」
歯切れの悪い友崎の言葉。
待てと言いながらスマホをいじったかと思ったら、アタファミでオンラインの部屋を検索している。
うん……?
出てきたフレンド限定部屋に入ると、部屋の中には部屋主のアイコンが1つ待機場所に入っている。
名前は、『NO NAME』!?
「NO NAME、ってどういうこと?今日は俺は見学かな?」
「いやなんていうのかな。NO NAMEが俺の話を聞いて、相原とも対戦してみたいって言うからさ」
「お、おう。それは光栄だな」
拾った話のピースを集め脳内で組み立てていく。
うーん、とりあえずはあれだな?
あの後で仲直りできたってことでいいんだよな?
友崎からコントローラを受け取り、俺は早速グラスバイオを選択した。
ついでに、プレイヤーネームも『nanashi』となっているところを『harami』へと変更。
ちなみに、友崎の家で何度もローカル対戦をするものだから友崎のデータの中に俺のプロファイルを作ってあり、リストから選択するだけで名前の変更が可能な状態になっている。
「どういう流れなのかはしらんけど、全国レート2位様に直々のご指名をいただけるとはな。ちょっと遊んでやるとするか」
「そう伝えておく」
「やめろバカ」
スマホを持ち上げた友崎を慌てて止める。
いきなり何しようとしてんじゃい!
「つーかさぁ。これはつまり、お前のもろもろは解決したってことでいいんだよな?」
「あぁうん、そんなところ。相原には、なんだ。感謝してる」
「やめろこそばゆい、俺はお前にちょっと文句言ってやっただけだって。ま、でも感謝してるって言うなら後で何があったのかくらい教えろよな」
「そうだな、それはもちろん」
いろいろあったんだろうけど、解決したのならよかった。
てか、最近こんなのばっかりだ。
ちょっと気に食わないことに反発したり文句を言ったりしたら、勝手に解決してなぜかお礼を言われる。
結局俺がなんか言ったくらいで解決ことなんて、俺がいなくてもなんだかんだ解決している問題だと思うんだけどね。
そんな事を思っている間に、相手は準備万端になっているようなので俺も準備完了にする。
相手のキャラは、『ファウンド』か。
nanasi相手に何度も対戦をしたキャラだ。
「全国2位、どれほどのものか見せてもらおうか」
***
「なぁ友崎。この人お前より強くない?」
結果は惨敗……とまでは言わなくてもかなりボロボロだった。
なんつうのかな、駆け引き的な差し合いは友崎より断然うまい気がする。
つーか、俺はNO NAMEみたいなじっくり見てくる相手とは相性が悪い気がする。
まぁ基本待ちが有利だからな、勝ちに行くならそう言う戦法に落ち着くのもわかる。
友崎と比べて、より合理的って言うのかね。
NO NAME:私の勝ち
カッチーン!
「おい友崎、こいつめっちゃムカつくな!」
「わかる」
harami:もう1回!次は勝つ!
NO NAME:いいけど、何回やっても変わらないと思うな
「潰す……」
「煽り耐性ひくいなぁ」
「うるっせぇぞ、舐められたまま終われるかよ!」
早く対戦リングにアイコン乗っけろやゴラァ!
……っと、冷静になれ冷静に。
「くぅ、喧嘩は熱いハートとクールは頭脳だ。落ち着け俺」
「アタファミは喧嘩ではないんだが」
待ちが得意な奴も何度もレート対戦で潰してきたからな、待ち戦法が嫌がる方法だってそれなりに心得ている。
……
………
…………
『GAME SET!!』
「……」
「……」
5戦ほどやって惜しい試合もあるにはあったが、それでも勝ちは拾えなかった。
NONAME:これで5戦5勝0敗ね
harami:……
「友崎。お前コイツと仲良くしてんの?縁切ったほうがよくね?」
「性格の悪さなら相原といい勝負かもな」
「俺は性格いいだろ!」
「あー、えっと。いい性格してるかも、な」
「うまいこと言ったつもりか!」
俺くらいいいやつなんて、そうそういないっての!
「けどわかってきた、あと数戦やれば勝つッ!」
「あぁ、これ勝てないパターンだ」
「うっせ!」
「クールは頭脳はどこいったよ」
俺は冷静だよ!
しかし、わかったこともある。
戦い方はところどころだが友崎に似ている。
今まで友崎相手にしたためてきた対策は通用するだろう。
なんとなく俺の感覚での話だが、良く言えば合理的。悪く言えば機械的だ。
予想打にしない動きとして待ち対策にステステと射程長めの技を多めに挟んで……。
………………
「おぉい!友崎、みたか!ついに1勝挙げたぞ!」
「おおっ!やるな相原!」
たぶん10戦目。
ようやく一矢報いることができた。
たぶんこの後、何戦やっても今日はもう勝てないだろうな。
俺の持ち得る″わからん殺し″の奇襲作戦を全部この試合にぶつけたんだ、2度目はほとんどが対策されると思う。
勝てたのは、1試合目を終えたときから考えた策がハマったから。
初戦でNO NAMEとのレベルの差を把握した俺は、この後連敗することも視野に入れつつ奇襲でストックを奪う方法を昔に友崎に試してうまく通ったやつなどを思い出しながら複数個考えた。
そしてこれを解き放つ時は、俺が序盤を有利に進んだ時に押し切るために全ての手札を切ると決めた。
それがきたのがさっきの試合、相手の読みミスからほとんどノーダメージで1ストックを奪えたためここから奇襲作戦を組み立てた。
その結果、なんとかギリギリこちらのストックを1つ残した状態で勝つことができたわけだ。
「あー、清々したわ!ほら、友崎コントローラ返すな」
「え、あ」
そう言って友崎にコントローラを渡す。
この後やってももう負けしか無いしな、勝った余韻に浸りながら気持ちよく終わりましょう。
NO NAME:再戦
「おい相原。これ」
「しゃーねぇなぁ」
友崎が俺の方を見ながら画面を指をさすので、コントローラを借りて短くチャットを打つ。
harami:疲れたので終わりにします。
NO NAME:ちょっと!
harami:ありがとうございました。
「ほい、今度こそ返す」
「いや、おまえっ!」
そして今度は友崎のスマホがブルブルと震える。
「めっちゃ荒れてるんだけど。いまならまだ間に合うと思うからもう一戦だけ付き合ったほうが……」
「はぁ?あれ、なんか妙な既視感が」
間に合うも友崎を通さない限り二度と関わるようなこともないんだがな。
しかしこの既視感は何だったかと考えて、ふと少し前のことを思い出した。
あれだ、短距離で日南と勝負して勝ったときのことだ。
あの後勝ち逃げしてから、妙に日南に再戦を申し込まれたっけ。
結果的にみみみを通して外堀を埋められ、逃げられなくされたんだよな。
この妙な負けず嫌いな所から日南を連想したのかも。
まぁ、内面まで完璧な日南とは違ってNO NAMEは性格が悪そうだけど!
しかしこのままだと無いとは思うが、友崎通して度々勝負しろと言われると俺も友崎も面倒だろうな。
「しゃーない、もう1戦だけな」
俺の答えに安堵のようなため息を吐く友崎。
んな大袈裟な。
けど俺の失敗を通した経験に基づくならこっちのほうが無難に終わらせられるんだ。
むろん負けるつもりはないが付き合ってやろう。
………
NO NAME:私の勝ち
harami:……もう1回。
NO NAME:さっき疲れたから終わりって言ってなかった?
「……ふ、ふふふ」
「お、抑えろって相原」
「初めてですよ、私をここまでコケにしたおバカさんたちは。絶対に許さんぞキサマラ!!」
「えぇ、おれも!?」
そうして、NO NAMEとの戦績は通算15戦1勝14敗で約1時間半ほどの対戦を終えた。
***
「なんかせっかく友崎の家に来たのに、ずっとNO NAMEと対戦しててすまんかったな」
「いいよ、俺が相原を呼んだわけだし」
「お、たしかにそうだ!」
「変わり身早いなおい!」
最近は妙にツッコミのキレが冴えてきたな。
「冗談冗談。それで、そのNO NAMEとは無事に関係を戻せたんだ?」
「あぁ、俺の考えた屁理屈みたいな理屈を持っていって、一応認めてもらえた、のかな」
「ふぅん。まぁよくわかんねぇけど解決したならよかったな。それじゃあこれからも、この前言ってた『人生攻略』だっけ?続けていくってことか」
今日は友崎の髪型も、前に友崎の家に乗り込んだ時とは違ってワックスで固めて人に見せるものになっているようだしな。
「まぁそんなとこ。でも前とは違って言われたからやるんじゃなくて、俺のやりたいことを自分で決めて
そう言ってどこか前よりも自信みたいなものに満ちた顔で言う友崎。
「前の話も含めてだけどさ、お前の話は難しくてよくわからん」
「話が難しいって……」
「けどこれからもおまえは自分を磨いていくってことはわかった。いいじゃん。俺、頑張っていこうってやつは結構好きだぞ」
「相原……」
「部屋に閉じこもって意味もなくアタファミやり続けてるやつよりはな」
「っそれは、一言余計だろ!」
「はは、忘れるまではこれ擦りつづけるわ」
「お前なぁ」
この反応を見るにもう完全に立ち直ってるんだな、よかったよかった。
じゃあついでにあれも聞いてみよう。
「それで、菊池さんとはどうなったんだよ」
「な、なにが?」
「もー、とぼけちゃって!祭り以降連絡とってなかったんだろ?それを、今のお前が?何もしないわけねーじゃねーか」
やりたいことをやる、だろ?
そして、NO NAMEからは花火大会で告白までやれと言われてたことだろ?
それを放置するようなこと、お前がするわけない。
まじめなお前ならたぶん、『やりたいことをやる』ってのはやりたくないことに対して『やらない』ではなく、『別の方法を探す』って意味だ。
付き合いはまだ数ヶ月と短いけど、それくらい分かるっての。
「う、まぁ。今度一緒に本を買いに行く約束はした、かな」
「おお、やっぱり!しかし菊池さん、本読む姿は似合いそうだな。……ん?そういえばお前、たしか1学期終わりは放課後によく図書館で本を「ほら、この話はもういいだろ!」」
この反応。
半分カマかけのようなものだったが、図書館に通い詰めていた事との繋がりがあるのは間違いなさそうだ。
そんな前からコツコツ好感度稼いでたんすねぇ。
もうそれ、相当菊池さんのこと好きじゃん。
「そ、そういう相原こそどうなんだよ!キャンプのときには中村にどっちが早く彼女をつくれるか勝負って言ってただろ!」
ちょ、まてよ!
それを俺に言わせたのはお前の発案じゃねーか!
「うるせぇよ。でも言えることがあるとしたら、みみみとたまちゃんは試合を見に来てくれたぞ、おまえと違ってな!」
「うぐ……」
そんなあれやこれやの言い合いをする俺と友崎。
この前コイツは課題で人付き合いがー云々と言ってはいたが、俺と友崎との仲はそんなの関係なく、まだまだ続きそうだな。
なんて思った。
……ま、どう思おうが俺がアタファミで勝つまで逃げさないけどな。
勝ち逃げなんてぜってぇさせねえ。